転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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第48話 Aを取り戻せ / 一騎討ち

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田岡の言う通り、少し先に進むとその鉄の扉はあった。ビルが倒壊したはずのこの場所でも歪まず残っているのだ。財団の力がこんなところにも働いているのかもしれないな。

 

 

「入るぞ」

 

 

相当重いようで、ゆっくりと扉を開く。バンッと音を立てて、開け放たれた扉。埃臭さはなく、定期的にこの扉が開けられているのだと理解した。

そのまま階段を降りていく。地表から徐々に気温が下がっていくのが分かる。階段には電気は通っていないようで、一段一段下がるのにも苦労しているようだった。

やがて……。

 

 

「久しぶりだな、この場所も」

 

 

辿り着いたのは、『メモリー』で見た地下牢だった。周囲は暗く、慣れてきた目でもなんとか見える照度。

懐かしむ、というよりは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる『俺』。まぁ、あんな出来事があった場所だ。その心中を察するのは容易いことだった。

……って、おい、誰かいる。

 

 

「…………」

 

 

モブ顔3人衆の最後の1人・吉川。奴は通路を塞ぐように立っていた。

まぁ、予想はしていた。そりゃあ、ここにいるよな。吉川は何も言わず、懐からメモリを取り出した。言葉は不要ってやつか。ハードボイルドじゃねぇか。

 

 

『ホール』

 

『リバース』

 

 

2人は同時に『ドーパント』へと変貌を遂げる。その間は約3mほど。お互いに動かない。いや、動けない。

『リバース』の能力は、対象に触れることでほぼ確実に相手を葬ることができる。それは吉川も知っているだろうから、警戒し、簡単には近づかない。

対して『ホール』の詳しい能力を『俺』も俺も知らない。ガイアメモリ戦において、能力を知らないまま突っ込むのは悪手だ。こちらも動けない。

だが、

 

 

『分かっている。時間の無駄だ』

 

 

俺の言いたいことを理解しているようで、『俺』はそう呟いた。そして、『俺』は動き出す。

 

 

ーーグニャリーー

 

 

反転させたのは自らの足元。床の表面を反転させて、土の壁を作り出す。まずは相手の視界を奪ったのだ。恐らく『ホール』の能力で穴を開けてくるだろうが、それでも一瞬は自由になれる。

 

 

ーーグンッーー

 

 

反転し続け、土壁の範囲をを奴のいる方へと広げていく。それに合わせて、『俺』も壁の向こうにいるであろう奴との距離を詰める。元々狭い場所だから、左右に避けることもできないはず。壁に穴を開けた瞬間に奴の身体に触れて反転させるのが『俺』の狙いだった。

……だが、いつまで経っても壁は壊されない。

 

 

『……?』

 

ーーグニャリーー

 

 

不審に思い、警戒しつつも能力を解除した『俺』の目の前には、既に『ホール』の姿はなかった。

って、おい! なんでいねぇんだよ?

 

 

『……狼狽えるな。正面に穴を開けたのでなければ、左右どちらかに逃げ込んだのだろう。集中が欠ける。黙っていろ』

 

 

相変わらずの高圧的な態度でそう言う『俺』。最高に態度が悪い。嫌な奴である。ともかく、いつでも動ける体勢で構え、全方向に意識を向けた。

 

 

ーードプンッーー

 

『!』

 

 

その音は頭上から。奴は穴を頭上に開け、天井を伝ってきていた。

 

 

ーーバギッーー

 

『ぐ……ッ』

 

 

蹴りを顔面に受ける。モロに入った。ダメージは少なくはない。だが、これでーー

 

 

ーーガシッーー

 

『殺った』

 

ーーグニャリーー

 

 

蹴られながらも『俺』は奴の足を掴んでいた。反転が始まる。

触れた右足の装甲が裏返っていく。そのまま反転は伝播して腿へ、腹へ、胸へ、頭へ。止まることなく、10秒もすれば、『ホール』の体は完全に裏返っていた。

……って、げぇぇぇ、グロッ!?

 

 

『……醜悪だな。こうなってはただの肉塊だ』

 

 

そう言って、『俺』はそれを蹴り転がす。

えぇぇ……流石の俺もドン引きなんですけど。たぶんリアル肉体があったら吐いてたね、こりゃあ。はぁぁ、こっちの方向でR18展開は止めようぜぇ……。見るならエッチな方がいいってぇ……。

 

 

『…………』

 

 

俺の文句は完全無視。『吉川だったもの』が抵抗できないことを確認した『俺』は変身を解いた。そして、地下牢の先を再び見据える。後味のいい勝利では決してないけど、これで先には進める。この先に、

 

 

「奴がいる」

 

 

あぁ、決着をつけようぜ。

それでお前の未練もなくなるだろ?

 

 

「…………そうだな」

 

 

俺達は言葉少なながら会話をして、地下牢の更に奥。分厚い鉄の扉を開けた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「さて、2戦目だ。黒井秀平」

 

「……は?」

 

 

扉を開けた先はまだ地下牢。そして目の前にいたのは、吉川だった。

おい、おいおいおい。なんだ、そりゃあ……。もしかして、あれか、さっきの戦闘は幻で、こいつが本物の吉川ってオチかよ?

 

 

「不思議そうな顔をしているな。考えていることを当てよう」

 

「何故殺したはずの吉川がここにいるのか」

 

「答えは明白だ。吉川という人間は複数人いる。それだけだ」

 

 

クローン、って訳かよ。倫理観バグってやがる。

って待て。複数人、だと?

 

 

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

「同じ顔の人間がこうも揃うと、不気味なことこの上ない」

 

 

同感だ。少なくとも5体の吉川が俺達の目の前にはいた。そのうちの1体が告げる。

 

 

「改めて自己紹介をしよう。俺は……俺達は『吉川』。主の命に従うために作られた複製兵士だ」

 

 

複製兵士。それも財団が出資した技術の賜物ということか。本当に幅広くやってんな、財団Xはよっ!!

 

 

「手間だが、やることは変わらない。全てを駆除して先に進む」

 

「主の命により、黒井秀平、お前を捕獲する」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

『黒井秀平を捕獲しました。そちらへ連行します』

 

「早く連れてきなさいッ」

 

 

白服は吉川からの通話を切り、椅子の背もたれに身体を預けた。

 

 

「チッ、どれだけ時間をかけているんですか。無能共め」

 

 

白服にとって、吉川はただの駒であり、八つ当たりの道具に過ぎない。特に、ここ最近は自分の思い通りにいかない報告も多く、3体ほど嬲り殺しにしたところだった。替えは利くため、それに関しては問題はないが、複製にも手間がかかる。それがまた苛立つのだ。

だが、その苛立ちもここまで。

 

 

「『転生者』黒井秀平は手に入れました」

 

 

何の因果か、元の黒井秀平に使った『アナザー』メモリは、自らと同じ『転生者』をこの世界に呼び込んだ。

しかも、報告によれば、彼は複数のガイアメモリを使用できるギフトを授かっているようで、白服はそれを心の底から欲していた。

 

 

「財団の技術力があれば、彼の体質は私に移植できるはずです」

 

「そうして、私はこの世界の……いいえ、ガイアメモリの王になるのです。複数のメモリを取り込める能力は、私にこそ相応しい」

 

 

白服は、1本のガイアメモリを掲げる。

色は白。イニシャルは『E』。メモリの名前はーー

 

 

 

「『エターナル』」

 

「直に『貴方』の力を、私の支配下に置きましょう」

 

 

 

ーーーーーーーー




『A』編、終了。
本編とネット版を並行しながら書きたいと思います。
次回から最終章になる予定です。

いつもご感想&ご愛読ありがとうございます。
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ネット版AtoZオマージュ。上位2名でふざけます!

  • 黒井秀平(主人公)
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