転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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第27話 Dは盲目 / イービルという少女 ☆

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「落ち着いたか、この痴女が」

 

『…………』

 

 

俺の質問に不貞腐れたまま答えない雫ちゃんもどき。

あーあー、浴衣で胡座なんてかいちゃって。

 

 

「やめろ。見えるから胡座をかくな」

 

『んー? 見たいのか? 見たいのかぁ?』

ーーペラッーー

 

「見たいは見たいし、ありがとうございますだけど、今はそれどころじゃねぇだろうが!」

 

『チッ』

 

 

いかんいかん。相手のペースに乗るな、俺。

今、ハッキリさせなくちゃいけないことはひとつだ。

 

 

「お前、何者だ?」

 

『あたしか? あたしは『イービル』メモリで作り出されたもう1人のこいつだ。まぁ、簡単にいえば二重人格だな』

 

「……メモリで人格が増えるだと?」

 

 

そんな例、聞いたこともない。原作にもメモリを使った途端に豹変する人間はいたが、完全な二重人格となると……出てきてはいないよな。しかも、髪色は変わったとはいえ、『ドーパント』にはなっていない。

 

 

『筋力は上がってるぜ』

 

「まぁ、それは……うん」

 

 

得意気に言う雫ちゃんもどき……もとい『イービル』。

さっきの布団の上での一悶着で察してはいる。変身した『ドーパント』ほどではないが、簡単に成人男性を組伏せられるくらいには力もあったからな。

 

 

「色々と聞きたいことはあるが」

 

『なんだよ。言ってみろ』

 

「なんで雫ちゃんがガイアメモリを持ってる? まさか前回の事件の時の残りか?」

 

『ああ? ちげぇよ、あたしとこいつはずっと前からの付き合いだ』

 

「ずっと昔……?」

 

 

なら、雫ちゃんの言動は……?

『ドーパント』やガイアメモリについては知らないはずだった。それにも関わらず、メモリ自体は昔から持っていた、と?

 

 

『ん? いや、こいつはあたしのことを知らねぇよ。あたしが表にいる間は眠ってるみてぇに記憶がないらしい。メモリのことを知ったのは、前回お前らが話した時だろ』

 

「…………だが、メモリは所持してた」

 

『んー、それもこいつにとっては『お守り』みたいなもんだったんだよ。昔、大切な人からもらったもんだとよ』

 

 

大切な人?

そのフレーズが引っ掛かった。それについて聞こうとして、

 

 

『んあー、もう時間だな。これ以上は毒素に耐えられねぇ』

 

「っ、最後に聞かせろ! 今日の雫ちゃんの行動はもしかして全部お前のーー」

 

 

『馬鹿が! 全部、こいつが考えてやったことだ! 舐めんな、ボケ!』

 

 

指を差しながら、『イービル』は俺のことをボケ扱いして、

 

 

ーーパシュッーー

『イービル』

 

 

雫ちゃんの体外へ排出された。倒れこむ雫ちゃんを抱きかかえて、ゆっくりと布団に寝かす。綺麗な黒髪も元に戻っている。

できるだけ乱れた浴衣姿を見ない俺、最高に紳士である。

 

 

「はぁぁぁぁぁ……」

 

 

思わずため息が出た。

なにがなんだか……いきなりの展開過ぎて、頭が追いついていない。

時計を見ると、針はちょうど真上で重なっている。確か大浴場は深夜1時までやっていたはずだ。

少し汗もかいてしまったし、温泉にでも浸かって、頭の中を整理したい。

俺は雫ちゃんを起こさないように、静かに部屋を出た。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「おや、奇遇ですねぇ」

 

 

大浴場にて。

俺は井坂深紅郎に出会った。

お互い全裸である。対抗手段がない。助けて。

 

 

「そう身構えないでください。捕って喰おうなんてつもりはありません」

 

「……なぜここにいる」

 

 

俺の脳裏に浮かんでいたのは、雫ちゃんと『イービル』のことだった。怪人態に変わらずメモリを使える人物に俺は心当たりがある。

 

『インビジブル』。

リリィ白銀という超絶可愛いマジシャンの女性が使った、透明になれるメモリだ。彼女は怪人にならず、人間の姿のまま能力を行使していた。そう仕向けたのは、目の前のこの男だった。

 

 

「井坂……『イービル』というメモリに心当たりはないか」

 

「『イービル』……あぁ、あれですか」

 

 

井坂は思い出したように、そう言った。

 

 

「『あれ』はどんなメモリだ!」

 

「興味のそそられないものでしたよ。端的にいえば、人格の形成。私が知る限りはそれだけの能力です」

 

「毒素は強いのか」

 

「いいえ。毒素が強ければ、その分メモリの力も増すというのが私の持論でね。だから、毒素の弱いメモリは興味がないんですよ」

 

「…………」

 

 

なら、大丈夫、か?

それに『イービル』本人も雫ちゃんに害を為したい訳ではなさそうだったし……。

 

 

「それよりも体の調子はどうです。私も医師の端くれ、自分の処置した患者の経過は気になるのでね」

 

「……副作用もなく、助かってるよ」

 

「フッ、そうですか。どうやら貴方に渡したメモリが適合しているようですね」

 

「? なんのことだ?」

 

「? 贈ったはずですよ。『R』のメモリを」

 

「???」

 

 

ん? 何を言ってるんだ、この男。

誰かと俺を間違えているんだろうか?

 

 

「……失礼。確認しなくてはならないことができました」

 

 

井坂の話を咀嚼してる間に、井坂は立ち上がる。どうやらもうあがるらしい。その去り際、井坂は思い出したように、俺にあることを告げた。

 

 

「あぁ、そういえば、前にお話しした『エコー』メモリの持ち主」

 

「彼女が『エコー』以前に使っていたのが、件の『イービル』ですよ」

 

 

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この温泉旅行は俺にひとつの疑念を植え付けた。

 

『エコー』を使っていたあの女性。

彼女は俺のせいで家族が死んだと言い残して、息を引き取った。

その彼女が『エコー』の前に使っていたのが『イービル』だと、井坂は言った。その言葉が嘘じゃないとしたら……。

 

もしかして。

雫ちゃんは、彼女の……。

 

 

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また3話更新してしまいました。
『D』編終了です。
話が大きく動き出しました。

え? 一線を超えたかですって?
この作品はR指定じゃないんですよ!!
いい加減にしてください!!
黒井くんだって怒りますよ!!
ねぇ、黒井くん! 黒井くん……?

イービル挿絵追加
【挿絵表示】

素敵な挿絵を描いてくださった絵師様作↓
ミルクティー様
https://skima.jp/profile?id=269737&sk_code=sha09url&act=sha09url&utm_source=share&utm_medium=url&utm_campaign=sha09url

主人公・黒井くん。彼には……。

  • 幸せになってほしい。
  • 幸せになってほしくない。
  • いちゃつけいちゃつけ
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