転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

31 / 122
第31話 悪夢のR / ほんとに、もうほんとに悪夢

~~~~~~~~

 

 

「…………さんっ、秀平さんっ」

 

「んっ……」

 

 

俺を呼ぶ声で、ゆっくりと目を覚ます。どうやら俺は眠ってしまったらしい。朝の日差しが目に眩しく、ぼんやりとした俺の頭を起こしてくれーー

 

 

「ふふっ、おはようございます。秀平さん」

 

 

いや、起こしてくれたのは日差しなんかではない。天使だ。

あ、いや、雫ちゃんだった。

フリルのついたエプロンをつけた雫ちゃん、いや、天使がそこにはいた。

 

 

「…………はっ!」

 

「ど、どうしたんですかっ?」

 

「いや……雫ちゃんが可愛すぎて、天使かと思ってね。いやはや、俺はいつの間に天に召されてしまったのかと思ったよ」

 

「っ、もうっ//// 朝ごはん、できてますから……っ」

 

 

赤くなる顔を隠すように、雫ちゃんは背中を向けると、そのまま部屋を出ていってしまった。

ふふっ、かわい子ちゃんめ。

 

 

「っと」

 

 

ベッドから体を起こすと、俺は服を着ていなかった。

ふむ、なるほどな。

 

 

「昨晩はお楽しみだったとーー」

 

『おい』

 

「!!」

 

 

不意に声をかけられた。声のした方を見ると、そこには雫ちゃんそっくりの白髪の女性がいて。

 

 

「な、なんだ、あんた!?」

 

『……なにしてんだ、早く服着ろよ』

 

「な、なんなんだ、お前は! 俺は今、昨晩の余韻に浸ってたんだぞ! 邪魔をするな!」

 

『はぁ?』

 

「ふむ……思い出せる。雫ちゃんの柔らかな肢体。その感触をーー」

 

『ッ』

 

 

俺の言葉が逆鱗に触れたようで、彼女はそのまま俺に馬乗りになる。って、な、なんだ!?

 

 

『……馬鹿なことを言ってんじゃねぇぞ!! 早く目覚ませるように一発ッ!!』

 

「キャーッ! 止めてぇぇ、襲わないでぇぇっ」

 

 

~~~~~~~~

 

 

「すみませんでした」

 

『ったく、ボケがっ!』

 

 

正気を取り戻した、というより、ここが夢の世界であることを思い出した俺は、ベッドの上、正座で『イービル』に説教されていた。いや、恫喝の方が近い。

 

 

『しっかりしやがれッ! ここはてめぇの夢だ。『ナイトメア』を早く探せ』

 

「…………お、おう」

 

 

探し方などまったく分からないが、とにかく意識を集中させてみる。『ナイトメア』……『ナイトメア』、出てこーい。

 

 

ーーコンコンーー

 

『「!」』

 

 

俺がそれを念じた途端に部屋に響くノック。2人で頷き合って、構える。

キィィっと扉を開けて入ってきたのはーー

 

 

「秀平くん!」

 

 

霧彦であった。なぜか全裸にガイアドライバーだけを巻いた霧彦がそこにはいた。

 

 

『「ギャァァァ!?!?」』

 

 

悲鳴がシンクロする。同時に、彼に向けて殴りかかる俺と蹴りかかる『イービル』。だが、それを霧彦は止めた。

 

 

「酷いことをするなぁ、私はねぇ……君を愛してるんだよ、秀平くん♡」

 

「気持ち悪いことを言うな!」

 

「私の愛を受け取ってくれないとは……仕方がない」

『ナスカ』

 

「!」

 

 

目の前で全裸の霧彦は『ナスカ』へと変身する。

くっ、戦闘かよ……。『ナスカ』とは大きな戦力差があるが、ここは俺の夢だ! どうにかしてやるよっ!!

覚悟を決め、取り出した『マスカレイド』を使おうとして、

 

 

「ちょっと待ってもらいましょうか」

 

 

もう1人の声に、意識が向く。そこにいたのは井坂深紅郎。なんだったら彼はなぜか半裸である。

 

 

「そこの彼は私の所有物です。勝手に手を出されては困りますねぇ」

『ウェザー』

 

 

目の前で急に始まる、俺を巡っての男同士の争い。

これは……。

 

 

「悪夢だぁぁ……」

 

『そ、悪夢』

 

「っ」

 

 

そのくぐもった声が聞こえたと同時に、周りの景色が変わった。恐らく学校だろう。沢山の机と椅子のある場所だ。

その声の主は、教卓に座っていた。見たことのあるフォルム……やはり来たな。

 

 

「『ナイトメア』!」

 

『そ。ここはワタシの作った悪夢の中。逃げられないワヨ』

 

「っ」

『マスカレイド』

 

『ムダ!』

 

ーーバチンッーー

 

 

『ナイトメア』の言葉と同時に、弾き飛ばされるメモリ。

くそっ、やっぱりここでは俺は無力だ。だからーー

 

 

『おらぁっ!!』

 

ーーバキィッーー

 

 

『ぐっ!?』

 

 

よかったよ、『イービル』。お前がいてくれて。

『ナイトメア』は不意を突かれた『イービル』に吹き飛ばされる。怪人態ではないとはいえ、彼女も『ドーパント』。なんだったら、彼女自身が精神体の『ドーパント』だから、この精神のみの世界である夢の中では相当に強いはずだ。

 

 

『オマエ、なんなのヨ!』

 

『ああ? そっちがなんなんだごらっ! あたしの主人格を勝手に眠らせやがってッ!』

ーーブンッーー

 

ーーバキッーー

『ぐぶっ!?』

 

『ふざけんじゃねぇっ! そのせいであたしまでッ』

ーードゴッーー

 

『ガっ!?』

 

 

「お、おぉ!」

 

 

強い。思ってた数倍強いじゃねぇか!

これなら押し切れる。あとはこっちで弱った『ナイトメア』を現実世界で霧彦が見つけ出してくれれば解決だ。

『ナイトメア』はメモリの性質上、他人の夢に潜っている間は現実世界では十分に能力を発揮できない。このままここで『イービル』が奴をしばき続けてくれればーー

……それにしても、

 

 

『おらぁっ!!』

ーーボゴッーー

 

『ぐ、がぁっ!?』

 

 

『イービル』だけは怒らせないようにしなきゃな。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

ある人物からの協力を得て、アイナちゃんの家を突き止めた。あの娘は中々のお嬢様のようで、親からもらったというマンションに住んでいるとのことだった。

案の定、黒服もいたが、少々眠ってもらい、私は彼女が普段使っているという部屋の前で、息を潜めていた。タイミングを計っているのだ。

 

 

「…………」

 

 

確かに部屋の中には気配がある。だが、一人ではなく、何人かいるような気がして……。

 

 

「その通り。今、その部屋の中で俺の同僚が仕事中だ」

 

「っ」

 

 

背後からの声。同時に、光球が飛んでくる。紙一重、どうにか避けつつそちらに向き直ると、そこにいたのは2人の男。どちらも見たことのあるような、ないような……言ってしまえばどこにでもいる顔立ちの人物だった。

 

 

「ありゃ、外れちった。吉川のせいだぜ?」

 

「……田岡、お前の命中精度が悪いだけだろう。ふざけて人間態でやるからだ」

 

「ちぇっ! 仕方ないなぁ!」

 

 

軽い言動の田岡と呼ばれた男は白いメモリをどこからか取り出す。彼はメモリを指の先で回すと、再び手中に入れたメモリを起動した。

 

 

『エンジェル』

 

 

『エンジェル』。

私でも聞いたことのないメモリ。それを額に挿した田岡は、『エンジェル』ドーパントへと変貌を遂げた。

筋肉質な上半身と対照的な異様に細い下半身。それを隠すような腰布も純白で。白い翼もさることながら、頭上に浮かぶ天使の輪に目がいく。そして、額に埋め込まれた宝石のようなもの。

本能が告げていた。この敵はまずい!

 

 

『フフッ、死んじまえ~~!』

ーービュンッーー

 

「っ!?」

『ナスカ』

 

 

放たれた光線。

私はメモリを起動し、『ナスカ』へ変わり、それを超高速で回避する。

……っ、危なかった。あとコンマ数秒、遅れていたら私の身体はあの光線で跡形もなく消し去られていただろう。

 

 

『ありゃりゃ~、また避けられちったなぁ』

 

「…………田岡。中の佐山を回収する間、ここを頼む」

 

『りょーかい!』

 

 

吉川と呼ばれた方の男は、『エンジェル』にそう言うと、アイナちゃんの部屋に手をかざす。すると、まるでその空間が削り取られたように丸く穴が開いた。

この2人……。

 

 

『人間態で、能力を……?』

 

『まぁまぁ、細かいことは気にしないでさ! もう少し遊ぼうぜ!』

 

 

ーーーーーーーー

 

 

アイナの部屋。

そこにアイナは確かにいた。だが、彼女は両手を後ろ手に縛られており、口もガムテープで塞がれていた。近くには、雫の愛犬・チャッピー。チャッピーも眠らされており、それは言わずもがな『ナイトメア』の能力によるものである。

そして、その場に『ナイトメア』もいた。横になり、暴れまわっている。そこに現れた吉川。

 

 

「……佐山。遊びはそこまでだ」

 

『んもうっ! イヤよっ! もう少しで黒井ちゃんが手に入るのっ』

 

「外に園崎霧彦が来ている。奴らはやはり繋がっていた」

 

『~~~~ッ! せっかく黒井ちゃんの彼女とかいうふざけた女を眠らせてやったのにぃぃ! この女っ、黒井ちゃんのなんなのヨォォ』

 

「……佐山」

 

『んもうっ! 許さないわ! あたしと黒井ちゃんの邪魔をーー

 

 

 

「ーーそんなに死にたいか」

 

 

 

『ッ』

 

 

低く冷たい声であった。

吉川はただをこねる『ナイトメア』・佐山の腹に軽く触れていた。

 

 

「俺は黒井以外のすべての人間を殺すことを許可されている。お前も例外ではない」

 

『っ、わ、わかったわよ……』

 

 

そう言って、佐山は変身を解いた。

 

 

「……悪かったわ。アナタに従う」

 

「分かればいい。このまま田岡も連れて、ここを離れる。お前のメモリを使え」

 

「……えぇ」

 

 

佐山はその場に『ナイトメア』を捨てた。代わりに取り出したのは緑色のガイアメモリ。

 

 

『グリフォン』

 

 

そのメモリを耳に挿すと、彼の身体は3倍ほどに膨れ上がり、鷲の上半身と獅子の下半身をもつ『グリフォン』ドーパントへ変貌を遂げる。

そのまま、吉川を肩に乗せ、巨大な翼を羽ばたかせた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

ーーバサッーー

 

『っ、なんだ!?』

 

 

巨大な翼の羽ばたきを耳にする。目の前の『エンジェル』ではない。これは……?

 

 

『撤退か、残念!』

ーービュンッーー

 

 

そう言うと『エンジェル』は光球を天井に撃ち込み、穴を空けた。逃げるつもりか! 私もそれを追うために、翼を展開し舞い上がる。

そこで目にしたのは、巨大な鷲の『ドーパント』とそれに乗る吉川の姿だった。

 

 

「園崎霧彦。黒井秀平に伝えておけ」

 

「『テンセイシャ』は俺達が排除する、とな」

 

 

『っ、待て!』

 

『ほい!』

ーービュンッーー

 

 

追おうとして、『エンジェル』の光線で牽制される。

 

 

『あ、その部屋の中に女子高生と犬がいるから、早く助けてあげなよ、イケメンさん』

 

『!』

 

 

今は彼女たちの安全が第一。

そう判断した私がマンションに戻り、再び上空へ戻った時には、奴らは既に消えていた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

以上が霧彦から聞いた事の顛末である。

同僚のモブ顔3人衆・佐藤、田中、吉田。

彼らは俺の敵で、俺が『転生者』であることを知っている。

なるほど。

俺の敵は『仮面ライダー』だけじゃないというわけだ。

 

まぁ、そんなことよりーー

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「ごめんな、雫ちゃん……俺のせいで、君を危険な目に合わせちまったっ」

 

「い、いえ……こうして、今、黒井さんが……だ、抱きしめてくれるだけで、わたしは……////」

 

「……俺は君を守るよ。だから、今夜、雫ちゃんの部屋に行ってもいいかな?」

 

「っ、は、はいっ////」

 

 

「…………節度を持ちたまえよ、黒井くん。あと危機感ももつといい。君を狙ってる人間がいるんだ」

 

「ウチも被害あってるんですケドー」

 

「ぐるるるるるぅ」

 

 

なんか霧彦の声が聞こえる? アイナちゃんの文句とあの馬鹿犬の声も聞こえるって?

ハハハハハ! いいや、外野の声など俺には聞こえない!!

 

次回!

イチャイチャラブラブ同棲編スタートだぜ!!

 

 

ーーーーーーーー




新勢力登場回『R』編終了です。
次回、新章!

『エンジェル』はメモリに憑かれた男さんから
『グリフォン』はヴァイロンさんから頂きました。
また、吉川のメモリもとある方のアイディアを頂いております。ネタバラシまでお待ちください。

彼女にするとしたら……。

  • 雫ちゃん(おどおど系清楚黒髪ロング)
  • イービル(オラオラ系白髪えっちお姉さん)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。