「うわ! ちょっと何あれ!?」
洋服屋の中でショウウィンドウ越しに見ていたのはエマ・タカハシだった。エマは外にいるクラーケンを見る。
「あんなに出てくるもんなの!?」
エマは服を直し買い物を中断し店を出る。店員らも裏口から逃げる。
「これ絶対マズイわよ……」
エマはベルトとディスクを出し、エスポワールに変身する。
「変身!!」
『システムコード・エスポワール!』
弓矢で何体かのクラーケンを射る。何体かの動きを封じ射殺出来たが数が多く追いつかない。自分を囲うクラーケンを払うのもきつい。
「やっぱアイツがいるわね」
エマはある人物を一人浮かべ、その人物にスマートフォンで電話をかけた。
※
ネオマリーナシティの車道のあるFエリアのショッピングモールにナツメは家族との時間を過ごしていた。
「ーーナツメちゃん悪いね、休みの日に迎えに来てもらって」
「いいのよ〜。私が迎えに行きたかったんだもん。こうして帰りはドライブできたじゃない」
夫のヒデオに労われナツメは笑みを見せ照れる。
「ねえねえおとうさん! おかあさん! なんか変だよ!」
「え?」
ケンジが指差すほうをナツメとヒデオが見ると、大勢の人間がクラーケンから逃げているのが見えた。クラーケンの姿も見える。
「ええ!? な、なんでここにクラーケンが出てるの?!」
Fエリアは海辺や運河から離れた位置にある。クラーケンはほぼ出ない地区だ。
「クラーケンが大量に出てくるのは海中で何か異変が起きている現れだ。避難しよう。車はクラーケンが駆除されたら後で拾いに行けばいい」
「わ!」
冷静なヒデオはケンジを肩に乗せるように抱きかかえ、ナツメの手を握る。三人は避難誘導中の警備員に従って歩き、避難場所になった屋上に出る。モールにいた客や店員らが沢山いる。
「今モールの外に出たら襲われる。しばらく待っていよう」
「うん」
一安心したナツメの手はヒデオのそれから離れる。ケンジもヒデオから降りる。
すると、ナツメのスマートフォンがなる。
「こんな時に誰が?」
ナツメはそれに出る。
「もしもし?」
『ナツメ、ちょっと手貸して! 今あんたのいるモールの近くにいるんだけど』
「エ、エマさん?!」
『クラーケン狩るの手伝って。猟師衆が来るまで間に合わないのよ。あんたベルト持ってるでしょ?』
「そ、そうですけど……でも私あんなの怖くて前にも出れません!」
ナツメは怯えていた。いくら仕事とは言えアンロッカーやクラーケンとの対峙はナツメには恐怖だった。しかし、その恐怖を和らげ、彼女を動かす方法をエマは見抜いていた。
『……あんた旦那と息子が、怪我してもいいの? クラーケンは自分より大きな大人も子供も見境無く襲うわよ』
「!」
エマに言われナツメはちらり、とヒデオとケンジを見る。いくら避難しているとは言え屋上に登ってくる可能性だってある。見渡せば自分達のような小さな子供を連れた家族も多くいる。
「皆さん! クラーケンがモール内に入り込みました! 屋上に移動しますので指示に従ってください!」
警備員達が大勢の客や従業員達を避難誘導し出す。その大移動が始まると同時にナツメは、
「ナツメちゃん、え?」
「おかあさん!? どこ!?」
ヒデオとケンジの傍からナツメは姿を消した。
※
ショッピングモール近くの屋外。エマは弓矢でクラーケンを撃ち、殴る。一体一体こそ脆いが、数は多い。
「やっぱきっついわね、敵は仮面ライダー達だけじゃないみたいわよコレ!」
「エマさん!!」
エマが戦っていると、ナツメがGPSを頼りに走ってきた。
「ナツメ、やっぱ来てくれたのね!」
「貴女のためじゃなくて主人と息子のためです!」
ナツメはベルトとフロッピーディスクを出し、ベルトを巻く。最初の変身こそ夢だと思ったがベルトもディスクも確かにここにある。
「変身!」
『システムコード・ブーティカ!』
ディスクを差し込むとナツメは藍色の風に包まれブーティカに変身した。怯えながらも、ナツメはガンを取り、クラーケン達を撃っていく。
――ヴァン!! ヴァアン!!
「ぐぎぃいい!」
クラーケンは倒れていく。
「エマさん! クラーケンがたくさんモールのほうにいます……中には人がたくさんいて、どうかせめて追い払うのを手伝ってください! お願いします!」
ナツメはクラーケンを撃っていきながらエマに懇願する。本当は頭を下げるべきだがそうもいかない。
「電話じゃ渋ってたのに切り替え早いわねぇ。建物壊さない程度の大技なら出せるわ、いいわよ!」
エマもクラーケンを撃っていき、それに乗る。
危機感を覚えた時、震えながらも動きを止めない。ナツメがそういう女なのをエマは見抜いていた。
「後ろに乗って!」
自分の周囲のクラーケンを払ったエマはバイクにナツメを乗せ、走り出す。
※
「きゃああ! わ!」
ショッピングモールに戻ったナツメはクラーケンに怯えながらガンで撃つ。自分も怪我をするのが恐ろしいがそれよりも恐ろしいのはヒデオとケンジに危害が加えられる事だ。
「やっぱ人多いところにはアイツらも多いのね」
エマは弓矢をモールの天井に向ける。
「アーカイブが無いから威力は無いかもだけど、なんとかなるかしら? ナツメ、あんたのディスク貸して!」
「?」
ナツメはそう言われディスクを渡す。エマは弓矢に自分とナツメのフロッピーディスクを差し込む。
『レイン・アーチャー!』
エマは天井に向かって、矢を放つ。
――ビガガガ!!
矢は高く上がり大きく弾け、その弾け飛んだ弾はクラーケン達に全て当たりクラーケン達は一気に倒れていく。
「よっし!」
クラーケンを一蹴すると、エマは少し喜ぶ。
「よ、よかったぁ……。あ! ヒデオくんとケンジ!」
ナツメは一度安堵し、ヒデオとケンジの元へ戻る。
※
「はぐれちゃってごめん〜! でも二人とも無事で良かったぁ〜!!」
ヒデオとケンジの顔を見るとナツメは泣き出す。
「ナツメちゃんも怪我無いかい? 無事で良かった……」
「おかあさん、もうはぐれないでね」
ヒデオとケンジも安堵する。
「しかし、猟師衆も来ていないのに何故クラーケンは駆除されているんだ?」
「そ、それは……」
ナツメはごもるのだった。
続く
初変身した日の夜のナツメ
(夢じゃないよね?夢じゃないの!?)
ヒデオやケンジにも言えずに困惑するのであった……