転生したらミュージアムの下っ端だった件(完) 作:藍沢カナリヤ
久々の原作沿いエピソードです。
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温泉旅行から数日が経った。
雫ちゃんはあの時周辺の記憶が飛んでいるらしく、俺はどうにか疲れてお互い寝てしまったと説明し納得してもらった。
あ、あとお付き合い始めました。
「結果オーライじゃないか」
「……おい、霧彦。俺に隠してることあるだろ」
事の顛末を話し終えた俺は、霧彦にそう告げる。
「……なんのことかな」
「言っただろうが! 井坂が俺にメモリを贈ったって言ってたんだよ。俺が見てないってことはお前が持ってんだろ!」
「………………」
はよ出せ、と手招きする。そんな俺を無視して、霧彦は皿洗いを続ける。ぐぬぬ、無視を決め込むつもりか! だが、今日ばかりは譲らんぞ。
雫ちゃんの一件もあるし、使うかどうかはともかく俺は普通に強いメモリを手に入れておきたいのだ。
「君の軽率さは私が一番知っている」
「……副作用はもうないんだ。別にいいだろうが!」
「…………君たちが危機に陥れば私が助けるさ」
そう言って、霧彦は懐から『ナスカ』を取り出し、置いた。まるで見せつけるように。
「いーよなぁ、霧彦くんは~! 『ナスカ』なんていうつよーいメモリを持ってるんだからさぁ」
「……確かに『ナスカ』は強いが、その分身体への負担も大きい。強いメモリとはそういうものだ」
「でも、使えるようになったじゃねぇか」
「…………」
それに関しては、霧彦は口を開かない。何かを隠しているのは確実なのだが……。
「……まぁ、いい。渡さなくてもいいけどよ、とりあえず何のメモリかは教えてくれよ。『R』だって話は聞いてるんだ」
「…………」
諦めたことが伝わったのか、霧彦は水道を止め、冷蔵庫を開けた。その中にそれはあった。
って、どこに保管してるんだ、こいつ。
「『リバース』……反転の記憶を持つメモリだよ」
「ふむ。これが井坂が言っていた『R』か」
どこから仕入れたのか分からんが、それは確かにシルバー加工のされたガイアメモリ。シルバーは『ナスカ』が属するゴールドメモリに次ぐ力をもつという。
そんなに強いなら、井坂本人が使えばいいのに……もしかして、あれか? これを使って、俺が死んだ後に使おうって魂胆か?
となると、
「……こいつは使えねぇな」
「君の浅い思慮でも、思い止まってくれてよかったよ」
「あぁん?」
なんかこいつ最近、俺のこと馬鹿にしてる気がする。
……前科があるから何も言えないけどさ。
「それよりも問題は彼女の方だろう。『イービル』だったか。雫ちゃんがガイアメモリを有していたとは思わなかったよ」
「それは俺も驚いたな。だが、まぁ多少性格が変わるだけならいいんじゃねぇか?」
幸い毒素も弱いらしく、しかも、使われたのは数回だというのだ。勿論、毎回あの調子で押し倒されては敵わないが……。
それよりも問題なのは、例の『エコー』の女性と雫ちゃんの関係性だ。まずはそれを彼女に聞いてみる必要がーー
ーープルルルルーー
「ん?」
そんな話をしていたら、俺のスマホが鳴った。画面を見れば、そこには……。
「フッ、すまねぇな。噂をすれば、愛しの彼女だぜ。独り身のお前には申し訳ないが、出させてもらうぜ」
「いや、私はそもそもバツイチだから別に……」
ーーピッーー
「やぁ、ハニーかい? 俺だよ、俺」
『おい! 馬鹿野郎! イマドコだ、ボケぇ!』
耳をつんざく叫び声。愛しの彼女と同じ声でありながら、人格の全く違うそれは、まさかっ!?
「お前、『イービル』かっ!?」
『雫が起きねぇんだよ!!』
「なっ!?」
『イービル』については大丈夫だろう。
そんな俺の判断は早速裏目に出たのかもしれない。俺は霧彦を連れて自宅を飛び出し、彼女の家に向かった。
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「話を聞かせてもらおうか、『イービル』」
彼女の住むアパートにて、俺と霧彦は机に肘をついた上に胡座をかく『イービル』と向かい合う。
まずは、だ。
「胡座をやめろ」
『ああ?』
「霧彦もいるんだから、ちっとは気をつかえ。愛しの彼女のあられもない姿を他の男に見せたくねぇんだ、このボケ」
『…………ふんっ』
俺の弁に一理あると思ったのか、『イービル』は正座に変えてくれた。さて、本題だ。
「どういうことだ、雫ちゃんが起きないだと?」
『……それはこっちの台詞だ。だから、仕方なくあたしが入ってるんだろうが』
「君が『イービル』か」
興味深そうに『イービル』を観察する霧彦。
「……本当に『ドーパント』にならずに、ガイアメモリを使っているとは驚いたな」
「井坂曰く、これも一種の『ドーパント』だそうだ……ってか、他人の彼女をじろじろ見るな」
『てめぇは人をこれ扱いするな』
というか話が進まねぇな。色々と一旦棚上げだ。
原因を突き止めねぇとな。
って、そういえば、昏睡状態……? ふむ?
「おい、『イービル』。ちょっと前髪上げて、額を見せてみろ」
『ああ?』
「いいから」
『………………これでいいかよ』
前髪を上げるのが少々恥ずかしいのか少し頬を赤らめながら、額を見せる『イービル』。中身はともかく、恥ずかしがってるガワは雫ちゃんだからすっごい可愛い。
って、いやいやいやいや。そうじゃなくて!
「……黒井くん、これは?」
「あぁ、ビンゴだ。この事件、もう見えたぜ」
彼女の額には『H』の文字。
はっ! 分かったぜ、犯人も、メモリもな。
待ってろ、福島元! 『ナイトメア』ドーパント!!
俺の可愛いハニーに害を為す野郎には、俺が鉄槌を下したるからなぁ!!
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福島元
原作『ナイトメア』事件の犯人。
ヲタサーの姫に振り回された可哀想な子。