転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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第17話 Wに気をつけろ / やったぁ、つよくなったよ

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やったぁ、つよくなったよ……じゃねぇんだよ!!

 

メモリの能力向上自体は問題ない。

ただし、ガイアメモリはその力が強力になればなるほど副作用が強まる傾向にあるのも事実だ。だから、もしかすると……。

だが、それ以上に問題なのが、変身が解けないこと。いや、『マスカレイド』が体内に入ったままなことだ。

ご存知『マスカレイド』には自爆機能がついている。それが体内に残ったままというのは、考えただけでも寒気がする。

 

変身が解けなくなったその足で、俺は井坂内科医院へ向かったが、入り口には診療時間外の文字があり、何度か呼び鈴も鳴らしたが応答はなく。

結局、周りが暗くなるのを待ってから、顔を隠して俺は帰路に着いた。

 

 

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「黒井くん? その姿……どうしたんだい?」

 

『霧彦ぉぉぉ、聞いてくれぇぇぇ』

 

 

気分はドラ◯もんに泣きつくの◯太くんである。助けて、霧えもん。

俺の話を静かに聞いてくれた霧えもんもとい霧彦は明日、件の井坂内科医院に付き添ってくれることになった。

……って、いや、ちょっと待って。

 

 

『いや、霧彦、やっぱりいい。俺1人で行くわ』

 

「そんな訳にはいかない。他ならぬ君の、私の友人の危機だからね」

 

 

やだ、イケメン。嫌いじゃないわ、じゃなくて。

よくよく考えたらまずいのだ。

井坂深紅郎。奴は将来的に園崎冴子の心を真の意味で射止める男。元妻とはいえ、霧彦の脳が破壊される可能性があるのだ。ガイアメモリ関連のことを話せる人間は霧彦しかいない。彼が壊れてしまっては困る。本当に困る。

だが、この男譲らない。変なところで頑固である。

……仕方がない。

 

 

『分かった。じゃあ、明日少し用事があるから、12時に井坂内科医院で落ち合おう』

 

「承知した」

 

 

こうして、嘘の約束を取り付けた俺。

本当は医院が開いた時間に乗り込むつもりだ。霧彦が来た頃には、すべての話が終わっているようにしよう。多少は怒られそうだが、背に腹はかえられない。

 

 

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翌日。

 

 

『なんで、いるんだよ……』

 

「フッ、君のことだからね。きっと私には本当の時間を告げないと思い、ここで待機していた。それだけさ」

 

『くっ』

 

 

こうなれば仕方がないか。俺は覚悟を決め……いや、覚悟を決めるべきは霧彦なのだが。ともかく、井坂内科医院に乗り込んだ。

 

 

『ごらぁっ!! 出てこいや、ヤブ医者がぁっ!!』

 

 

俺達の前に誰もいないことは確認済みの上で、俺は叫んだ。

ぶちギレである。隣の霧彦もちょっと引いていたが、気にするものか!

 

 

「おや、君は昨日の」

 

『てんめぇ! てめぇのせいで酷い目にあったぞ、ごらぁ!』

 

「……その姿、『マスカレイド』の方を使ったのですか。はぁぁぁ、信じられない」

 

『てんめぇ! 何を悠長にーー』

 

 

詰め寄る。無論、反撃が怖いから井坂には触らず、至近距離でメンチを切るだけだが。そんな激情に駆られる俺とは対照的に、井坂は冷静な様子のまま、俺にあることを告げた。

 

 

「指をひとつ鳴らしてごらんなさい」

 

『あ?』

 

「いいから」

 

『…………』

ーーパチンッーー

 

 

言われるがままに指を鳴らすと、

 

 

「あ、戻った」

 

 

姿が元に戻ったのが分かる。ただし、メモリは排出されないままだ。

自爆機能があるメモリが体内に残っていることを井坂に伝えると、それについては想定外だという答えが返ってきた。曰く、『エコー』よりも弱い『マスカレイド』を使うとは思わなかった、と。

 

 

「体調はいかがですか?」

 

「え、あっ……そういえば!」

 

 

いつもはメモリを使った後は、腹痛やら二日酔いのような症状やらに襲われるのだが、今回はそれもない。これって……。

 

 

「えぇ、私の処置の効果が現れているようですねぇ」

 

「!」

 

「あとはふむ……せっかくの貴重な人材が自爆されては困ります。『マスカレイド』が体外に排出するように処置しましょう」

 

「…………え、あ、はい」

 

 

あれれぇ? 思ったより話が通じて拍子抜けである。

俺は霧彦に待っててもらうようにお願いし、井坂の指示通り診察室へ向かった。その時、2人の男が静かに視線を交わしていたのに、俺は全く気づかなかった。

 

 

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「解決したぁぁぁ!!」

 

 

井坂内科医院からの帰り道。

晴れやかな気持ちで、俺はひとつ伸びをした。日はまだまだ高く、まるで俺の気持ちを表すかのような晴天であった。

なるほど。これがあれだ、朝活ってやつだな!

そんな俺の気分に水を差す男が1人。

 

 

「黒井くん。君は楽観が過ぎる」

 

「あ?」

 

「初対面ではあったが、私はあの男を信用できない。君も信用してるわけではないんだろう。その彼がなんの思惑もなく君を治すと思うかい?」

 

「う、うーん」

 

 

それに関しては一理ある。

だが、恐らく井坂は俺の体質とやらに目を付けただけだろう。研究に役立つかもしれない俺が自爆するのは、損失だとでも考えた。

 

 

「そんなところじゃないか?」

 

「……はぁぁ、本当に君は……」

 

 

いいじゃないか。今まで強くもないメモリを使って、その副作用に悩まされていたのだから。井坂曰く、もうこれからどんなメモリを使っても副作用で体調不良になることはないという。

よかった、本当によかったぁ。今、この幸せを噛み締めよう。

さて、改めて……。

 

 

「やったぁ、つよくなったよぉぉ!」

 

 

せっかく転生したのだ。

転生ものには無双がつきものだろ?

さあさあ、これから俺の無双人生が始まるぜ!!

 

 

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黒井さん、黒井さん。
主人公が無双しない物語らしいですよ。

あ、W編終わりです。
次回、新章開始。原作エピソードに戻ります。
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