転生したらミュージアムの下っ端だった件(完) 作:藍沢カナリヤ
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旨い酒を飲むために、子供たちを助けよう。
そうは考えない。
だって、放っておいても『仮面ライダー』が子どもたちを助けてくれるしな。だから、俺がするのはちょっとした情報提供だ。
鳴海探偵事務所と霧彦に、答えに繋がる情報を小出しにして伝え、事件を原作よりも早く解決してもらうだけ。
それが今回俺がしようとしていることだった……のだが。
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「お手柄だ、黒沢くん!」
「黒井だ」
俺が手渡したリストを見ながら、霧彦は声をあげた。もうそろそろ俺は怒ってもいいと思う。そんな俺の心中など知らない霧彦は、さらに言葉を繋げる。
「このリストによれば、『バード』メモリを取り扱っていた売人は3人。ならば、この3人を虱潰しに当たれば、確実に子供たちにメモリを渡した者が分かるはずだ」
「……まぁ、そうだろうな」
そうだ。霧彦の言う通り、リストを調べれば見えるはずだろう。
売人の中に、メモリを売るのは大人のみというルールを破った者がいないことが。そして、本当に彼女たちにメモリを渡したのが誰なのかを。
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数日後のことだ。
俺は霧彦に呼び出され、風花町に来ていた。わざわざ呼び出すくらいだから、恐らく真実に気づいたのだろうと思ったのだが、
「……やぁ」
そこには傷だらけで、満身創痍な霧彦がいた。その様子だと恐らく、彼は真実を知ったのだろう。その上で、組織のボスに返り討ちにあったのだ。
「『バード』をあの子たちに渡したのは、他でもないミュージアムだった。『バード』は急速に進化している。そして、いずれ子供たちは死に至る」
「……だろうな」
「ミュージアムは……いや、園崎琉兵衛という男は、子供たちも風都の人々もデータとしか考えていない……勿論、この私もね」
「…………」
「もしかして君は、それに気づいていたのか」
「あぁ」
「君は……一体……?」
霧彦の問いに俺は静かに頷いた。
気づいていた、というよりは知っていたという方が正確なのだが、今ここでそれを言う必要もないだろう。
「それで、お前はどうするつもりだ?」
「愚問だな。子供たちを救う」
救う方法はもう聞き出してある。霧彦はそう言って、懐からガイアドライバーと取り出した。
「このドライバーと私の『ナスカ』メモリを、使用者の体内にある『バード』メモリに共鳴させる。それを『彼ら』にメモリブレイクしてもらう」
「なるほどな。だけどーー」
『キシャァァァァッ』
咄嗟に霧彦を伏せさせたその場所を『そいつ』の爪が切り裂いた。間一髪だ。良く反応したと自分を褒めてやりたいね。
「っ!?」
「『こいつ』は連れて行けないだろ?」
俺と霧彦の目の前には一体の『ドーパント』がいた。
体毛に覆われた体と鋭い爪や牙。まさに獣としか形容のできない『ドーパント』だった。
「……っ、組織の追手かっ!」
「あぁ。『スミロドン』……園崎家のねこちゃんだったっけか」
「……君はどこまで……」
「今はそんなことを言ってる場合か? 『こいつ』を撃退したら教えてやるよ」
「っ、ぜひそうしてほしいね」
『ナスカ』
『マスカレイド』
同時に変身し、臨戦態勢に入る俺達。
……さて、ここでクエスチョン。なぜ俺はここまでクールでいられると思う?
『マスカレイド』なんて最弱メモリしか手札がない状態で、ニヒルな笑みを浮かべる理由。その答え合わせといこうか。
『ミック!』
ーースッスッーー
『静かに』
ーーピッーー
はっ! 俺は原作知識をもった転生者だ。『スミロドン』自体の弱点は知らなくても、元の変身者もとい変身猫であるミックの癖は知っている。
俺が今、名を呼びながら指でなぞったのは、園崎家でミックに特別なごちそうを与える時の仕草。これでミックは大人しくなるはずだ。
『シャァァァ……』
「……ん?」
『キシャァァァァッッ!!!』
ーーズシャッッーー
「なんでっ!?」
間一髪、俺はどうにか『スミロドン』の攻撃を回避した。
し、死ぬかと思った……。
『何をやっているんだ! 真面目に戦いたまえ』
『くっ、なんで通用しないんだっ!』
仕草が間違っていたのか? いや、それとも匂いかなにかで園崎家の人間を識別しているのか。もしそうだとしたら、この攻略法、園崎家の人間じゃないと意味がないじゃねぇか!
『この『ドーパント』に弱点はないのか』
『そんなの俺が知るわけないだろっ!』
『……今までの余裕はどこにいったんだ』
『想定外だったんだよっ!!』
『なら、頭を回すんだ! 切り抜ける策を考えなくては私たちはここで死ぬ!』
どうする!? 現状、『スミロドン』を倒せる戦力はこちらにはない。
『マスカレイド』は論外。可能性があるとすれば、『ナスカ』の『超高速』だろうが、今の霧彦にはそれを使いこなす体力もないし、使えば恐らく体がついていかない。そうなれば、そこでゲームオーバーだ。
……ん? あれあれあれ? もしかすると、これって……?
『詰みじゃね?』
弱者から狩ろうという動物としての本能だろう。『スミロドン』の爪はまず俺を切り裂こうとしていた。
『スミロドン』の常識外れの敏捷性と切り裂くことに特化した爪。
あぁ、これはもう助からない。覚悟するしかない。
でも、もし希望があるとすればーー
『た、たすけて、『仮面ライダー』ぁぁ……』
後日、聞いた話によると。
それはそれは、大層情けない声だったという。
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野郎しかいないこの作品。ヒロインは……。
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いる! 本編キャラがいい
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いる! オリジナルも可
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え? 霧彦がヒロインだろ?
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いらん!