転生したらミュージアムの下っ端だった件(完) 作:藍沢カナリヤ
本日誕生日です。祝え!
ーーーー風都刑務所ーーーー
迂闊だった。霧彦風に言うなら浅慮だと言わざるを得ない。
事件が起こる時期が大きくずれているんだ。なら、事件そのものが変わっている可能性もある。くそっ、少し考えれば分かることじゃねぇか。
手がかりを探すため、俺は雫ちゃんと共に風都刑務所にやって来ていた。とある人物と会うために。
「手続き終わりましたよ」
「ありがとう、雫ちゃん」
面会の手続きを終えた雫ちゃんが戻ってくる。警察官ということもあり、ギリギリの時間ではあったが、面会が許可されたようだった。そのまま刑務所職員の案内で、俺達は面会室に通された。少々お待ちくださいと言われ、2人で椅子に腰かけて待つ。
しばらくして現れたのは1人の男。奴はーー
「お久しぶりですね、黒井秀平」
「よう、全身白服眼鏡野郎」
アクリル板越しに向かい合うのは、かつて財団Xに所属していた男。俺と同じ『転生者』だ。
さて、こんな野郎の顔を見ていても気が滅入るだけだ。とっとと聞き出して、帰るとしようじゃねぇか。
「単刀直入に聞く。てめぇ、『T2ガイアメモリ』を知ってるな」
「……えぇ、それは勿論。『NEVER』も存じてますよ」
「あぁ、そいつらだ。その『NEVER』が今、動き出しやがった。何か知っていることはねぇか」
「……ふむ、何故それを私に?」
「お前は『T2』を作った財団にいた。『エターナル』も持ってやがった。その上、俺と同じ『転生者』だ。何か情報をもってると疑うのも自然なことだろうが!」
「…………」
「吐け! ごら!」
雫ちゃんに止められながらも、俺は声を張り上げた。この小物のことだ。きっとちょっと脅せば、けろっと吐くだろうと踏んでの態度である。だが、その予想に反して、今は囚人服の白服は、鼻で笑った。
「んだ、てめぇ! 喧嘩売ってんのか、あぁ?」
「……いえ、貴方に探偵は向かないと思っただけです」
「あ?」
「残念ですが、その推理は的外れです。私は『NEVER』の件に関わってはいません。もし『NEVER』を動かせるような策を講じていたとしたら、私は当の昔にここを脱獄しています」
「…………チッ」
一応筋は通っているように感じるし、この小物が嘘を吐いているようにも見えねぇ。証言は信じてもいい、か?
「まぁ、『エターナル』については、私が財団のデータベースから情報を盗み出しましたからね。恐らく、それが原因で『T2ガイアメモリ』の開発と『NEVER』の襲来が今になったのでは?」
「盗み出した? お前、そんなこともやってたのかよ」
「フッ、私ではありません。私のような『王』がそんなコソ泥みたいな真似できる訳がないでしょう。部下にやらせたんですよ」
部下ねぇ。そいつもこんな奴に使われて可哀想に。
まぁ、その部下ってのを捕まえられれば、『エターナル』と『T2ガイアメモリ』の情報も掴めるかもしれない。そう考えた俺は、一応白服に部下のことを聞くことにする。
「ちなみにだが、その部下ってのはまだ財団にいるのか?」
「さぁ。私はもう囚人ですから、財団のこと、彼の……彼女の……彼、彼女……?」
「お、おい?」
「……私は彼に、いえ、彼女でしたか、そんなことはありません、彼は女? いえ、男性だったはず」
アクリル板越しにでも分かる異常さ。刑務官も奴に駆け寄り、声をかけるが、反応がおかしい。会話が噛み合わないとか、混乱しているとかじゃねぇ、これは……!?
「雫ちゃんッ!」
「は、はいっ!」
ーーガンッーー
「「!?」」
ーーガンッガンッガンッガンッーー
突然、奴はアクリル板に頭を打ち付け始めた。何度も何度も打ち付けていたことで、額からは血が流れ出ている。刑務官も必死に止めようとしているが、想像以上の力なのだろう、抑えきれていなかった。
「っ、応援を呼んできます!」
「お、お願いしますっ」
必死に止める刑務官に、雫ちゃんはそう告げて、面会室を後にした。その直後だった。
「………………」
先程までとうってかわって、ピタリと動きを止めた白服。無表情でこちらを見てきやがる。それが本当に不気味で。けれど、そのままにするわけにもいかず、声をかける。そして、
「おい、お前はーー」
ーーニタぁーー
奴は笑った。凡そ常人のそれではない。人形のような、なんで笑っているのかも分からない理解不能の笑みだった。動揺する俺に構わず、奴はアクリル板に顔を擦り付けながら、俺に向けてポツリと言葉を放つ。
「お前はここにいちゃいけないぃ」
それだけを告げ、白服は意識を失った。
その後、1分ほどで雫ちゃんが呼んだ刑務官達が面会室に入ってきた。そのまま取り押さえられ、連行されていく白服。その様子を俺はただ呆然と見ていた。
どうにも奴の笑顔と言葉が頭にこびりついて離れない。嫌な、気分だ。
ーーーー同時刻・風都タワー第2駐車場内ーーーー
『ドーパント』が暴れているとの通報を受け、照井竜は風都タワーの第2駐車場に駆け付けた。通報した市民は避難をさせ、現場確認のために彼は銃を構え、駐車場に入っていく。
駐車場の中には逃げ遅れた市民がおり、彼らが逃げてきた方には1体の『ドーパント』がいた。照井もその『ドーパント』には見覚えがあった。それどころか因縁のあった相手だ。
「『ウェザー』! 井坂……ではないな」
『…………』
照井の問いに『ウェザー』は答えない。その代わりに、右腕を突き上げ、同時に雷雲が『ウェザー』の目の前に発生した。攻撃が来ることは明白だが、ここまで修羅場を超えてきた男は慌てない。
『アクセル』
「変ッ……身ッ!!」
『さあ、振り切るぜ!』
瞬時にアクセルドライバーを装着し、メモリを挿入した照井は『仮面ライダーアクセル』へと変身した。自らの武器で、襲い来る雷をいなした『アクセル』はそのまま距離を詰める。
『ふんっ!!』
ーーバギィッーー
エンジンブレードによる斬撃。重量のある武器のため、切断よりも叩き斬る攻撃に近い。その攻撃は火花とともに、『ウェザー』の腹部装甲を削り取った。さらに畳み掛けるように、彼はメモリを変える。
『トライアル』
『すべて……振り切るぜ』
『トライアル』『マキシマムドライブ』
メモリを起動し、宙に放ったと同時に、『アクセル』は駆ける。一瞬で『ウェザー』の懐へ飛び込み、連続キックを叩き込んだ。時間にして9.4秒。『マキシマムドライブ』を喰らった『ウェザー』は爆発とともに、メモリが排出され、人間に戻る。
『井坂、ではないな』
その正体が街のごろつきであることを確認した『アクセル』はメモリを抜き、変身を解除した。そして、落ちていた『ウェザー』を回収する。
「やはり『T2メモリ』か。まさか『ウェザー』まで作られているとは……」
ーーパキンッーー
ふと照井の耳に妙な音が入ってくる。辺りを見渡しても、特に変化はなく、建物が軋む音だろうと結論付けようとした、その時だった。
ーーパキパキパキパキーー
「なんだ!? この音……地面から!?」
気づいた時にはもう遅い。地面が隆起し、壁になっていく。生成スピードがかなり速く、『アクセル』への変身が間に合わない。そのまま地面から出来上がった壁に照井は閉じ込められた。
「閉じ込められたか……だが!」
『アクセル』
『壊してしまえば関係ない』
再度『アクセル』へ変身し、エンジンブレードでその壁を叩き斬る。
『なに!? ならば!』
『エンジン』『マキシマムドライブ』
今度は『エンジン』で『マキシマムドライブ』を発動させ、壁を破壊しにかかる。だが、それでも壁は傷つきこそすれ、破壊まですることはできない。
「残念ながら壊せない」
困惑する『アクセル』に壁の外から声がかけられる。落ち着いた低い男の声だった。
『……何者だ』
「俺は『NEVER』……芦原賢」
『アクセル』の脳裏に過るのは、黒井秀平が話していた情報にあった男。黒井曰く、銃撃に長けた男で『トリガー』メモリとの適正が高く、恐らく『トリガー』メモリを使ってくるだろうとのことだったが、この能力は明らかに『トリガー』のそれでは決してない。
これ以上の攻撃は来ないだろうと感じ取った『アクセル』は変身を解き、その男芦原に訊ねる。
「俺をどうする気だ」
「何も」
「何も、だと?」
「…………何もするな、時が来るまでは」
それ以上は答えるつもりがないのだろう。壁の外から声は返ってこない。
「くっ」
ーードンッーー
壁を叩く照井。だが、依然として壁は崩れる様子はなかった。
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書けるとは限らないR展開ですが……
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雫ちゃんとの新婚生活編、待ってる
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『イービル』との一夜編、待ってる
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待てない。私が書こう(有能物書)