転生したらミュージアムの下っ端だった件(完) 作:藍沢カナリヤ
欲しいです……(切実)
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「死んだら恨むぞ、襲撃者っ!」
『マスカレイド』
俺はガイアメモリを首に突き刺した。瞬間、体構造が変化する感覚に包まれ、俺は『マスカレイド』に変身を遂げる。
同時に身構える。襲撃者からの衝撃を少しでも防ぐためだ。
ーーゴンッーー
『ぐぅぅっ!?』
想定通り、攻撃が来た。だが、どうにか上手い位置で攻撃を受けられたようで、ダメージは最低限。
『マスカレイド』は最弱のガイアメモリだ。
特殊な能力はなく、ただ身体能力を向上させる程度。勿論、そこらの人間よりは強いとはいえ、戦闘慣れしている相手ならば人間にもやられる可能性すらある。そのレベルの弱さだ。このまま『ドーパント』の攻撃を受け続けたら、いずれは許容範囲を裕に超え、爆散してしまう。
だから、今の俺が取るべき最善手は、『ナスカ』に守ってもらうこと。『ナスカ』は高ランクのメモリだ。俺1人守るのは余裕だろう。
だから、俺はすぐに走り出した。痛みはあるが、『ナスカ』の元へ行けばどうにかなるはずなのだ。
ーードンドンドンドンーー
『くっ、またか!』
だが、襲撃者は簡単にそれをさせてくれなかった。
この音っ! また攻撃が来る!
俺は咄嗟に足を止め、周囲を警戒する。今の俺では、いつでも受け身を取れるように身構えておくことしかできない。
『超高速!』
ーードンッーー
『っ』
不意に突き飛ばされる俺。レベル2と呼ばれる『ナスカ』の特殊能力・超高速によって、霧彦に押されたのだと分かるのは、地面に転がってからだった。
何をしやがる。そう声を荒げようとして、言葉を飲み込んだ。
見れば、俺がさっきまで立っていた辺りの地面が大きく抉れていたのだ。
もし、彼が俺を突き飛ばしてなければ、俺はきっと……。
『無事かな』
『お陰さまでな。擦りむいた膝が少し痛いくらいだ』
『それは何よりだ』
軽口を言い合いながらも、周囲への警戒は無論解かない。解けない。
相手が『ドーパント』であることは明らかだが、あまりにもそれ以外の情報が無さすぎる。攻撃手段も、敵の位置すらも分からない。メモリの能力にいたっては、想像すらできない。
『ここは引くべきだ』
『同感だな』
『超高速!』
『ナスカ』に腕を掴まれて、俺は姿の見えない襲撃者からどうにか逃げおおせたのであった。
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「姿を消し、同時に高い攻撃力を備えた『ドーパント』。そんなメモリ、私の記憶にはない」
「あぁ、姿を消すだけのメモリだけなら知ってるが、あんな高威力の攻撃を仕掛けてくるタイプじゃないな」
「…………ところで、大丈夫かい?」
ーーギュルルルルーー
公衆トイレの外にいる霧彦の質問に、俺の腹が返事をする。
そう。またである。
なんなんだろうな、これは……。
どうにかその戦いを終えた俺は手を拭きながら、肩をすくめる。
「最近、どうも腹の調子がな……」
「いい内科を紹介しようか」
「ぜひともお願いしたいもんだ」
ほんとに切実である。
ーーprrrrーー
とそこで着信音が鳴った。
俺、ではない。とすると霧彦のものなのだろうが、彼の方を見ると、表情が強張っているのが分かった。相手は恐らくーー
「失礼…………私だ。どうしたんだい、冴子」
やはり女社長・園崎冴子か。
進捗でも聞かれてるのかと思ったが、どうやら会話を盗み聞きするに違うようだ。
電話口からでも聞こえるのは、彼女の怒りのこもった声で。霧彦の様子から、それが霧彦にとってもよくない知らせなのだと察する。
「あぁ。至急対処しよう」
そう言って、霧彦は通話を切った。
何かあったのかと訊ねると、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「メモリの密売人が相次いで襲撃されたようだ」
「密売人が……? メモリでも奪われたのか?」
「いいや、ガイアメモリは無事だそうだ。けれど、死者も出ているそうでね。冴子がご立腹だ。君との調査はここで打ち切り。戻って事態に対処することになったよ」
「!」
ガイアメモリを風都にばらまき、実験を行う。密売人を襲うのは、そんなディガル・コーポレーションの目的自体を揺るがす事態。
もしかしたら、これで俺の一件が有耶無耶になってくれるかもしれない。
そうなら願ったり叶ったりだが……。
「…………その襲撃犯、俺達を襲った奴と同一人物じゃないか?」
このタイミングで、俺と同じ組織の黒服を襲う者が現れた。偶然にしては出来すぎている。
「私もそれは考えていた。とにかく私は会社に戻り、動く。ただのメモリ使用者ならともかく、組織に逆らう者なら、粛清しなくてはならないからね」
「そうか」
「君も気をつけたまえ」
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霧彦の監視が外れて、喜んだのも束の間、俺はすぐにそれに思い至った。
もしかして、俺ーー
「今襲われたら、ひとたまりもないのでは?」
ヤバいかもしれない。そう考えた俺は、すぐに行動を起こした。
まず、俺単体で襲撃者を倒すのは不可能だ。霧彦もいないことを考えると、身を守るのも一苦労。
そんな事情や原作への介入度合いを考慮した上で出した結論が、
「もしもし。そちらは鳴海探偵事務所でよろしかったでしょうか?」
鳴海探偵事務所、つまりは『仮面ライダー』にこの件を密告し、倒してもらうことである。
不可視の襲撃者について認識しているのは、恐らくミュージアム関係者のみで、奴はまだ風都市民には手をかけていないと考えられる。もし市民に被害が出ていれば、『仮面ライダー』が動かないわけがないからだ。
だから、密告する。情報を渡して、彼らに動いてもらう。
原作介入をしないと宣言したばかりで、それを破るのも考えものだが、身を守るためだ。仕方がない。
「はい、こちら鳴海探偵事務所、所長の鳴海亜樹子です! 事件のご依頼ですかー?」
公衆電話の受話器越しに聞こえてきたのは、所長の鳴海亜樹子の声。
ふむ、好都合だな。正直な話、探偵2人と関わりをもつのは避けたい。下手に関われば、俺の正体を探られ、暴かれる可能性があるからだ。ここは彼女を通して伝えてもらうとしよう。
「そちらの探偵に伝えてくれ。『ドーパント』が組織の密売人を襲っている」
「な!? なにそれ、私聞いてない!」
そりゃそうだ。言ってない。本来ならば、原作にない話だろうし。
「不可視の襲撃者と俺は呼んでいる。今は組織の密売人だけをターゲットにしているようだが、相手はメモリ犯罪者。いつ市民に標的が変わるか分からない。探偵たちには、その『ドーパント』を退治してもらいたい」
「え、あっ、ちょっと!? そんな大切な話なら直接事務所に来てもらってーー」
「1度しか言わない。キーワードはーー」
「ちょ、ちょちょちょっ!?」
バタバタと電話口から音がする。メモを取る準備でもしているのだろう。数秒後、彼女の慌てたような声を聞き、俺は彼女にそれを伝えた後、電話を切った。
公衆電話を出て、ひとつ伸びをする。
「これでよしっ」
あとはとっとと、ここを去ってアリバイでも作ればおしまい。不可視の襲撃者は『主人公』たちがどうにかしてくれるだろう。
…………そう。
この時点で、俺はその程度に考えていた。全てを甘く見ていたのだ。
『主人公』の直感ってやつを。
『主人公』の好奇心ってやつを。
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「その人物、怪しいね。アキちゃんから聞いた話だと、探偵たち……つまり、この事務所に探偵が複数いることが分かっていたようだし」
「あぁ。それに普通、街の人間は『ドーパント』なんて名称使わねえ」
鳴海探偵事務所。その地下にある秘密の部屋にて。
少年は本を片手に呟き、彼の隣にいたスーツ姿の青年も、その意見に同意した。
「その上、『鳴海』探偵事務所の探偵が鳴海亜樹子でないことも知っていた。ふふっ、実に興味深い。ゾクゾクするねぇ」
「興味深いってのは同意できないが、街の人に被害が及ぶかもしれないって方は聞き捨てならねえな。フィリップ、頼めるか」
「……あぁ。勿論だ、翔太郎」
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