転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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017 共闘するh / 双子と魔女と

ーーーー夕凪町・T字路ーーーー

 

 

ときめさん。

鳴海探偵事務所の探偵助手で、私のライバル的な人物だ。

 

 

「おねえ、それは過言。相手にならない」

 

「うぐっ」

 

 

瑠璃の刃物の如き一言で、見事撃沈する私。

まぁ、うん。分かってはいる。ときめさんと私では、翔太郎さんとの仲には天と地ほどの差があることは明白。勿論、ときめさんが天で、私が地。ときめさんは翔太郎さんと恋仲である。唯一付け入る隙があるとしたら、まだ結婚していないということくらいか。

 

 

「どうかした?」

 

「いや、別に……」

 

 

私の複雑な心中を知ってか知らずか、ときめさんが声をかけてくる。

……改めて見ても美人だ。

透き通るような白い肌。さらさらな美しい藤色のロングヘアーを後ろでひとつにまとめてる。そして、なんといってもその身体……出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでる。幼児体型な私とは対極にいる女性だ。黒のパンツスーツに銀縁の眼鏡も、なんだか色っぽい。

くそぅ……これが大人の女かっ。

 

 

「ときめさんって何歳だっけ」

 

「うっ…………さ、30後半強だけど……」

 

「40手前か……はぁぁぁ」

 

「あかねちゃん……それ、止めて……刺さるから……」

 

 

「「はぁぁぁぁ」」

 

 

互いに深いため息を吐く。私はこの体型のせいで翔太郎さんからは子供扱いをされ続け、一方のときめさんは翔太郎さんの煮え切らない態度のせいで、結婚がこの歳までなあなあになってるらしい。

翔太郎さん、お願いだから、あなたの罪を数えてください。

 

 

「それで、ときめさん、例の『街』と繋がってた場所がここ?」

 

 

沈みこむ2人のため息をスルーして、瑠璃は訊ねた。このままだと2人して落ち込むだけだし、助かった。

その問いに頭を切り替えたようで、ときめさんは瑠璃の言葉に頷き、近くのビルを見上げる。

 

 

「昔……15年くらい前は、ここがよく『裏風都』との出入口になってた」

 

「別にここ自体が特別な建物って訳じゃないでしょ?」

 

「うん。ただ、ここの建物のオーナーだった立川って人の部下に、『ロード』を使う人間がいたんだ」

 

「あぁ、なるほど」

 

「『ロード』?」

 

 

首をかしげる瑠璃に、私は『ロード』について、『裏風都』を拡張するドーパントだと補足する。ときめさんもそれに見て、続ける。

 

 

「『裏』の人間は『ビゼル』っていう道具を使って、風都と『裏風都』を繋ぐゲートを作ってた。わたしはそれを感知できる」

 

「それは今でも?」

 

「たぶん。『仮面ライダー』が『裏の街』を倒してからはゲート自体が現れなくなってたから、分からないっていうのが正直なところだった。だけど、その能力が失われてはいないのが最近分かったんだ」

 

「…………私の使った『ビゼル』のせいか」

 

「霧彦が言ってた通り、本当にあの『街』に行ったんだね、あかねちゃんは」

 

 

ときめさんの言葉に私は頷いた。

 

 

「それでその『ビゼル』は?」

 

「あー、えっと……パパに向こうで会った時のごたごたで無くしちゃって……」

 

「おねえ、『ビゼル』は万どーーむぐっ」

ーーぎゅむっーー

 

「あかねちゃん? いきなり瑠璃ちゃんの口押さえて……どうしたの?」

 

「あー、いや、なんでもない! なんでもないから!」

 

「むごむご」

 

「瑠璃! うるさいっ」

 

 

たぶん万灯が持っているんだろうけど、あまり詳しくは言わないでおく。下手に話すと、出所の話になる。そうなれば、私が万灯と一緒に風都署に保管してた『ビゼル』を盗み出したのがバレてしまう。それだけは避けたい。刑務所暮らしはごめんだ。後で瑠璃には口止めしとかなきゃ。

 

 

「あかねちゃん」

 

「え、あっ、うん」

 

「ちょっと手を貸して」

 

 

疑問に思いながらも、瑠璃の口を抑えてない方の掌を彼女に差し出す。むにむにと触ったり、手の甲に鼻を当て嗅いだりするときめさん。

 

 

「なるほど。この感じ……確かに向こうの『街』の気配だ」

 

「そういうのも分かるんだ」

 

「まぁ、昔ほどじゃないけど。ねぇ、そっちの手も貸して」

 

 

瑠璃の口から手を放し、両手をときめさんに預ける。今度は静かに目を閉じ、ただ優しく握ってて。

 

 

「頑張ったね」

 

 

ポツリ。その呟きに、少しだけ胸が締めつけられるような錯覚。その感情が何かは……よく分からない。2分くらいそうした後、ときめさんは改めて私に向き直った。

 

 

「ねぇ、あかねちゃん。黒井さん……2人のお父さんは今も『裏風都』にいるんだよね?」

 

「……うん」

 

 

肯定を受けて、ときめさんは私の目をまっすぐに見てくる。それから、瑠璃のこともじっと見つめて、今度は私達2人へ聞く。

 

 

「お父さんを連れ戻したい?」

 

「「うん」」

 

 

即答する。

会えて、でも、戻ってきてくれなかったパパ。あの時は予想外のことに戸惑い、揺らいだ。

でも、迷わない。何がごめんだ! 絶対ぶん殴って、連れ戻してやる!

そして、

 

 

「家族全員でまた暮らすんだ」

 

 

その思いは瑠璃も一緒。2人で顔を見合わせて深く頷いた。

 

 

「ふふっ、いいね」

 

 

そんな私達の返事を聞いて、ときめさんはにこりと笑った。そして、全面的に協力すると約束してくれた。

 

それからときめさんに再び連れられて、私達は近くの公園へ。そこで私と瑠璃は聞いたんだ。ときめさんの『物語』を。

翔太郎さんたちとの出会い。記憶喪失だったこと。

『裏風都』のこと。万灯雪侍との関係性。ときめさんの正体のこと。そして、『裏風都』との決着まで、本当に色んなことを聞いた。

話を聞くうちに、私はひとつの違和感に気づいたんだ。

 

 

「あの『街』……本当に『裏風都』か?」

 

 

ーーーー風都署・超常犯罪捜査課ーーーー

 

 

「真倉刑事。これから容疑者の確保に動く。準備をしろ」

 

 

捜査に出ていた照井竜は、超常犯罪捜査課に戻ってくるなり、机で事務仕事をしていた真倉にそう告げた。それを受けて、真倉はすぐに立ち上がり、銃保管庫の鍵を取り出す。

 

 

「え、え? な、なんすか? 容疑者の確保って、え?」

 

 

状況が飲み込めずにあたふたしていたのは、今年から新卒で入った若い女刑事のみ。そんな彼女の質問に照井が答えることはないと分かっていたからか、真倉は準備をしつつ答える。

 

 

「照井警視正が最近ある事件の容疑者について調べてたのは知ってるだろ」

 

「は、はいっす。この間あった『マグマ』のメモリによる事件すよね? でも、あの犯人って死んだんじゃ……?」

 

「あぁ、『ドーパント』同士の戦いでな」

 

「えっと、そいつにメモリを渡したっていう内通者も死んだんすよね? じゃあ、さっき言ってた容疑者って……?」

 

 

女刑事の質問に、ひとつため息を吐いて真倉は逆に訊ねた。話を聞いてなかったのかと。女刑事のキョトン顔に、また真倉は嘆息する。仕方がないと真倉は説明を続ける。

 

 

「最近はガイアメモリの流通も減ってたし、15年前に警備が大幅に強化された刑務所から脱獄者が出たなんて話もそうそうない。だから、脱獄を手引きし、メモリを提供した『内通者』は存在する。そこまではいいよな?」

 

「はいっす」

 

「あの日、『マグマ』を使った男が脱獄した日。刑務所の監視カメラの映像が改竄された痕跡が見つかってたんだ。改竄後に映ってたのが、例の死んだ内通者候補の男……そいつが本当の内通者なら、改竄した後に、その姿が残ってるのはおかしいだろ?」

 

「なるほど……本当はそのカメラに映っていた人間は別にいて、その人間が真の『内通者』ってことっすね?」

 

「そういうことだよ……っと、課長行けますよ」

 

 

会話をしつつも準備を終えていた真倉は、照井に準備完了の旨を伝える。照井もそれに頷き、入ってきたばかりの扉に手をかけた。

 

 

「えぇぇ!? ま、まってくださいっす!」

 

「…………早くしろ」

 

 

照井と真倉の後ろを新人刑事がパタパタとついていく。

 

 

「それでどこに行くんすか?」

 

「俺に……質問をするな」

 

「課長?」

 

 

その時点で、照井の様子がいつもと違うことに真倉は気づいた。なにかを言い淀んでいるような雰囲気だ。

そのまま署の廊下を歩いていく3人。署の出口付近にて、照井は重い口調で告げた。

 

 

「メモリが盗難にあったと思われる日時に風都署、『マグマ』メモリの男が脱獄する前後に風都刑務所である人物が目撃されていた。改竄された前の防犯カメラのデータも復元できたから、その人物が本当の『内通者』であることはほぼ間違いない」

 

「……課長にしては歯切れが悪いですね。それは誰なんですか?」

 

 

風都署を出て、照井は後ろにいた真倉と新人に向き直り、その人物の名を口にした。

 

 

「この件の容疑者は、元風都署超常犯罪捜査課……刃野幹夫だ」

 

 

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