転生したらミュージアムの下っ端だった件(完) 作:藍沢カナリヤ
ーーーー路地裏・『イービル』視点ーーーー
『……はぁっ、はっ……』
体を引きずるようにして歩く。節々が痛い。けど、それ以上に心が痛い。引き裂かれるような痛みだ。
『くそっ……なんで』
なんで雫から目を離した。
なんで黒井を置いて逃げた。
なんでーー
『ーーあたしはこんなに弱いんだよっ』
路地裏に倒れ込む。意識が飛びそうだ。『
『純正化』されかかってる。そう感じた。
『このまま、終わりなんて……っ』
イヤだ。あたしはーー。
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「ごめんなさい……ごめんなさい……」
なんだよ、これ………。
「なんで、こうなっちゃったの……」
あたしの目の前には顔を覆い、涙を流す女。彼女は誰だ?
……そうか。彼女は佐奈だ。母親を殺した『ドーパント』と化した父親を自らの手で殺害した後の佐奈だ。
そうだったな。あいつ、夜はずっと泣いてた。昼間は雫の頼れる姉として気丈に振る舞っていて。だから、雫が寝た後に一人、泣いてたんだ。
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「お姉ちゃん……なんで、置いていっちゃったんだろう」
場面が変わる。
今度は雫だ。佐奈に置いていかれた後の雫の姿。あいつはいつも泣いていた。高校生になってもメソメソと。自分が一番不幸ですとでも言いたげな雰囲気。まぁ、父親が母親を殺して、なんていう境遇だ。気持ちは分かるけどな。
でも、それが気に食わない奴もいるようで。
「キャハハハ」
「見てよ、あれ~」
「ウケるぅ」
「…………」
高校で雫はいじめられていた。雫はやり返さない。言い返さない。何もいわずにされるがまま。言われるがまま。
けれど、ある時、そいつらは雫の荷物からあたしをーー『イービル』メモリを見つけて、
「それ、はっ」
「なにこれ?」
「アクセ? 悪趣味~!」
「え~、んじゃあ、ウチらが選んだげる。だから、こんなの捨ててあげるぅ」
「やさし~!」
「ほら!」
そう言って、メモリを投げ捨てようとする女共。
「や、やめて……くだ、さいっ」
声を張り上げて、雫はそいつを止めた。手を掴んで、必死の形相で。
「はぁ?」
「なに、こいつ」
「それは、大事なもの、なんですっ」
「……イラつく」
「ほんとそれ!」
「そんなに大事なものなら、取り返してみなよっ!」
ーーブンッーー
抵抗も虚しく、メモリは雫の手から離れ、弧を描いて。
「ゴール!」
「さっすが~」
「ほら、大事なものなんでしょ? 早く拾ってきなよ、あのどぶからさ」
「…………っ」
その後、雫はそいつらの言う通りにどぶに入って、メモリを探して回った。数時間探して日が暮れる頃、やっとメモリを見つけた雫は泥だらけでメモリを握りしめて泣いていた。
ーー雫を守ってあげてーー
あたしが明確に意識をもったのはその時だった。
佐奈があたしに託したその言葉は、確かにあたしの中にーー記憶に刻まれていて。
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『よう、クソ女共』
「は?」
「なによ、こいつ」
「こいつ、なんか雰囲気ちがくない?」
『この【自主規制】共がッ!!!』
あたしはその日、雫をいじめていた奴等に罵詈雑言を放った。『イービル』の名の通り、邪悪な、放送コードに引っ掛かるような言葉の数々を奴等にお見舞いしてやったんだ。ちなみに、数日後、そいつらはヤンキー崩れの彼氏を連れてきたが、モチロン返り討ちにしてやったけどな。
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『……守らなきゃな、あたしが』
意識は今にも飛びそうで、体も痛い。けど、それでもあたしは雫を守らなきゃいけねぇんだ。それがあたしが生まれた理由だから。
佐奈があたしに託した思いを。
佐奈と雫との思い出を守らなきゃいけない。
ーードクンッーー
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お待ちいただいていた方々に感謝感謝!
明日、もう一話更新します!
終わりは近い。