転生したらミュージアムの下っ端だった件(完) 作:藍沢カナリヤ
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『あーあー、聞こえるか、『NEVER』諸君。制御室は抑えた。繰り返す、制御室は抑えた』
どうにか立ち直った俺が、雫ちゃんと共に臨戦態勢に入った直後、タワー内に設置されているスピーカーから知らない声が流れてきた。男の声だ。その声はさらに続ける。
『賢、剛三、京水、レイカ。全員、遊んでないで戻ってこい』
「!」
『んもぅ! これからがいいところなのにッ』
「仕方がないでしょ。戻るわよ」
声を聞き、2人はそんな会話を交わし、泉京水も『サキュバス』メモリを体外へ排出した。そのまま2人は俺たちに背を向ける。この話しぶりからすると、声の主が『NEVER』のトップに当たる人物だろうことは想像に難くない。だが、明らかにーー
「ーー大道克己……じゃないよな」
「「っ」」
小声で呟いたはずだったが、その声はその場を去ろうとしていた彼女たちにも聞こえていたようで、2人は反応を見せた。
「ナニナニナニナニ!? ナニヨこれっ!? 頭、痛いんだけど!?」
「また、これっ……誰なのよ、大道克己って……っ」
頭を抱える2人。これは、なんだ? 何が起きている?
……いや、今日までこの世界で生きてきたんだ。なんとなく想像はついちまう。
傷だらけになり、警察で保護されている大道マリア。
原作と異なる『T2ガイアメモリ』。
そして、大道克己ではない『NEVER』のリーダー。
明らかに原作から大きく改変されている。俺の中の勘が告げている。こんなことが出来るのは『転生者』以外に考えられないと。
「雫ちゃん!」
『は、はい!』
『NEVER』2人が苦しんでいる間に、変身したままの雫ちゃんの手を取り、駆け出した。どこに行くんですか、と聞いてくる雫ちゃんに霧彦たちと合流し、制御室にいるであろう親玉を叩くと伝える。
「相手は恐らく『転生者』だ」
『『転生者』って、秀平くんと同じ……!』
「あぁ。『NEVER』のボスに成り代わってやがるんだろうよ。そんで十中八九、白服や風華と同じ『チート』持ちだ」
白服の起動しただけでメモリ能力が使える『チート』。
風華のメモリ純正化の『チート』。
俺のメモリ毒素を体外に排出する『チート』……『チート』か?
……まぁ、ともかく『転生者』となれば、メモリにまつわる『チート』を持っている可能性がある。しかも、不死身の兵士『NEVER』が揃ってしまえば、勝ち目はねぇ。
だが、彼女たちの様子を見るに、『NEVER』は大道克己の名前を出せば、一時的だけど足止めできれそうだ。そこに賭けるしかない。
「雫ちゃん。俺は今から、他の『NEVER』のところへ行って足止めする。雫ちゃんは霧彦たちと合流して、制御室の親玉を叩いてくれ」
『っ、そんなっ! 危険ですっ!』
「残念ながら、俺は戦えねぇ。足手まといな俺にできるのは、それくらいしかない」
『っ、なら、わたしもーー』
「ーー頼む」
『っ』
仮面に隠れてても、雫ちゃんの葛藤が伝わってくる。酷いお願いをしてるのは分かってるさ。それでも、そうしなきゃこの場を乗り切れねぇ。雫ちゃんや仲間たちとの日常を守れない。
ガイアメモリなんていらねぇとか言っていたが、今は力がないことが本当に歯痒く、悔しい。
『……分かり、ました』
少しだけ悩んだ様子で、だが、それでも彼女は決断してくれた。それでこそ俺の愛する雫ちゃんだ。
『でもっ、無理はしないでくださいねっ』
「あぁ、無茶も無理もしねぇよ」
『……信じてます』
「あぁ」
雫ちゃんの言葉に頷き、ふっと手を離す。代わりに言葉をひとつだけ。
「愛してるぜ、雫ちゃん」
『わたしも、ですっ』
あぁ、これで十分だ。
全速力で走り出した雫ちゃんに背を向けて、俺は駆け出した。霧彦たちがいるであろう方向へ。
ーーーー雫視点・制御室前ーーーー
「待たせたね、雫ちゃん」
制御室の前にて。わたしは霧彦さんと翔太郎さんと合流することができました。ということは……。
「いえ……秀平くんはお二人の方に?」
「あぁ。俺達と入れ代わりで『NEVER』2人と対峙してる。メモリもなしに、なぜか奴等を足止めできてた……あれも黒井の『秘密』とやらか、霧彦」
「すまないね、翔太郎。私は友人の秘密を口外するような口の軽い男ではないんだ」
「相棒への土産に根掘り葉掘り聞きたいところだが……ま、今はそれどころじゃないよな」
軽く帽子を直した翔太郎さんの目つきが変わります。万が一、『NEVER』が追ってきた時のためにと、翔太郎さんはわたしたちに背を向けました。
「流石はこの街の『仮面ライダー』。頼れるね」
「いつもの半分、だけどな」
「…………フッ、十分さ。行こう、雫ちゃん」
「はい!」
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翔太郎さんに後ろを任せて、わたしと霧彦さんは制御室の扉を開けました。扉を開けると、そこにいたのは1人の男性です。複数のモニターを観察しながらも、こちらに気づいたようで。こちらには顔を向けずに、その人はこちらへ言葉を放ってきます。
「須藤霧彦と刃野雫。想定内だ」
こちらの名前を知っている。この人、やっぱり秀平くんの言った通り『転生者』。なら、動かれるのはまずいです。
「動かないでください!」
銃を取り出し、その人に向ける。これを撃ったことは未だにありませんが、相手は危険な人物です。必要ならば……!
「物騒だな。それを下げてもらいたいものだが」
「っ、動かないで。これ以上は……撃ちますよっ」
こちらを振り返ろうとするその人へ、再び警告し、銃の引き金に指をかけました。
「っ、雫ちゃん。何を!?」
「え……?」
集中していたはずです。拳銃なんて普段使わないものを人に向けていたんですから。それなのに、まるで寝落ちしていたかのように、霧彦さんの声でハッと我に返りました。そして、同時に今の状況に困惑します。
「なんで、わたし……?」
理解が追いつきません。なぜ……なぜわたしは今、拳銃を霧彦さんに向けているんですか……?
「そういうメモリなんだよ。『エラー』は」
混乱するわたしに、その人は答える。
『エラー』、と。
そう言った男性の手には、『T2ガイアメモリ』が握られていました。
「すまないね。物騒な代物は嫌いなんだ」
「雫ちゃん」
「は、はいっ」
『ナスカ』
『イービル』
霧彦さんの合図で、わたしたちはメモリを起動、ベルトを装着しました。霧彦さんはガイアドライバーに、わたしはロストドライバーにメモリを挿入して。
「変身!」
変身と同時に、駆け出します。視界の端で光球を放とうとする『ナスカ』の姿が見えたから、わたしも一瞬で距離を詰め、まずは拘束を試みーー
ーーギュンッーー
『っ』
背中に強烈な痛み。これは『ナスカ』の攻撃じゃ……っ! 振り返ると、そこにはたった今、光球を放った『ナスカ』の姿がありました。このまま距離を詰めるのは危険だと咄嗟に判断したわたしは、そのまま彼から離れます。
『すまないっ、『イービル』』
『だ、だいじょうぶです』
幸い怪我はない。たぶん牽制で撃った光球だったでしょう。けど、一体何が起きてるんでしょうか。さっきの拳銃の件も、今の光球も。
「話は最後まで聞くものだ」
『『!』』
そう言って、その人は振り返りました。歳は20代……いえ、それよりももっと若い気もします。整った顔立ちの少年という印象。その彼の手には先ほどのメモリ・『エラー』。
「『欠陥』だよ」
『欠陥……?』
「『エラー』は人間に『欠陥』を引き起こすメモリだ。今、君たち2人にはお互いを敵と認識させる『欠陥』を起こした」
『なるほど。仲間割れを起こすメモリ、ということかい』
「正解」
霧彦さんの質問を、少年はにこやかに肯定する。彼の表情とは対照的に、わたしの心中は穏やかではありません。だって、そんな能力……。
『脅威だね』
『……はい』
小声で言葉を交わし、思考を巡らします。状況はよくない。仲間割れを人為的に起こさせるメモリなんて……。だから、少しでも話を引き伸ばして、隙を見つけなきゃ!
『あなたの目的はなんですか……』
「ん? 目的? そうだなぁ……僕の目的はひとつ」
「この世界の『欠陥』である黒井秀平を修正する」
秀平くんが『欠陥』? 修正? この人は一体何を言っているんでしょうか。困惑したままのわたしに構わず、
「そのために、僕はーー」
目を閉じた彼は懐からなにかを取り出しました。赤い……あれは『ロストドライバー』!? ということは、まさか!?
『エラー』
「変身」
微笑みながら、少年は姿を変えました。
黄金に輝く体。3本の角と漆黒の複眼。両腕には盾のような形状のアーマー。そして、身の丈ほどある巨大な剣を背負う、そんな黄金の『仮面ライダー』に変わって。
『はじめまして。僕は『エラー』……『仮面ライダーエラー』』
『さぁ、世界の『欠陥』を正すとしようか』
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