転生したらミュージアムの下っ端だった件(完) 作:藍沢カナリヤ
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左翔太郎からの提案を、俺は二つ返事で承知した。そうでもしなくては、今回の件は解決できないと踏んだからだ。
電話を受けた翌日、つまり今日これから俺と左翔太郎は、とあるカフェで待ち合わせることにしていた。
ーーカランコロンーー
喫茶店の入り口のベルが鳴り、彼の姿が見えた。
ハットにスーツベスト。何度か遠目では見てはいたが、なるほど、近くで見るとまさに原作で見ていた通りの彼である。
「……あんたが黒井秀平か」
「あぁ。そっちは『仮面ライダーW』の左側……いや、失礼、左翔太郎くんだな」
「っ」
さて、今回の俺のスタンスだが、とにかく意味深で思わせ振りな態度を崩さない。前にフィリップと通話した時の底知れないキャラクター性を保たなければいけないのだ。そうしなくては、俺逮捕されちゃうし。
「約束通り、1人で来たようだな」
「あぁ」
「……ドライバーは?」
「ここにある」
ーーコトッーー
「約束を守ってくれて嬉しいよ、左くん」
「そっちも約束を守ってもらおうか」
「これで、いいかな」
ーーゴトッーー
今日会う条件として、俺が突きつけたのは2つ。
まずは1人で来ること。そして、ダブルドライバーを装着しないこと。
とにかく俺は照井竜とフィリップがとにかく怖いのだ。だって、あの2人、チート過ぎるんだもん……。片や不死身。片やGoogleさんもビックリ知識人間。
え、なに? あの人たち、もしかして転生特典とかもらってます? って、まぁ、ある意味フィリップは転生特典ではあるのか。
勿論、向こうも条件を出してきた。それが回収したメモリをすべて引き渡すことだ。『ファクトリー』に『スリープ』に『ウェーブ』、『スワローテイル』と『シャーク』。
5本のメモリを入れたケースの中身を確認した彼は、こちらを鋭い眼差しで睨みながら話を切り出した。
「で本題だ。あんたもこの事件を追ってる、てことでいいんだよな」
「あぁ、知り合いにメモリが贈られていてな。こっちも迷惑してるんだよ」
それは本心だ。友人に危機が及ぶのは俺も避けたい。
「……なぁ、あんた。メモリの売人なんだって」
「あぁ、そうだ」
「…………相棒には言われてたさ。あんたについては深入りするなって。だがーー」
翔太郎はおもむろに立ち上がる。そして、
ーーガシッーー
「……なんのつもりだ、左くん」
「気にいらねぇっ!」
胸倉を掴まれた。
え? な、なんで!
動揺はしながらもあくまで意味深に、含みを込めた反応を返す。ここで失敗しては今までの苦労が水の泡、このまま逮捕一直線になってしまう。
「お前ら、組織はこの街を泣かせてる。そんな奴がこっちも迷惑してるだと!? ふざけんなっ!」
「…………」
吠える翔太郎。
一理ある。というか、これに関しては全面的に向こうが正しい。
「気に食わねぇ、飲み込めねぇ!」
「…………」
「そっちで暴走して、困ったら協力を求める? 俺たちをーー風都をなんだと思ってやがる!」
「…………」
胸倉を掴まれながら、どこか客観的に現状を見ている俺がいる。それはきっと彼の言い分が真を突いているからだ。だから、その質問が余計に自分の心に刺さる。
俺は、この世界をなんだと思ってるんだ?
成り行きだ。偶然、なんの因果か転生し、生まれ直しただけ。
この街を知ってはいたが、別にこの街である必要はなかった。そもそもこんな犯罪の多い治安の悪い街にこだわる必要はないんだ。
なんなら明日にでも出ていっても……。
「いや、そりゃ無理か」
「っ、なにを……っ」
「なんのつもりだ、だっけか。なんのつもりで協力を求めるか」
ポツリと呟く。
それは職場があるからとか、引っ越しが大変だからとかそういう理由ではない。
俺はただーー
「この街で幸せに暮らしたいだけだ」
「友達がたくさんいて、その皆が愛する風都で俺も生きていたい。それだけだよ」
不意に溢れた言葉。それは偽らざる俺の望みだ。
「っ、おまえ……」
「まだ信じてもらえないか?」
「……さぁな」
「ならーー」
ーーコトッーー
机の上に置いたのは、2つのガイアメモリ。
『コックローチ』と『マスカレイド』。
「これは俺の使っていたメモリだ。ええと……よし、ちょっとこれ借りるぞ」
ーースチャッーー
「お、おいっ!?」
テーブルにあった料理用のナイフを握り締め、振りかざす。
ーーバキッーー
「もういっちょ!」
ーーバキッーー
ナイフはガイアメモリを貫いた。『コックローチ』は差し込み口が破損し、『マスカレイド』に至っては真っ二つに折れて、完全に使用できない状態になっている。
突然の出来事に唖然とする翔太郎。そんな彼に俺は告げる。
「これで少しは信頼してもらえるか?」
「………………はぁぁ」
少しの沈黙の後、彼はため息を吐いた。そして、帽子の位置を軽く直して。
「お互いの情報を共有させてくれ」
「あぁ」
そうして、俺たちは今分かっていることを共有した。
未成年にメモリが届けられていること。
そのメモリは組織の売人から奪われたものが流れていること。
分かっているだけでも10本のメモリが出回っていること。
そして、まだそれがすべてではないこと。
話を終えて、翔太郎はまたため息を吐く。
「ったく、まだメモリが街のどこかに贈られているってことかよ」
「売人から奪われたケースには、少なくとも12本のメモリがあったらしいからな。あと2本、か」
霧彦と翔太郎。風都に精通する2人の人間が探して見つからないのだ。俺に見つかるはずはない。あとは警察・照井竜ともう1人の探偵に任せるしかないな。
「気長にも待っていられねぇ。どうにかキーワードを……」
キーワード。キーワードなぁ。
あ、そういえば……。
「そっちはなんでメモリがばらまかれていることを知ったんだ?」
「ん? あぁ、とある人物からの依頼でな。詳しくは話せねぇが、『贈り主』を探してくれって…………んん?」
そこで彼の動きが止まる。どうやら何かに気づいたようで。
「おい、黒井! あんたが回収したメモリ、それが届けられた人物を全部リストアップしてくれ!」
「別にいいが」
翔太郎に言われるがまま、俺は霧彦から聞いていた人たちの情報を翔太郎のメモ帳に書き連ねていく。全員を書き終わったところで、翔太郎は声をあげた。
「あーっ! なんてこった!」
そのまま、彼はどこかへ電話をかけた。恐らくその相手は決まっている。
「おい、フィリップ! 検索だ! 『贈り主』の正体が分かった!」
その通話を聞きながら、俺は感じ取っていた。
恐らく事件の終わりは近い。
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『コックローチ』
『マスカレイド』破損
黒井の使えるメモリは
『エコー』と『ライアー』と『ーーーー』
主人公・黒井くん。彼のメモリは……。
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強いものを使ってほしい
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弱いものを使ってほしい
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今、勇気、インフィニティ!