転生したらミュージアムの下っ端だった件(完) 作:藍沢カナリヤ
劇場版『運命のガイアメモリ』開幕です。
ーーーーーーーー
ストーカー女の襲来から1年が経った。
結婚式も新婚旅行も無事終えて、ラブラブ新婚生活を送る俺と雫ちゃん。雫ちゃんは刑事にはなってしまったものの、俺自身はガイアメモリからは縁遠い生活を送っていた。
そんなある日のことだった。
ーーーー黒井家・リビングーーーー
「G研? なんだ、そりゃ?」
夕飯の席にて、雫ちゃんからのあーんを受けながら、そう問い返す。聞いたことのない単語、原作にも出てきてないよなぁ。
「はい。ガイアメモリ研究所という組織で、名前の通り、ガイアメモリの研究や解析などを行う部署です……はい、秀平くん、あーん」
「あーん……ガイアメモリねぇ……」
雫ちゃんの口から出たそのフレーズにげんなりする。ガイアメモリって言葉だけで、飯が不味くなる……いや、雫ちゃんが作ったお料理が不味いはずはないが?
「美味しいですか?」
「おいひいでふ」
「それで、なんですけど……そのG研からの要請で、秀平くんに解析のお手伝いをしてほしいってことなんです」
「手伝い……?」
俺に? なんの?
続けざまにそう訊ねるが、雫ちゃんも詳細は知らないようで、首をかしげている。あぁ、可愛い、俺の奥さん。
「……嫌な予感がひしひしと伝わってくるんだが」
「照井さんからのお話なので、悪いことにはならないと思うんですけど」
「うーん……」
「秀平くんが嫌ならわたしから断りますけど」
どうしたものだろうか。
照井竜からの依頼、つまりは雫ちゃんの直属の上司からの依頼な訳である。雫ちゃんのことを思えば、受けてはやりたいが、それでもガイアメモリってのはいただけない。
「少し考えさせてくれ」
「もちろんです。返事はゆっくりでいいと言われてますから」
幸せな気持ちとが入り交じる複雑な心境で、その日も夜は暮れていったのだった。
ーーーーーーーー
「って訳なんだが……どう思うよ、霧彦」
翌日の日中。霧彦を喫茶『白銀』に呼び出し、俺は昨日のG研の話を相談していた。ホットの珈琲を一口すすり、霧彦は返事を返してくる。
「別にいいんじゃないかな」
相変わらずの胡散臭い爽やかスマイルである。
別にいいって……適当言ってねぇか? 訝しみ、軽く睨むと霧彦はやれやれと肩をすくめた。むかつく。
「照井竜……警察官かつ『仮面ライダー』である彼からのご依頼なんだ。少なくとも部下の夫を害する人間ではないのは、私達は身をもって知っているはずだ」
「……まぁ、それはそうだけどよ」
「勿論、今も彼からの仕事を受けている私はともかく、黒井君は一線を退いているんだから。君の自由だろうけどね」
至極もっともだ。うーむ、どうするべきか……。
顎に手を当て、考えていると、
「お待たせしました~」
この喫茶店のウェイトレスである、リリィ白銀が珈琲カップを持ってやってきた。
「悪い相談ですか?」
「まぁな」
「ふふっ、こわ~い」
俺の軽口に、悪戯っぽく笑う彼女。何を隠そう彼女もガイアメモリ事件に巻き込まれた人間である。
「すまないね。こんな相談は他ではなかなか出来なくて」
「いえいえ、霧彦さん達ならいつでも大歓迎ですよ」
そう言うと、彼女はテーブルに置いた空のカップに布をかけ、淹れたての珈琲を出現させた。流石、元マジシャンだぜ。
「ブラボー!」
「ふふっ、ありがとうございます!」
微笑みを返したリリィは、そのまま霧彦の隣の席に座る。
「黒井さん、どうなんですか? 新婚生活は」
「フッ、聞きたいか、俺と雫ちゃんのラブラブイチャイチャ新婚生活を」
「はい!」
「……はぁ、私は止めておくよ。君のその話は長くて敵わない」
「まずはだなぁ……」
興味なさそうに珈琲をすする霧彦を無視して、俺はリリィに新婚エピソードを語る。しばらくして、俺のエピソードを聞きながら、彼女はため息を吐く。
「あーあ、いいなぁ、結婚」
「リリィなら相手はいくらでもいるんじゃねぇか?」
「まぁ、否定はしませんけど……でも、せっかくならイケメンの方がいいじゃないですか~」
まぁ、言いたいことは分かる。元々彼女が狙っていた照井は既に既婚者だしな。となると、独身のイケメンねぇ。俺もリリィも、チラリと珈琲を飲む霧彦を見る。
「……しばらくは結婚は遠慮しておくよ」
「ちぇ~」
拗ねたようなリリィを上手くあしらう霧彦。流石、嫁さんに殺されたかけた男の言葉は重みが違うな。
さて、話が一区切りついたことで、マスターがリリィに声をかけた。たしなめられた彼女は仕事に戻っていく。それを見て、霧彦は話を戻した。
「それより黒井くん、例の件連絡しないでいいのかい?」
「おぉ、そうだった! よし、善は急げだ」
友人からの助言を受けて、俺は雫ちゃんに電話をした。
「もしもし、雫ちゃん? 俺だけどーー」
ーーーーーーーー
喫茶『白銀』を出ると、日が暮れ始めていた。決断してからも、珈琲ブレイクを楽しんでいたからか、思っていたより時間が経っていたようだ。
今日は夕飯当番だから、献立を考えていると、
「いいのかい、雫ちゃんからのお願いなんだろう」
霧彦がその思考を遮ってきた。
例のG研の話を、俺が断ったことに少し思うところがあるのかもしれねぇな。
「いいんだよ。前の俺ならともかく、今の俺はなんの力もないただの一般人だ。身の丈に合わねぇことはしないって決めたんだ」
「……君がそれでいいなら、なにも言わないさ」
「あぁ、そうしてくれ」
前を歩く霧彦にそう返す。ふとその後ろ姿を見ながら、あるものが目に入った。
妙な違和感だ。
「なぁ、霧彦よ」
「なんだい?」
名前を呼ばれ、振り返った霧彦に訊ねる。
「素朴な疑問なんだけどな、いつの間に風都タワーは直ったんだ?」
所謂『劇場版』で風都タワーは一度、折れている。時系列的にはたぶん俺が『黒井』になっていた時に起こったんだろう。あの頃、俺の意識は『黒井』の中にいたから、外の出来事は断片的にしか覚えていないのだ。だからこその疑問だった。
ガイアメモリから解放されたり、雫ちゃんとの新婚生活が楽しすぎたりして、気にもしてなかったことだ。それが今更になって気になった。
だが、
「? 何を言ってるんだい、黒井くん。風都タワーは今日も……いいや、今までもこれからだって健在で、この街を見守ってくれているじゃないか」
「……は?」
霧彦から返ってきた答えは予想外のもの。風都タワーは折れていなかった、だと?
「いや、お前……だって、ほら、『NEVER』が……」
『NEVER』
原作『劇場版』にて、風都タワーを占拠し、風都を地獄に変えようとした傭兵集団。そいつらのボスである『大道克己』がタワーを折ったはず。あんな大事件を忘れるなんてあり得ないだろう。
「『NEVER』……?」
「っ」
霧彦の反応で俺は確信した。
俺のいるこの世界では、あの事件がまだ起こっていないことを。
ーーーー風都署ーーーー
「……という訳で、申し訳ありません。照井警視」
電話を切った雫は、上司である照井に謝罪した。それは黒井がG研の話を断ったからである。それに気を悪くする照井ではなく、こちらこそ家族を巻き込むようなことを依頼して悪かったと謝り返した。
「でも、なんで秀平くんを……」
「俺に質問するな……と言いたいところだが、秘密にする必要もないだろう。特に『仮面ライダー』である君には」
そう言うと、照井は懐から2枚の写真を取り出した。
1枚は女性の写真。照井の話によると、つい先日風都署の前に、ボロボロになって倒れていたという女性だ。今は警察病院にいるが、まだ意識は戻っていないらしい。
「……この人と秀平くん。何か関係があるんですか?」
「慌てるな。問題は『こいつ』……これについての意見を黒井秀平に聞きたかったんだが」
倒れていた女が握っていたものなんだが、という照井の言葉を聞きながら、雫はもう1枚の写真を見た。
そこに写っていたのは、1本のガイアメモリ。だが、それは未だ街に残されているミュージアム製のメモリとは明らかに違う。どちらかと言えば、
「わたしたちのメモリと同じ……?」
「あぁ、俺達のメモリと瓜二つ。唯一違うのは、この端子」
「青い端子……」
写真に写るガイアメモリ。それは黒井が危惧する代物。
本来は財団Xが秘密裏に開発していたという新型『T2ガイアメモリ』であった。
ーーーーーーーー
書けるとは限らないR展開ですが……
-
雫ちゃんとの新婚生活編、待ってる
-
『イービル』との一夜編、待ってる
-
待てない。私が書こう(有能物書)