転生したらミュージアムの下っ端だった件(完) 作:藍沢カナリヤ
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「本当に君は思慮が浅い」
「仰る通りです……」
我が家にて。
正座をした俺は霧彦に怒られていた。怒られている内容は、もちろんジミーの件である。
「『ドーパント』と戦うのはまだいい。君の変身した『マスカレイド』は何故か他のものとは違うようだからね。だが、問題は『仮面ライダー』の前で、ほいほいと変身したことだ」
「……はい」
「君の素顔は刑事の方の『仮面ライダー』には見られているんだ。こちらには現状『仮面ライダー』に抗う手段はない。つまり、君が『ドーパント』になることが分かれば、簡単に捕まってしまうんだぞ」
「本当に、仰る通りで……すみません」
「……はぁ、まったく」
下げた頭を上げられず、俺は五体投地のまま次の霧彦の言葉を待つ。そのままでも埒が明かないと思ったのだろう。霧彦はもうひとつため息を吐いてから、話を戻した。
「それでその『ドーパント』の正体が知りたいんだったね」
「っ、あぁ、あの野郎だけは許せねぇ」
「……君に刺さったという針。それからあのジミー中田を合格にさせる能力……私の記憶が正しければ、メモリは『ライアー』だろう」
「『ライアー』?」
嘘つきってことか。
「あぁ、私もすべての能力を知っているわけではないが、針を刺した対象に自分の嘘を信じこませる能力だったはずだ」
なるほど。ようやくそれで今回の件の全貌が見えた。
だが、ひとつ分からないのは……。
「わざわざ能力を使ってまで、ジミーを合格にする必要なくないか? ジミーの歌、サイコーじゃん?」
「…………はぁ。君は一度、耳鼻科に行った方がいい」
「?」
ーーーー霧彦視点ーーーー
鳴海探偵事務所に電話をかけてくる。
『ライアー』メモリを使った人間を突き止めてぶん殴るんだ。
そんな風に、またも思慮の浅いことを言いながら、家を出ていった彼を止めるのは私には無理だった。というか、私も今回の彼を止めるのは無駄だと悟っていた。
「…………やはり、渡せないな」
ポツリと呟き、私は隠してあったあるものを取り出す。
それは数日前、家のポストに入れられていた差出人不明の封筒に入っていたものだ。
「『R』のガイアメモリ……一体誰がこんなものを……?」
私の手の内にある、その銀色のメモリを撫でる。
差出人の思惑が分からない以上、これを渡すのは危険だ。なにより、彼に渡せば……。
「安易に使いかねないからね……はぁ」
本当に、悩みの種は尽きない。
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「ユキホさん、だよな」
フーティックアイドルの収録が開始される少し前のこと、俺はテレビ局の外で佇んでいた彼女に声をかけた。
「……あなたは?」
「俺は、ただのジミーのファンだ」
「! 私の他にもそんな人が……」
彼女は心底驚いたようで、目を丸くしていた。そんな彼女に俺は問いかける。
「ここで、なにしてるんだよ」
「っ、私は……」
自分でもその答えを持ち合わせていないのか、彼女は下を向き、考え込んでしまう。
「ジミーに会いに来たんだろ」
「…………えぇ」
そのつもりだったのだけれど、そう言って彼女は自嘲気味に笑う。
「でも、きっとジミーくんは来ないわ。彼は真実を知ってしまったから」
「…………それはジミーに才能がないって話か?」
「えぇ、それもこれも私のせいね。私が上手くやれていたら、彼にあんな涙を流させることはなかった」
俯くユキホさん。俺はその言葉を否定する。
「違うな」
「え……?」
「あんたが何をしようが、ジミーは来るさ」
「で、でも……」
でも、も何もない。彼は天才なのだ。ここに来ない理由がない。
「彼には才能がーー」
「ーー才能? ジミーの本質はそんな小手先のものじゃねぇだろ。彼の本質は『心』だ」
「っ」
『心』に響く歌。それがジミー中田の歌。
そう。
七連勤で死にかけていた俺の耳に入ったあの歌は、モヤモヤと考えていた余計なことを吹き飛ばしてくれた。
そんなのどうでもいい。僕のスピックを聞け。
なんの根拠もない自信と歌うことへの愛に満ちた歌のおかげで、俺は救われたんだ。
「なぁ、ジミーを毎日追いかけていたあんたなら分かるんじゃないのか?」
「…………」
左翔太郎から彼女の話は大体聞いていた。だから、思ったんだ。
悔しいが、ジミーの一番のファンは彼女だと。
雨の日も、雪の日も。たった1人で彼を応援し続けた彼女に、俺はきっと勝てない。
「そんなあんたがジミーを信じないでどうするんだよ」
「っ」
ユキホさんは決心してくれたようで、テレビ局の入り口へ走っていった。
「フッ、いいことをしちまったかな」
俺はニヒルに笑った。
……それにしても、なんでそんな余計な心配をしているのか謎である。
ジミー中田。
彼はまぎれもない天才ですよ?
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とある劇場にその『ドーパント』ーー『ライアー』は現れた。
自らの名を騙り、園崎若菜と会おうとした不届き者をその手で裁くためだ。
だが、それ自体が罠だ。『仮面ライダー』が『ライアー』を炙り出すための。
「変……身っ!」
「「変身!」」
3人の人間が、2人の『仮面ライダー』へと変わり、『ライアー』へと向かう。この戦いは勿論、『仮面ライダー』が勝利する。だが、その裏でーー
『はぁ……はっ、用心しておいて正解だったな……』
『ライアー』は生存していた。彼らの必殺技が当たる直前に、『ライアー』は嘘をついた。
「『ライアー』は『仮面ライダー』にメモリブレイクされた」と。
その甲斐あって、彼は生き残っている。『ライアー』は前回、『仮面ライダー』との戦いの最中に現れた謎の『ドーパント』が介入してくることを恐れ、自分がやられることも想定して動いたのだ。
路地裏に逃げ込み、周囲を見渡して変身を解く。
嘘で逃れたとはいえ、『仮面ライダー』のマキシマムのダメージは多少残っていたから、身を隠すことを優先しよう。そう考えてのことだったのだが、
「よお」
「っ」
誰もいなかったはず、にもかかわらず、声をかけられたことに彼は驚き、体を震わせる。振り返ると、そこには若い男がいた。
「な、なんだ、お前は!」
「なんだ、だと? そうか、忘れちまったのか」
男は笑顔のまま、ゆっくり近づいてくる。そして、
ーーバギィッーー
「ご、べっ!?」
殴られた。
「よし」
「く、くそ……なんなんだよ、お前っ!」
『ライアー』
リスクはある。だが、彼の怒りは頂点に達していた。目の前の自分を殴った舐めた若者を殺すために、『ドーパント』へと変貌を遂げる。直後に、嘘の針を飛ばした。
『私はお前のご主人様だ』
ーービュンッーー
針は確かに刺さり、若い男の体内へ溶け込んだ。
これで舐めたこの男を服従させた。そして、このままなぶり殺しにしてやろう。『ライアー』は変貌した顔の内側で舌舐りした。彼は相手より圧倒的上位に立った恍惚感を感じていた。
だが、
「はっ、くしゅんっ!」
『っ』
既視感。『ライアー』の脳裏にはある体験がフラッシュバックしていた。
『お前、ま、まさかっ!?』
「あ?」
『マスカレイド』
『あ、あ、あぁぁぁぁ……っ!?!?』
言葉が出なかった。その姿、黒い仮面の『ドーパント』はーー
『いやぁぁぁぁっ、お助けぇぇぇっ!?!?』
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現在、俺の持つガイアメモリ。
1 マスカレイド
2 エコー
3 コックローチ
4 ライアー
副作用は、ない。
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L編完結。
次回、新章開幕。
オリジナルガイアメモリも出す予定です。
感想やアイディア感謝です。
本当に執筆の励みになってます!
主人公・黒井くん。彼のメモリは……。
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強いものを使ってほしい
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弱いものを使ってほしい
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今、勇気、インフィニティ!