転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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新章開幕。
短め。


第21話 贈られたF / ばらまかれたメモリ

ーーーーーーーー

 

 

ーーピンポーンーー

 

 

それは霧彦とお好み焼きパーティーをしていた時のことだった。前触れもなく、我が家の呼び鈴が鳴った。

 

 

「ったく、誰だよ。はいはーい」

 

 

日曜の昼。俺の食事を邪魔した罪は重い。

邪魔者の姿を確認しようと扉を開けて、俺は驚く。そこにいたのは2人の人物。

 

 

「こ、こんにちは。黒井さんっ」

 

「雫ちゃん。それにーー」

 

 

「やほやほー、おじさん!」

 

 

雫ちゃんとその愛犬の散歩仲間・女子高生のアイナちゃんがそこにはいた。立ち話もなんだからと2人を家にあげる。

 

 

「おっじゃましまーす!」

 

「お邪魔します。あ、あの、すみません。せっかくのお昼時に」

 

「あぁ、いや」

 

 

物怖じをせず家に上がり込むアイナちゃんと、自分と彼女の靴を揃えながら恐縮する雫ちゃん。対照的な様子を見て、なぜこの2人が友達になっているのか疑問に思いながら、応じる。

 

 

「おや、君は雫ちゃんのお友達かな?」

 

「おぉ! イケメンだぁー! え、なに? おじさん、このイケメンとドーセーしてんの? えー、どういう関係なワケ?」

 

 

にわかに沸き立つアイナちゃん。それを見て、流石の霧彦も困ったような笑みを浮かべていた。それを見ながら、俺は雫ちゃんに訊ねる。

 

 

「お好み焼き、一緒にどうだ?」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「ふーっ、たべたたべたぁ!」

 

「ご馳走さまでした。ありがとうございます、霧彦さん、黒井さん」

 

「ごっそさーん!」

 

 

な反応を見せる2人。

ふむ。こうして美味しそうに食べてくれると作った甲斐があったな!

……まぁ、作ったの霧彦だが。さて、腹ごしらえは済んだ。本題に入ろう。

 

 

「それでどうしたんだ? 雫ちゃんだけならよくあるけど、2人ってのは初めてだよな」

 

「あ、はい。実は……」

 

 

そこで雫ちゃんはアイナちゃんに目配せをした。それに頷き、バッグから何かを取り出すアイナちゃん。コトッ、と静かにそれを机に置く。そこにあったのは、

 

 

「ガイア、メモリ……!」

 

 

1本のガイアメモリだった。

 

 

「ガイアメモリぃ……?」

 

「やっぱりこれが……っ」

 

「…………あぁ、前にも話したガイアメモリだよ」

 

 

そうか。雫ちゃんとは何回か『ドーパント』と遭遇したことがあったが、ガイアメモリ自体を見たことはなかった。俺も見せたことはない。巻き込みたくなかったからな。

 

 

「……アイナちゃん、これ、見てもいいか?」

 

「いいよー」

 

 

許可を取り、それを手に取る。

『F』の文字と涅色の外装。刻まれている記憶は恐らく……。

 

 

「『ファクトリー』……工場の記憶か。これをどこで?」

 

 

キッチンからお茶を淹れて持ってきた霧彦は、お茶を全員の前に置きながらそう訊ねる。

流石は、元エリートメモリ密売人だな。一目見ただけでメモリの名前を言い当てるとは。

その質問に答えるのは、アイナちゃん。

 

 

「実はねー、家に送られてきたってワケなんよー」

 

「!」

 

「家に?」

 

 

驚いて言葉を詰まらせた霧彦を横目に見ながら、俺は問い返した。

 

 

「そそ、一昨日だったかなぁ? 学校に行ってる間に、ウチん家に送られてきたっぽくてさ。ママが郵便受けに入ってるのを見つけたんよ」

 

「宛名は?」

 

「書いてなかったよー」

 

「ふむ」

 

 

ガイアメモリが郵便で送られてくる。

そんな事件は聞いたことがない。少なくとも俺が記憶している原作にはなかったはずだ。

近い事件といえば『運命のガイアメモリ』のそれか? いや、あれとはまた別物か。

……ともかく気を付けねぇとな。

 

 

「おい、霧彦」

 

 

霧彦に声をかけると、彼はとても鋭い眼光で『F』のメモリを睨んでいた。

……そうか。アイナちゃんは高校生だ。

未成年にメモリを渡すのは、

 

 

「ルール違反、だろ」

 

「……あぁ。黒井くん、この件、私も少々介入させてもらおう」

 

 

こうして、俺達はこの事件に乗り出したのだった。

 

 

ーーーー同時刻・鳴海探偵事務所ーーーー

 

 

「これが自宅に……?」

 

「はい……そうなんです」

 

 

鳴海探偵事務所の扉を叩いたのは、鈴木という男性だった。彼の依頼は、自宅に届いた郵便物の送り主を探してほしいという内容だ。その郵便物を見て、探偵・左翔太郎は頭を抱えた。

 

 

「ガイアメモリ、か」

 

「うっそぉ、私聞いてないっ」

 

 

今までガイアメモリ関連の事件が舞い込むことはあったが、依頼者が直接ガイアメモリを持ち込むことはなかった。今回が初めてのケースで、翔太郎は困惑する。

 

 

「……これ、手にとって見ても?」

 

「はい。どうぞ」

 

 

依頼人の鈴木の承諾を得て、翔太郎はその紫色のメモリを手に取った。そして、試しにと起動してみる。

 

 

『スコーピオン』

 

「…………」

 

 

起動しても、鈴木にコネクターが出現した様子はない。勿論、見えない箇所にコネクターが現れる可能性はある。だが、普通はすぐに使えるよう、ある程度露出しやすいところにコネクター手術をするはずだ。

その観点から言えば、恐らく鈴木にはコネクターはなく、確かにそれは送られてきたものなのだろう。

 

 

「悪いな、鈴木さん。これ、少し借りてもいいかな」

 

「えぇ……それは構いませんが」

 

「明後日、またここに来てくれ。それまでには情報を集めておくよ」

 

 

鈴木が帰ったのを確認し、翔太郎は地下への扉を潜った。そこにいるのは、もう1人の探偵・フィリップ。事務所での話は聞こえていたようで、フィリップは既に検索ーー『地球の本棚』に入っていた。

 

 

「……どうだ、相棒」

 

「情報が足りないね。流石に、現時点で送り主を特定はできなかった」

 

「まぁ、そうだろうな」

 

 

予想通りではある。翔太郎は被っていた帽子を軽く触り、検索を中断した相棒に告げる。

 

 

「なぁ、フィリップ。これは俺の直感なんだが……この事件、どうも嫌な予感がするぜ」

 

「……珍しく僕も同感だ。君の言う、嫌な予感を僕ですら感じ取っているよ」

 

 

ーーーーーーーー




メモリ案
『ファクトリー』は肘神さまさんより
『スコーピオン』はヴァイロンさんより頂きました。

主人公・黒井くん。彼のメモリは……。

  • 強いものを使ってほしい
  • 弱いものを使ってほしい
  • 今、勇気、インフィニティ!
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