転生したらミュージアムの下っ端だった件(完) 作:藍沢カナリヤ
ーーーー廃ビル内ーーーー
ーーコツコツコツコツーー
建物に響く足音。建物の中には物がないから、余計にその足音が響き渡っていた。ここにはわたしと矢ノ神夜一・『デス』しかいないはず。わたしは動けないし、あの人は浮いているから、この足音の主は……。
『早速、侵入者だ』
「…………」
霧彦さん? ううん、霧彦さんには伝えてなかったし。そうなると一体、誰?
「人の妹に何してる」
静かな声が聞こえた。この声!
『黒井秀平かと思ったが、もう1人の娘の方か』
「瑠璃っ!!」
「っ」
おねえだ。おねえだ!
必死に叫ぶけど、声は出ない。けど、わたしの思いはおねえに届いているようで。
「妹を返せ、下衆がっ」
『イービル』
変身し、走り出すおねえ。白銀の髪を振り乱しながら放った蹴りを『デス』は止めた。
『人間態のままの『ドーパント』とは興味深い』
『うるせぇっ』
ーーバキッーー
体を翻らせて放った回し蹴りも『デス』の持つ鎌で止められてしまった。
『攻撃力は悪くない……だが、『デス』相手にメモリ1本とは』
『あ!?』
その言葉の後、『デス』の体にあった髑髏の目が光る。次の瞬間、髑髏から舌が伸びてきて。
『っ』
ギリギリだった。おねえはそれを紙一重で避けて、体勢を立て直しながら、距離を取った。
『万灯から聞いててよかった。それに当たったら終わりなんでしょ』
『……? 万灯さん?』
『今度はこっちの番だ!!』
ーーグンッーー
地面を蹴り出したおねえは、一瞬で『デス』の背後に回り込む。鎌を足蹴にして吹き飛ばした後、そのまま後ろから『デス』の体を羽交い締めにした。
ーーギリギリギリギリーー
『落ちろッ』
『ぐ、ぐぅぅ』
おねえの攻撃は完璧に『デス』を拘束できていた。鎌も遠くに飛ばして、体の正面にある髑髏から舌も出せない。あれならきっと勝てる。
『流石は、黒井秀平の娘……ガイアメモリに選ばれた家族という訳か』
『……っ、それどういうっ』
「……お、おねえ!! 後ろ!」
『!?』
どうにか絞り出したわたしの声に気づいてくれたおねえは、その場から飛び退く。間一髪、鎌がその空間を切り裂いていて。少しでもおねえの反応が遅れていたらと思うと、背筋が凍る。
『悪くはなかったが、この程度で私を拘束できたと思ったのが間違いだったな。では、こちらの番だ』
『っ』
自由の身となった『デス』がそう告げた次の瞬間、髑髏の舌がおねえの体を貫いた。
「おねえっ!!」
ーーーーside『A』ーーーー
貫かれたのは右足。幸いなことに痛みはない。けどーー
「っ、メモリがっ」
変身が強制的に解除されてしまった。もう一度起動しようとしても、反応しない。見れば、メモリに刻まれているはずのイニシャルすら消えてしまっていた。
『『デス』はメモリ能力を『仮死状態』にするメモリ。卑怯などと思うなよ、殺しは楽が一番だからな』
目の前の奴への悪感情は消えてない。ぶん殴ってやりたい気持ちは変わらないけど、現状、私に対抗手段はない。だから、今は、
「っ、瑠璃、走るぞッ」
「う、うんっ」
手をとって走り出す。だが、室内は広くはない。外に通じるであろうドアは勿論、鍵がかかっていた。ここに入ってきた時に使った出入り口も、細工をされていたのか開かなくなってたし……。
このまま逃げ続けて、時間を稼ぐ。そうすれば、万灯が気づいてくれるだろうし。
ーーぐらっーー
「ぐっ」
「おねえ!」
そう思った矢先のことだった。思わず膝をついてしまった。さっき攻撃されたところ、痛みはないのに動かせなくなってきた。あの舌、運動能力もなくしてくるのか!
『あまり手間をかけさせるんじゃない』
逃げた場所が悪かった。部屋の角、逃げ場のない場所にうずくまった私たちは『デス』に追い詰められてしまう形になる。
「……うるさい。こっち来るな」
『クククッ、まだこんな言葉を吐ける気力があるとは……流石はあの黒井秀平の娘だな』
そう言って笑う『デス』。
どうにか隙を見つけ出さなきゃ。『イービル』はまだ復活してない。奴の能力の制限時間はないのか。大鎌は奪えないか。一瞬でも視界を奪える手段は。窓を割って脱出はできないか。
あらゆる手段を考えて、それらがどうしようもないことを悟ってしまう。
「くっ……」
万事休す。なら、せめてーー
「ねぇ、お前、パパを誘き出したいんでしょ? なら、私たちのどっちかは生かしておくつもり、だよね」
『……クククッ、なんだ? 命乞いでもしようというのか?』
「そう、命乞いだ」
助かるなら1人だけでも……。
「私はメモリを持ってる。その舌の能力は永続的な効果はないんでしょ? なら、このまま私を生かしておくと、いつメモリが復活して、反抗されるか分かんない」
「っ、おねえ! なにをっ!」
大丈夫、瑠璃。
私が帰らなければ、万灯が動くはず。それに、朝になれば霧彦だってくるでしょ? きっと翔太郎さんたちだって助けに来てくれるはず。だから、今は瑠璃だけでも生きて。
『美しい姉妹愛だな。無意味ではあるが』
「……で、どうするわけ?」
『確かに黒井秀平を誘き寄せる餌は1人で十分。お前の言葉に乗ってやろう。望み通りに、メモリを使う面倒な方を殺す』
「おねえッ!?」
「っ」
その攻撃には一切の躊躇はなく、『デス』は大鎌を無慈悲にも振り下ろした。
これでいい。これが最善の策だ。瑠璃だけでも生き残って……。
「……っ、ヤだよ」
死にたくないっ!
ーーギンッーー
「っ…………………………?」
響き渡る金属音。いつまで経っても痛みは来ない。不思議に思って、ぎゅっと強く瞑った目をゆっくりと開く。
そこには1人の人物がいた。振り下ろされた『デス』の鎌を生身で受け止めている男の人。その人は私と瑠璃に語りかけてくる。
「元気そうでよかった、あかねちゃん、瑠璃ちゃん」
「「ーーーーッ」」
最近の姿は知らない。けど、その声には強烈に聞き覚えがあって。
「「パパ……っ」」
「あぁ」
かすれた声で呼ぶ。パパは鎌を『デス』ごと蹴り飛ばした後、しゃがむと、私たちの頭を撫でてくれた。その顔は穏やかで、けれどどこか陰があるそんな表情。
「っ」
……むかつく、むかつくむかつくむかつく。
ずっと私たちを放ってどっかに行っていた癖に。
こんなギリギリまで姿を見せなかった癖に。
なのに、撫でられただけで安心してしまう自分がいることが本当にむかつく。
「……ここから動いちゃダメだぜ。危ないからな」
そう言うと、パパは私たちに背を向けて、『デス』に向き合った。その背中はとっても大きくて。
「…………ほんと、むかつく」
ポツリと呟いた言葉は誰の耳にも届かなかったはず。
「さて、待たせたな、死神野郎。そんでとっとと失せろ、親子の再会に水を差すなよ」
『フフッ、心配するな、親子共々地獄に送ってやろう。そうすれば、永遠に一緒にいられるだろう』
「ハッ、寝言は寝て言え。こっちとら可愛い可愛い娘を殺されかけて、最高にキレてるんだ。地獄行きはそっちだ」
『ほざけ! メモリ1本で何ができる!』
「関係ねぇよ。メモリの本数も能力も関係ねぇ」
舌戦を繰り広げていたパパは、チラリとこちらを見て笑った。そして、告げる。
「娘の前なんだ、パパの意地を見せてやるよ」
『マスカレイド』
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『マスカレイド』vs『デス』開戦!
参考までに教えてください。オリキャラは……。
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嫌いじゃないわ
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苦手