転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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園崎家、4体セットで一万円かぁ
欲しいです……(切実)


第6話 Nは手を出すな / 接点

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「死んだら恨むぞ、襲撃者っ!」

 

『マスカレイド』

 

 

 

俺はガイアメモリを首に突き刺した。瞬間、体構造が変化する感覚に包まれ、俺は『マスカレイド』に変身を遂げる。

同時に身構える。襲撃者からの衝撃を少しでも防ぐためだ。

 

 

ーーゴンッーー 

 

『ぐぅぅっ!?』

 

 

想定通り、攻撃が来た。だが、どうにか上手い位置で攻撃を受けられたようで、ダメージは最低限。

 

『マスカレイド』は最弱のガイアメモリだ。

特殊な能力はなく、ただ身体能力を向上させる程度。勿論、そこらの人間よりは強いとはいえ、戦闘慣れしている相手ならば人間にもやられる可能性すらある。そのレベルの弱さだ。このまま『ドーパント』の攻撃を受け続けたら、いずれは許容範囲を裕に超え、爆散してしまう。

 

だから、今の俺が取るべき最善手は、『ナスカ』に守ってもらうこと。『ナスカ』は高ランクのメモリだ。俺1人守るのは余裕だろう。

だから、俺はすぐに走り出した。痛みはあるが、『ナスカ』の元へ行けばどうにかなるはずなのだ。

 

 

ーードンドンドンドンーー

 

『くっ、またか!』

 

 

だが、襲撃者は簡単にそれをさせてくれなかった。

この音っ! また攻撃が来る!

俺は咄嗟に足を止め、周囲を警戒する。今の俺では、いつでも受け身を取れるように身構えておくことしかできない。

 

 

『超高速!』

ーードンッーー

 

『っ』

 

 

不意に突き飛ばされる俺。レベル2と呼ばれる『ナスカ』の特殊能力・超高速によって、霧彦に押されたのだと分かるのは、地面に転がってからだった。

何をしやがる。そう声を荒げようとして、言葉を飲み込んだ。

見れば、俺がさっきまで立っていた辺りの地面が大きく抉れていたのだ。

もし、彼が俺を突き飛ばしてなければ、俺はきっと……。

 

 

『無事かな』

 

『お陰さまでな。擦りむいた膝が少し痛いくらいだ』

 

『それは何よりだ』

 

 

軽口を言い合いながらも、周囲への警戒は無論解かない。解けない。

相手が『ドーパント』であることは明らかだが、あまりにもそれ以外の情報が無さすぎる。攻撃手段も、敵の位置すらも分からない。メモリの能力にいたっては、想像すらできない。

 

 

『ここは引くべきだ』

 

『同感だな』

 

 

『超高速!』

 

 

『ナスカ』に腕を掴まれて、俺は姿の見えない襲撃者からどうにか逃げおおせたのであった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「姿を消し、同時に高い攻撃力を備えた『ドーパント』。そんなメモリ、私の記憶にはない」

 

「あぁ、姿を消すだけのメモリだけなら知ってるが、あんな高威力の攻撃を仕掛けてくるタイプじゃないな」

 

「…………ところで、大丈夫かい?」

 

 

ーーギュルルルルーー

 

 

公衆トイレの外にいる霧彦の質問に、俺の腹が返事をする。

そう。またである。

なんなんだろうな、これは……。

どうにかその戦いを終えた俺は手を拭きながら、肩をすくめる。

 

 

「最近、どうも腹の調子がな……」

 

「いい内科を紹介しようか」

 

「ぜひともお願いしたいもんだ」

 

 

ほんとに切実である。

 

 

ーーprrrrーー

 

 

とそこで着信音が鳴った。

俺、ではない。とすると霧彦のものなのだろうが、彼の方を見ると、表情が強張っているのが分かった。相手は恐らくーー

 

 

「失礼…………私だ。どうしたんだい、冴子」

 

 

やはり女社長・園崎冴子か。

進捗でも聞かれてるのかと思ったが、どうやら会話を盗み聞きするに違うようだ。

電話口からでも聞こえるのは、彼女の怒りのこもった声で。霧彦の様子から、それが霧彦にとってもよくない知らせなのだと察する。

 

 

「あぁ。至急対処しよう」

 

 

そう言って、霧彦は通話を切った。

何かあったのかと訊ねると、返ってきたのは予想外の言葉だった。

 

 

「メモリの密売人が相次いで襲撃されたようだ」

 

「密売人が……? メモリでも奪われたのか?」

 

「いいや、ガイアメモリは無事だそうだ。けれど、死者も出ているそうでね。冴子がご立腹だ。君との調査はここで打ち切り。戻って事態に対処することになったよ」

 

「!」

 

 

ガイアメモリを風都にばらまき、実験を行う。密売人を襲うのは、そんなディガル・コーポレーションの目的自体を揺るがす事態。

もしかしたら、これで俺の一件が有耶無耶になってくれるかもしれない。

そうなら願ったり叶ったりだが……。

 

 

「…………その襲撃犯、俺達を襲った奴と同一人物じゃないか?」

 

 

このタイミングで、俺と同じ組織の黒服を襲う者が現れた。偶然にしては出来すぎている。

 

 

「私もそれは考えていた。とにかく私は会社に戻り、動く。ただのメモリ使用者ならともかく、組織に逆らう者なら、粛清しなくてはならないからね」

 

「そうか」

 

「君も気をつけたまえ」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

霧彦の監視が外れて、喜んだのも束の間、俺はすぐにそれに思い至った。

もしかして、俺ーー

 

 

「今襲われたら、ひとたまりもないのでは?」

 

 

ヤバいかもしれない。そう考えた俺は、すぐに行動を起こした。

まず、俺単体で襲撃者を倒すのは不可能だ。霧彦もいないことを考えると、身を守るのも一苦労。

そんな事情や原作への介入度合いを考慮した上で出した結論が、

 

 

「もしもし。そちらは鳴海探偵事務所でよろしかったでしょうか?」

 

 

鳴海探偵事務所、つまりは『仮面ライダー』にこの件を密告し、倒してもらうことである。

不可視の襲撃者について認識しているのは、恐らくミュージアム関係者のみで、奴はまだ風都市民には手をかけていないと考えられる。もし市民に被害が出ていれば、『仮面ライダー』が動かないわけがないからだ。

だから、密告する。情報を渡して、彼らに動いてもらう。

原作介入をしないと宣言したばかりで、それを破るのも考えものだが、身を守るためだ。仕方がない。

 

 

「はい、こちら鳴海探偵事務所、所長の鳴海亜樹子です! 事件のご依頼ですかー?」

 

 

公衆電話の受話器越しに聞こえてきたのは、所長の鳴海亜樹子の声。

ふむ、好都合だな。正直な話、探偵2人と関わりをもつのは避けたい。下手に関われば、俺の正体を探られ、暴かれる可能性があるからだ。ここは彼女を通して伝えてもらうとしよう。

 

 

「そちらの探偵に伝えてくれ。『ドーパント』が組織の密売人を襲っている」

 

「な!? なにそれ、私聞いてない!」

 

 

そりゃそうだ。言ってない。本来ならば、原作にない話だろうし。

 

 

「不可視の襲撃者と俺は呼んでいる。今は組織の密売人だけをターゲットにしているようだが、相手はメモリ犯罪者。いつ市民に標的が変わるか分からない。探偵たちには、その『ドーパント』を退治してもらいたい」

 

「え、あっ、ちょっと!? そんな大切な話なら直接事務所に来てもらってーー」

 

「1度しか言わない。キーワードはーー」

 

「ちょ、ちょちょちょっ!?」

 

 

バタバタと電話口から音がする。メモを取る準備でもしているのだろう。数秒後、彼女の慌てたような声を聞き、俺は彼女にそれを伝えた後、電話を切った。

公衆電話を出て、ひとつ伸びをする。

 

 

「これでよしっ」

 

 

あとはとっとと、ここを去ってアリバイでも作ればおしまい。不可視の襲撃者は『主人公』たちがどうにかしてくれるだろう。

 

 

…………そう。

この時点で、俺はその程度に考えていた。全てを甘く見ていたのだ。

『主人公』の直感ってやつを。

『主人公』の好奇心ってやつを。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「その人物、怪しいね。アキちゃんから聞いた話だと、探偵たち……つまり、この事務所に探偵が複数いることが分かっていたようだし」

 

「あぁ。それに普通、街の人間は『ドーパント』なんて名称使わねえ」

 

 

鳴海探偵事務所。その地下にある秘密の部屋にて。

少年は本を片手に呟き、彼の隣にいたスーツ姿の青年も、その意見に同意した。

 

 

「その上、『鳴海』探偵事務所の探偵が鳴海亜樹子でないことも知っていた。ふふっ、実に興味深い。ゾクゾクするねぇ」

 

「興味深いってのは同意できないが、街の人に被害が及ぶかもしれないって方は聞き捨てならねえな。フィリップ、頼めるか」

 

「……あぁ。勿論だ、翔太郎」

 

 

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