転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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019 共闘するh / 敵対勢力

ーーーーーーーー

 

 

『さぁ、振り切るぜ!』

 

『ジェット』

 

『ほっ!!』

ーーグンッーー

 

 

開戦と同時に『アクセル』の放った飛ぶ斬撃は、『リバース』によって、容易くベクトルを『反転』させられる。軌道が変わり、斬擊は『アクセル』自身へと襲い来る。勿論、それに動じる『アクセル』ではない。エンジンブレードで弾き、そのまま距離を詰めた。

 

 

ーーギィィンッーー

 

 

だが、『リバース』はそれを右腕1本で受け止めた。ギリギリと音を立てながらも、受けた腕が叩き斬れる様子はない。

 

 

『腕でエンジンブレードを防ぐとは……相当に強固な外格だな』

 

『課長に褒めてもらえるなんて、ありがたいーーなぁ!!』

ーーブンッーー

 

 

空いていた左手でブレードの刀身を掴み、『アクセル』ごと放る『リバース』。『ドーパント』とはいえ、人間を片手で軽く投げ飛ばせるほどの怪力だ。『アクセル』も体勢を整え、その力を警戒する。けれど、彼が攻撃の手を緩めることはない。

 

 

『スチーム』

 

 

『スチーム』による視界制限。同時に『リバース』に向けて駆ける。

 

 

『ふんっ!!』

ーーブンッーー

 

『っと!?』

 

 

蒸気ごと敵を斬り裂く一閃。『リバース』も直前でそれを察したのか間一髪でその攻撃は当たらない。尚も迫る『アクセル』。

 

 

『エレクトリック』

ーーブンッーー

 

『ビリビリはっ、勘弁だッ』

ーーグニャリーー

 

 

『エレクトリック』を警戒した『リバース』は地面に手をつき、地面を『反転』させて2人の間に壁を作り出した。勿論、『エレクトリック』によって、壁は数刻も形を保てず、破壊される。

壁はあくまで逃げのために使っているのだろう。『リバース』は『アクセル』から距離を離していた。

 

 

『俺は黒井秀平の『リバース』を知っている。種の割れている相手に負けるほど、俺は落ちぶれてはいない』

 

『さぁ、どうでしょうかねぇ』

 

 

頭をかくような仕草をした後に、『リバース』は再び地面へと手をついた。

 

 

『言っただろう。それは知っていると』

 

『エンジン マキシマムドライブ』

 

 

地面を『反転』させ、またも壁を作り出すのだろう。いつかの黒井秀平の手口だ。攻撃をするにも隙を突いて逃げるにも便利な能力だが、マキシマムドライブで威力を上げたエンジンブレードならば、壁は一瞬で突破できる。それを見越して次手を繰り出す『アクセル』。

だが、

 

 

ーーゴゴゴゴーー

 

『!?』

 

 

轟音と共に、足元が揺れる。立っていられないほどの揺れ……そんな『アクセル』の認識は間違いで、『リバース』が『反転』させたのはーー

 

 

『いや、建物が上下逆さまに……『反転』してるのか!』

 

 

天地が『反転』するという本来あり得ない現象に、『アクセル』は狼狽し、膝をつく。その隙を突いて、『リバース』は次なる攻撃を繰り出した。元は地面であった天井を『反転』させ、崩落させる。

 

 

『くっ!?』

 

『トライアル』

 

 

咄嗟にメモリを『トライアル』へと入れ替えて、超高速移動を可能とする『アクセル トライアル』へと姿を変えた。超高速で崩落した天井を躱してーー

 

 

ーービュンッーー

 

『終わりだ』

 

 

ーー一瞬で『リバース』の懐へ飛び込んだ。そして、放つ。

 

 

『トライアル マキシマムドライブ』

 

ーードッ、ゴゴゴゴゴゴッーー

 

 

『ぐ、がっ、ごぉぉっ!?』

 

 

『アクセル』は『リバース』へと蹴りを繰り出し続け、宙に放られた『トライアル』メモリは時間を刻む。9.7秒。その後に『アクセル』はメモリを手中へ。

 

 

『9.7秒、それがあなたの絶望へのタイムだ』

 

 

『リバース』は『トライアル』のマキシマムドライブで爆発して、その音は廃工場内に響き渡った。小さい工場内だ。爆風によって巻き上げられた埃が『アクセル』の視界を遮る。

 

 

『………………!』

 

 

手応えはあった。しかし、

 

 

『流石は課長だ。一筋縄じゃあいかねぇなぁ』

 

 

『リバース』は倒れていない。勿論、メモリブレイクもされていなかった。それどころか、そこにいたのは『リバース』だけではなく、

 

 

『『ブラキオサウルス』……それに『スクリーム』。地獄から這い出てきたか』

 

『ゴオオオオオ……!』

『フシュゥゥゥ……!』

 

 

現れた2体の『ドーパント』。『裏風都』の幹部であった2体は、まるで『リバース』を守るように『アクセル』の前に立ち塞がっていた。

 

 

『ここは引かせてもらいますよ、課長。迎えが来ましたから』

 

『っ、待て!』

 

『ゴゴォォォォ』

ーーゾゾゾゾゾッーー

 

 

『ブラキオサウルス』が産み落とした大量の『ボーンズ』が『アクセル』に向かう。それを盾にして、『リバース』達は悠々と姿を消したのだった。

 

 

「…………おかしい」

 

 

変身を解いた照井はポツリと呟く。

 

 

「『スクリーム』も、『ブラキオサウルス』も我々が倒したはずだ。あれほどの高メモリをまた集めたのか……いや、それは考えにくい」

 

「ならば、まさか……敵はメモリを製造する方法を有しているのか」

 

 

 

ーーーー裏風都 / 塔・ボイラー室ーーーー

 

 

「……嫌な気配だ」

 

 

『裏風都』の中心。

現在、黒井たちが本拠地としている塔、そこにあるボイラー室に手錠で繋がれ、捕らわれていた万灯は、そう言うと徐に立ち上がった。

 

 

「万灯さん?」

 

「感じるかい、秀夫くん。我々の思い出を汚す者たちがまた動き出している」

 

「…………はい」

 

 

そんな彼らの元に、

 

 

ーーコンコンーー

 

「…………ねぇ、シューへイくんが呼んでる」

 

 

風華はやって来た。ボイラー室の扉を軽くノックした彼女は、無警戒に彼らに近づいていく。メモリは取り上げてあるとはいえ、千葉秀夫には思念波がある。にもかかわらず、彼女はそれを気にする素振りを見せない。

 

 

「ほら、さっさと歩きなよ」

 

「…………万灯さん、やりますか」

 

「いい。彼女の言う通りにしよう」

 

 

そう言って、万灯は両手を挙げた。

思念波を使おうかという秀夫の提案を万灯が否定したのは、彼女自身も『ハイドープ』であることを察していたからだ。万灯の意図を理解した秀夫は抵抗せずに、万灯に倣って両手を挙げる。

それに過程こそ違えど、『奴』を倒すという一点において、両者の利害は一致している。また、このタイミングで一度捕えた自分たちを呼び戻す理由は、それ以外にあり得ない。そう考えた上での言動だ。

 

 

ーーーー塔・制御室ーーーー

 

 

「……よう。ゆっくり休めたか、万灯」

 

 

制御室にて、黒井は万灯たちを迎えた。無表情で皮肉を言う黒井は革製の椅子にどっしりと構えており、シスター・ミズハはその後ろに静かに佇んでいた。そして、案内役の風華も彼に付き従うように、彼の側へ。力関係がハッキリと分かる構図だ。

 

 

「……あぁ、ちょうど微睡んでいたところだよ」

 

「悪かったな。そんな時に呼び戻して」

 

「いや、気にしないでくれたまえ」

 

 

無意味なやり取り。互いにこの程度の煽り合いで、イニシアチブは取れないことは分かっていた。だから、早速話を進める。

 

 

「ようやく『奴』が動き出した」

 

「……そうだろうね」

 

「単刀直入に言う。俺の下に付いて、『奴』の捕獲に手を貸せ」

 

「…………捕獲、か」

 

 

黒井の言ったその言葉に、万灯は反応した。その反応は黒井にとっては想定済み。互いに理があるように会話を進める。

 

 

「『奴』を殺して、この『街』を壊すのがお前の望みだろ。『奴』を捕獲して、雫ちゃんを救ったら『奴』にも『街』にも用はねぇ。お前らの好きにしろ」

 

「ふむ。だが、私達には力がないと言っただろう? 手段を任せてもらえるなら、一番効率のいい方法ーー黒井瑠璃を殺す方向で動きたいのだが」

 

「……風華」

 

「うん」

 

 

万灯の思考をも予想していた黒井は、風華の名を呼ぶ。彼女を監視役として付けるつもりである。それを見た万灯は、観念したようにひとつため息を吐いた。

 

 

「了承した。『奴』を捕え、やがては殺すために、君に協力しよう、黒井秀平くん」

 

「裏切るなよ。お前らの命は俺の手の内にある」

 

 

 

ーーーー風都某所ーーーー

 

 

「ただいま帰りました」

 

「…………あぁ」

 

 

刃野幹夫は2人の人間を従えて、その場所へと帰還した。ただいまと言う相手は暗がりにいて、その姿は鮮明には見えない。声から男であることだけは分かるが、抑揚のない声からは感情を読み取ることはできなかった。

 

 

「いやぁ、流石は『仮面ライダー』だ。一筋縄じゃあいかねぇな」

 

「…………」

 

「それで? 迎えを寄越したってことはそろそろ動くってことか、旦那?」

 

「あぁ」

 

 

男は徐に刃野に近づくと、彼の姿が明るみに出る。ただし、その素顔は分からない。男は顔の上半分が完全に隠れるような仮面をしているからだ。

仮面の男は刃野の肩を軽く叩き、告げる。

 

 

「気を付けろ。『素』が出ている」

 

 

『素』。刃野に対して、仮面の男はそう言った。それを受けて、刃野は邪悪な笑みを浮かべる。おおよそ善人である刃野のものとは思えない笑みで、彼が本来の刃野幹夫とは別人であることを物語っていた。

 

 

「っと、いけねぇや。少し調整する時間をくれ。でないと、いくら『嘘つき』な俺とはいえ、バレちまうからなぁ」

 

『イミテーション』

 

 

『偽装』が解ける。『ガイアドライバーREX』から『イミテーション』メモリを引き抜いた男、刃野幹夫に『偽装』していた男の名は沢田さちお。以前、『ライアー』ドーパントとして、『仮面ライダー』たちに破れた男だった。長年投獄されていた彼は出所後、仮面の男にスカウトされて、『仮面ライダー』に復讐するため、行動を共にしていた。

 

 

「1週間待つ。刃野幹夫を完璧に仕上げてこい」

 

「あぁ、任せておけ。仲間と戦わなきゃいけない『仮面ライダー』どもの顔を歪ませてやるよぉぉ!」

 

「…………」

 

 

意気込む沢田とは対照的に、仮面の男は無言。感情はやはり見えてこない。ただ一言だけ、ポツリと呟く。

 

 

 

「黒井……秀平……」

 

 

 

あまりにも小さな呟きで、そこに込められた感情を読み取れる者はその場にはいなかった。

 

 

ーーーーーーーー




『h』編終了です。
次回、話が動き始めます。
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