転生したらミュージアムの下っ端だった件(完) 作:藍沢カナリヤ
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『さぁ、振り切るぜ!』
『ジェット』
『ほっ!!』
ーーグンッーー
開戦と同時に『アクセル』の放った飛ぶ斬撃は、『リバース』によって、容易くベクトルを『反転』させられる。軌道が変わり、斬擊は『アクセル』自身へと襲い来る。勿論、それに動じる『アクセル』ではない。エンジンブレードで弾き、そのまま距離を詰めた。
ーーギィィンッーー
だが、『リバース』はそれを右腕1本で受け止めた。ギリギリと音を立てながらも、受けた腕が叩き斬れる様子はない。
『腕でエンジンブレードを防ぐとは……相当に強固な外格だな』
『課長に褒めてもらえるなんて、ありがたいーーなぁ!!』
ーーブンッーー
空いていた左手でブレードの刀身を掴み、『アクセル』ごと放る『リバース』。『ドーパント』とはいえ、人間を片手で軽く投げ飛ばせるほどの怪力だ。『アクセル』も体勢を整え、その力を警戒する。けれど、彼が攻撃の手を緩めることはない。
『スチーム』
『スチーム』による視界制限。同時に『リバース』に向けて駆ける。
『ふんっ!!』
ーーブンッーー
『っと!?』
蒸気ごと敵を斬り裂く一閃。『リバース』も直前でそれを察したのか間一髪でその攻撃は当たらない。尚も迫る『アクセル』。
『エレクトリック』
ーーブンッーー
『ビリビリはっ、勘弁だッ』
ーーグニャリーー
『エレクトリック』を警戒した『リバース』は地面に手をつき、地面を『反転』させて2人の間に壁を作り出した。勿論、『エレクトリック』によって、壁は数刻も形を保てず、破壊される。
壁はあくまで逃げのために使っているのだろう。『リバース』は『アクセル』から距離を離していた。
『俺は黒井秀平の『リバース』を知っている。種の割れている相手に負けるほど、俺は落ちぶれてはいない』
『さぁ、どうでしょうかねぇ』
頭をかくような仕草をした後に、『リバース』は再び地面へと手をついた。
『言っただろう。それは知っていると』
『エンジン マキシマムドライブ』
地面を『反転』させ、またも壁を作り出すのだろう。いつかの黒井秀平の手口だ。攻撃をするにも隙を突いて逃げるにも便利な能力だが、マキシマムドライブで威力を上げたエンジンブレードならば、壁は一瞬で突破できる。それを見越して次手を繰り出す『アクセル』。
だが、
ーーゴゴゴゴーー
『!?』
轟音と共に、足元が揺れる。立っていられないほどの揺れ……そんな『アクセル』の認識は間違いで、『リバース』が『反転』させたのはーー
『いや、建物が上下逆さまに……『反転』してるのか!』
天地が『反転』するという本来あり得ない現象に、『アクセル』は狼狽し、膝をつく。その隙を突いて、『リバース』は次なる攻撃を繰り出した。元は地面であった天井を『反転』させ、崩落させる。
『くっ!?』
『トライアル』
咄嗟にメモリを『トライアル』へと入れ替えて、超高速移動を可能とする『アクセル トライアル』へと姿を変えた。超高速で崩落した天井を躱してーー
ーービュンッーー
『終わりだ』
ーー一瞬で『リバース』の懐へ飛び込んだ。そして、放つ。
『トライアル マキシマムドライブ』
ーードッ、ゴゴゴゴゴゴッーー
『ぐ、がっ、ごぉぉっ!?』
『アクセル』は『リバース』へと蹴りを繰り出し続け、宙に放られた『トライアル』メモリは時間を刻む。9.7秒。その後に『アクセル』はメモリを手中へ。
『9.7秒、それがあなたの絶望へのタイムだ』
『リバース』は『トライアル』のマキシマムドライブで爆発して、その音は廃工場内に響き渡った。小さい工場内だ。爆風によって巻き上げられた埃が『アクセル』の視界を遮る。
『………………!』
手応えはあった。しかし、
『流石は課長だ。一筋縄じゃあいかねぇなぁ』
『リバース』は倒れていない。勿論、メモリブレイクもされていなかった。それどころか、そこにいたのは『リバース』だけではなく、
『『ブラキオサウルス』……それに『スクリーム』。地獄から這い出てきたか』
『ゴオオオオオ……!』
『フシュゥゥゥ……!』
現れた2体の『ドーパント』。『裏風都』の幹部であった2体は、まるで『リバース』を守るように『アクセル』の前に立ち塞がっていた。
『ここは引かせてもらいますよ、課長。迎えが来ましたから』
『っ、待て!』
『ゴゴォォォォ』
ーーゾゾゾゾゾッーー
『ブラキオサウルス』が産み落とした大量の『ボーンズ』が『アクセル』に向かう。それを盾にして、『リバース』達は悠々と姿を消したのだった。
「…………おかしい」
変身を解いた照井はポツリと呟く。
「『スクリーム』も、『ブラキオサウルス』も我々が倒したはずだ。あれほどの高メモリをまた集めたのか……いや、それは考えにくい」
「ならば、まさか……敵はメモリを製造する方法を有しているのか」
ーーーー裏風都 / 塔・ボイラー室ーーーー
「……嫌な気配だ」
『裏風都』の中心。
現在、黒井たちが本拠地としている塔、そこにあるボイラー室に手錠で繋がれ、捕らわれていた万灯は、そう言うと徐に立ち上がった。
「万灯さん?」
「感じるかい、秀夫くん。我々の思い出を汚す者たちがまた動き出している」
「…………はい」
そんな彼らの元に、
ーーコンコンーー
「…………ねぇ、シューへイくんが呼んでる」
風華はやって来た。ボイラー室の扉を軽くノックした彼女は、無警戒に彼らに近づいていく。メモリは取り上げてあるとはいえ、千葉秀夫には思念波がある。にもかかわらず、彼女はそれを気にする素振りを見せない。
「ほら、さっさと歩きなよ」
「…………万灯さん、やりますか」
「いい。彼女の言う通りにしよう」
そう言って、万灯は両手を挙げた。
思念波を使おうかという秀夫の提案を万灯が否定したのは、彼女自身も『ハイドープ』であることを察していたからだ。万灯の意図を理解した秀夫は抵抗せずに、万灯に倣って両手を挙げる。
それに過程こそ違えど、『奴』を倒すという一点において、両者の利害は一致している。また、このタイミングで一度捕えた自分たちを呼び戻す理由は、それ以外にあり得ない。そう考えた上での言動だ。
ーーーー塔・制御室ーーーー
「……よう。ゆっくり休めたか、万灯」
制御室にて、黒井は万灯たちを迎えた。無表情で皮肉を言う黒井は革製の椅子にどっしりと構えており、シスター・ミズハはその後ろに静かに佇んでいた。そして、案内役の風華も彼に付き従うように、彼の側へ。力関係がハッキリと分かる構図だ。
「……あぁ、ちょうど微睡んでいたところだよ」
「悪かったな。そんな時に呼び戻して」
「いや、気にしないでくれたまえ」
無意味なやり取り。互いにこの程度の煽り合いで、イニシアチブは取れないことは分かっていた。だから、早速話を進める。
「ようやく『奴』が動き出した」
「……そうだろうね」
「単刀直入に言う。俺の下に付いて、『奴』の捕獲に手を貸せ」
「…………捕獲、か」
黒井の言ったその言葉に、万灯は反応した。その反応は黒井にとっては想定済み。互いに理があるように会話を進める。
「『奴』を殺して、この『街』を壊すのがお前の望みだろ。『奴』を捕獲して、雫ちゃんを救ったら『奴』にも『街』にも用はねぇ。お前らの好きにしろ」
「ふむ。だが、私達には力がないと言っただろう? 手段を任せてもらえるなら、一番効率のいい方法ーー黒井瑠璃を殺す方向で動きたいのだが」
「……風華」
「うん」
万灯の思考をも予想していた黒井は、風華の名を呼ぶ。彼女を監視役として付けるつもりである。それを見た万灯は、観念したようにひとつため息を吐いた。
「了承した。『奴』を捕え、やがては殺すために、君に協力しよう、黒井秀平くん」
「裏切るなよ。お前らの命は俺の手の内にある」
ーーーー風都某所ーーーー
「ただいま帰りました」
「…………あぁ」
刃野幹夫は2人の人間を従えて、その場所へと帰還した。ただいまと言う相手は暗がりにいて、その姿は鮮明には見えない。声から男であることだけは分かるが、抑揚のない声からは感情を読み取ることはできなかった。
「いやぁ、流石は『仮面ライダー』だ。一筋縄じゃあいかねぇな」
「…………」
「それで? 迎えを寄越したってことはそろそろ動くってことか、旦那?」
「あぁ」
男は徐に刃野に近づくと、彼の姿が明るみに出る。ただし、その素顔は分からない。男は顔の上半分が完全に隠れるような仮面をしているからだ。
仮面の男は刃野の肩を軽く叩き、告げる。
「気を付けろ。『素』が出ている」
『素』。刃野に対して、仮面の男はそう言った。それを受けて、刃野は邪悪な笑みを浮かべる。おおよそ善人である刃野のものとは思えない笑みで、彼が本来の刃野幹夫とは別人であることを物語っていた。
「っと、いけねぇや。少し調整する時間をくれ。でないと、いくら『嘘つき』な俺とはいえ、バレちまうからなぁ」
『イミテーション』
『偽装』が解ける。『ガイアドライバーREX』から『イミテーション』メモリを引き抜いた男、刃野幹夫に『偽装』していた男の名は沢田さちお。以前、『ライアー』ドーパントとして、『仮面ライダー』たちに破れた男だった。長年投獄されていた彼は出所後、仮面の男にスカウトされて、『仮面ライダー』に復讐するため、行動を共にしていた。
「1週間待つ。刃野幹夫を完璧に仕上げてこい」
「あぁ、任せておけ。仲間と戦わなきゃいけない『仮面ライダー』どもの顔を歪ませてやるよぉぉ!」
「…………」
意気込む沢田とは対照的に、仮面の男は無言。感情はやはり見えてこない。ただ一言だけ、ポツリと呟く。
「黒井……秀平……」
あまりにも小さな呟きで、そこに込められた感情を読み取れる者はその場にはいなかった。
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『h』編終了です。
次回、話が動き始めます。