転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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新章『r』編開幕。


012 廃人r / 死を司る者

ーーーーside『R』ーーーー

 

 

「『リバース』メモリが盗まれた?」

 

 

通話していた霧彦さんの声が耳に入ってきた。少し取り乱したような声はらしくないって思う。断片的に聞こえてくる内容から、相手は春奈ちゃんのパパだろうとは思う。

 

 

「何かあったんですか?」

 

 

しばらくして、電話を切った霧彦さんにそう聞くと、霧彦さんは答えてくれる。

 

 

「警察で保管していた『リバース』というメモリが盗まれたらしい。『マグマ』の時と同じ内通者の犯行だそうだ」

 

「……その内通者早く見つけないと」

 

「いいや、その必要はないようだ。警察内部に入り込んでいたその内通者は既に殺されているらしい」

 

「!」

 

 

霧彦さんによると、その人物は『リバース』メモリをどこかへ輸送する途中だったらしい。だけど、本来輸送の予定はなく、その上、持ち出した記録もされてないこと、その他通信履歴などから、持ち出したその人物が内通者であったことはほぼ間違いないとのこと。

 

 

「じゃあ、そのメモリは……?」

 

「何者かが持ち去ったんだろうね。本来の取引相手か、それとも強奪した人間がいたのかは分からないが」

 

 

人を殺してまで手に入れたい。そう思うほどのメモリ、強いメモリなのかな。そう聞くと、霧彦さんはそれもあるがと肯定した上で続ける。

 

 

「『リバース』は黒井くんとーー瑠璃ちゃんのお父さんと因縁のあるメモリなんだ」

 

「!」

 

 

それを聞いて、一瞬嫌な想像をしてしまう。もしかしたら、その人を殺して『リバース』メモリを奪ったのはーー

 

 

「大丈夫だよ、瑠璃ちゃん。彼はそんなことをする男ではない」

 

「…………はい」

 

 

不安はある。だけど、そう。わたしたちのパパがそんなことをするわけない。ブンブンと首を振り、頭から変な考えを追い出して。

 

 

『だけどよぉ、霧彦。『リバース』が妙な輩に渡るのはマズイだろ』

 

 

そう言うのは『イービル』さん。どうやら『リバース』については、彼女も知っているようだった。霧彦さんも神妙な面持ちで頷いた。

 

 

「照井くんの方は盗まれた『ビゼル』の行方を追うのに手一杯らしいからね。勿論、警察も動いてはいるが、私達も動くとしよう」

 

『当てはあるのか?』

 

「…………殺されたという内通者は恐らく『ビゼル』の件にも関与している。つまり、この2点を繋ぐのは『裏風都』だ」

 

 

『裏風都』については霧彦さんから少しだけ聞いていた。昔、『仮面ライダー』が戦ったという相手。その中心人物が『マグマ』からわたしたちを助けてくれた万灯雪侍だったらしい。

つまり、今回のことに万灯雪侍が関わっている……そこにはきっと……。

 

 

「おねえがいる」

 

「断定はできない。けれど、この間『安らぎの泉』に万灯とあかねちゃんが現れたことを考えると可能性は高いと思う」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

カシャリと音が鳴る。

わたしの手には赤い銃、それと『ボム』のメモリ。護身用にと霧彦さんがシュラウドさんに頼んでいた代物だ。これでやっと戦える。

 

 

「無理は禁物だよ、瑠璃ちゃん。危なくなったら逃げること、守れるね?」

 

「……はい、霧彦さん」

 

 

今から会うのはそれほどに危険な相手だと言う。『裏風都』と繋がるために、わたしは今から人に会う。

そうして辿り着いたのは……。

 

 

「老人ホーム……?」

 

「あぁ。ただし、ここは特殊な施設でね」

 

 

霧彦さんによると、メモリ使用者が集まる老人ホームだって。施設の受付で霧彦さんが手続きをしているのを見ながら、辺りを見渡す。

 

 

「視たことのある色だな」

 

 

そんな声をかけてきたのは、車イスに乗った初老の男性だ。痩せ細り、目からは生気が抜け落ちている。にもかかわらず、弱々しい印象はなく、どこか不気味で危険な雰囲気を纏っていた。

 

 

「彼の名は矢ノ神夜一。元『裏風都』の死神で、その昔、『仮面ライダー』に負けた」

 

「……いいや、決して『仮面ライダー』に負けた訳ではない。私が負けたのは、あの『魔女』と黒井秀平だ」

 

 

その人、矢ノ神夜一は霧彦さんの言葉を否定した。

またパパの名前……この人もパパと繋がっている。

 

 

「単刀直入に聞こう。君の『ビゼル』は今、どこにある?」

 

「…………そんなものとうの昔になくしてしまったよ」

 

「『安らぎの泉』で彼女に敗れた時に?」

 

「そういうことだ……とかく、私にはガイアメモリから手を引いた。この目もほぼ見えず、足も録に動かん。座して死を待つばかりの廃人だ」

 

 

そう言うと、彼は見えない目を閉じた。それは拒絶、これ以上は何も話すことはないという意思の現れだった。

 

 

 

ーーーー深夜・老人ホーム『羅刹』ーーーー

 

 

「こんばんは。矢ノ神夜一」

 

「どこから入ってきた……? ここは厳重な警備を敷かれている。そう簡単に侵入することなどーー」

 

「ーーいいや、そうは言わない。『降って』きたのさ」

 

「その口癖、声……君はまさか……?」

 

「あなたが『待ち望んだもの』はここにある」

 

「!」

 

 

ーーカチャリーー

 

 

「望みを叶えるんだ。『それ』で」

 

「そうか、それはーー悪くない」

 

 

ーーーー霧彦宅・瑠璃の部屋ーーーー

 

 

翌日の夜、わたしが部屋に戻ると机の上に一通の手紙が届いていた。

送り主は矢ノ神夜一。中を開けて見ると、もう一度老人ホームに来るようにと書いてあった。しかも、1人で。

 

 

『危険だ。せめて霧彦には伝えろ』

 

 

この手紙を届けてくれたのは霧彦さんだろうけど、中身は見てないはず。だから、確かに『イービル』さんの言う通り、伝えた方がいいのかもしれない。だけど

 

 

「そうしないと話さないって書いてあったし」

 

『あの男に、こっちのことを知る手段はねぇだろ。律儀に守る必要はねぇよ!』

 

「…………そう、だね」

 

 

時間も遅い。もう霧彦さんは寝てると思うし、明日伝えればいいよね。そう決めたわたしはベッドに横たわり、目を閉じた。

 

 

~~~~~~~~

 

 

「よく眠れたかな。黒井瑠璃」

 

 

目が覚めると、わたしの目の前には矢ノ神夜一がいた。なんでとかどうやってとか色々聞こうとしたんだけど、声が出ない。何かされたの……?

 

 

「怯えることはない。私も昔ほど尖ってはいない。ただ君はそこで『餌』になっていればいい。私の目的を果たしたら解放しよう。悪くない提案だろう」

 

 

目的? 私を拐った目的って……。

 

 

「なに、復讐さ。私をここまで堕とした黒井秀平を誘き出し、この手で殺す。死神としての最期の心残りを果たすんだ」

 

「!?」

 

 

不気味な笑みを浮かべた彼は、懐から『それ』を取り出した。『オウル』の時にも見た、たしか『ガイアドライバーREX』。そして、その左側のスロットへメモリを装填した。

 

 

『デス』

 

 

『さぁ、来い! 黒井秀平ッ!!』

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

「ごめんな。また少し離れるよ。あの娘たちの危機なんだ」

 

「ーー行ってくるよ、雫ちゃん」

 

 

 

ーーーーーーーー




柷100話!
記念になにか書きたい……。

参考までに教えてください。オリキャラは……。

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