転生したらミュージアムの下っ端だった件(完) 作:藍沢カナリヤ
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「………………」
「………………」
診察室の中、俺と井坂深紅郎の間に会話はなかった。
診察台に寝かされ、触診を受ける。心の中ではバレるなバレるなと念じながら。
「……外にいる方は、恋人ですか」
「いいえ」
「いいですねぇ。若さ、とはそれだけで価値がある」
あ、こいつも話聞かないタイプだ!
その上、なんか霧彦よりも圧倒的にねっとりしてて嫌!
「…………2本、ですか」
「はい。日本人です」
「…………」
「…………」
沈黙。早く終われ、この時間。
「妙ですねぇ。使用したガイアメモリは2種類、にもかかわらず、生体コネクタは1つ。これではメモリ本来の力を引き出せない。それどころか拒絶反応も出かねません」
「…………」
「だんまりとはつれないことをする。私はね、ガイアメモリの研究に打ち込んできたのです。いくら隠したとしても、メモリを使用したかどうかなど一目で分かります」
まぁ、そうだろうな。
園崎冴子曰く、ガイアメモリが生み出した突然変異の化物。そして、園崎琉兵衛をして、少々危険な人物と言わしめるほどの人物だ。俺の下手な嘘が通じる相手ではないか。なら、ここは……。
「『マスカレイド』と『エコー』」
正直に答える。勿論、考えなしに答えたわけではない。これには目論見がある。
原作でこの男が携わったのは『ウェザー』『ケツァルコアトルス』『インビジブル』。強力なものもしくは一芸に秀でたガイアメモリばかりだった。
だから、俺は正直に答えた。霧彦によれば、どちらのメモリも並かそれ以下のものだという。だから、さして興味を持たれないだろう。そうたかを括ったのである。
「……『エコー』? あぁ、あのメモリですか」
「知ってるのか」
「えぇ、少し前にそのメモリを使用した人間を診ましたからね」
「!」
それはもしやっ!!
「……終わりましたよ。これで多少体調もよくなるでしょう」
「…………あ、あぁ」
「また調子が悪くなった時にはいらしてください。その時はぜひ君の身体を詳しく診させてほしいものですが」
「ひえっ」
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舌舐りをする変態医者との邂逅を終え、俺は雫ちゃんと共に、我が家への帰路についていた。夕暮れが綺麗である。くそぅ、あんな奴に時間をとられて1日が終わるなんて……癪だぜ、本当に。
道中も雫ちゃんが、いい先生だったでしょうと言うのに、話を合わせるのに苦労したが……。
「体調、どうですか……」
「ん、あぁ。たぶんいいんじゃないかな」
如何せん『ドーパント』になった後じゃないと、体調の変化は実感できない。ガイアメモリを使いたくないのが本心ではあるが、どうもメモリに関わる者は惹かれ合うらしく、いずれ使ってしまう機会も来る。きっとその時に確認できるだろう。
「あ、ここで……だいじょうぶですっ」
俺の自宅まであと100mくらいのところで、雫ちゃんはそう言った。近所とは聞いていたが、本当に近いんだな。
「それじゃあまたーー
「キャァァァァっ」
「「!」」
別れの言葉を伝えようとして、その悲鳴に遮られた。女の声だ。そこまで離れていないところから聞こえた気がする。
「今のって……」
「……雫ちゃんは家に帰るんだ」
「は、はい」
「ちゃんと鍵閉めろよ。じゃあな」
俺はそう言って駆け出す。
きっと痴漢とかひったくりとかその類いだろう。少しだけ男手を貸せば話は終わる。
そう思って、悲鳴が聞こえたであろう狭い路地に駆けつけたのだが……。
「大丈夫か!」
『アァン? なんだ、てめぇ』
俺が目にしたのは、尻餅をつくスーツ姿の女性とその人に覆い被さるゴキブリ野郎ーー『コックローチ』の姿だった。
いや、あれだ。ほら、特殊なプレイ中でーー
「た、助けてっ、この化物が急に襲ってきてっ!」
『ハッ、お前が悪いんだぜ? オレ様の告白を断りやがって!』
「………………」
あーっ!! もうっ!!
やっぱりこうなるのかよっ!!
目の前でゴキブリに襲われる女性を見捨てることは、流石の俺にもできなかった。
「もうぅぅぅやだぁぁぁ!」
『マスカレイド』
悲痛な叫びをあげながら『マスカレイド』になった俺は『コックローチ』の背後から飛び蹴りをかました。
所詮は最弱のメモリ。相手が下級の『ドーパント』でも大した威力はでないだろう。そう思っていたのだが。
ーーバギィィッーー
『グガッ!?』
吹き飛び、近くの壁に激突する『コックローチ』。
……あれ? なんか、んん?
『て、てめぇもガイアメモリを……殺してやるっ!』
ーーギュンッーー
『っ』
たった一撃でキレたゴキブリ野郎は、『コックローチ』特有の能力であるスピードで走り出す。確かに速い。だが、
『死ねぇぇぇ!!』
ーーブンッーー
『ふんっ!!』
ーードゴォッーー
『ご、ぐべ……っ!』
残念ながらここは狭い狭い路地裏。そして、奴が俺の背後をとろうとしていたことで、攻撃してくる方向が容易に読めていた。あとはゴキブリ野郎が声をあげたタイミングで拳を振れば、奴のスピードを乗せたカウンターの出来上がりだ。
そんなこんなで、目の前には伸びたゴキブリ野郎が……あっ、メモリが排出された。
それを確認してから、俺は変身を解く。
解く……と、解く!
『あ、あれ?』
いつもは自分の意思で簡単に『ドーパント』から人間に戻れる。同時にガイアメモリも排出されるんだが、今はなぜか戻れない。
な、なんで、どうしてっ!?
「あの、ありがとうございます!」
『い、いや、別に大したことはしていないが』
「もしかして、貴方が『仮面ライダー』ですかっ!」
『へ……?』
「黒い仮面をしてますもん! やっぱり貴方がこの風都で話題の正義のヒーロー『仮面ライダー』なんですね!」
『ちょっ、ち、違いますぅぅぅ』
「ああっ、お待ちください! 『仮面ライダー』様ぁぁぁ!」
俺は女性の期待に満ちた目に耐えきれず、全力疾走でその場を逃げ出したのだった。
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俺の身に異常が起きている。
1 変身が解除できない。
2 『マスカレイド』の能力が向上している。
心当たりは、ある。
それは勿論ーー
「あんのっ、変態医者がぁぁぁぁっ!!!!」
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井坂先生出た途端、感想がウキウキし出すの最高におもろい。
大丈夫。
私も同じ気持ちです。
井坂先生、ほんといいキャラですよね。