追記10/18 脱字修正しました
ダイゴは先日のイザナのことを思い出しながらゴンドラを漕いでいた。自分があの時助けた少年が実は仮面ライダーであったことには驚いた。名も知らない美少年がなぜか気になっていた。
――アイツはアテランテが俺だって気付いてなかったよな。変身してた時に急に出てきたから……だけど拒否ってるのにアーカイブ取ろうとして攻撃してくるとかなんだってんだよ! ちょっとでも王子様みたいだと思った自分に腹立つっ!!
イザナを思い出し、ダイゴは腹を立てる。
「ダイゴ」
「へ?」
ダイゴは誰かに呼ばれる。それは後ろ横からゴンドラを漕いでやってきたミキヤだった。
「客に見られたらマズイ顔しているぞ?」
イザナとの戦闘を思い出ししかめっ面になっているのをミキヤは指摘してくれる。
「え? うそ!」
ダイゴは慌ててしかめっ面を直す。
「気をつけなよ? 笑顔も仕事だぞ」
「おっす……」
ミキヤはそれだけを言うと、ゴンドラを漕いで目的地に向かっていった。
「ミキヤさん相変わらずギガメガ爽やかだぜ! 王子様ってああいう人のことだよな!」
にこやかに注意されてダイゴの表情は緩み謎に納得する。
そんな彼の様子を、上の陸橋から一人の女が見ていた。
「……あれがクストーデの仮面ライダーねぇ、なんかバカっぽいわね」
そのマゼンダ色の髪をした女はバイクに跨りヘルメットを被り走らせ、今日の仕事場に向かう。
※
マゼンダ色の髪の女、エマ・タカハシはネオマリーナシティ内のあるジュエルショップに来ていた。客としてではなく、出資する者としてだ。投資する店が今後伸びるかどうかを見るのは投資家の仕事の一つだ。
「タカハシ様、いかがですか?」
店の社長と共にエマは店舗の宝石と金や銀で出来たアクセサリーを見る。
「相変わらずどれも綺麗ですね。さっき見たサファイアのピアスは買いますね」
「あ、ありがとうございます!」
気に入ったものはもちろん買うのであった。
「不正は無いのと、売り上げも安定していますから投資の契約更新ですっと」
「ありがとうございます!」
「ここのアクセ好きだから今後もサポートしていきますよ」
エマは社長にクレジットカードを渡し、その小さなサファイアのピアスを買いそのまま耳に付ける。
「じゃあ今日はこれで。次の仕事があるので。ここの店のと同じくらい素敵な宝石が待ってるから」
「はい?」
エマは社長に笑顔を見せながらそう言って店を出る。
※
「クストーデの持ってるアーカイブって俺の持っている二個だけなんすか?」
ゴンドラステーションの停船場。ダイゴは自分のゴンドラを海から引き揚げ、ワックスで磨きながら別のゴンドラを磨くスズキに問う。
「ああ。残り九個は金持ちが所有してたり完全に行方がわからなくてな。政治家に持っている奴がいてそれを本部に渡せって交渉もしてる」
「なんで金持ちや政治家が持ちたがるんですか? 願いのためっすか?」
「いや、アーカイブは歴史的な価値のあるオーパーツでもあるんだ。純粋にコレクションや所持することでお偉いさん同士の駆け引きの道具にも使われる。だから願いがない奴らも狙ったり所持したりしているんだ」
スズキはアンデルセン・アーカイブの価値を語る。
「うわぁ、俺にはわかんねえ世界っすよ」
「まあ、お前でいうところのギャラクシアガイのプレミアグッズみたいなもんかな? コレクションしがいがあるかつ、それがあれば番組がもっと楽しめるみたいな」
「おお! 今のでなんかわかったっす!!」
ダイゴ用にわかりやすくスズキが説明するとダイゴは笑顔で納得する。
「まあ何に価値を覚えるかは人それぞれだな」
二人はそれぞれ作業を続ける。すると、
「すいませーん! 乗船予約したエマ・タカハシですけどー!」
女の声が聞こえた。
「え? 客?」
ダイゴはそれに反応する。
「あー、予約客だ。ダイゴ対応頼む」
「了解っす」
ダイゴは走って女、エマ・タカハシの元に行く。
「えっと、14時に酒井シーランド行きで予約してたエマ・タカハシさんですね」
「うん! あそこバイクじゃいけないからお願いね」
ダイゴは予備のゴンドラを用意し、エマと共に乗る。そして海上の遊園地、酒井シーランドに向かう。車道が設備されていないため船がないといけない場所にあるのだ。ダイゴはオールを動かしながら営業トークを始める。
「酒井シーランドって俺行ったことないですよー。気になってはいるんですけど」
「結構いいとこよ。あとタメ口でいいわ、あんたと年あんま変わらないみたいだから」
「あー……何しに行くんだ? 友達と待ち合わせてるとか?」
タメ口でいいと言われ、ダイゴの口調は砕ける。
「ううん。仕事で偵察に行くの。私あの遊園地に投資しててね。出資先の定期偵察は投資の基本よ」
「あんた投資家か?」
「そうそう! 私がお金出したとこは絶対大当たりするから今にあの遊園地はもっと大きくなるわ」
「すげえ自信だな、よくわからねえけど」
エマの自慢げな様子を見るダイゴ。いきなり自慢話する乗客はたまにいるが彼女はどこか異質さを感じる。
「お金出した会社や遊園地が大きくなるの見てるとワクワクするわよ~? 自分が信じたものが形になっていくのとか、売り上げの一部がこっちに来るとか」
ダイゴのゴンドラは酒井シーランドがある区域に近づく。海に浮いている遊園地の風景がそこに見える。園専用の停船場にゴンドラを止める。
「ついだぞ」
「ありがとね。お金はもう払ってるから」
エマはゴンドラを降りて停船場に立つ。その瞬間、
――ドンッ!
「!?」
ダイゴの身体を強く押して、バランスを崩させる。ダイゴはよろけながらもギリギリでゴンドラから落ちなかった。
「おい! 何しやがる!?」
「あら、体幹いいわね。思ったより体力あるかも」
エマはダイゴの身体能力を確認すると、あるものを取り出す。それは仮面ライダーのベルトとフロッピーディスクだった。
「!? それって仮面ライダーのベルトか!?」
「ちょっと悪いけど力ずくでもらうわよ、変身っ!」
『システムコード・エスポワール!』
エマは腰にベルトを装着しフロッピーディスクを差し込む。すると灰色の光が彼女を包み彼女の姿を変えた。
エマは仮面ライダーエスポワールになった。
『レディディーラー・エスポワール!』
「ケガしたくないなら、アンデルセン・アーカイブよこしなさい!」
エマは弓のウィングサモナーをダイゴに向ける。
「コイツもかよっ!?」
続く