転生したらミュージアムの下っ端だった件(完) 作:藍沢カナリヤ
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「おねえ……?」
わたしの心の内に、おねえは入り込んできた。
「なんで、ここにいるの……?」
『~~っ、あんたが全然起きないからわざわざ私がこっちに来たんでしょうが! ほら、これで!』
おねえの腰には赤色の『ドライバー』が装着されていて、それによって彼女の精神体のみが、わたしの心に入ってきたんだと理解する。理解はするけど……。
『ほら、帰るよ、瑠璃』
「っ」
強引に手をとってくるおねえの手を咄嗟に振り払う。俯いたまま、わたしはおねえに一言だけ伝える。
「…………っ、嫌」
『はぁ? なに、言ってーー』
「わたし、人間じゃないから」
それを告げて後退る。
知ってしまった事実を、抱えていたモヤモヤをわたしは吐き出す。
「おねえには分からない。わたしの気持ちは」
『瑠璃、あんた』
「わたし、もう人間じゃない。人間を騙って、まるで本当の家族みたいに暮らしてたなんて……」
『本当の家族みたいにって、私達は元からーー』
「っ、違う」
おねえの言葉を遮って、わたしは続ける。言葉は依然、口から溢れていく。
「違う……わたしは紛い物でしょ、黒井瑠璃の皮を被った紛い物。そんなのを家族だなんて……言えるわけない……言っちゃいけない」
『…………瑠璃、待って』
「ごめん、おねえ。わたしはここに残るから。こんな紛い物は現実に戻っちゃいけない」
『待ちなさいって、瑠璃っ』
「パパとママに……さよならって伝えーー」
『あー、もうっ! うっさいッ!!』
「え……」
さっきまでのわたしの気持ちを聞いてくれてたおねえはもういない。捲し立てるように、小さな体でぎゃーぎゃー言ってる。
『さっきから大人しく聞いてりゃ、あーだこーだ御託並べて! そんなの私は知らないっ』
「し、知らないって……」
『そりゃ分かんないわよっ、あんたの気持ちなんて! 言ってくれなきゃ分かんないッ』
「っ」
『けどね、自分の気持ちだけはハッキリしてる』
そこまで言って、おねえはわたしの頬を両手で掴み、無理矢理俯いたわたしと目を合わせて、告げる。
『私はあんたが大好きだ! 大切な家族で、妹なんだっ!』
その言葉は、その瞳は、殻に篭ろうとしていたわたしを引き戻す。いつものように強引な言葉だ。こっちの気持ちなんてお構いなしのおねえの言葉だ。けど、
『いちゃいけないとか、言えるわけないとか! そんな訳の分かんないするべき論は知るかッ!!』
「そんなのーー」
『ーー瑠璃! あんたはどうしたいのっ!!』
「っ」
精神体としてここにいるからだと思う。何の防御もできないわたしに、何も飾らないおねえの気持ちが、直接伝わってくる。だから、思わず溢れてしまう。
「…………帰り、たいよ……っ」
頬を伝うの涙の温度。それを拭うおねえの掌のあたたかさ。そのせいで、余計に涙が止まらない。ポロポロと言葉も零れる。
「パパに会いたいっ」
『うん。パパ、待ってるよ』
「ママにぎゅってしてほしいっ」
『ん、ママはパパが救ってくれた。きっとママもそうしたいって思ってる』
「…………おねえと、家族みんなでまた一緒に暮らしたい」
『ん、私もだ』
わたしの頬を流れる涙を拭きながら、おねえは笑う。
『早く帰ろう、瑠璃』
「うんっ」
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目が覚めると、おねえがいた。
さっきまでと変わらない、ううん、少し照れくさそうな仏頂面で、わたしから目をそらしてる。それでも手は繋いだままで。
ほら、早く行くよ。
そう言って、手を引くおねえの手をきゅっと握り返して、わたしも立ち上がった。
「…………」
目の前に広がる光景。壁も床もなくなった塔の体を為していない場所にいたのは、パパとママ。ボロボロだけど、その目には光が宿っていた。2人はこちらに気づいたようだった。2人に今すぐぎゅっとしてほしい。そんな思いに駆られるけど、今はまだダメ。
「…………」
視線をもう少し遠くへ向けると、あの人ーー吉川零次さんがいた。パパとママを苦しめた人。倒すべき相手。だけど、わたしは知ってしまった。彼の絶望を。きっと誰にも言えずにいた悲しみを、わたしは知ってしまったんだ。
それを止められるのは、きっと……。
「…………」
ふと、おねえの方を見る。わたしの視線に気づいたのか、おねえはこちらを見て、得意気に笑った。
おねえとわたし、2人の腰には赤色のドライバー。それぞれの手には2本の黒いガイアメモリがあった。わたしも1つ笑みを返した。そして、
「行くよ、瑠璃」
「うん、おねえ」
『イービル』
『エクストリーム』
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姉妹に『彼ら』についての知識はない。
ただ、奇しくも『仮面ライダー』へと為る2人の姿は、『彼ら』と重なって。
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「「変身!!」」
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