転生したらミュージアムの下っ端だった件(完) 作:藍沢カナリヤ
ーーーー裏風都・管理塔頂上ーーーー
「っ」
パパの作り出した沼のような空間を抜けると、そこはあの塔の頂上だった。どうやらパパの能力でワープしたらしい。
『風華! あかねちゃんを守ってろ!』
「りょーかい!」
ーーがしっーー
パパの指示を受け、私の腰をがっちりと掴む女。それを横目で確認したパパは右腕を振りかぶる。瞬間、その腕が巨大化して、
ーードゴォォォォォッーー
塔の屋根を粉砕し、大穴を開けた。
「すご……っ」
「ふふんっ! アタリマエ!」
思わず漏れた言葉に、なぜか女が鼻を鳴らしてる。とにかくだ、私達は一瞬でそこに辿り着いた。
『よう、吉川』
「……黒井秀平、懲りずにまた来たか」
制御室の中央に陣取る椅子にその男・吉川零士は座っていた。そいつを視界に捉えた瞬間に、パパは手を合わせる。そして、両手の間に、黒い稲妻を走らせた。
『あぁ。てめぇを倒して取り戻す』
「取り戻せないものもあることを教えてやろう」
「っ」
戦闘が始まったのを見て、私は走り出した。
ーーーーside『S』ーーーー
『ふんっ!!』
ーーバヂンッーー
作り出した『イービル』の黒雷を奴に向けて放つ。だが、それはいとも容易く防がれた。奴の目の前に突如現れた『穴』によって。それは見たことがある能力だ。
ーーズズズズッーー
『『ホール』……! やはりオリジナルも使いやがったかッ!』
「……その言い方は止めろ。俺は俺だけだ」
ーーズズズズッーー
『!』
音が聞こえた。『穴』の音、どこからっ!?
ーーズズズズッーー
『上かッ!』
すんでのところで左に避ける。さっきまで俺のいた床は見事にポッカリとくり貫かれていた。
『流石にその能力はやべぇ……なっ!!』
ーーブンッーー
ーーゴォォォォンッーー
俺の腕の振りに合わせて、爆発が奴を覆った。『マスカレイド』に内包する『エクスプロージョン』の攻撃。だが、これで倒せるとは思ってねぇ。
ーーグンッーー
『おらぁぁっ!!』
ーーバギィッーー
『グラビティ』による引力と『ジャイアント』の拳を重ね合わせた打撃だ。威力は検証済みで、アスファルトの壁なら3、4枚は裕に貫通できる。勿論ーー
『当たれば、な』
「…………無駄な攻撃だ。時間を浪費するな」
『うるせぇッ!!』
ーーズズズズッーー
「!」
俺と奴の間にある『穴』。それを逆に目隠しに利用して、俺は次の攻撃を放つ。精神干渉波。これは『オールド』のものだ。奴の死角から迫る精神干渉波は、奴の左腕を見事に包み込んだ。
「っ、面倒なことを」
堪らず退く吉川。見れば、『オールド』の影響は確かにあるようで、奴の左腕は細く皺の多い老人のそれに為り果てていた。
『流石のてめぇも不意打ちは効くんだな。お手々がしおしおだぜ?』
「当たり前だ。お前のような化物とは違う」
『あ?』
「お前のような……メモリの副作用を受けない『チート』とはな」
ーースッーー
ーーズズズズッーー
吉川が右手で地面を触った瞬間に、そこを中心に『穴』が広がっていく。嫌な感じを察した俺は、それを『バード』の羽で飛び回避する。さらに追撃。
ーーズズズズッーー
ーードゴッ、ドゴッ、ドゴッーー
『飛び道具かよっ!!』
『穴』から放たれる無数の瓦礫。『穴』で削ったコンクリートを撃ち出してるのだ。大小様々な大きさの瓦礫の雨。避けるのは、無理だ……なら!
『『反転』しろォ!』
ーーグニャリーー
『リバース』の力で俺の目の前に来る攻撃を全て『反転』させ、吉川の方へと弾き返す。残念ながら奴には届かない。
……くそっ、『ホール』の能力が面倒だ。飛び道具はすべて『穴』に消されて、肉弾戦も『穴』がある限りは防がれ続ける。考えろ、俺が取り込んだメモリの中に突破口があるはずだ。できなきゃ、雫ちゃんを助けられねぇ!
「…………複数のメモリ使用で肉体にも精神にも異常をきたさない。まるでガイアメモリの申し子だ」
必死に頭を回す俺に、奴は攻撃の手を止めて話しかけてくる。
『ハッ、簡単に言ってくれる。昔は相当、体に影響はあったんだ。今だって無理矢理押さえつけてるだけだぜ』
「……それでも、お前は恵まれている。『白服』や『朝倉風華』、『NEVERの男』、その他大勢の『転生者』を倒し、今まで生きているのがその証拠だ」
『…………てめぇ、さっきから一体、何の話をしてやがる』
「……………………」
要領をえない。奴の言が、その意図が分からない。
何かの攻撃のための時間稼ぎか? それとも、まだなにか……?
「メモリにも愛され、そして、家族をも手に入れた。俺とは真逆だ」
『あ?』
「俺はこの世界に転生し、すべてを失った」
『っ』
奴の目の色が変わる。さっきまでの感情の読めねぇ目じゃない。昔、見たことがある色。あれは『憎悪』だ。
白音佐奈。
雫ちゃんの姉である彼女が、家族を奪った『黒井秀平』を睨み付けた時と同じ瞳の色をしている。つまり、奴の目的は、
『…………復讐か?』
「いいや、俺はただお前の全てを否定するだけだ」
俺の問いに首を横に振った吉川は、静かに懐からそのメモリを取り出した。
……そうだ、こいつのメモリは『ホール』だけじゃねぇ。この5年弱で調べはついている。この偽物の『裏風都』を作り出し、雫ちゃんの精神を鏡に閉じ込めた元凶のメモリ・『ミラー』があるはずだ。だから、そのメモリを抑えれば……!
『は?』
「……このメモリは使いたくはない」
『…………おい、待てよ』
「黒井秀平、お前と同じにはなりたくないからだ」
吉川の言葉は俺の見た光景が真実であることを物語っていてーー
「だが、これを使い、お前の全てを否定しよう。それが俺の目的の第一歩だ」
『マスカレイド』
『俺は
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黒井くんのキャラクターイラストが第1話の後書きにあがっています! ぜひご覧ください。
また、近いうちにイービルのキャラクターイラストもあがります。お楽しみに!!