転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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新章『h』編開幕!


015 共闘するh / 姉妹のお話

ーーーーside『A』・風見川河川敷ーーーー

 

 

呆然としていた私は、瑠璃に抱き起こされて、どうにか歩を進めていた。

メモリを使ったせいか、はたまたパパと話ができなかったせいか、ともかく気が重い。気分は瑠璃も同じみたいで、いつもは通らない河川敷を歩く。霧彦の家へは少し遠回りだ。

 

 

「おねえ」

 

「……なに?」

 

「大丈夫なの?」

 

 

姉妹2人、河川敷を散歩する。端から見たらきっと何もないただの姉妹に見えるんだろう。けれど、抱えてるものは重く深い。

 

 

「……ま、平気」

 

「…………」

 

「な、なに?」

 

 

瑠璃は不意に立ち止まり、じっと私を見つめてくる。身長差があるから余計に圧迫感があるな、こいつ。

 

 

「嘘。おねえは嘘ついてる」

 

「嘘なんて……」

 

「じーっ」

 

「…………はぁぁぁ、分かった分かった」

 

 

嘘もとい虚勢を張っていることは自分でも分かってた。メモリの副作用は確実に体と心にキてる。それを誤魔化したのは、姉としてのプライドとか、瑠璃に心配をかけたくなかったからだ。

 

 

「急にいなくなって心配した」

 

「うぐっ、痛いところをっ」

 

「夜も眠れなかった」

 

「ぐっ!?」

 

「ご飯も喉を通らなかった」

 

「ぬぬっ!?」

 

「…………まぁ、そんなことはなかったけど」

 

「はぁっ!?」

 

 

支えてくれる人達がいたから、と事も無げに彼女はそう言った。

…………感謝しなくちゃな、色んな人に。

まだ日は落ちてないし、少し話していこうかと瑠璃に提案すると、瑠璃は頷いてくれた。2人並んで河原に座り、話をする。

 

 

「なんでいなくなったの?」

 

「巻き込みたくなかった。あと『ドーパント』になったのを見られたくなかった」

 

「そっか」

 

「うん」

 

 

正直に話す。それから今までのことをポツリポツリと語っていく。それを瑠璃はただ静かに聞いてくれた。

『ドーパント』になって。『裏風都』に行って。戦って戦って戦って。なのに、目的のパパと話すことは叶わなかった。だからかもしれない。

 

 

「ちょっと……疲れた……」

 

 

思わず溢れた言葉。言うつもりはなかった言葉。慌てて口をつぐむけど、瑠璃には聞こえてちゃってる。

 

 

「ん」

 

「瑠璃……?」

 

「ぎゅっとしよ」

 

「~~っ」

 

 

そう言って、瑠璃は両手を広げた。それを見て私はーー

 

 

「うんっ」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「あー、泣いたぁ……」

 

「うん、泣いてた」

 

 

ごろんと横になる。なんか吹っ切れた気がする。瑠璃のおかげで随分心が軽くなった。

 

 

「うん。もう元気だ!」

 

「ホントに?」

 

 

今度は取り繕わずに頷く。

 

 

「体の方は休めば平気そう。私の場合、体よりも心がやられるみたいだから」

 

「それ、平気って言わない」

 

「でも、本当にメモリの毒素自体はマシになってるよ。ほら」

 

 

そう言って、『ガイアドライバーREX』を見せる。

 

 

「あ、これって……」

 

「? どうした?」

 

「これ、霧彦さんが前に戦った『オウル』って兄弟が使ってた」

 

「は?」

 

 

それ、どういうことだ?

 

 

「…………」

 

 

……でも、そうか。思い返せば、死神を自称していた『デス』も『ガイアドライバーREX』を使っていた。万灯曰く、そのドライバーは『裏風都』のものだったという。そして、現存しているのは、万灯のものーーつまりは私のドライバーだけだと聞いていた。だとしたら……?

 

 

「万灯が嘘を吐いていたってこと、か」

 

 

 

ーーーー裏風都ーーーー

 

 

「…………」

 

 

『街』の中心にそびえ立つ塔へと繋がる教会。黒井秀平の部下を自称するシスター・ミズハの元に、1人の男が訪れた。

 

 

「あなたは……」

 

「万灯雪侍。前回は名乗っていなかったね」

 

 

再びシスターの元を訪れた万灯は、改めて彼女に名を名乗る。ドライバーもなく、『オーロラ』も思ったように使えないにもかかわらず、余裕の表情は崩さない。

 

 

「彼に会いに来た。通してくれないか」

 

「……申し上げたはずです。『主』の元には行かせない。近づく者を排除するのが私の役目だと」

 

『リアクター』

 

 

話をする気はないとばかりに、シスターは『リアクター』メモリを起動した。胸元にそれを挿そうとしたところで、止まった。それは彼女の意志ではなくーー

 

 

「……僕も長くは保ちませんよ」

 

「ありがとう、秀夫くん」

 

 

千葉秀夫の思念波はシスターの体を縛り付ける。だが、万灯と同じく彼の力も弱体化しており、長くは保たない。

 

 

「本当は彼女が『リバース』メモリを『ライズ』して倒せれば一番だったのだけれど。奪われてしまったという話だからね」

 

 

万灯はゆっくりと歩を進め、教会の奥、マリアを模した像に触れて『ビゼル』を反応させた。その瞬間にゲートが起動して、

 

 

 

「騒がしいと思ったら……懐かしい顔だ、万灯」

 

「……やぁ、黒井秀平くん」

 

 

 

万灯が像を依り代として開いたゲートを通るよりも先に、その中から黒井は現れた。

 

 

「……主様、すみません」

 

「気にすんな。おい、俺に会いたかったんだろ? ミズハは放してやってくれ、千葉秀夫」

 

「っ」

 

「いい子だから、な?」

 

 

警戒する秀夫を諭す黒井。秀夫は万灯に視線を送り、思念波を解いた。ミズハが自由の身になったのを確認した黒井は改めて万灯に話しかける。

 

 

「こっちは忙しいんだ。邪魔すんな、ボケ」

 

「邪魔、ね。そうは言わない……私は君達に提案をしにきたんだ」

 

「提案だぁ?」

 

 

黒井の苛立ちを気にする様子もない万灯は彼にその提案をもちかけた。

 

 

「君の願いを叶える手助けをしよう。私達以上に『街』に詳しい人間はいない。必ず力になれるはずさ」

 

「…………何が目的だ?」

 

 

その問いに、万灯は微笑み、答える。

 

 

 

「黒井瑠璃を殺させてほしい」

 

 

 

ーーーーーーーー




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