転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

72 / 122
更新です。
本日誕生日です。祝え!


03 啓示

ーーーー風都刑務所ーーーー

 

 

迂闊だった。霧彦風に言うなら浅慮だと言わざるを得ない。

事件が起こる時期が大きくずれているんだ。なら、事件そのものが変わっている可能性もある。くそっ、少し考えれば分かることじゃねぇか。

手がかりを探すため、俺は雫ちゃんと共に風都刑務所にやって来ていた。とある人物と会うために。

 

 

「手続き終わりましたよ」

 

「ありがとう、雫ちゃん」

 

 

面会の手続きを終えた雫ちゃんが戻ってくる。警察官ということもあり、ギリギリの時間ではあったが、面会が許可されたようだった。そのまま刑務所職員の案内で、俺達は面会室に通された。少々お待ちくださいと言われ、2人で椅子に腰かけて待つ。

しばらくして現れたのは1人の男。奴はーー

 

 

「お久しぶりですね、黒井秀平」

 

「よう、全身白服眼鏡野郎」

 

 

アクリル板越しに向かい合うのは、かつて財団Xに所属していた男。俺と同じ『転生者』だ。

さて、こんな野郎の顔を見ていても気が滅入るだけだ。とっとと聞き出して、帰るとしようじゃねぇか。

 

 

「単刀直入に聞く。てめぇ、『T2ガイアメモリ』を知ってるな」

 

「……えぇ、それは勿論。『NEVER』も存じてますよ」

 

「あぁ、そいつらだ。その『NEVER』が今、動き出しやがった。何か知っていることはねぇか」

 

「……ふむ、何故それを私に?」

 

「お前は『T2』を作った財団にいた。『エターナル』も持ってやがった。その上、俺と同じ『転生者』だ。何か情報をもってると疑うのも自然なことだろうが!」

 

「…………」

 

「吐け! ごら!」

 

 

雫ちゃんに止められながらも、俺は声を張り上げた。この小物のことだ。きっとちょっと脅せば、けろっと吐くだろうと踏んでの態度である。だが、その予想に反して、今は囚人服の白服は、鼻で笑った。

 

 

「んだ、てめぇ! 喧嘩売ってんのか、あぁ?」

 

「……いえ、貴方に探偵は向かないと思っただけです」

 

「あ?」

 

「残念ですが、その推理は的外れです。私は『NEVER』の件に関わってはいません。もし『NEVER』を動かせるような策を講じていたとしたら、私は当の昔にここを脱獄しています」

 

「…………チッ」

 

 

一応筋は通っているように感じるし、この小物が嘘を吐いているようにも見えねぇ。証言は信じてもいい、か?

 

 

「まぁ、『エターナル』については、私が財団のデータベースから情報を盗み出しましたからね。恐らく、それが原因で『T2ガイアメモリ』の開発と『NEVER』の襲来が今になったのでは?」

 

「盗み出した? お前、そんなこともやってたのかよ」

 

「フッ、私ではありません。私のような『王』がそんなコソ泥みたいな真似できる訳がないでしょう。部下にやらせたんですよ」

 

 

部下ねぇ。そいつもこんな奴に使われて可哀想に。

まぁ、その部下ってのを捕まえられれば、『エターナル』と『T2ガイアメモリ』の情報も掴めるかもしれない。そう考えた俺は、一応白服に部下のことを聞くことにする。

 

 

「ちなみにだが、その部下ってのはまだ財団にいるのか?」

 

「さぁ。私はもう囚人ですから、財団のこと、彼の……彼女の……彼、彼女……?」

 

「お、おい?」

 

「……私は彼に、いえ、彼女でしたか、そんなことはありません、彼は女? いえ、男性だったはず」

 

 

アクリル板越しにでも分かる異常さ。刑務官も奴に駆け寄り、声をかけるが、反応がおかしい。会話が噛み合わないとか、混乱しているとかじゃねぇ、これは……!?

 

 

「雫ちゃんッ!」

「は、はいっ!」

 

ーーガンッーー

 

「「!?」」

 

ーーガンッガンッガンッガンッーー

 

 

突然、奴はアクリル板に頭を打ち付け始めた。何度も何度も打ち付けていたことで、額からは血が流れ出ている。刑務官も必死に止めようとしているが、想像以上の力なのだろう、抑えきれていなかった。

 

 

「っ、応援を呼んできます!」

 

「お、お願いしますっ」

 

 

必死に止める刑務官に、雫ちゃんはそう告げて、面会室を後にした。その直後だった。

 

 

「………………」

 

 

 

先程までとうってかわって、ピタリと動きを止めた白服。無表情でこちらを見てきやがる。それが本当に不気味で。けれど、そのままにするわけにもいかず、声をかける。そして、

 

 

「おい、お前はーー」

 

ーーニタぁーー

 

 

奴は笑った。凡そ常人のそれではない。人形のような、なんで笑っているのかも分からない理解不能の笑みだった。動揺する俺に構わず、奴はアクリル板に顔を擦り付けながら、俺に向けてポツリと言葉を放つ。

 

 

 

「お前はここにいちゃいけないぃ」

 

 

 

それだけを告げ、白服は意識を失った。

その後、1分ほどで雫ちゃんが呼んだ刑務官達が面会室に入ってきた。そのまま取り押さえられ、連行されていく白服。その様子を俺はただ呆然と見ていた。

どうにも奴の笑顔と言葉が頭にこびりついて離れない。嫌な、気分だ。

 

 

ーーーー同時刻・風都タワー第2駐車場内ーーーー

 

 

『ドーパント』が暴れているとの通報を受け、照井竜は風都タワーの第2駐車場に駆け付けた。通報した市民は避難をさせ、現場確認のために彼は銃を構え、駐車場に入っていく。

駐車場の中には逃げ遅れた市民がおり、彼らが逃げてきた方には1体の『ドーパント』がいた。照井もその『ドーパント』には見覚えがあった。それどころか因縁のあった相手だ。

 

 

「『ウェザー』! 井坂……ではないな」

 

『…………』

 

 

照井の問いに『ウェザー』は答えない。その代わりに、右腕を突き上げ、同時に雷雲が『ウェザー』の目の前に発生した。攻撃が来ることは明白だが、ここまで修羅場を超えてきた男は慌てない。

 

 

『アクセル』

 

「変ッ……身ッ!!」

『さあ、振り切るぜ!』

 

 

瞬時にアクセルドライバーを装着し、メモリを挿入した照井は『仮面ライダーアクセル』へと変身した。自らの武器で、襲い来る雷をいなした『アクセル』はそのまま距離を詰める。

 

 

『ふんっ!!』

 

ーーバギィッーー

 

 

エンジンブレードによる斬撃。重量のある武器のため、切断よりも叩き斬る攻撃に近い。その攻撃は火花とともに、『ウェザー』の腹部装甲を削り取った。さらに畳み掛けるように、彼はメモリを変える。

 

 

『トライアル』

 

『すべて……振り切るぜ』

 

 

『トライアル』『マキシマムドライブ』

 

 

メモリを起動し、宙に放ったと同時に、『アクセル』は駆ける。一瞬で『ウェザー』の懐へ飛び込み、連続キックを叩き込んだ。時間にして9.4秒。『マキシマムドライブ』を喰らった『ウェザー』は爆発とともに、メモリが排出され、人間に戻る。

 

 

『井坂、ではないな』

 

 

その正体が街のごろつきであることを確認した『アクセル』はメモリを抜き、変身を解除した。そして、落ちていた『ウェザー』を回収する。

 

 

「やはり『T2メモリ』か。まさか『ウェザー』まで作られているとは……」

 

 

ーーパキンッーー

 

 

ふと照井の耳に妙な音が入ってくる。辺りを見渡しても、特に変化はなく、建物が軋む音だろうと結論付けようとした、その時だった。

 

 

ーーパキパキパキパキーー

 

「なんだ!? この音……地面から!?」

 

 

気づいた時にはもう遅い。地面が隆起し、壁になっていく。生成スピードがかなり速く、『アクセル』への変身が間に合わない。そのまま地面から出来上がった壁に照井は閉じ込められた。

 

 

「閉じ込められたか……だが!」

『アクセル』

 

『壊してしまえば関係ない』

 

 

再度『アクセル』へ変身し、エンジンブレードでその壁を叩き斬る。

 

 

『なに!? ならば!』

 

『エンジン』『マキシマムドライブ』

 

 

今度は『エンジン』で『マキシマムドライブ』を発動させ、壁を破壊しにかかる。だが、それでも壁は傷つきこそすれ、破壊まですることはできない。

 

 

「残念ながら壊せない」

 

 

困惑する『アクセル』に壁の外から声がかけられる。落ち着いた低い男の声だった。

 

 

『……何者だ』

 

「俺は『NEVER』……芦原賢」

 

 

『アクセル』の脳裏に過るのは、黒井秀平が話していた情報にあった男。黒井曰く、銃撃に長けた男で『トリガー』メモリとの適正が高く、恐らく『トリガー』メモリを使ってくるだろうとのことだったが、この能力は明らかに『トリガー』のそれでは決してない。

これ以上の攻撃は来ないだろうと感じ取った『アクセル』は変身を解き、その男芦原に訊ねる。

 

 

「俺をどうする気だ」

 

「何も」

 

「何も、だと?」

 

「…………何もするな、時が来るまでは」

 

 

それ以上は答えるつもりがないのだろう。壁の外から声は返ってこない。

 

 

「くっ」

 

ーードンッーー

 

 

壁を叩く照井。だが、依然として壁は崩れる様子はなかった。

 

 

ーーーーーーーー

書けるとは限らないR展開ですが……

  • 雫ちゃんとの新婚生活編、待ってる
  • 『イービル』との一夜編、待ってる
  • 待てない。私が書こう(有能物書)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。