転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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第16話 Wに気をつけろ / お医者さんごっこ

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「………………」

 

「………………」

 

 

診察室の中、俺と井坂深紅郎の間に会話はなかった。

診察台に寝かされ、触診を受ける。心の中ではバレるなバレるなと念じながら。

 

 

「……外にいる方は、恋人ですか」

 

「いいえ」

 

「いいですねぇ。若さ、とはそれだけで価値がある」

 

 

あ、こいつも話聞かないタイプだ!

その上、なんか霧彦よりも圧倒的にねっとりしてて嫌!

 

 

「…………2本、ですか」

 

「はい。日本人です」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

沈黙。早く終われ、この時間。

 

 

「妙ですねぇ。使用したガイアメモリは2種類、にもかかわらず、生体コネクタは1つ。これではメモリ本来の力を引き出せない。それどころか拒絶反応も出かねません」

 

「…………」

 

「だんまりとはつれないことをする。私はね、ガイアメモリの研究に打ち込んできたのです。いくら隠したとしても、メモリを使用したかどうかなど一目で分かります」

 

 

まぁ、そうだろうな。

園崎冴子曰く、ガイアメモリが生み出した突然変異の化物。そして、園崎琉兵衛をして、少々危険な人物と言わしめるほどの人物だ。俺の下手な嘘が通じる相手ではないか。なら、ここは……。

 

 

「『マスカレイド』と『エコー』」

 

 

正直に答える。勿論、考えなしに答えたわけではない。これには目論見がある。

原作でこの男が携わったのは『ウェザー』『ケツァルコアトルス』『インビジブル』。強力なものもしくは一芸に秀でたガイアメモリばかりだった。

だから、俺は正直に答えた。霧彦によれば、どちらのメモリも並かそれ以下のものだという。だから、さして興味を持たれないだろう。そうたかを括ったのである。

 

 

「……『エコー』? あぁ、あのメモリですか」

 

「知ってるのか」

 

「えぇ、少し前にそのメモリを使用した人間を診ましたからね」

 

「!」

 

 

それはもしやっ!!

 

 

「……終わりましたよ。これで多少体調もよくなるでしょう」

 

「…………あ、あぁ」

 

「また調子が悪くなった時にはいらしてください。その時はぜひ君の身体を詳しく診させてほしいものですが」

 

「ひえっ」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

舌舐りをする変態医者との邂逅を終え、俺は雫ちゃんと共に、我が家への帰路についていた。夕暮れが綺麗である。くそぅ、あんな奴に時間をとられて1日が終わるなんて……癪だぜ、本当に。

道中も雫ちゃんが、いい先生だったでしょうと言うのに、話を合わせるのに苦労したが……。

 

 

「体調、どうですか……」

 

「ん、あぁ。たぶんいいんじゃないかな」

 

 

如何せん『ドーパント』になった後じゃないと、体調の変化は実感できない。ガイアメモリを使いたくないのが本心ではあるが、どうもメモリに関わる者は惹かれ合うらしく、いずれ使ってしまう機会も来る。きっとその時に確認できるだろう。

 

 

「あ、ここで……だいじょうぶですっ」

 

 

俺の自宅まであと100mくらいのところで、雫ちゃんはそう言った。近所とは聞いていたが、本当に近いんだな。

 

 

「それじゃあまたーー

 

 

 

「キャァァァァっ」

 

 

 

「「!」」

 

 

別れの言葉を伝えようとして、その悲鳴に遮られた。女の声だ。そこまで離れていないところから聞こえた気がする。

 

 

「今のって……」

 

「……雫ちゃんは家に帰るんだ」

 

「は、はい」

 

「ちゃんと鍵閉めろよ。じゃあな」

 

 

俺はそう言って駆け出す。

きっと痴漢とかひったくりとかその類いだろう。少しだけ男手を貸せば話は終わる。

そう思って、悲鳴が聞こえたであろう狭い路地に駆けつけたのだが……。

 

 

「大丈夫か!」

 

『アァン? なんだ、てめぇ』

 

 

俺が目にしたのは、尻餅をつくスーツ姿の女性とその人に覆い被さるゴキブリ野郎ーー『コックローチ』の姿だった。

いや、あれだ。ほら、特殊なプレイ中でーー

 

 

「た、助けてっ、この化物が急に襲ってきてっ!」

 

『ハッ、お前が悪いんだぜ? オレ様の告白を断りやがって!』

 

「………………」

 

 

あーっ!! もうっ!!

やっぱりこうなるのかよっ!!

目の前でゴキブリに襲われる女性を見捨てることは、流石の俺にもできなかった。

 

 

「もうぅぅぅやだぁぁぁ!」

 

『マスカレイド』

 

 

悲痛な叫びをあげながら『マスカレイド』になった俺は『コックローチ』の背後から飛び蹴りをかました。

所詮は最弱のメモリ。相手が下級の『ドーパント』でも大した威力はでないだろう。そう思っていたのだが。

 

 

ーーバギィィッーー

 

『グガッ!?』

 

 

吹き飛び、近くの壁に激突する『コックローチ』。

……あれ? なんか、んん?

 

 

『て、てめぇもガイアメモリを……殺してやるっ!』

ーーギュンッーー

 

『っ』

 

 

たった一撃でキレたゴキブリ野郎は、『コックローチ』特有の能力であるスピードで走り出す。確かに速い。だが、

 

 

『死ねぇぇぇ!!』

ーーブンッーー

 

 

『ふんっ!!』

ーードゴォッーー

 

 

『ご、ぐべ……っ!』

 

 

残念ながらここは狭い狭い路地裏。そして、奴が俺の背後をとろうとしていたことで、攻撃してくる方向が容易に読めていた。あとはゴキブリ野郎が声をあげたタイミングで拳を振れば、奴のスピードを乗せたカウンターの出来上がりだ。

そんなこんなで、目の前には伸びたゴキブリ野郎が……あっ、メモリが排出された。

それを確認してから、俺は変身を解く。

解く……と、解く!

 

 

『あ、あれ?』

 

 

いつもは自分の意思で簡単に『ドーパント』から人間に戻れる。同時にガイアメモリも排出されるんだが、今はなぜか戻れない。

な、なんで、どうしてっ!?

 

 

「あの、ありがとうございます!」

 

『い、いや、別に大したことはしていないが』

 

「もしかして、貴方が『仮面ライダー』ですかっ!」

 

『へ……?』

 

「黒い仮面をしてますもん! やっぱり貴方がこの風都で話題の正義のヒーロー『仮面ライダー』なんですね!」

 

『ちょっ、ち、違いますぅぅぅ』

 

「ああっ、お待ちください! 『仮面ライダー』様ぁぁぁ!」

 

 

俺は女性の期待に満ちた目に耐えきれず、全力疾走でその場を逃げ出したのだった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

俺の身に異常が起きている。

1 変身が解除できない。

2 『マスカレイド』の能力が向上している。

 

心当たりは、ある。

それは勿論ーー

 

 

 

「あんのっ、変態医者がぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

 

ーーーーーーーー




井坂先生出た途端、感想がウキウキし出すの最高におもろい。

大丈夫。
私も同じ気持ちです。
井坂先生、ほんといいキャラですよね。
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