転生したらミュージアムの下っ端だった件(完) 作:藍沢カナリヤ
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「ミック! 止めなさい!」
『スミロドン』の爪が俺を八つ裂きにするその寸前で、声が響いた。その声に反応して、『スミロドン』は動きを止め、声の主を見る。そこにいたのは、
『若菜、ちゃん』
園崎若菜であった。
『ウゥゥゥゥゥ……』
彼女が自らの名を呼んだことで、『スミロドン』は止まり、唸る。恐らく園崎琉兵衛と園崎若菜、どちらの言葉を守るべきか考えているのだろう。十数秒の後、『スミロドン』は再び動き出す。
『グルルルルッ』
『くっ』
やはりダメか。園崎琉兵衛の命令を優先することに決めたようで、今度は『ナスカ』に向かい合う『スミロドン』。それに腹を立てた彼女は舌打ちをし、メモリを起動する。
『クレイドール』
『クレイドール』……土偶を思わせる『ドーパント』に変身した彼女は、左の掌から光球を放った。誰に当てるつもりもないのだろう。光球は『ナスカ』と『スミロドン』の間に放たれ、地面にぶつかる。
その攻撃に脅威を悟ったようで、『スミロドン』は目にも止まらぬ速さでその場から去っていった。
それを見て、霧彦も園崎若菜も変身を解く。
「霧彦お義兄様、いつものクールな姿が見る影もないわね」
「ありがとう、若菜ちゃん」
キザな笑みを浮かべる霧彦に、彼女はそんな皮肉を返す。
おぉ、原作で見たまんまだ……と思いきや、
「……そこの黒服は?」
「ん、あぁ、彼は私の友人さ」
「ふぅん」
一度怒られたのだが、まぁ、彼女の性格上、興味のない人間の顔は覚えていないだろうな。それが組織の戦闘員なら尚更だ。
ともかく俺から視線を外し、彼女は霧彦に向き直る。
「一体なにがあったの?」
「……君は知らない方がいい」
「もしかして……お父様が……?」
「………………」
「若菜ちゃん。もしも信じていた人間に裏切られていたとしたら……」
「え?」
「そんな時、君ならどうする?」
原作通りの問答がまた俺の目の前で繰り広げられていた。少し感動ものである。
霧彦の問いに、彼女は答える。
「心に聞いてみるわ。本当の自分がなにをしたいのか」
「本当の、自分……」
彼女の答えに何かを見出だしたようで、霧彦はふっと笑った。どこか吹っ切れたような表情だ。
「なるほど。お陰でこれから何をすべきか分かったよ」
そう言って、霧彦は彼女に背を向けた。
どこにいくの。その問いに『仮面ライダー』に伝えなきゃいけないことがあってね、そう答えた霧彦。
そして、去り際に一言だけ。
「じゃあね、若菜ちゃん。君のラジオ好きだったよ」
……本当に、キザな男だよ。
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園崎若菜がいた場所から100メートルほど離れた脇道にて。
ーーフラッーー
「っ」
霧彦は膝を突いた。胸を押さえているのを見るに、見た目以上に『スミロドン』から受けたダメージが深刻なのだろうと察する。
「大丈夫か」
「……あぁ、元気も元気。絶好調さ」
どう見てもそうは見えない、バレバレの強がり。
そうか、こいつはそういう男だったな。
「そんな状態で子供たちを救えるのかよ」
「……さぁ、どうだろうね。下手をすると私は死ぬ。だが、風都の未来を見捨てるわけにはいかない」
「…………」
俺にはこの街にそこまでの思い入れはない。何が何やら分からないまま、転生した身だ。
俺が生き残れるならなんでもいい。
それが俺の主義。そもそも今日を生きるのに精一杯で、他の人間のことまで構っている余裕などない。だから、これも心配をするフリだ。
一応大人の義務として、子供を助ける手助けはした。情報提供はもうしてある。やることはやった。きっと子供たちも『仮面ライダー』と霧彦が救ってくれるだろう。冷たいと思われようが、これ以上手助けをするつもりもない。
「せいぜい頑張れよ」
「あぁ、応援感謝する……っ」
ゆっくりと立ち上がると、彼はそのまま街の雑踏に消えていき、俺はそれを黙って見送ったのだった。
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最早お馴染みとなった腹痛との戦い後のこと。
「なんで来ちゃったんだろうなぁ、俺」
風見埠頭にて、俺は物陰に隠れながらため息を吐いた。
恐らくだが、あと少しすると『仮面ライダー』が『バード』を追い詰め、ここに現れるはずだ。そして、そこに霧彦も現れる。勿論、『バード』メモリを破壊し、バーバー風のマスターの娘を救うためにだ。
俺の助けが必要ないのは、原作の展開を見ても明らかだ。この場に俺は必要ない。むしろ問題はその後。
今夜が問題の日ーー霧彦が園崎冴子に殺される日。
介入はしない。介入するつもりはないはずなんだ。なのに、
「……どうするつもりだよ」
自問。答えは出ない。
そうこうしている間に、『仮面ライダー』と『バード』が現れる。青と緑の『W』は『バード』に応戦するも必殺技を撃つことができずにいた。
『このままじゃ埒が明かねぇ! 一体どうすりゃいいんだっ!』
『体内の『バード』メモリを正確に撃ち抜くしかない。それが彼女の命を救う唯一の方法だ』
そして、攻めきれない『彼ら』の元へ霧彦がやって来る。その姿を確認し、ひとまず安堵した。
この後の展開はこうだ。
『ナスカ』は、『バード』を羽交い締めにして、自らのガイアドライバーと体内の『バード』メモリを共鳴させ、『仮面ライダー』にその場所を教える。それを『仮面ライダー』がメモリブレイクして、終了。子供たちは救われる。
これで、この『バード』事件は幕引きだ。
ここにはもう用がない。俺は踵を返し、その場を後にしようとした。
「がっ……っ!?」
その声のせいで、足が止まる。振り返ると、そこには変身を解除され、投げ出される霧彦がいた。
って、
「なんだよ、それっ!」
原作と違う! どうなってやがるっ!?
思っていたよりも霧彦の身体は限界だったのか!?
依然として、『バード』は空を飛び続けていて、あのままではメモリブレイクができない。いや、それ自体はできたとしても、使用者はーーつまり、あの娘は死ぬ。
どうする? どうすればいい? このままでは……。
いいや、あの子供が死んだところで俺には関係ない。
焦り。それと同時に、冷徹な感情もあって。
「俺は……」
迷いが身体を縛りつける。その身体を動かしたのはーー
「私は、風都の未来を……っ」
ボロボロになりながらも、『バード』に手を伸ばす霧彦の姿だった。それを見た瞬間に、俺は走り出していた。
「霧彦! 『エコー』を渡せッ!」
同時に声を張り上げる。俺の意図に気づいた霧彦は、どうにか懐からメモリを取り出し、掲げた。それを受け取る。
メモリの適合手術とか。メモリ複数本使用の副作用とか。
一瞬頭をよぎる考えをすべて捨てて、
『エコー』
俺はそれを手首に差した。
瞬間、俺の手首に激痛が走る。まるでデカイ釘が手首に打ち込まれているかのような強烈な痛みと異物感。さらに、頭が割れるように痛む。
「がぁぁぁぁっ!?!?」
もがき、苦しむ。体感にして数分。実際の時間にして数秒ほど。
俺はいつか見たあの『エコー』の姿に変わっていた。
まだ割れるように痛む頭を抱えながら、俺はどうにか飛翔する『バード』を見据え、両の掌をかざす。
ーードンドンドンドンーー
『これは!?』
『っ、『仮面ライダー』ッ! バッドショットを……ッ』
『……! 承知した』
俺が発動した例の音とその一言だけで自体を把握してくれたようで、『仮面ライダー』は銃に蝙蝠型のガジェットを取り付けた。
実際に身をもって体験しているとはいえ、このメモリを使うのは初めてで、上手くいくかどうかは分からない。酷くなる頭痛も相まって、チャンスは一度きりだろう。
『一発で決めてみせる』
ーートリガーマキシマムドライブーー
あぁ、そう言ってくれると心強いよ。
その子を助けてやってくれ、『仮面ライダー』。
『トリガーファストシューティング』
放たれた一発の銃弾は、確かに『バード』を撃ち抜いた。
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今回の後日談。
1 『バード』メモリは破壊され、少女の命が救われた。
2 俺は『エコー』のメモリを使ってしまった。
3 ーーーー
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「っ」
ーーガバッーー
「よう、起きたか」
俺はようやく目覚めたそいつに声をかけた。
ガイアメモリで負った傷は普通の医療では治療できない。だから、布団で休ませていたんだが、ここ2日ほど布団を占領されていたのだ。こいつは深く俺に感謝するべきである。
「……で、調子はどうだ、霧彦」
「ふっ……あぁ、絶好調さ」
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霧彦生存!
てか、アンケートの皆さん霧彦好きすぎでしょう。
もう少しアンケートは開放しておきます。
次回、新章突入。
野郎しかいないこの作品。ヒロインは……。
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いる! 本編キャラがいい
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いる! オリジナルも可
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え? 霧彦がヒロインだろ?
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いらん!