転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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ひとまず方針を決めました。


第13話 迫り来るI / 俺と俺

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ーーバンッーー

 

「さぁ、吐け! お前がやったことは分かってるんだぞっ!!」

 

 

風都署の取調室に、俺は連れてこられていた。幸いなことに、メモリは霧彦に渡していたため、ガイアメモリ所持の現行犯には問われなかった。

というより、

 

 

「……刑事さん、俺はやってません」

 

「まだそんなことを言うのか! ほら、証拠の防犯カメラの映像だ! 今日の午前中に撮られたものだ! これがお前以外の誰だって言うんだ!」

 

 

そう言って、真倉刑事が見せてきたのは、スーパーの防犯カメラの映像だった。よく見ると分かるが、そこは俺がよく行く激安スーパーで、そこに映っていたのは確かに……。

 

 

「俺だなぁ」

 

 

スーパーの精肉コーナーで生肉を貪る俺が映像の中にいた。俺はただ唸るしかなかった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

アリバイを証明してくれた人が現れたことで、俺は解放された。冤罪だと文句のひとつでも言ってやりたいが……。

 

 

「ありゃあ俺だよなぁ」

 

 

風都署のすぐ外で、ふと顎に手を当て、首をかしげる。

罪状自体は食い逃げ、いや、万引きか。ともかく本来であれば、ガイアメモリ犯罪専門である超常犯罪捜査課が出てくるような事件ではない。ましてや赴任したばかりの照井竜が動く必要はない。

だが、あの映像で肉を喰らった『偽俺』は直後に、忽然と姿を消した。確かにあれでは超常犯罪を疑うのも当然だ。

ガイアメモリを使わない。

そう宣言した途端にこれだよ。なんだ、俺なんか憑かれてるのか……?

 

 

「あ、あの……災難、でしたね」

 

「…………へ?」

 

 

考えにふけっていたせいで、それが自分にかけられた声であることに気づくのが遅れた。

 

目の前にいたのは、3人の女性。

1人は制服を来た茶髪の女の子。高校生だろうな。

もう1人はすっぴん&スエット姿の女性。年齢は30代くらいか。

そして、最後の1人が俺に声をかけてきた黒髪の女性。年齢は分からんが、3人の中では一番大人しそうな人だ。

年齢や雰囲気がバラバラな3人。3人とも犬を連れているところを見ると、恐らく犬の散歩仲間といったところか。

 

 

「えぇと……?」

 

 

ナンパにしちゃあ意味の分からない状況だったので、つい困惑した声を返す俺。それを見て、察してくれたようで、高校生らしき女の子が説明をしてくれた。

話を聞くに、俺のアリバイを証言してくれたのはその3人だったようだ。

 

 

「ほら、ウチん家、おじさんのアパートのすぐ近所でさぁ、ママからおじさんが捕まったって聞いてぇ、そんでエリカさんに連絡したワケ」

 

「アイナちゃんから話を聞いて、私も驚いたわよ! だって、万引きしたなんて聞いたら、ねぇ?」

 

「???」

 

 

馴れ馴れしく話しかけてきたが、俺には面識がない。

 

 

「あ、あの……黒井さんのこと、スーパーで見てて、万引きしてないって話したんです」

 

「あぁ」

 

 

そう言って、黒髪の娘が上目遣いでこちらを見上げてくる。

 

 

「……あの、その……」

 

「あぁ、ごめんなさいね! この娘、あがり症なのよ。いつも私たちと話してる時は普通に話せてるのにねぇ」

 

「ねー! おじさんの前だとあがっちゃうとかカワイー!」

 

「や、やめてください」

 

 

なるほど。この娘が俺のことを目撃していて、万引きをしていないと証言してくれた。この2人は、あがり症のこの娘の付き添いって訳か。

 

 

「……とりあえず助かった。ありがとう。なんと礼を言えばいいか」

 

 

頭を下げる。食い逃げ&万引きに関しては本当に無実の罪ではあるが、ガイアメモリには関わっており、あのまま取り調べが進んで彼が出てきたら、俺の罪が白日のもとに晒されかねなかった。純粋に感謝しかない。

 

 

「い、いえ……そんな、わたしはただ……」

 

「フフフー! ねぇねぇ、おじさん! そんなに感謝してるならさー!」

 

「?」

 

 

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数日後。

俺は風都タワー前で、人を待っていた。その人物とはーー

 

 

「あ、あの……黒井さん」

 

 

例の彼女である。

アイナと呼ばれていた高校生の提案により、俺は彼女とデートに来ることになったのだった。

まぁ、デートとは言っても、1日彼女を接待するだけだ。恐らく彼女のあがり症を治してやろうというお友達の計らいなのだろう。実際、助けられたのは事実だし、若い女の子と出掛けるのは悪い気はしない。

ふっ、やれやれ仕方がないな。社畜時代に培った接待技術を見せてやるとしますかね。

 

 

「お待たせしましたっ、すみませんっ」

 

「いや、今来たところさ」

 

「それなら、よかったです……」

 

 

嘘である。ここには1時間ほど前に来ていた。

 

うん、なんかほら、女の子を待たせるもんじゃないじゃん?

別に楽しみとかね? そういうんじゃないし?

黒髪清楚系の女の子とか、別にタイプじゃない。そういうんじゃないんだからね!

 

 

「黒井さん?」

 

「あぁ、すまん。ちょっと考え事を……いや、早速行こうか」

 

「は、はい」

 

 

そう。浮かれてばかりではいけない。霧彦に聞いたデートにぴったりのお店を予約しておいたのだ。予約の時間を過ぎてしまってはいけない。

彼女をエスコートするために……って、そうだ。肝心なことを聞きそびれていた。

 

 

「君、名前は?」

 

(しずく)……です」

 

 

雫。いい名前だ。

 

 

「じゃあ、行こうか。雫ちゃん」

 

「……はいっ」

 

 

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デートの内容は正直覚えてない。

霧彦から聞いていたデートスポットが臨時休館していたとか、緊張していたとか、そういうのは確かにあった。

それでも雫ちゃんは徐々に慣れてくれて、穏やかな笑顔を見せてくれたのだ。だから、デート自体は大成功だったといえるだろう。帰り際までは問題はなかった。

真に問題なのは、

 

 

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『ウゥゥゥ……』

 

「黒井さん、が……2人?」

 

 

あー!! もうっ!!

なんなんだっ!? なんで俺はこうも引き寄せてしまうんだっ!?

 

 

「くそっ!!」

 

『グルルルッ』

 

 

よだれをダラダラ滴しながら、こちらを睨み付けてくる『偽俺』。

その様子、スーパーで生肉を喰らっていたことといい、まるで獣のようだ。

 

 

「黒井さん……」

 

「雫ちゃん、走って」

 

「え……? でも、黒井さんは?」

 

「俺は大丈夫だ。だから、逃げてくれ」

 

「っ、でもっ」

 

「いいからっ!! 逃げてくれッ!」

 

「っ」

 

 

俺が大声を出したことで、どうにか彼女は走ってくれた。同時に『偽俺』が飛びかかってくる。それを避ける。

 

 

「はやくっ!」

 

 

まだだ、まだ使えない。その間に何発かは喰らうが、奴の爪は思ったよりも鋭く、およそ人間のそれではない。

時間にして十数秒。彼女の姿が見えなくなったとこを確認して、俺は懐からメモリを取り出した。

 

 

「ホントに、いい加減にしてくれよっ!!」

 

『マスカレイド』

 

 

ーーーーーーーー




風都は悪女が多いんだってさ。
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