転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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014 廃人r / パパの願い

ーーーーーーーー

 

 

『また『マスカレイド』か。そのメモリで勝てないことは前の戦いで知っているだろう』

 

『あ? そんな風に舐めてかかってやられたのはどこのどいつだったっけなぁ?』

 

『ほざけッ! 『魔女』がいなければ恐るるに足らん!』

ーーブンッーー

 

 

『デス』の先制攻撃は、大鎌の投擲。自らに向けて投擲されたそれを『マスカレイド』は避ける。だが、

 

 

『その程度で避けられるわけがないだろう!』

ーーギュゥンーー

 

 

後ろへ外れたはずの大鎌は軌道を変え、『マスカレイド』の背後から迫ってくる。『デス』の一部である大鎌は思念を送ることで遠隔操作が可能で、物理法則を無視した動きで襲いかかってくる。

 

 

『フンッ!!』

ーーガシッーー

 

『……反応速度は悪くない。だが!』

 

ーーガチンッーー

 

 

大鎌を止めている今が好機と、『デス』はメモリ能力を発動させた。肉体の髑髏が光り、舌が飛び出す。貫けば一発アウトの能力。

 

 

ーーブスッーー

 

『クハハハッ』

 

 

舌は『マスカレイド』を貫通した。

これで終わりだ。そう確信した『デス』は変身が解けるであろう『マスカレイド』に近づいて、悔しがる表情を拝もうと彼の顔を覗き込んだ。

 

 

ーーガシッーー

 

『ぐ!?』

 

 

頭を鷲掴みにされた。そう気づいた次の瞬間には、

 

 

ーードゴッーー

 

『が、ぼ……っ!?』

 

 

『マスカレイド』の拳が『デス』の顔面に入っていた。後退りながら相手の姿を確認する『デス』。舌が貫通してから約30秒。本来ならば、変身が解除されるはず。しかし、その姿は以前『ドーパント』のまま。

 

 

『なに、をっ!?』

 

『あれから10年以上経ってるんだ。何の対策もしてねぇと思ったか』

 

 

そう言って、『マスカレイド』は種明かしをする。顔の骨が鉛色に変わり、その能力を発動させた。

 

 

『腕に穴……だと?』

 

『あぁ、そこかしこに穴を開ける『ホール』ってメモリの能力なんだ。ランクは中の下……その程度のメモリで対抗できる雑魚だよ、お前は』

 

『~~~~ッ!!』

 

 

『マスカレイド』の挑発に激昂する『デス』。自らのメモリ能力に絶対の自信があるからこそ、低ランクのメモリで対策されたことが腹立たしく、

 

 

『ならば、これでどうだッ』

 

ーーガチンッーー

ーーガチンッーー

ーーガチンッーー

 

 

残りの髑髏を一斉に消費して繰り出す舌の多段攻撃を繰り出す。不可避の攻撃だ。にもかかわらず、『マスカレイド』は慌てた様子もない。

 

 

『……意地になって攻撃してくんなよ、みっともねぇな』

 

 

その言葉と同時に、『マスカレイド』の頭部の色が変わる。白と黒の斑模様に。そして、軽く手を振り上げた。その瞬間にすべての舌が進行方向を変えた。

 

 

『な、ま、待てっ!?』

 

 

舌が向かう先は『デス』自身。『反転』した舌は間もなく『デス』の体を貫いた。

 

 

『ぐ、が…………ぁ」

 

 

決着。時間にしてわずか1分。

車イスからも転げ落ちた矢ノ神夜一と息1つ乱していない黒井秀平の間にはそれほどまでに実力差があった。

 

 

ーーーーside『A』ーーーー

 

 

「つよ……」

 

 

その戦いを見て、思わずそんな言葉が漏れた。

パパは『ドーパント』に変わり、そのメモリは名を『マスカレイド』と告げていた。その姿は『裏の街』で見たボーンズ?にかなり似ていて。違うのは顔に張り付いた骨の色が銀色なことと黒いスーツを着ていること。どちらにしろ……。

 

 

「ださ……」

 

「お、おねえ?」

 

「……なんでもない」

 

 

つい漏れた本音。どちらも本当にそう思ったから。

って、いやいや、呆けてる場合じゃない。せっかくパパに会えたんだ。一発ぶん殴って、それからいっぱい話をするんだ。

 

 

「っ、パパ!」

 

「……あかねちゃん」

 

 

『デス』だった男からメモリとドライバーを回収していたパパに声をかける。久しぶりの再会だ。きっとパパはこっちに飛びかかってくるはず。そこに一発入れてーー

 

 

ーーズズズズーー

 

「え?」

 

 

気づけば、パパは『ビゼル』を使っていた。それは向こうの『街』に戻ろうとしてるってこと。

 

 

「ま、まってよっ」

「パパっ」

 

「………………」

 

 

私と瑠璃の呼びかけに一瞬止まったパパは、

 

 

「ごめんな」

 

 

それだけを告げて、『裏風都』に繋がる『穴』に消えてしまった。

 

 

 

ーーーーside『S』・裏風都ーーーー

 

 

ーーズズズズーー

 

 

「おかえりなさいませ、主様」

 

 

表の街から戻ってきた俺を迎えたのは、シスター服の女・『ミズハ』であった。俺を主様などと呼ぶ変な女である。

 

 

「……その主様ってのいい加減止めてくれ」

 

「いいえ。主様は私を救ってくださった救世主。一生を懸けてお仕えする所存です」

 

「…………はぁぁ、雫ちゃんが目覚めたら止めてくれよ。浮気を疑われるのは勘弁だ」

 

 

大きくため息を吐く。このまま横になりたいのは山々だが、まずは雫ちゃんの顔を見ないと落ち着かない。ベッドに近づき、横になったままの彼女の髪を撫でてやる。勿論、反応はない。でもーー

 

 

「よかった。ちゃんと生きてる」

 

 

それを確認して、安心する。こうして息があることがこんなにも嬉しいなんて、数年前の俺は想像もつかないだろう。そんな事態なのだ。

 

 

「処置を始める」

 

『マスカレイド』

 

 

変貌を遂げ、自らの記憶を遡る。先日も使ったばかりだから、メモリ能力を引き出すのは容易いことだ。使うのは『ドクター』。対象を雫ちゃんに設定し、処置を行う。丁寧に、丁寧に。

 

 

「………………ふぅ」

 

 

今日分の処置を無事終えた俺は、変身を解除する。

 

 

「本日もお疲れ様でございました」

 

「いや、いつもありがとうな」

 

「いえ、主様のお役に立てているのならば本望でございます」

 

 

俺には勿論医者としての経験なんて皆無だから、この作業だけは毎回かなり神経を使うんだ。その間、警戒してくれてる彼女には感謝の念しかない。

さて、短時間とはいえ、この『街』を空けていたから、状況は確認しておかないとな。

 

 

「ミズハ。『街』の様子は?」

 

「『リアクター』による『街』の破壊は順調です。本日も『歪み』を1ヶ所発生させました」

 

「上出来だ。『ドーパント』擬きの方は?」

 

 

それを聞くと、露骨に嫌そうな顔をしつつ答える。

 

 

「……彼女が数体狩っているのを確認しております」

 

「そんなに嫌か? 風華のこと」

 

「控えめに申し上げますと……死んでいただきたいです」

 

「……録でもないストーカーなのは事実だが、まぁ、なんだ……上手く使ってくれ」

 

「………………」

 

「な?」

 

「ショーチシマシタ」

 

 

彼女が俺の言うことをここまで苦々しく承諾するのだ。分かってはいたが、心底嫌いなんだろう。まぁ、俺も嫌だけどさ。

とにかく『街』の壊滅は順調だ。これなら近いうちに『奴』が現れてもおかしくはないだろう。いい加減、この淀んだ空気も耐えきれない。それに、

 

 

「あかねちゃんも、瑠璃ちゃんも、雫ちゃんに似て、最高にかわいくて美人さんに育ってるよ」

 

 

そう言いながら、雫ちゃんを撫でる。

あぁ、早くみんなで一緒に暮らしたいな。

 

 

ーーーーーーーー




『r』編終了。
次回、新章開幕。

R版執筆中です。
これ、本番まで書くの大変ね。

追記:R版連載開始しました。
私のマイページよりどうぞ。

R版について

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