転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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第41話 愛しきE / 強襲と招集

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「ご、ご心配、おかけしましたっ」

 

 

秀平さん不在の黒井家でのこと。

わたしは霧彦さんに頭を下げました。それを見て、微笑む霧彦さん。

構わないよ、君が元気になってくれたことが一番さ。そうも言ってくれました。

 

 

「ありがとう、ございます」

 

「君が落ち込んでいたままでは、黒井くんが悲しむ……彼を連れ戻すためには我々が元気でなくてはね」

 

「……はい」

 

「早速だが、『イービル』メモリを貸してもらえるかな」

 

「はい」

 

 

霧彦さんに促され、わたしは『イービル』のガイアメモリを渡します。それを……あれはなんでしょうか、緑色の機械に差し込みました。すると、

 

 

『フロッグ』

 

 

機械音と共にカエル型になって、

 

 

『……これでいいのか?』

 

「! 『イービル』さんの声が!」

 

 

霧彦さんが言うには、それはフロッグポットという機械で、本来は『仮面ライダー』の持ち物だそうです。元々は録音した声を変えて流すボイスチェンジャーの機能があるようなんですが……。

 

 

「流石はフィリップくんだ。これで3人で話ができるね」

 

『……あたしの声、蛙から出てんのかよ……うげっ』

 

「あはは……」

 

 

そんなやりとりもそこそこに、霧彦さんは話を切り出します。

 

 

「さて、黒井くんの状態は先ほど電話で話した通り。つまり、完全には消えていないそうだ」

 

「は、はい」

 

『『リバース』だったよな』

 

「あぁ。反転の記憶をもつメモリだと聞いているよ。それで『人格が反転』したのだろう、というのが、名探偵の見解だ」

 

「……人格の、反転」

 

 

わたしと『イービル』さんのようなものでしょうか。

そう訊ねると、霧彦さんは恐らくそうだろうと頷いてくれました。なるほど……それなら少しイメージしやすい、かも。

 

 

『……そのメモリを使えば、あいつは戻るのか』

 

「そこは……正直、分からない。なにしろ『リバース』を黒井くんに渡した張本人・井坂深紅郎は、もうこの世にはいないんだ。確かめようがないさ」

 

 

そのことについては聞いてました。

あの井坂先生がガイアメモリに関わっていたこと。

そして、それを使って何人もの人の命を……。

あんなにいい先生が、というショック以上に、もしかしたら井坂先生に秀平さんを紹介してなかったら、こんなことにはならなかったんじゃないかという自責の念が湧いてきてしまって。

 

 

『たらればを考えたって仕方ねぇよ』

 

「っ、そうだねっ」

 

 

悪い方に陥りかけた思考を『イービル』さんは止めてくれる。本当に心強い、です。

 

 

『とにかくあいつに『リバース』メモリをもう一回使わせてみりゃハッキリするわけだ』

 

「そうだね。だが、『リバース』はシルバーランク…相当に強力なメモリだ。それを使わせるということは、万が一戻らなかった場合、危険が伴う……この意味が分かるね」

 

「…………」

 

 

霧彦さんの言いたいことは分かってる。

『イービル』さんによると、『イービル』というガイアメモリ自体は強いものではなく、戦闘能力は皆無なんだそう。だから、わたしでは戦えない。だから、霧彦さんに任せろって。そういうことなのは分かってます。でも、

 

 

「それでも、わたしは……秀平さんを助けたいんですっ」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「はぁ……彼に怒られるのを覚悟しておこう」

 

「あ、ありがとう、ございますっ!」

 

 

困ったように笑う霧彦さん。

その後、わたしは霧彦さんから戦いの基礎訓練を受けるように約束して、黒井家を後にしました。

 

 

ーーーー黒井家・霧彦視点ーーーー

 

 

ーーピンポーンーー

 

 

雫ちゃんが帰ってから約10分後、呼び鈴がなった。ドア越しに来訪者を確認すると、そこにいたのは例の3人組のうちのひとりだった。たしか『エンジェル』を使っていた男のはず。

 

 

「……あ、目が合った」

 

「っ」

 

 

向こうからこちらは見えないはず。それにもかかわらず、目が合ったなどという彼は、

 

 

『エンジェル』

 

「!?」

 

 

ドアの前で『エンジェル』メモリを起動していた。咄嗟に私はドアから離れる。同時に部屋のドアが吹き飛んだ。

 

 

『やほい! 遊びに来たぜ、イケメン』

 

 

流石に自宅にまで襲撃してくるとは思わなかったから、『ナスカ』メモリは外出用のスーツの内ポケットにある。クローゼットまで5歩分。どうにかなるか?

 

 

「っ、会社からの斡旋とはいえ、賃貸物件だよ。弁償はしてもらえるんだろうねっ」

 

『弁償? んーあー、吉川に聞いてみるわ』

 

「あぁ、ぜひそうしてくれたまえ。家主が不在な上、私も会社からも世間からも追われる指名手配の身なんだ」

 

『それはそれは……フッ!!』

ーービュンッーー

 

 

『エンジェル』の手から撃ち出された光球は、クローゼットの半分を破壊する。

 

 

『そこに何かあったんだろ? 視線でバレバレだぜ』

 

「…………あぁ、危なかったよ」

 

 

『フロッグ』

 

 

「間一髪、といったところかな」

 

「!」

 

 

私の足元には、『ナスカ』を持ってきた『フロッグ』がいた。今回ばかりは『仮面ライダー』たちに感謝だな。

 

 

「室内で……いや、もうこうなってしまったら関係ないか。遠慮なくやらせてもらおう」

 

『ナスカ』

 

 

メモリを起動し、展開したガイアドライバーにメモリを差し込む。体が超人へと変化する。いつもの感覚だ。

 

 

『さぁ、これで終わりだ』

 

 

たった今、その翼で飛び立った『エンジェル』に剣先を向ける。

 

 

『逃がさないさ。賠償金は払ってもらうよ』

 

 

私も翼を広げ、飛び上がる。そのまま剣を構えて突っ込む。

 

 

ーーギィィィンッーー

 

『……出たなぁ、『ナスカ』!』

 

『光の剣か。流石は『エンジェル』……名前の通りのビジュアルだ』

 

『剣技で勝負してみようぜ、イケメ……ンッ!!』

 

 

『エンジェル』が光剣を振るう。

まずは私の右肩を狙った一閃。それを躱す。

続いて横薙ぎで足を狙われるが、咄嗟に下段に下ろしていた剣で受けた。

 

 

『やるぅ~☆』

 

『それほどでもーーないよッ!』

ーーブンッーー

 

 

今度はこちらから。

お返しとばかりに、右肩を狙う。それをもう1本の光剣で受け止める『エンジェル』。

なるほど。光の剣は出し入れ自由ということか。

 

 

『そ! それにーー』

 

ーーギュイーー

ーーギュイーー

ーーギュイーー

ーーギュイーー

 

 

本数も自由。これはなかなか……。

 

 

『……厄介な相手だ』

 

『フフッ、それはどーも!』

ーーザンッーー

 

 

4方向からの同時斬撃が私に向かってくる。

避けられない……いや、よく見ればっ!

 

 

『超高速ッ!』

 

 

私の視界に写っていたのは、4本の光剣の微妙なズレだった。恐らく常人であれば……いや、昔の私でもそのズレは見切れなかっただろう。その隙を今の私は見逃さなかった。

避ける。1本、2本、3本。

 

 

『っ!? なんで当たらないんだよっ!?』

 

『言っただろう』

 

 

ーーザンッーー

 

 

最後の1本を躱すと同時に、前に出た私の斬撃は、彼の腹部を確かに捉えた。そして、そのままーー

 

 

『これで終わりだと』

 

 

ーー私は剣を振り抜いた。

 

 

ーーーー雫視点ーーーー

 

 

わたしが爆音を聞き、秀平さんの家に駆けつけた時には、もう戦いは終わっていました。

ボロボロになったリビング。その瓦礫の上に、霧彦さんは座っていて。

 

 

「やぁ、雫ちゃん。困ったよ、住む家がなくなってしまった」

 

 

困ったように笑っていました。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「…………」

 

 

黒井の家から数km先の廃ビルに彼・田岡は横たわっていた。戦闘で敗北したのだから当然ではあるが、見るからにボロボロで腹には横一文字に切傷が残っていた。

そんな彼の顔に、誰かの影が落ちる。

 

 

「……遊びすぎだ」

 

「吉川、かぁ……ごめんって、そんな……怖い顔すんなよぉ」

 

 

吉川は彼を見下ろす形で、田岡を待つ。明らかに重傷。それにもかかわらず吉川が手を貸さないのは、横たわる男がすぐに立ってくるというのが分かっているから。

 

 

「っし!」

 

 

案の定、田岡は体を跳ね起こした。戦闘の跡は残っているが、既に血は止まっていた。

驚異的な回復力。彼のそれを吉川は知っていたのだ。

 

 

「お前は自分の『ハイドープ』能力を過信しすぎている」

 

「あー、吉川のいう通りですぅ、分かってるってば。でも、あのイケメン……たぶん前よりも適合率が上がってるぜ。それに佐山を倒したのもあいつだろ?」

 

「脅威となるなら今度こそ排除しろ。それだけだ」

 

「……はぁ、吉川は遊びがねぇなぁ」

 

 

肩をすくめる田岡。彼の言葉を無視して、吉川は本題を切り出す。

 

 

「招集があった。主がお呼びだ」

 

 

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