転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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10 拾う神もある、否邪神である

ーーーー黒井家ーーーー

 

 

「じゃ、あたしも現場に向かうんで!」

 

 

現場に向かっても戦えない君にやれることはないんじゃないか。そう真希ちゃんに訊ねると、返ってきたのは、街の人たちを誘導することはできるからというポジティブな答え。そうか、真希ちゃんは自分のやれることを見つけてるんだな。それに引き換え、俺はーー

 

 

「はっ……情けねぇ」

 

 

部屋のリビングでボソリと呟いた。でも、仕方ねぇだろ。俺にしかできないことなんて何もないんだから。

気晴らしでテレビをつけると、ニュースで風都タワーの様子が映し出されていた。お義父さんと真倉が『NEVER』に呼びかけて、撃退されている様子は原作通り。こんなところは同じなのかよ。違うチャンネルに変えると、留置場が襲撃され、囚人が数人脱獄したなんてニュースも流れてやがる。本当にこの街、治安悪すぎるだろ。心のなかでそう毒づき、そのままボーッと画面を見続ける。

 

 

「あ……真希ちゃんだ」

 

 

ふと映し出されたのは、避難誘導をする真希ちゃんの姿だった。その他にも多くの警察官が市民の避難誘導に当たっている。

手持ち無沙汰な俺は、真希ちゃんから預かった『メモリ』を弄る。俺にしかできないこと……。

 

 

「『これ』を使えってか」

 

 

確かに、純正化されていないガイアメモリを毒素なしで使えるのは俺にしかできないことだろう。どんなことができるかは知らないし、このメモリの存在を示唆した照井の思惑も分からない。それでも確かに、戦うことはできるだろうが……。

 

 

「……戦えるのか、俺は」

 

 

絆を拒絶されたまま、その相手と。それに戦えたとしても、洗脳を解除する術を俺は知らない。親玉を倒せば洗脳は解けるのかも分からない。

……もし照井が戻ってくれば、きっと『NEVER』は倒せる。『エクストリーム』さえあれば、翔太郎の洗脳も解けるんだろう。フィリップが2人の洗脳を解除する方法も見つけてくれる。余計なことはしない方がいいんだろう。

ハッ、皮肉なもんだ。フィリップの言う通り、何もしないのが正解なのかもしれないとはな。そう考えて、大きく息を吐き、ソファに背を預けたその時だ。

 

 

ーーピンポーンーー

 

 

インターフォンが鳴った。街がパニックになってる時に宅配便、はあり得ねぇ。となると、

 

 

「やっぱりお前かよ、霧彦」

 

『あぁ、言っただろう。君をこの街から排除する、とね』

 

「そう言われて、はいそうですかって開けると思うか?」

 

『いいや。だからーー』

 

 

『ナスカ』

 

 

「くっ!? まじかっ」

 

 

インターフォン越しに霧彦が『ナスカ』を起動したのを見て、俺は窓に向かって駆け出した。俺が窓から飛び出すのと、玄関が光弾で吹き飛ぶのはほぼ同時だった。

 

 

『待ちたまえ!』

 

「誰がっ、待つかよっ!」

 

 

翼を展開し、追ってくる『ナスカ』。最初こそ距離を離せていたが、流石にあいつの方が速く、みるみる差を詰められていく。近くの空き地で踵を返し、『ナスカ』と向かい合う。

 

 

「霧彦!」

 

『覚悟はできたかい?』

 

「生憎できてないんだ。見逃しちゃくれねぇか」

 

『私が街を汚す者を見逃すとでも?』

 

「……っ、だよな」

 

 

隙を窺うが、流石は霧彦だ。風都の敵になると思った相手には一部の隙も見せてくれない。その間にも、『ナスカ』がゆっくりと迫ってくる。そして、

 

 

ーーブンッーー

 

 

剣を振り下ろした。それをどうにか紙一重で避ける。だが、攻撃は止まらない。横薙ぎ、切り上げ、切り払い。俺を斬り捨てるために振るわれる剣は止まらず、やがて俺を空き地の隅に追い詰めた。

 

 

「はっ……丸腰相手にずいぶんと必死だな」

 

『無論だよ。敵に容赦する必要などないだろう』

 

「敵……」

 

『?』

 

「なぁ、霧彦……俺はお前みたいに友人とか、絆とか、そういうキザな言葉を口にするのは苦手なんだ。だけどよ、仲間だって思ってたんだ」

 

『…………仲間』

 

 

息も絶え絶えで投げ掛ける言葉と思い。一緒に戦った日々は確かにあって。馬鹿みたいに辛いこともあったけれど、それでもあの日常をなかったとは思いたくない。だから、俺は再び霧彦に問いかける。

 

 

「俺達、仲間じゃなかったのかよっ!」

 

『…………』

 

 

俺の言葉に『ナスカ』が、霧彦が止まった。これはもしかして……。けれど、そんな淡い期待は打ち砕かれる。

 

 

『君も来たのかい』

 

「はい、霧彦さん」

 

「っ、雫ちゃん……っ」

 

 

『ナスカ』の陰になって、俺からは見えない。けれど、間違えようもない。雫ちゃんの声だ。

かすれた声で彼女の、最愛の妻の名を呼ぶ。結婚して少し経ったというのに、彼女はいつも俺に名前を呼ばれると、少し照れくさそうに笑うんだ。それが愛おしくなって、くしゃっと頭を撫でて、また彼女は笑う。

だから、俺は手を伸ばした。『ナスカ』の向こうにいる彼女へ。『ナスカ』が道を開ける。そこにいた雫ちゃんの表情は、

 

 

「…………なんですか」

 

 

俺への感情はない。むしろ悪感情すら感じる。

……違う。止めてくれ。

 

 

「そんな顔……しないでくれよっ」

 

「…………」

 

「雫ちゃんっ!」

 

 

 

『イービル』

 

「……変身」

 

 

 

必死の言葉は届かない。彼女は『ロストドライバー』を装着して、『イービル』メモリを起動した。そして、変身する。『仮面ライダー』へと。

 

 

「っ、くそっ」

 

『秀平くん、覚悟してください』

 

『イービル マキシマムドライブ』

ーーバチバチバチバチッーー

 

 

黒色の稲妻が俺の目の前で膨れ上がっていく。

『イービル』の能力は負の感情が強ければ強いほどに威力を上げる。逆に言えば、好きな相手には、マキシマムを放つことすら難しい。だから、その俺の視界を全て埋める規模の稲妻は、彼女が俺を否定していることを表していて。

 

 

「……あ、ぁ」

 

 

声が漏れる。否定され続け、心がーー

 

 

『さよなら』

 

 

 

 

『ライアー』

 

 

俺と稲妻の間に割り込んだ人物、それは『ライアー』ドーパントだった。勿論、俺じゃない。俺の『ライアー』は1年前に『純正化』されて、タンスの奥底にしまわれている。じゃあ、目の前のこいつは一体……?

 

 

「……お前、誰だ……?」

 

『誰、なんて冷たいこと言わないでよ』

 

ーーゾワッーー

 

 

エコーのかかったくぐもった声。だけど、声が耳に入った途端に、悪寒が走る。こいつ、まさかっ!?

 

 

『この姿じゃ分からないって~? しょうがないなぁ♡』

 

 

そう言って、変身を解く『ライアー』。変身解除したその女の手には青い端子の『ライアー』メモリ。

そして、そいつは、ここにいるはずのない女。1年前に雫ちゃんに倒され、今は刑務所の中にいるはずの人物。

 

 

「間に合った。迎えに来たよ、シューヘイくん♡」

 

風華(ふうか)……ッ」

 

 

俺の前世からのストーカー女・風華だった。

 

 

ーーーーーーーー




『風華』
黒井の元世界での幼馴染み兼ストーカー
前世では黒井死亡の報せを聞き、自害し、転生した。
1年前、黒井を手に入れるために画策するが、『仮面ライダーイービル』となった雫に撃破され、刑務所へ収容されていた。

Rが書けない。助けて、私が書こうって言った有能物書様!!
イラストも見たい。助けて、有能絵師様(サキュバス雫感)!!
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