転生したらミュージアムの下っ端だった件(完) 作:藍沢カナリヤ
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メモリは俺の首へ。
いつもの身体が作り替えられる感覚を経て、俺の姿は変わっていた。だが、ただの『マスカレイド』ではない。
顔に張り付いていた骨の色が銀色へと変化し、両手のグローブも鈍い銀色に輝いている。
『これが本当の『マスカレイド』……』
目を閉じれば、この姿の『マスカレイド』の能力が頭に流れ込んでくる。なるほどな。こいつは雑魚戦闘員の比じゃねぇ!
再び目を開けて、白服と向かい合う。
『来い!』
「ひぃぃぃぃっ!?」
『って、おい! 逃げるな、ごらぁっ!!』
一目散に逃げていく白服。自称『王』が逃げるんじゃねぇ! 同じ『転生者』として恥ずかしいんですけどぉ?
無論、相手はただの人間だから、『マスカレイドの脚力』でも十分追いつく。
「ひ、ひぃぃっ、止めてくださいぃ」
『……こいつ、マジかよ』
白服は腰を抜かして、命乞いをする。その姿はどう見ても『王』ではなく、小物。三下でしかない。こんな情けない奴に人生を狂わされたと知らないまま、『あいつ』は逝けてよかった。そんなことをしみじみと思う。
『ほら、立て』
「い、痛い、痛いですっ!」
腕を持って引っ張ると、更に情けない声をあげる。
ったく……。
『じゃあ、自分で立て』
「わ、私をどうするつもりですかっ!?」
『っ、うるせぇなぁ』
耳元で喚きたてるな。鼓膜が震えるんだよ。
んで、まぁ、どうすっかなぁ。
正直、『あいつ』の本懐を果たしてやろうとは思っていた。だが、ここまでの小物だと考えものである。こんなんでも財団Xの人間だろうし、風都署の怖くて赤いお巡りさんに引き渡すのが……。
『ひ、ひひ……ヒヒヒヒヒッ』
『あ? 何を笑ってーー』
『ゾーン』
それは一瞬だった。奴の姿に油断していた俺は、奴が懐から1本のガイアメモリを取り出したのを見逃していたのだ。瞬時に、それを蹴り飛ばす。
『お前、メモリを隠し持ってやがったな!?』
使ったのは『ゾーン』。幸いなことに起動しただけで、奴自体は『ドーパント』への変貌を遂げていない。間一髪だっ……た?
『お、おい。なんでまだメモリ持ってんだ……?』
「本当に甘いですねぇ……きっと元の黒井秀平ではこうはいかなかったでしょう。しかし、お陰で助かりました」
『さっき蹴り飛ばしたよな、隠し持ってたメモリは』
「えぇ。ですが、私の体質があれば、起動するだけでそのメモリの能力を発動できるのです!」
『な!?』
貴方の体質と同じように『転生者』には、その奇跡相応の力が与えられるのですよ。白服はそう言って、『ゾーン』で呼び寄せた白色のメモリを起動した。
『エターナル』
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『くそっ!? 聞いてねぇぞ! なんであんなメモリを持ってんだよっ! あんなもんあるなら伝えとけよぉぉ! ホウレンソウ!! ホウレンソウ!!』
奴の情報を詳しく伝えなかった黒井くんへの恨み言を吐きながら、俺は全力疾走で逃げていた。さっきとは立場が逆転していてつらたんなのだが、仕方がない。
『『エターナル』……あんなもんチートだぁぁ!!!』
それは、原作でも『W』を相当苦しめたメモリだった。純正化した『仮面ライダー』としての能力しか知らないが、『ドーパント』になったところできっとその強さは変わらないだろう。特に『マキシマムドライブ』に関しては、対象のメモリの機能停止とかいう、とにかくやべぇ性能をしている。
だから、俺はその名前を聞いた瞬間に、背中を向けて走り出したのだ。とりあえず俺の姿が『マスカレイド』のままだから、『ドーパント』としての能力は単純に機能停止って訳でもないのか……?
『その上、起動しただけでメモリを使えるだと……?』
こっちとら色んなメモリを使えます。その代わり体調を崩します、だぞ? どこぞの変態医師のお陰で副作用はないとはいえ、割に合わないし、向こうだけ強いわ、便利だわで……卑怯じゃないですかぁぁ?
『願わくば、変身失敗しててほしいが……』
『エターナル』は気分屋だと言われている。その性能を十二分に発揮できるのは、この世でただ一人だろう。
『あんな小物が使ったとあっちゃあ、原作ファンに叩かれるぜ』
軽口を叩きながら、俺は逃げ続ける。地下牢から地上に続く階段を上がっている途中で、ふと違和感に気づく。
『……あ? なんで地下牢の上の階に……また地下牢があるんだよ……?』
思い出しても、そんな構造ではなかったはずだ。この長い地下牢を抜けて、その上階はもう地上だったのに……。
「不思議に思うことでしょう。フフッ、私も驚きを禁じ得ません」
混乱する俺に声をかけるは白服。地下牢の奥、暗がりから姿を見せた。姿を変えていないのを見るに、変身は失敗した、でいいんだよな?
『何をしやがった』
「貴方もご存じでしょう? 『エターナル』が内包しているのは『永遠』。このメモリの力を活用したことで、地下牢自体が『永遠』の中に捕らわれているのですよ」
『なるほど。脱出できねぇってことか』
「御明察」
聞いたことのない使い方だった。ガイアメモリはそんなことも出来るのかと驚嘆、それと同時にひとつの疑問をもつ。
……カマをかけてみるか。
『……お前、頭悪いだろ?』
「は?」
『いや、『エターナル』を普通に使えば、戦闘は一瞬で終わるだろうが。それを妙な使い方をして……バカなんじゃねぇの?』
「はぁぁぁぁっ!?!?」
俺の煽りに簡単に乗ってくる白服。煽り耐性が無さすぎて、なんか心配になるレベルだ。だが、俺の思惑通りに白服はペラペラと喋り出す。
「貴方も『転生者』ならば、このメモリの扱いづらさは知っているはず! 事実、機能停止は使うことが出来ない! にもかかわらず、こんな使い方を思いつき、実行できるのは私だけですっ! あの大道克己ですら不可能ッ!!」
「このメモリ自体はまだ私を認めていないようですが、それも時間の問題です! 貴方の体質を取り込み、大量のメモリの力を以て屈服させる。そうすれば、私はあの園崎琉兵衛すら凌駕するガイアメモリの『王』になれる!!」
『……そ、そっか』
凄まじい熱量に、ちょっと引いてしまった。それを見て、白服は更に激昂する。思った以上にヒートアップした奴は、手に持っていたケースを見せつけてきた。その中には無数のガイアメモリがあって……。
「見なさい! ここにあるのは私が厳選し、蒐集した25本のガイアメモリ! 私はこの全てを起動しただけで使えるのです!」
『……そりゃあ、また……』
「奇しくも貴方とやることは似てしまいましたが、それでもメモリの数が違う。性能が違う。『マスカレイド』なんて最底辺のメモリと適合した貴方とは違うのですよッ!!」
「終わりです、黒井秀平ッ!」
『…………はぁ、本当に分が悪りぃな』
高笑いする白服を見ながら、深いため息をひとつ吐いて、構える。
状況はきっとさっきの戦いよりもずっと悪い。覚悟を決めろ。
『来い、三下』
悪いが、俺は生きて帰らせてもらうぜ。
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