転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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第38話 解放者T / 黄昏の街

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依頼を受けた俺と霧彦は早速調査に入った。

とはいえ、霧彦は街を自由に歩けない。実質、実地調査は俺となるが、30近い成人男性が女子高生連続誘拐について調べるとなると、少々事案の香りがする。下手したら通報ものである。だから、俺は……。

 

 

「女子高生連続誘拐……な。聞いてるぜ、俺たちのところにも依頼が来てる」

 

 

鳴海探偵事務所に駆け込んだ。

他力本願? 仕方ない、適材適所ってやつだ。

 

 

「なら、話は早い。今、集まっている情報を俺にもくれ」

 

「はっ、こっちは依頼で調べてるんだ。守秘義務ってやつがあるんだよっ!!」

 

 

格好つける左。だが、俺は原作知識があるんだぜ?

こういうときの最適な落とし方を、俺は知っている。

 

 

「はいはーい、えっとねぇ……」

 

「っておい、亜樹子ぉぉ!! 何、俺の探偵手帳見せようとしてんだっ!?」

 

「だまらっしゃいっ! 依頼人の要望よっ!」

 

「なっ!? お前っ!」

 

「フッ」

 

 

そう。俺は鳴海亜樹子に既に依頼料を渡している。

つまりは正式な依頼人って訳だ。

他の依頼人の個人情報を聞いているわけではないから、鳴海亜樹子はすらすら話してくれる。どうよ、俺の機転!

……あっ、ちなみに依頼料はアイナちゃんを心配する親御さんが渡してきたものである。なんかすっげぇ額だった……。それを全部払ってやったぜ!

 

 

「女子高生連続誘拐事件。風都内の女子高校生が失踪してるって話ね」

 

「大体が学校や遊びから帰ってこないっていう親御さんから警察への訴えで、判明してるみたい。勿論、人によるけど、家出だろうって娘もいるし、優等生で通っていた娘もいて……被害者に女子高生である以外に、一貫性はないみたい」

 

「なるほど」

 

 

一貫性はない、ね。

左翔太郎という男のことだ、今その一貫性を足で稼いで見つけ出そうとしているところだろう。きっとそれは上手くいくだろうな。

 

 

「……失踪した現場を見た人間はいないのか?」

 

「あ、うん。いるけど、いまいち要領を得ないのよねぇ」

 

「要領を得ない? どういうことだ」

 

「うん。見たのは失踪した被害者の1人と塾で一緒だった娘なんだけど、夕方に2人で塾に向かっている時、彼女がコンタクトを落としたらしいのよ。しゃがんで2人で探して、本人がそれを見つけた時にはいなくなってたって」

 

「目を離した瞬間に、ってことか。その時間はどのくらいだ?」

 

「えっと……10秒、だって」

 

 

10秒で人間1人をその場から連れ去る。まさにガイアメモリが絡んでいないとできない犯行だな。

 

 

「…………あんたの相棒はなんて言ってるんだ」

 

「ノーコメント……と言いてぇところだが、正直お手上げだ。あまりにもキーワードが少なすぎる」

 

「まぁ、そうだよな」

 

 

流石の魔少年も情報がなければどうしようもない。

仕方がない。

 

 

「囮捜査だな」

 

「……囮って、高校生を囮にでもするつもりかよっ!」

 

 

確かに女子高生の知り合いはいる。だが、彼女を囮にするほど俺は屑ではない、はずだ。

 

 

「…………いるだろう。この事務所には適任が」

 

「お? あたしかっ!? いやぁ、いくら浪速の美少女とはいえ、女子高生役はぁ……イケるっ!」

 

 

クネクネと謎の動きをする鳴海亜樹子を放置して、俺は事務所内にある帽子のかけてある壁に向かう。

 

 

「ま、まさかっ!?」

 

「そのまさかだよ」

 

 

その壁に偽装した扉を俺は勢いよく開けた。

 

 

「フィリップく~~~ん! 女装の時間だぞぉぉぉ!!」

 

 

そこに彼はいた。わぉ、やっぱり美少年。

後から入ってくる2人より先に俺はフィリップににじり寄っていく。

 

 

「く、黒井秀平!? 何を言っているんだっ!?」

 

「何をだと? お前らが女子高生連続誘拐事件を調べているのは知っている。情報がないなら足で、いや、体で稼ぐのだぁ!!」

 

「っ、理解はしたが、僕はやらないぞっ!」

 

 

だろうと思ったよ。だから、俺は実力行使に出るぜ!

 

 

『ライアー』

 

『お前はイケイケ女子高生ギャルだっ!!』

 

 

ーーーーーーーー

 

 

夕暮れ時、俺と左翔太郎、鳴海亜樹子の3人は、1人の人物の後を尾行していた。

金髪にミニスカートといういかにもな格好をした女子高生……いや。

 

 

「……くそっ、フィリップ……なんて姿に……っ」

 

「……くそっ、なんであたしじゃないんやっ!」

 

 

隣でウジウジとうるさい2人を無視して、俺は尾行を続ける。

そう、心までギャルになったフィリップが俺達の先にはいた。クイーンとエリザベスとのショッピング帰りだということもあり、その手には大量の戦利品があって。

 

 

「すげぇな、『ライアー』。ありゃあ、もう本物じゃん」

 

 

俺はそのメモリの素晴らしさを再実感していた。

絶対後でしばいてやるという2人の視線を感じ、文句のひとつでも言ってやろうと振り返った直後だった。

 

 

「きゃぁぁぁっ」

 

 

悲鳴が聞こえた。フィリップのものだ。

 

 

「おい、左!」

「分かってる!」

 

 

俺の声よりも早く、彼は飛び出していた。腰には変身ベルト。

そして、上空には鳥形のガイアメモリ・『エクストリーム』も飛翔していた。

 

 

「変身!」

 

 

左の掛け声と同時に、『エクストリーム』がフィリップの体を回収して、そのまま『W』へと姿を変えた。しかも、『エクストリーム』になっており。

 

 

『……翔太郎、彼は来ているね』

 

『あ、あぁ……あそこに』

 

 

少し離れたところから『W』にやっちまえと指を指す。

 

 

『後で一発、彼を殴ってもいいかな』

 

『……そうしてくれ』

 

 

『彼ら』は再び向かい合う。突如として現れたその『ドーパント』に。

 

 

『な、なんだっ! 『仮面ライダー』っ!?』

 

 

辺りの夕焼けの色と同化するような体色。身体もぼんやりと靄がかかっているようで、その正確な形は分からない。だが、その頭だけは形がハッキリしている。凹凸のない真ん丸な頭が夕日を反射し、それ自体がまるで夕日のように輝いていた。

 

 

『君は……なるほど、『トワイライト』。黄昏の記憶を内包したメモリか』

 

『黄昏……夕方ってことか』

 

『あぁ、どうやらこいつの能力は、夕暮れ時に周りの景色と完全に同化する能力と夕日の光を利用した熱線。それから対象とした人間を自らが作り出した空間に連れ込める力、か』

 

『なるほどな。そこに拐われた被害者たちはいるってことだな』

 

 

『エクストリーム』は地球の記憶と直結している。姿さえ見てしまえば、メモリの正体や能力まで一瞬で解析できるのだ。これぞ公式チート!

弱点や能力の分かった相手だ。『W』は瞬く間に、『トワイライト』を追い詰める。気づけば、『彼ら』の剣は尻餅をついた奴の首に突きつけられていた。決着だ。

 

 

ーードプンッーー

 

「は?」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

『ちぃっ! 『仮面ライダー』が来るなんて、聞いてないぞ! オレは女子高生を囲ってハーレムを作れるって聞いたから協力してやったのにっ!』

 

『協力……? なんのことだい?』

 

『くそぅ、くそぅっ!』

 

 

『W』に追い込まれた『トワイライト』は、駄々っ子のようにその場でジタバタと暴れていた。

 

 

『おい! 協力ってなんのことだっ!』

 

 

『トワイライト』を胸倉を掴んで起こし、再度、問いかける『W』。その姿にビビリながら『トワイライト』は、彼らの後ろ、先ほど黒井がいた辺りを指差した。

 

 

『男を1人、『黄昏の街』に引きずり込めって……そうしたら守ってやるって言われたんだよぉ』

 

『『黄昏の街』……『トワイライト』が持つ空間生成能力か!』

 

 

 

「そゆこと!」

 

 

 

突然の声に『W』は辺りを見渡した。だが、声の主はどこにもいない。

 

 

「2人とも! 上!」

 

『上!?』

 

 

亜樹子の言う通り、上を見上げるとそこには1人の男が立っていた。空に立っている時点でおかしいのだが、それ以上におかしいのは男には翼が生えており、頭上には天使の輪も存在していた。

 

 

『お前がこいつに協力させた黒幕か』

 

「んー、半分は正解。オレは黒幕じゃねーし」

 

『では、君は何者だい?』

 

「オレ? オレは田岡成人。またの名をーー」

 

 

『エンジェル』

 

 

『エンジェルドーパント、だ。よろしくな~!』

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「尻が、いてぇ……」

 

 

『W』の戦いの最中に、俺は落ちた。

周りを見渡すと、さっきまでと変わらない鮮やかな夕焼け。一瞬なにも起こらなかったのかとと思ったが、違う。辺りには制服を着た女の子達が倒れており、ここが『トワイライト』が作ったという空間なのだと理解した。

 

 

「俺はここにご招待を受けたって訳か」

 

 

女子高生しかいない空間。それだけ聞けば、中々ステキな場所なんだろうが、俺には雫ちゃんという愛しの恋人がいる。早くこんな場所からは脱出しないとな。

 

 

 

『やぁ、黒井くん』

 

「っ」

 

 

聞き覚えのある声がした。

さっき見渡した時にはいなかった人物がそこには立っていた。『ウェザー』ドーパント……つまり、

 

 

「井坂!」

 

『常に夕焼けに照らされた街。気に入ってもらえたかな』

 

「あぁ、気に入ったよ。あんたもそんな格好してないで、この景色をその目で眺めたらどうだ?」

 

『普通の人間では、どうもこの夕焼けに耐えられないようでね。『ドーパント』態になっていなくては、流石の私も耐えられない』

 

 

奴も周りを眺めながらそう言う。

 

 

『その点、君はやはり素晴らしいぃ。ガイアメモリの毒素をほとんど受けず、体外へ排出できるその体質は、私の治療によってより完璧なものに近づいているようだぁ』

 

「素敵な場所に連れ込んで……なんだ、愛の告白かよ」

 

 

気味の悪いことを口にする井坂にそんな皮肉を返す。

もちろん、ノーセンキューだ。俺には雫ちゃんがいるからな。

 

 

『あぁ、その彼女も勿論、ここにお連れしたよ』

 

「っ!?」

 

 

井坂の言葉に呼応するように、現れる竜巻。その中には、

 

 

「……しゅう、へい……さんっ」

 

「っ、雫ちゃんッ!!」

 

 

雫ちゃんがいた。駆け寄ろうとして、雷に阻まれる。

 

 

『事件で気を引いたことで、彼女を簡単に誘拐することができましたよ』

 

「……『トワイライト』は罠だったってことか」

 

『えぇ。まさか『仮面ライダー』と協力するとは思いませんでしたが。ともかく彼女はこちらの手の内にある』

 

「…………何が目的だ」

 

『簡単です。『リバース』を使え』

 

 

井坂はそう告げた。

 

 

「まずは雫ちゃんを離せ。話はそれからだ」

 

『いいや、メモリを使うのが先だ』

 

 

膠着状態だ。だが、やがて、井坂は竜巻の中に捕らえていた雫ちゃんを地面へ降ろした。

 

 

『さぁ、メモリを使え』

 

「………………」

 

 

あぁ、使ってやるよ。

だが、

 

 

『ジャイアント』

 

『雫ちゃんを危ない目に合わせたお前を殴り飛ばしてからなッ』

 

 

ーーーーーーーー




井坂戦開始。
『トワイライト』案はメモリに憑かれた男さんからいただきました。
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