転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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ふざけようとしたらほのぼのになったんだぁ。
まじな昔話です。


閑話 黒井一家の昔話

ーーーーーーーー

 

 

「いやっほぉぉぉい!! 沖縄だぁぁ!!」

 

 

青い海、白い砂浜を前に、仕事を終え、完全に旅行モードの俺は心から叫んだ。

 

 

「ぱぱ、テンションあがりすぎ」

 

 

我が愛娘・あかねちゃんが冷めたテンションでそう言ってくる。この旅行の前に、俺と雫ちゃんで選んだワンピースタイプの水着が最高に似合っていて。

 

 

「がるるるるるっ」

 

「なにしてるの」

 

「るるるるっ、あかねちゃんを狙う男はいないかと警戒してるんだよ」

 

「……あかね、まだ4さいなのに」

 

「それでも!!」

 

 

そう。あかねちゃんは、4歳にしては異様に知能も高く、大人びている。勿論、見た目は普通に4歳女児であるが、精神年齢が高いようだった。フィリップくん曰く、俺と雫ちゃんの体内にあったメモリの影響によるものではないか、と。まぁ、事実はあかねちゃんが天才だからだろうがな。

 

 

「はぁ、ままー! ぱぱがヘン!」

 

 

どうやら娘と戯れているうちに、我が最愛の妻が着替えを済ませて、ビーチに来ていたらしい。俺としたことが、雫ちゃんレーダーが鈍るなんてな。旅のせいで浮かれすぎているぜ。

振り返るとそこには、

 

 

「秀平くん、あかねを困らせたらダメですよ」

 

 

眩い水着姿の雫ちゃんがいた。その腕には疲れて眠っているもう1人の愛娘・瑠璃ちゃんがいて。

あれれ? マリアがいるぞぉ? いや、天女かな?

 

 

「…………」

 

「えいっ!」

ーーゲシッーー

 

「いったぁぁぁ!?!?」

 

 

フリーズしていた俺の脛に激痛が走った。思わず飛び上がる。見れば、あかねちゃんがそこらに落ちていた木の棒で、思いっきり俺の脛をぶん殴っていた。

 

 

「あかねちゃんっ、いい剣筋だよぉぉぉっ」

 

「ふんっ」

 

 

ぷいっと顔を背けるあかねちゃん。可愛い。

と、雫ちゃんがあかねちゃんに目線を合わせるようにしゃがみ、

 

 

「あかね、ぱぱ殴っちゃだめでしょ?」

 

「…………だって、ぱぱキモイ……」

 

「それでもめ、だよ?」

 

「むぅ………………ぱぱ、ごめんなさい」

 

 

優しく諭す雫ちゃんに負け、あかねちゃんはこちらを向いて、謝ってくれた。

 

 

「うん、偉い偉い」

ーーなでなでーー

 

「えへへ」

 

 

あかねちゃんは、ママに撫でられてご満悦なようだ。その表情を見てると、血は争えねぇなとしみじみ思うぜ。

そんなことを考えていると、雫ちゃんが俺の耳元に顔を寄せてきた。

 

 

「……秀平くん、ダメなものはダメ、ですよ?」

 

「う、は、はい……」

 

 

娘の可愛さにメロメロになり、全てを許してしまう俺に、雫ちゃんは定期的にこう言ってくれるのである。反省反省。俺は『親』なのだ。こういうところはちゃんとしねぇとな。

 

 

「あ、それから」

 

「ん?」

 

 

どうやらまだ教育方針のお小言は終わっていなかったようである。耳元でさらに囁く。

 

 

「…………水着、どう……ですか///」

 

「ん? あぁ、あかねちゃんにピッタリだったな。むしろ俺は可愛すぎて男どもにナンパされないか不安で……」

 

「………………じゃなくてっ」

 

「ん?」

 

 

「わたしの、ですっ/// 変じゃない、ですか……?」

 

 

ふと彼女の顔を見ると、日に焼けてしまったかと心配になるくらい赤くなっていた。勿論、それが日焼けでないことは察しの悪いおれでも分かる。

俺は雫ちゃんの問いに、答えを返すべく、彼女の耳元で囁いた。

 

 

「世界一かわいいよ」

 

「~~~~っ////」

 

 

うん。俺の奥さん、超絶ウルトラミラクル可愛い。

 

 

「はぁぁぁ、またやってる……」

 

「Zzz……」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

その日の夜、あかねちゃんは熱を出してしまった。

昔の俺ならあわてふためいていたが、もう慣れたものである。今よりもっと小さいときからあかねちゃんはよく体調を崩す子であった。知恵熱だろうというのが医者の見解で、それは概ねフィリップの分析とも一致していた。そのため、内服薬を常備しており、それを飲ませて一晩寝れば治るのがいつものことであった。

 

 

「…………ダイジョブか、あかねちゃん」

 

「んー、うん」

 

 

熱でボーッとしているせいか、いつもよりも素直に俺の言葉に答えてくれる。頭を撫でると気持ち良さそうに、目を閉じるのも可愛くて堪らないが、今はこのお姫様を寝かしつけるのが第一だ。

 

 

「こうしててやるから、寝ような」

 

「……や」

 

「ありゃ、珍しい。いつもはこうしてるとねんねするのに、どうした?」

 

「うみ……」

 

「あぁ、そうだな」

 

 

せっかくの旅行なのだ。あかねちゃんだって、まだ遊びたいに決まってるよな。

 

 

「……うん、ダイジョブダイジョブ。ねんねできたら、きっとまた遊べるよ」

 

「ほんと?」

 

「うん、ほんとほんと」

 

「るりも……?」

 

「あぁ」

 

「なら……ねる」

 

「うん、おやすみ。あかねちゃん」

 

 

安心したのかそれから10分もすると、彼女は眠りについた。

そうか。瑠璃ちゃんと一緒に海を見たかった……いや、きっと昼間は眠っちゃってた瑠璃ちゃんに、自分が海を見せたかったのだ。すごいでしょー、って自慢げにするあかねちゃんの姿が目に浮かぶ。

 

 

「ははっ、ちゃんとお姉ちゃんだな、あかねちゃんは」

 

 

娘の成長を喜ばしく思いつつ、俺は彼女が安心して寝付くまでしばらくトントンとしてあげていたのだった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

翌日。

微熱にまで落ちたあかねちゃんの瑠璃ちゃんと遊びに行くのだという意見は、雫ママによって却下された。まぁ、あと1日あるのだから、急ぐことはないだろうという判断には俺も賛成だ。

 

 

「ぱぱ、ちゃんとるりをえすこーとしてよねっ」

 

「ははーっ、畏まりました。あかね姫様」

 

 

どうにか納得してくれた姫様の使令を受けた俺は、もう1人眠り姫様のえすこーとをすることになった。

 

 

「くじらー」

 

 

海を見て、瑠璃ちゃんの第一声はそれだった。普段から眠ってる時間が多い彼女だが、どうやら昨日眠っていたのは、前の日に俺たちに隠れて遅くまで魚の図鑑を見ていたかららしい。

 

 

「ん? 見たいのか、瑠璃ちゃん?」

 

「んー!」

 

「よっしゃ! 分かった! 待ってろよー!!」

 

「おー!」

 

 

俺は瑠璃ちゃんを肩車しながら、浜辺を走ったのだった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「船旅だぁぁ」

 

「たびー!!」

 

 

無事滑り込みで、予約できたホエールウォッチングの船に乗り込み、俺と瑠璃ちゃんは船旅を満喫していた。

 

 

「どうだ? 瑠璃ちゃん、楽しいか?」

 

「んー!!」

 

「そっかそっか。それはよかったよ」

 

 

未だにクジラは現れてないが、楽しんでいるようで何よりだ。

 

 

ーーグラッーー

 

「おっと」

 

「オット!」

 

「……ダイジョブか、瑠璃ちゃん?」

 

「んー!!」

 

「楽しそうでよかったよ」

 

 

少々船は揺れるが、それすらも楽しんでいる瑠璃ちゃん。こりゃあ、将来大物になるぜ。

ともかくこれであとはクジラさえ現れてくれれば、えすこーとは大成功だな。キョロキョロと周りを見渡す。結構陸地からも離れたから、そろそろ現れてもおかしくはないだろう。

 

 

「ぱぱー!」

 

「ん?」

 

 

俺の頭上の瑠璃ちゃんが指差す方を見る。すると、その数秒後に、

 

 

 

ーーーーザパーーーーーンッーーーー

 

 

 

クジラが跳んだ。

ガイドさんも予想外のタイミングだったようで、その光景をしっかりと見たのは、俺たちだけ。その未来予知じみたタイミングにしみじみ思う。

いやぁ、本当にこの娘は大物になるぞぉ!!

……きっとあかねちゃんが聞いたら親バカだって言われちまうなぁ。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

なんでだよ。

なんでこんなことになっちまったんだよっ!!

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

「たのしかったね、るり」

 

「んー!! たのしかったっ!」

 

 

 

ーーーーーーーー

 




前話の終わりからのこの話だから
人の心がないと言われても受け入れます。

娘にするなら

  • ツンツン背伸びれでぃ・あかね
  • 寝る子は育つがーる・るり
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