転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

63 / 122
5 思惑・暗躍

ーーーーーーーー

 

 

「ここが、『カンパニー』……?」

 

 

お姉ちゃんに案内されたのは、風都の一等地にあるビル。名前の通り、どこにでもある会社って感じの場所でした。

 

 

「えぇ。と言っても、フロント企業が入っているビルだから、組織自体があるのは、ここの地下だけれど」

 

 

一緒にビルに入って、受付へ。ニ、三言受付の女の人と話をしてから、お姉ちゃんは戻ってきます。行きましょうと言うお姉ちゃんに頷き、促されるままエレベーターに入りました。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

そわそわとしながら待つ。エレベーターはどんどん下っていき、電光表示の一番下、それよりも更に地下へ。やがて、

 

 

「着いたわよ」

 

 

扉が開くと、そこにはとても衝撃的な光景が広がっていました。

 

 

「え……っ?」

 

「ようこそ、ここが『カンパニー』よ」

 

 

笑顔のお姉ちゃん。さっきまで安心できたはずのその笑顔が、怖い。だって、

 

 

「後ろの……それって……」

 

 

エレベーターから降りてすぐの場所、かなり開けたその場所にそれはあった。培養液に浸かった人間のようなもの。

 

 

「ん? 複製兵士のことかしら?」

 

「……お姉、ちゃん?」

 

「何を驚いてるの、こんなの普通の光景じゃない。それよりも早く行きましょう、お父さんも待っているわ」

 

「っ」

 

 

悪寒。

違う、違う……この人、お姉ちゃんじゃない。

だって、わたしは知ってます。お姉ちゃんは最期の瞬間までお父さんを憎んでたんだって。

 

 

「……だ、だれ」

 

「え?」

 

「あ、あなたはっ、だれですかっ!」

 

「…………」

 

 

わたしの質問に、その人は俯いたまま答えません。それから何秒が経ったでしょうか。沈黙を破って、その人はやっと答えて。

 

 

『バレちゃった』

 

「っ、『ドーパント』っ!?」

 

 

お姉ちゃんの姿から一瞬で『ドーパント』に変わった。いつの間にメモリを……。

 

 

『最初からよ。このメモリ『エコー』の……いえ、過剰適合者であるこの白音佐奈の肉体の『ハイドープ能力』』

 

『『エコーノイズ』、この音を聞いた人間は催眠状態になるのよ』

 

 

つまり、最初からこの姿のままで、わたしや音を聞いた周りの人がその姿を誤認していたっていうこと……?

 

 

『えぇ、それにこんなこともできるーーわよ』

 

「っ」

 

『『エコーノイズ』』

ーーズズズズズズズズッーー

 

 

『エコー』は一瞬で距離を詰めてきて、わたしの頭に触れました。流れ込んでくる音。雑音。ノイズ。それはわたしの思考を散らして、何も考えられなくなっていくようで……。

 

 

『貴女は私達の大切な家族よ』

 

「家族……」

 

『そう、家族以外に価値はないわ。他の全ては貴女の敵なの。だから、共に行きましょう。お父さん達の待つ『カンパニー』へ』

 

「…………」

 

 

なんでしょうか。何か大切な想いに靄がかかっていくような、そんな感覚がします。でも、それが一体なんなのかは分からない。

……いいえ、そんなことはどうでもいいんです。今、わたしにとって一番大切なのはーー

 

 

「わたし……決めました」

 

「……そう。何を決めたのかしら?」

 

 

「わたしも…………『カンパニー』の一員になります」

 

 

「ふふっ、いい子ね」

 

 

そう言って、お姉ちゃんは優しげな微笑みでわたしを撫でてくれました。

……うん。お姉ちゃんたちのために、わたしは敵を倒そう。

家族に……『カンパニー』に歯向かう全ては敵なんですから。それが当然ですよね。

 

 

「ほら、これが貴女のためのメモリ。貴女のは純正化されてしまっているけれど、私とお揃いの『エコー』のメモリよ」

 

「うん。ありがとう、お姉ちゃん」

 

 

お姉ちゃんがくれた『エコー』を受け取って。それからロストドライバーを腰に巻きました。

 

 

『エコー』

 

「変身」

 

 

音が体に纏わりついてくる感覚。体の底が震えるような感覚の後に、わたしの姿は変わりました。

藍色の肉体に走る蛍光オレンジのライン。複眼もそれと同じ色に光っていて。これがーー

 

 

「おめでとう、雫」

 

『わたしは……』

 

「えぇ、貴女はーー」

 

 

 

『ーー仮面ライダーエコー』

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「や」

 

 

雫が『カンパニー』の本部で、『仮面ライダーエコー』となった30分後、彼女『フーカ』はその場に姿を現した。それを迎えるのは、佐奈の姿をした女と『仮面ライダー』となった雫だ。

 

 

「お早いお着きですね、『フーカ』さん」

 

「まーね。『サナ』ちゃんも順調に仕事をしてくれたみたいだね~、それが雫ちゃん?」

 

「えぇ、『フーカ』さんの指示通りに」

 

「おっけー」

 

 

軽いノリで返事をした『フーカ』は、改めて『仮面ライダー』になった雫を舐めるように見る。

 

 

「ふーん、いいんじゃない? これならシューヘイくんを誑かした顔も体も見えないし。私のせーしんえーせい上もよろしいのでは~?」

 

「……殺さなくてもよいのですか?」

 

「それはもう少し後かな。やってもらいたいこともあるしね」

 

「…………」

 

 

彼女、『サナ』は、肉体こそ複製した白音佐奈のものではあるが、中身は別人だ。そこに白音佐奈の意思はなく、だからこそ、目の前の少女に価値は見出だせない。

『カンパニー』の戦力は、『フーカ』『サナ』、そして、『フーカ』が白服の研究データから作り出した複製兵士の『吉川』と十分にある。園崎霧彦も戦闘不能で、風都に本来いる『仮面ライダー』も動けないのは調査済み。

 

 

「お人形さん、やられたみたい。4体とも、ね」

 

「!」

 

 

『フーカ』の言葉に驚く『サナ』。彼女にとって、それは予想外の出来事だった。『吉川』達には、基本的に複数での行動を指示してあり、1体ならともかく4体すべてが撃破されることなどないと思い込んでいた。

 

 

「相手は、一体……?」

 

「『イービル』ちゃん。帯同させてた雫ちゃんの体を使われたみたい。ビックリだね~」

 

「『イービル』メモリ……イレギュラーな存在だとは聞いていましたが、それほどとは……相手への負の感情が高まれば高まる程、力を増すメモリ、でしたよね」

 

「うん。例の財団の研究データを見てもランクは低いはずなんだけど……そのくらい、雫ちゃんを助けたいって想いが強いんだね」

 

「…………殺さないのはそのため、ですか」

 

 

ここで白音雫を殺害すれば、その感情は『カンパニー』へと向く。それを阻止するのが思惑なのだと『サナ』は思考する。それに対して『フーカ』は、それもあるけどと一部を肯定して。

 

 

「じゃ、行こっか」

 

「? どちらへ?」

 

「シューヘイくんのところ♡ 虫が集ったら困るからね~」

 

 

ーーーーーーーー

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。