転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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第30話 悪夢のR / いざ旅立たん、夢の世界へ

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『ナイトメア』メモリは中々に特殊なメモリである。

使い辛いメモリであるが故に、生成数自体が少ない。需要が低くければ、高価になる。その結果売れない。

だから、『ナイトメア』を売れるのは相当に腕の立つ密売人だ、というのが霧彦の見解であった。

 

その方針に従い、俺は休日ながらディガル・コーポレーションに出社していた。勿論、『ナイトメア』を売った密売人をデータベースにかけて探すためである。

 

 

「お、黒井じゃん!」

 

 

そんな俺の後ろから声がかけられる。振り返ると3人の男。

えぇと、確か……。

 

 

「佐藤と田中と吉田」

 

「佐山と田岡と吉川だ。いい加減覚えろ」

 

 

惜しい。一文字違いだった。仕方ない、全員モブ顔なのが悪いのだ。

 

 

「どしたん? なんか熱心にパソコンとにらめっこしてたみたいだけど」

 

「急ぎの仕事か?」

 

 

チャラめな口調で俺のパソコンを覗き込んでくる田岡。さっき名前を訂正してきた吉川はトーンを変えずに、聞いてくる。そして、

 

 

「なんだったら、あたし達が手伝ってあげてもいいわよぉ♡ 勿論、代金は黒井ちゃんのカ・ラ・ダでぇ、支払ってくれれば構わないわよぉ♡」

 

 

そっちの気がある佐山が言ってくる。

語尾に♡をつけるな。カラダを狙うな。

 

 

「達は止めろ。俺は忙しい」

 

「あんら、ま~たノルマぁ? 吉川ちゃんは仕事熱心ねぇ」

 

「しかたないっしょ、吉川はオレらとは違うからな! 現段階で一番、社長の婚約者に近い男だもんなぁ!」

 

「…………そんなものに興味などない」

 

 

俺を巻き込む形でやり取りを繰り広げるモブ顔3人。

こいつらはそれなりに成績がよかった記憶がある。ふむ……少々、探ってみるか。

 

 

「なぁ、ちょっと聞きたいんだが」

 

「ん? どしたー?」

 

「実はあるメモリを売った奴を探してるんだ」

 

「んー? なによ、あるメモリって?」

 

「………これ、なんだが」

 

 

俺は3人の表情が見えるようにして、『ナイトメア』のデータが映し出された画面を見せた。

 

 

「『ナイトメア』ぁ? こんなの売れる訳ないじゃん!」

 

「……いや、この間警察に捕まった男が使っていたのが『ナイトメア』だったらしい。少なくとも1本は販売した人間がいるはずだろう」

 

「んー、そういえばこの間、このメモリを持ち歩いてた人間がいたような……」

 

「!」

 

 

見せてよかった! 早速ビンゴだ。

佐山の肩を掴み、聞き出す体勢に入る。

 

 

「おい、佐山!」

 

「いやんっ、ダメよぉ♡ 黒井ちゃん……人が見てるわぁ♡」

 

「うるせぇ! 頬を赤らめるな! いいから『ナイトメア』を持ち歩いてた人間を教えろっ!」

 

「んっ、ちょっとさすがに痛いわよ……っ」

 

 

ここで聞き出さなくては! そんな気持ちが先行して、焦っていたのだろう。乱暴になりかけたところを田岡に止められる。

 

 

「ちょ、待てって! 本当にどうしたんだよ、黒井! なんかお前、変だぞ」

 

「……黒井、お前、それは職務に関することか?」

 

 

さらに吉川にそれを問い詰められる。

密売人には守秘義務がある。会社自体がそもそもアウトだし、顧客情報を扱う時にはさらに細心の注意を払わなくてはならない。

だから、勿論、メモリに関することを個人的に使うことは許されないのだ。吉川はそれを危惧している。

くっ、仕方がない。

 

 

「……実は社長からの勅命でな。組織の皆には内緒だよ?」

 

「「「!」」」

 

 

小声でのその一言が効いたのだろう。3人は一瞬で静かになってくれた。その間に俺の出任せフルコースは続く。

 

 

「ここだけの話なんだがな。その逮捕された『ナイトメア』の一件に、どうやら園崎霧彦が絡んでいるようなんだ」

 

「……なるほど。組織の金を持ち逃げしたっていうあの園崎霧彦か」

 

「あぁ、社長様の怒り様はお前らもご存じだろうが……俺は奴が雲隠れする前に、奴と仕事をしていてな。そのせいで、俺に社長様直々のご命令が下ったんだよ」

 

「ほえー! なんだよ、黒井も大変だなぁ」

 

 

……ふむ、なんとか誤魔化せたか。

ありがとう、横領犯の霧彦くん!

 

 

「そういうことなら力になるわ。黒井ちゃんがあの女王様に処罰されちゃうのはイヤだもの♡」

 

「……あぁ、助かる。ウインクを止めろ」

 

 

それから佐山は思い出すように語ったのだった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「おい、霧彦! 『ナイトメア』を持ってる人間が分かったぞ!」

 

『……あ、あぁ』

 

 

『ナイトメア』の持ち主であろう人物の元へ向かう途中、スマホを片手に霧彦と連絡をとる。だが、どうにも霧彦の様子がおかしい気がする。

 

 

「どうしたっ!」

 

『……いや、問題ない。それよりどこに向かえばいい?』

 

「雫ちゃんのアパートだ! 犯人はそこにいるはずだ!」

 

『なんだって?』

 

 

そう言っている間にも現着。出来るだけ早く来てくれと霧彦には伝え、通話は切ってある。

その一室のドアを開け、そのまま立ち入っていく。中にいたのは、

 

 

『あ? おい、血相変えてどうしたんだよ?』

 

「……っ、チャッピーはどうしたっ!!」

 

『……いや、あたしがこんな状態だから、ええと……アイナって女に預けてあるぜ?』

 

「っ」

 

 

しまった! やられた!!

なら、アイナちゃん家に今からでも乗り込むしかない。

 

 

『そうは言っても、あたしはアイナの家知らねぇぞ?』

 

「くっ」

 

 

先手を打たれたという訳か。

その後、合流した霧彦に事情を話して……。

 

 

「『ナイトメア』は現実で見つけ出しさせすれば脅威じゃない。だが……」

 

「あぁ、夢の中では無敵だ」

 

 

原作でもそうだった。あの照井竜ですら夢の中では敵わない。その悪夢の中では『ナイトメア』は思い通りに夢を改編できるのだから。唯一の手段はフィリップのように、他人の夢の中に入り込むことだが、そんなことをできる奴なんて、ここには…………ん?

 

 

「おい、『イービル』」

 

『あ? なんだよ?』

 

「お前って意志があるタイプのメモリなのか?」

 

『……ん? あー、雫が眠っている間に勝手に出てこれるんだからそうじゃないのか。知らねぇけど』

 

「…………ふむ」

 

「黒井くん……何を考えている?」

 

「霧彦、お前はアイナちゃんを探してくれ。恐らくチャッピー……いや、『ナイトメア』もそこにいる」

 

「君はまさかっ!」

 

 

現実世界はこれでよし。霧彦ならば『ナイトメア』程度に負けはしないだろう。あとは……。

 

 

「おい、『イービル』」

 

『だからなんだよっ! 言いたいことがあるなら一回でーー』

 

 

ーードンッーー

 

「うるせぇ、黙って俺に使わせろ」

 

 

時間がねぇんだ。うだうだと説明してる暇はない。

俺は『イービル』を壁に追いやり、そう告げる。反抗しても構わない。その時は無理矢理でも使ってやる。こっちは愛しの彼女の命が懸かってるんだ。

とそんな意気込みだったのだが、『イービル』は意外にも素直で……。

 

 

『ひゃ……ひゃい……っ』

 

 

頷いてくれたのだった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「さぁ、旅立とうか。夢の世界へ!」

 

『てめぇっ!! ぜってぇあとでコロすぅぅ////』

 

 

霧彦を送り出した後、俺は雫ちゃんの部屋で横になっていた。無論、『イービル』を俺に使った状態で眠ることで、『イービル』を『ナイトメア』と対等な状況に立たせるためだ。

……なのだが、何故かぶちギレる『イービル』。ってか、素直に使わせてくれたのに、なんだよ。女心と秋の空ってやつか?

 

 

『うるせぇ、シネッ!!』

 

「……うるさいのはそっちだ。俺は一刻も早く眠らなきゃいけないんだよ」

 

『~~~~~~ッ////』

 

 

雫ちゃん、待っててくれよ。

隣で眠る雫ちゃんの手を握りながら、瞼を閉じる。やがて、ゆっくりと意識が遠退いていき……。

 

 

ーーーーーーーー

彼女にするとしたら……。

  • 雫ちゃん(おどおど系清楚黒髪ロング)
  • イービル(オラオラ系白髪えっちお姉さん)
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