転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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016 共闘するh / 謀事

ーーーー裏風都・教会内ーーーー

 

 

「瑠璃ちゃんを殺す…………聞き間違えか?」

 

 

万灯の発した言葉を繰り返し、再度聞き返す黒井。その口調は静かだが、一言でも違えれば殺されかねない雰囲気を醸し出していた。その眼光にあの千葉秀夫ですら少したじろぐ。だが、万灯は怯まず続ける。

 

 

「君は『奴』を倒して、あの塔で眠り続けている眠り姫を救いたい。私達も、我々の思い出を汚す悪趣味なこの『街』を破壊したい。利害は一致している、と思うが」

 

「……一応聞いてやる。そのことと瑠璃ちゃん。なんの関係がある」

 

「君のもう1人の娘に会ったよ。黒井あかね……実に妹思いのいい娘だ」

 

「…………『イービル』を使うつもりか」

 

「その通り。あれは負の感情を引き出せば引き出すほどに強大になるメモリ。そして、彼女と『イービル』の適合率は驚異的だ」

 

 

万灯はさらに続ける。

 

 

「まずは『奴』をこの『街』に誘い込む。同時に、この『街』に連れてきた黒井あかねの目の前で黒井瑠璃を殺し、『イービル』の力を覚醒させる。そうすれば、『奴』を含めたこの汚れた『街』の全てを崩壊させられる」

 

 

自らの狙いを提示した万灯。

瑠璃の殺害によるあかねーー『イービル』の覚醒。

それによる『奴』と呼ばれた人物の排除と『街』の崩壊。

それを聞いた黒井は、黙り込む。

 

 

「………………」

 

 

黒井雫が昏睡状態になっている現状とこの『街』の破壊を同時に成り立たせるポテンシャルが『イービル』にはある。だが、本来の持ち主である雫の意識がなく、使うことができない。だから、雫に並ぶほどに適合率の高いあかねに『イービル』を使わせて、その力を覚醒させる。

策としては最善。だが、

 

 

「論外だな」

 

 

勿論、黒井はその提案を受け入れない。

 

 

「俺は家族で笑い合うために動いてる。雫ちゃんも、あかねちゃんも瑠璃ちゃんも……全員だ。俺達家族の未来を諦める気はねぇよ」

 

 

その瞳に迷いは一切ない。夫として、父として、目の前の危険分子を排除する。その決意の元、黒井はメモリを起動した。

 

 

『マスカレイド』

 

 

「フッ……交渉決裂か。探偵くんたちとのやり取りを思い出す顛末だ」

 

「万灯さんっ!!」

 

 

千葉秀夫の声に反応し、万灯は後ろへ跳ぶ。その刹那、万灯がいた場所の足元が削り取られていた。

 

 

『逃げるなよ、殺せねぇだろ』

 

「空間を削る能力……それも『マスカレイド』の能力の一端か。一体、何本のメモリをその身に取り込んだんだい?」

 

『……うるせぇ、もう口を開くな』

ーーギュンッーー

 

 

『マスカレイド』がかざした右の掌、その延長にあった地面が再び削られる。咄嗟に地面を這い、攻撃を躱す万灯と秀夫。

 

 

「間一髪……『ジョーカー』にも負けず劣らず恐ろしいね、『マスカレイド』というメモリは」

 

「万灯さん、ここは退くべきです」

 

「あぁ、潮時だ」

ーーズズズズズーー

 

 

万灯は秀夫の言葉に頷き、『ビゼル』をかざした。すぐに風都に続く時空の歪みは開かれる。秀夫がその穴を通ろうとした次の瞬間、

 

 

ーーバシュンッーー

 

「ッ!? 道が!?」

「これは……!」

 

 

風都への道は閉ざされた。攻撃によるものだと気づいた時にはもう遅い。

 

 

「動くな」

 

「……ッ」

 

 

さらに、千葉秀夫の首元にはカッターナイフが突き立てられていた。彼の小さな体のさらに下、さっきまでは何者もいなかったはずの位置に、黒井のストーカー『フーカ』はおり、今にも喉に突き刺そうと狙いを定めている。

 

 

「シューヘイくんの言うこと聞きなよ」

 

「っ」

 

「相手が子供でも、私は関係ないから」

 

 

聞かなければ喉をかっ切る。それが脅しでないことを千葉秀夫は感じ取っていた。

 

 

「主様、この2人どうしますか?」

 

 

そう訊ねるのは、万灯を拘束したシスター。関節を決め、彼を裕に跪かせていた。

 

 

「……手荒なことは止めてほしいね。こちらは一般人だよ」

 

『先に手荒なことをしようとしたのはそっちだろ』

 

「残念ながら私達には力がないんだ。彼女を覚醒させるしか『奴』に対抗できる手段がない。君も早くしないと手遅れになるのは分かっているだろう?」

 

「…………」

 

 

黒井がこの『街』に入ってから、ずいぶん長い時間が経っている。焦る気持ちがないわけではない。だからといって、手段を間違える気はないが。

 

 

『塔の中に連れていく。メモリも没収して手錠で繋いどけば、瑠璃に手出しはできねぇだろ』

 

「分かりました」

 

『風華もそれでいいな』

 

「うん♡ 私はシューヘイくんに従うよ♡」

 

 

 

ーーーーside『A』・霧彦宅ーーーー

 

 

瑠璃に連れられ、戻ってきた霧彦宅。霧彦は私が無事であることに喜び、抱きしめてくれた。少しバツは悪かったし、いつもながら鬱陶しかったけど、それでもそれでちょっとだけ安心した自分がいた。

お互い落ち着いた後、霧彦と向かい合い、座る。隣には瑠璃もいて、静かに頷いてくれる。ここに至る経緯を伝えるため、私はゆっくりと口を開いた。

 

 

「……ってワケ」

 

「今まで何をしていたかと思えば、万灯雪侍と『裏風都』に行き、メモリを使って黒井くんを探していた? ありえない……」

 

 

信じてくれない霧彦の態度にイラッときた私は、むっとして言い返す。

 

 

「あり得なくないし。だって、実際にーー」

 

「いいや、ありえない話さ」

 

「だ~か~ら~!」

 

 

「『裏風都』は既に『仮面ライダー』たちの活躍で閉じられた」

 

「へ?」

 

 

霧彦の言葉に、呆けた声を出してしまう。

信じていないのではなく『あり得ない』。つまりは私がいたあの『街』はもうないはずの場所だという。

 

 

「でも、ここでおねえが嘘を吐く意味はない」

 

「うん、実際に私は『裏風都』に行った! そこで『リアクター』使いのシスターみたいな奴に会ったり、『ロード』と戦ったりしたんだって!」

 

「『リアクター』に『ロード』……それは確かにあの『街』で戦った相手だが…………いや、そのメモリが風都に来れば騒動になるはず。なら、本当に……」

 

「霧彦さん……?」

 

 

額に手を当て、唸る霧彦。なにやら考えてるみたいだけど……。しばらくして深いため息を吐いた霧彦は両手を上げた。

 

 

「霧彦さんでも分からない?」

 

「そうだね、お手上げだ。これ以上のことは私には分からない。ここで議論をしても無駄に終わる」

 

「無駄って……じゃあ、このままパパたちのことは諦めろってこと……?」

 

 

霧彦をキッと睨む。けど、私の言葉には首を振り、にこやかに笑った。

 

 

「その件については適任者がいる。その人物に協力を仰ぐのがいいと思っただけさ」

 

「それって、万灯?」

 

 

あいつはあの『街』についてよく知っているようだった。協力者としては適任だろうけど、風都に戻ってきてからは姿を見かけない。それ以上に、あいつを信用していいのかどうか……。

 

 

「いや、あの男は信用できない。恐らく黒井くんを探すというあかねちゃんの思いを利用して、なにかをしようとしているはず」

 

「じゃあ、適任者って?」

 

「あぁ、それは『彼女』のことさ。『彼女』ならば、消えたはずの『裏風都』に……そして、その先にいるであろう黒井くんに近づけるはずだ」

 

「『彼女』?」

 

「! その『彼女』って誰なのっ!」

 

「私達の身近な人物だよ」

 

 

身近な人物。

それって一体……?

 

 

ーーピンポーンーー

 

「来たね」

 

 

タイミングを図ったかのように、呼び鈴が鳴った。瑠璃がパタパタと玄関に向かい、扉を開ける。そこにいたのは、

 

 

 

「や、来たよ。霧彦。それから、あかねちゃんに瑠璃ちゃん」

 

「ときめ、さん!?」

 

 

鳴海探偵事務所の探偵助手・ときめさんがそこにはいた。

 

 

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