転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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第5話 Nは手を出すな / 不可視の襲撃者

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当面生活していく目処が立ったから、はっきりさせておく。

 

俺は能動的に原作に介入することはしない。

 

仮面ライダーとは戦わないし、だからといって、組織と敵対もしない。組織内で成り上がろうって気概もない。基本的に俺が積極的に動くことはない。

俺の目的は、とにかくこの世界で生きることだ。

元の世界に戻ることも考えたが、そもそも元の世界では死んでいるし、戻りたくない事情ってやつもある。俺はこの世界で生きていくしかないのだ。

 

この件だって、最終的にはメモリ使用者を見つけ出して、そいつを組織に差し出すだけ。社長様のご機嫌をとる。そうすれば始末されはしないし、クビってこともないだろう。給料も新しく作った口座を登録し直せば、目先の生活は確保できる。

 

ともかく、だ。

俺は積極的には戦わないことを、ここに誓おう。

 

 

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「……ここは、コンビニ?」

 

 

不可視の襲撃者を見つけるために、霧彦を連れ、俺は件のコンビニに舞い戻っていた。早速、霧彦が訝しげな表情を俺に向けてくる。

 

 

「あぁ、俺はここで襲撃されたんだ」

 

「それは、どういう……?」

 

「腹痛を起こしてトイレに篭っていたら、ゲキレツノックをされた」

 

「な!?」

 

 

絶句する霧彦を尻目に、俺はコンビニに入る。

 

 

「君は嘘をついたのか!」

 

 

遅れて入ってきた霧彦が詰め寄ってくるが、それに、嘘は言ってない、言い方を工夫しただけだと返す。俺の返答に頭を抱え、ため息を吐く霧彦。そして、少々怒りの見える表情で告げてくる。

 

 

「これは冴子に報告させてもらう。件の一件、ただのいたずらで、ガイアメモリは関係ないとね」

 

「そいつはどうだろうなぁ」

 

「……何?」

 

「ゲキレツノックをされた俺はぶちギレて、すぐに個室から飛び出し、怒号を上げた。だが、そこに人影はなかった。それは紛れもない事実だ」

 

「それがなんだって言うんだ。きっと素早く移動した、それだけだろう?」

 

「いいや」

 

 

霧彦の予想を否定し、俺は店員に話しかけた。この間、俺が注意を受けた店員だ。よっぽどこの時間は暇なんだろう。急に話しかけてきた俺の質問にも軽い調子で答えてくれた。

あの時のことは覚えているようで、俺に注意する前に誰かトイレから走り去っていったかと聞いたが、そんな人物はいなかったという。ついでに、監視カメラの映像も確認してくれて、それの裏付けも取れた。それから、

 

 

「あの時、凄く激しいノックの音がしたよな?」

 

「? いや、そんな音はしなかった。急にあんたがトイレの個室から出てきて叫んだんだ」

 

 

これが怪現象でないなら、一体なんと言うんだ?

そう言いながら、俺はドヤ顔で霧彦に訊ねた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「100歩譲って、君の言う不可視の襲撃者がメモリを使っていたとしよう。だとしても、これは仮面ライダーを倒せるほどの『ドーパント』とは思えない」

 

 

コンビニのトイレを少しだけ調べさせてもらい、外に出ると、霧彦は俺にそう言ってきた。

……まぁ、一理ある。

正直な話、俺も襲撃者のメモリは、そんな大層な力をもったメモリだとは考えてない。メモリの正体が『インビジブル』だったとしても、組み合わせなければ透明になるだけのものだ。そこまでの脅威ではない。

 

 

「それでも、見えないっていうのは、それなりにアドバンテージを取れるだろ?」

 

「…………」

 

 

今の霧彦は、相当仮面ライダーに辛酸を舐めさせられている。可能性が少しでもあるならば、それを探るのは当然の思考だ。

それにしても、店員の話を聞くに、この状況はどうしても『インビジブル』の能力とは噛み合わない。『インビジブル』には実体があるから、扉を思いっきり開ければその人物には当たるはずだ。それに俺にだけノックが聞こえたってのもおかしい。

 

 

「うーむ」

 

 

目を閉じての長考。勿論、俺に特別な力はないから、地球の全てを記憶した本棚に入れる訳もなく。

ただ、こうして外的情報を入れずに、歩きながら考えるだけでも、頭の中を整理することはできる。

 

 

「おい、待ちたまえ」

 

 

数メートルほど歩いただろうか。霧彦に肩を掴まれ、やむなく目を開けた。

 

 

「なんだよ」

 

「目を閉じながら歩かない方がいい。それにそちらの路地裏は、あまり衛生的ではない」

 

 

彼の言葉通り、どうやら俺は思ったよりも目を閉じながら移動していたようで、目の前には1本の路地裏。暗くじめっとした空気が感じられる。

なるほど。まさに舞台の裏側だ。風都にもこういうところはあるものなんだな。

 

 

「おい、君!」

 

 

興味本位で俺は歩を進めた。舞台の裏側を覗いてみよう。少し行って戻ればいいだろう。その程度の軽い気持ちだった。

1歩、その路地に踏み込んだ瞬間に

 

 

ーードンドンーー

 

「っ!?」

 

 

その音は聞こえた。

ノックの音。いや、ここはただの路地裏だ。叩くドアなどあるはずがない。

 

 

ーードンドンドンドンーー

 

 

まただ。音はさらに激しくなる。

 

 

「何かがおかしい! メモリを!」

『ナスカ』

 

「っ」

 

 

警戒した霧彦は、懐から組織の幹部のみが持つガイアドライバーと『ナスカ』のメモリを取り出し、『ドーパント』へと変身する。だが、俺はーー

 

 

『早くメモリを使わないか!』

 

 

そうは言うが、『マスカレイド』は普通のメモリとは違う。もし『マスカレイド』になり、下手に強烈な攻撃でも受けてみろ。それが許容範囲外なら、俺は即死。爆散して終わりだ。

 

 

ーードンドンドンドンドンドンドンドンーー

 

 

そうしている間にも音は大きく、激しくなっていく。

早くメモリを使うんだ! 霧彦ーー『ナスカ』は叫ぶ。その声を聞きながら、俺はーー

 

 

ーードゴッッッーー

 

 

ーー気づけば吹き飛ばされていた。

そのまま壁に激突し、吐血してしまう。転生後の人生で初めての激痛だった。

 

 

「が、っ……!?」

 

 

くそっ、息ができねぇ……。

だが、すぐに立ち上がれ。構え直せ。この一撃で終わる訳がない。次の攻撃が来る。ここで立ち上がらなきゃ、本当に死んじまう!

 

 

ーーゴソッーー

 

「…………っ」

 

 

身体中を激痛が走る中、どうにか懐からメモリを取り出す。本当は使いたくない。だが、これ以上のダメージを生身で受ければ、確実に死ぬ。背に腹は代えられない。

 

 

「死んだら恨むぞ、襲撃者っ!」

 

 

 

『マスカレイド』

 

 

 

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