転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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第51話 Sと共に / あのー、エターナルが相手とか聞いてないんですけども

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メモリは俺の首へ。

いつもの身体が作り替えられる感覚を経て、俺の姿は変わっていた。だが、ただの『マスカレイド』ではない。

顔に張り付いていた骨の色が銀色へと変化し、両手のグローブも鈍い銀色に輝いている。

 

 

『これが本当の『マスカレイド』……』

 

 

目を閉じれば、この姿の『マスカレイド』の能力が頭に流れ込んでくる。なるほどな。こいつは雑魚戦闘員の比じゃねぇ!

再び目を開けて、白服と向かい合う。

 

 

『来い!』

 

「ひぃぃぃぃっ!?」

 

『って、おい! 逃げるな、ごらぁっ!!』

 

 

一目散に逃げていく白服。自称『王』が逃げるんじゃねぇ! 同じ『転生者』として恥ずかしいんですけどぉ?

無論、相手はただの人間だから、『マスカレイドの脚力』でも十分追いつく。

 

 

「ひ、ひぃぃっ、止めてくださいぃ」

 

『……こいつ、マジかよ』

 

 

白服は腰を抜かして、命乞いをする。その姿はどう見ても『王』ではなく、小物。三下でしかない。こんな情けない奴に人生を狂わされたと知らないまま、『あいつ』は逝けてよかった。そんなことをしみじみと思う。

 

 

『ほら、立て』

 

「い、痛い、痛いですっ!」

 

 

腕を持って引っ張ると、更に情けない声をあげる。

ったく……。

 

 

『じゃあ、自分で立て』

 

「わ、私をどうするつもりですかっ!?」

 

『っ、うるせぇなぁ』

 

 

耳元で喚きたてるな。鼓膜が震えるんだよ。

んで、まぁ、どうすっかなぁ。

正直、『あいつ』の本懐を果たしてやろうとは思っていた。だが、ここまでの小物だと考えものである。こんなんでも財団Xの人間だろうし、風都署の怖くて赤いお巡りさんに引き渡すのが……。

 

 

『ひ、ひひ……ヒヒヒヒヒッ』

 

『あ? 何を笑ってーー』

 

 

『ゾーン』

 

 

それは一瞬だった。奴の姿に油断していた俺は、奴が懐から1本のガイアメモリを取り出したのを見逃していたのだ。瞬時に、それを蹴り飛ばす。

 

 

『お前、メモリを隠し持ってやがったな!?』

 

 

使ったのは『ゾーン』。幸いなことに起動しただけで、奴自体は『ドーパント』への変貌を遂げていない。間一髪だっ……た?

 

 

『お、おい。なんでまだメモリ持ってんだ……?』

 

「本当に甘いですねぇ……きっと元の黒井秀平ではこうはいかなかったでしょう。しかし、お陰で助かりました」

 

『さっき蹴り飛ばしたよな、隠し持ってたメモリは』

 

「えぇ。ですが、私の体質があれば、起動するだけでそのメモリの能力を発動できるのです!」

 

『な!?』

 

 

貴方の体質と同じように『転生者』には、その奇跡相応の力が与えられるのですよ。白服はそう言って、『ゾーン』で呼び寄せた白色のメモリを起動した。

 

 

『エターナル』

 

 

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『くそっ!? 聞いてねぇぞ! なんであんなメモリを持ってんだよっ! あんなもんあるなら伝えとけよぉぉ! ホウレンソウ!! ホウレンソウ!!』

 

 

奴の情報を詳しく伝えなかった黒井くんへの恨み言を吐きながら、俺は全力疾走で逃げていた。さっきとは立場が逆転していてつらたんなのだが、仕方がない。

 

 

『『エターナル』……あんなもんチートだぁぁ!!!』

 

 

それは、原作でも『W』を相当苦しめたメモリだった。純正化した『仮面ライダー』としての能力しか知らないが、『ドーパント』になったところできっとその強さは変わらないだろう。特に『マキシマムドライブ』に関しては、対象のメモリの機能停止とかいう、とにかくやべぇ性能をしている。

だから、俺はその名前を聞いた瞬間に、背中を向けて走り出したのだ。とりあえず俺の姿が『マスカレイド』のままだから、『ドーパント』としての能力は単純に機能停止って訳でもないのか……?

 

 

『その上、起動しただけでメモリを使えるだと……?』

 

 

こっちとら色んなメモリを使えます。その代わり体調を崩します、だぞ? どこぞの変態医師のお陰で副作用はないとはいえ、割に合わないし、向こうだけ強いわ、便利だわで……卑怯じゃないですかぁぁ?

 

 

『願わくば、変身失敗しててほしいが……』

 

 

『エターナル』は気分屋だと言われている。その性能を十二分に発揮できるのは、この世でただ一人だろう。

 

 

『あんな小物が使ったとあっちゃあ、原作ファンに叩かれるぜ』

 

 

軽口を叩きながら、俺は逃げ続ける。地下牢から地上に続く階段を上がっている途中で、ふと違和感に気づく。

 

 

『……あ? なんで地下牢の上の階に……また地下牢があるんだよ……?』

 

 

思い出しても、そんな構造ではなかったはずだ。この長い地下牢を抜けて、その上階はもう地上だったのに……。

 

 

「不思議に思うことでしょう。フフッ、私も驚きを禁じ得ません」

 

 

混乱する俺に声をかけるは白服。地下牢の奥、暗がりから姿を見せた。姿を変えていないのを見るに、変身は失敗した、でいいんだよな?

 

 

『何をしやがった』

 

「貴方もご存じでしょう? 『エターナル』が内包しているのは『永遠』。このメモリの力を活用したことで、地下牢自体が『永遠』の中に捕らわれているのですよ」

 

『なるほど。脱出できねぇってことか』

 

「御明察」

 

 

聞いたことのない使い方だった。ガイアメモリはそんなことも出来るのかと驚嘆、それと同時にひとつの疑問をもつ。

……カマをかけてみるか。

 

 

『……お前、頭悪いだろ?』

 

「は?」

 

『いや、『エターナル』を普通に使えば、戦闘は一瞬で終わるだろうが。それを妙な使い方をして……バカなんじゃねぇの?』

 

「はぁぁぁぁっ!?!?」

 

 

俺の煽りに簡単に乗ってくる白服。煽り耐性が無さすぎて、なんか心配になるレベルだ。だが、俺の思惑通りに白服はペラペラと喋り出す。

 

 

「貴方も『転生者』ならば、このメモリの扱いづらさは知っているはず! 事実、機能停止は使うことが出来ない! にもかかわらず、こんな使い方を思いつき、実行できるのは私だけですっ! あの大道克己ですら不可能ッ!!」

 

「このメモリ自体はまだ私を認めていないようですが、それも時間の問題です! 貴方の体質を取り込み、大量のメモリの力を以て屈服させる。そうすれば、私はあの園崎琉兵衛すら凌駕するガイアメモリの『王』になれる!!」

 

 

『……そ、そっか』

 

 

凄まじい熱量に、ちょっと引いてしまった。それを見て、白服は更に激昂する。思った以上にヒートアップした奴は、手に持っていたケースを見せつけてきた。その中には無数のガイアメモリがあって……。

 

 

「見なさい! ここにあるのは私が厳選し、蒐集した25本のガイアメモリ! 私はこの全てを起動しただけで使えるのです!」

 

『……そりゃあ、また……』

 

「奇しくも貴方とやることは似てしまいましたが、それでもメモリの数が違う。性能が違う。『マスカレイド』なんて最底辺のメモリと適合した貴方とは違うのですよッ!!」

 

 

 

「終わりです、黒井秀平ッ!」

 

 

 

『…………はぁ、本当に分が悪りぃな』

 

 

高笑いする白服を見ながら、深いため息をひとつ吐いて、構える。

状況はきっとさっきの戦いよりもずっと悪い。覚悟を決めろ。

 

 

『来い、三下』

 

 

悪いが、俺は生きて帰らせてもらうぜ。

 

 

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