転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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ちょっとだけエッかもしれない。


第26話 Dは盲目 / 石鹸と温泉の香り

ーーーーーーーー

 

 

硫黄の香りと湯気が立ち込める浴場。

勿論、自宅の風呂よりは圧倒的に広いが、貸し切りということもあって大浴場のような広さはない。

ボディーソープで体を念入りに……まぁ、そりゃあ念入りに洗った俺は壁の方を向きながら、声をあげた。

 

 

「は、ははははいってもいいぞぉ」

 

 

馬鹿みたいに上擦った声が浴場に木霊する。

いやぁ、恥ずかしい、殺してぇぇ……。

顔を両手で覆い隠す俺に構わず、浴場の扉が開く音がした。そして、誰かが入ってくる気配も。

勿論、この状況で入ってくるのは1人しかいない。

 

 

「お……おじゃま……しま……」

 

 

消え入りそうな声。だが、彼女の声であることは間違いない。

ドアの閉まる音。濡れた床を歩く音。

そして、シャワーの音。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

お互い無言の時間が続く。

ほーん、体は手で洗う派なんですね……って、おいやめろ。

余計なことは考えるな……本当に余計なことか?

いい年齢の男女が混浴ぞ? それってつまりーー

 

 

「あ、あのっ」

 

「はいぃぃっ!」

 

「入っても……いい、ですか……」

 

「ど、どうぞ」

 

 

ちゃぽん、と音がした。

律儀に俺の言葉を受けてから、彼女は湯船に入ってくる。

 

 

「っ、あつ……」

 

「……俺も最初そうなったよ」

 

「…………言ってくださいよぉ」

 

「ふふっ、ごめん」

 

 

彼女の様子(見てはいない)で、少しだけ緩む雰囲気。

ありがたい。このままだったら、俺はきっと茹でダコになっちまってたところだ。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「その、なんだ……熱いな」

 

「は、はいっ……そう、ですね」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

助けて、会話が続かない。

あと会話は続かないのに、妄想は止まらない。

がんばれ理性! 俺の理性はメタルメモリよりも固いはずだぁ!!

 

 

ーーふにっーー

 

「ふぇ?」

 

 

それは突然の出来事だった。触れないほどの距離にいた2人の距離は急に0になる。雫ちゃんが俺の背中に体を預けてきたのだ。しかも、この感触……背中、じゃないですよね!?

 

 

「あ、あのっ、雫さんっ!?」

 

「~~~~ぅ////」

 

 

どれくらいが過ぎただろう。

10秒か、30秒か。体感5分だが、ともかく急に雫ちゃんは湯船から上がった。

 

 

「先に……戻ってます、からっ///」

 

 

ガラガラと浴場のドアを閉め、彼女は去っていった。

呆然としていた俺がその10分後、のぼせてしまったのは言うまでもないだろう。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

時刻は夜の11時。いい時間だ。

 

あの後、のぼせた俺は浴場近くの休憩室で、身体を冷まして、夕飯の時間に部屋に戻った。雫ちゃんはレンタルしたという浴衣に着替えて待っていてくれた。白黒を基調にしながらも、様々な花柄が散らされた少し大人っぽい浴衣だった。

色んな衝撃で、夕飯の味は覚えていない。

その後、雫ちゃんは今度は大浴場でもう一度汗を流してくると言い、遅れて俺も大浴場へ。

それぞれの浴場から出た時、偶然2人でかち合わせてしまい、なんとなく気まずい雰囲気になってしまった。

妙な間を感じながら、俺と雫ちゃんはそれぞれの布団に入り、今に至る、と。

 

 

「……あ、の……黒井さん、起きてますか」

 

「……起きてるよ」

 

 

きっと真っ暗でお互いの顔が見えないからだろう。さっきまでよりはマシに話せる。

 

 

「そ、その……すみません、でした」

 

「え、いや」

 

「わたし……ちょっと、浮かれてました……黒井さんが、OKしてくれて……だから、わたし……」

 

 

すみません、か。

いや、ダメだろ。それを言わせちゃあ……っ!

男だろ、黒井秀平! ここで決めなきゃ俺はーー

 

 

「雫ちゃん、俺の方こそごめん。君の気持ちには気づいてははずだったのにな」

 

 

そう言って、俺はゆっくり起き上がる。きっと俺がそうしたのに気づいたのだろう。真っ暗な中ではあるが、雫ちゃんも起き上がって、こちらを見ているのが分かった。

ひとつ深呼吸をして、俺は伝えることにした。

 

 

「聞いてくれ、雫ちゃん。俺はーー」

 

「っ」

 

 

 

『イービル』

 

 

 

「は?」

 

 

俺の告白は、それの音でかき消された。

っ!? どこからっ!?

見渡すと、『それ』は今まさに、雫ちゃんの旅行鞄から飛び出してきたところだった。そのまま、『それ』は雫ちゃんに向かって飛んでくる。

 

 

「! 雫ちゃんっ、避けろ!!」

 

 

俺の言葉は虚しく響くだけ。

『それ』は、そのガイアメモリは雫ちゃんの中へ差し込まれてしまった。瞬間、変貌を遂げる……ん?

 

 

「あ、あれ?」

 

 

メモリが彼女に挿入されて、数秒が経ったが、彼女の姿はなにも変わらない。

いや、なんでメモリを持っているのかとかなぜ姿が変わらないのかとか疑問はあるが、メモリが入ったのは事実だ。だから、俺は雫ちゃんに駆け寄り、軽く揺する。

 

 

「っ、雫ちゃん。なにか異常はないかっ!」

 

 

次の瞬間ーー

 

 

ーードンッーー

 

 

ーー押し倒された。

混乱する中、やっと目が慣れたのか彼女の姿が見える。

姿が変わっていないなんて大間違いだ。化け物になっていないだけで、彼女の外見はすっかり変わっていた。

艶やかな黒髪は真っ白に。穏やかで臆病さが現れていた表情は、どこか暴力的で加虐的な表情へと変貌を遂げていたのだ。

彼女は吠える。

 

 

『おいおい、なに変身してんだよ、このヘタレがッ!!』

 

「し、しずく……さん?」

 

『あ"?』

 

 

なんかメンチ切ってくる、この人!?

 

 

『ったく、モタモタしてるから、こいつが怖気づいちまったじゃねぇかよ!』

 

「お、おまえは……一体……」

 

『うるせぇ! もうこうなりゃ自棄だ! おら、服を脱げ!!』

 

「え、えぇぇっ!? な、なにをっ!?」

 

『既成事実を作るに決まってるだろうがッ!』

 

 

まだ目の前の現実に頭が追いついてない中で、俺は

 

 

 

『パンツもだ! とっとと脱ぎやがれぇぇぇっ!!!』

 

「いやぁぁぁぁっ、おたすけぇぇぇ」

 

 

 

雫ちゃん(?)に襲われかけました。

助けて! 助けて!

初めては、初めてはもっとロマンチックにぃぃぃぃ!!

 

 

ーーーーーーーー




書いてて馬鹿だなぁ、と思いました。

主人公・黒井くん。彼には……。

  • 幸せになってほしい。
  • 幸せになってほしくない。
  • いちゃつけいちゃつけ
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