転生したらミュージアムの下っ端だった件(完) 作:藍沢カナリヤ
短めです。
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「以上が、メモリの売人襲撃事件の結末です」
ディガル・コーポレーションの社長室にて。
俺は霧彦に見守られながら、女社長・園崎冴子に一部始終を報告した。
勿論、多少はぼやかしたこともある。名も知らない彼女が俺を恨んでいたこと等言う必要もないだろうし、そもそもこの女社長にとってはどうでもいいことなのだろうな。変に報告をして機嫌を損ねては大変だ。報告は必要最低限で。
「襲撃者は死んだのね。それで『エコー』のメモリは?」
「私が預かっているよ、冴子」
「そう」
やはり園崎冴子の反応は冷ややかなもので、犯人が死んだこととメモリを回収したことだけが分かればいい、その程度の熱量だった。
「それで私の処遇は」
「無断欠勤に関しては不問とするわ。メモリも回収したようだし」
「ありがとうございます」
頭を深く下げる。彼女は低姿勢で従順な俺の姿に満足したようで、静かに下がりなさいと指示し、再び机の書類に視線を戻した。俺はそれに従い、社長室を出る。
「……ふぅ」
「中々やるじゃないか、黒沢くん」
「黒井です」
「失礼、黒井くん…………ふむ」
胡散臭い笑みを浮かべる霧彦。
俺のどこを気に入ったのか分からないが、とりあえず距離が近い。
「なんだよ」
「いや、君も選ばれしディガルの社員だ。少々身なりを整えた方がいい」
俺の無精髭が気になったようで、彼はそう言った。
人の顔をじろじろ見るな。距離が近い。
「今日にでも理髪店に行くさ」
「よければいい理髪店を教えよう。バーバー風というのだが、そこのマスターがーー」
「別にいい。適当なところにでも行くさ」
「遠慮するな、共闘した仲じゃないか」
「いや、たまたま襲撃の場に居合わせただけだろ」
「まぁ、いいからついてきたまえ」
そのまま腕を掴まれ、引きずられるように俺は外へ連れ出されたのだった。
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非常にまずい。
『バイオレンス』の事件から少し経過し、例の『偽仮面ライダー』の事件も起こったらしい今、霧彦がバーバー風に行く場面は、原作ではひとつしかない。
『バード』のガイアメモリに関する事件。『仮面ライダーW』の物語では、そのエピソードの始まりがこのバーバー風であった。つまり、
「風向きが悪い日は決まってこの店だ。ねぇ、マスター」
「お、バーバー風のファンとは中々の風都通だな」
「通も何も……君、ふうとくんは知っているよね」
「ハッハー! もちろん! この街のイメージキャラクターだ」
「実はあれ、私がデザインしたんだよ。小学3年の時、コンクールで優勝してね!」
「まじで!? すっげーっ! いやぁ、尊敬するよ」
「そうだろう!」
俺がまだ接触していない方の主人公、左翔太郎がいるのである。
彼は霧彦の隣の椅子で、タオルを顔にかけられて顔剃り待機中だ。同じく霧彦もタオルを顔にかけられているため、2人はお互いの顔を知らない状態で話が弾んでいた。
一視聴者目線で見たら、中々に愉快な光景だが、今の俺にとっては違う。戦々恐々だ。
そんなこんなしている内に、
「お前っ!」
「貴様は……表に出たまえ!」
お互いの顔がバレ、口論になる。ほらな、こうなった。
ヒートアップする2人を見送った俺は、
「マスター、顔剃りを頼む」
「う、うん。でも、いいのかい?」
「あぁ、かまわないよ」
空いた椅子に座り、顔剃りを頼んだ。
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近くの神社に向かうと、どうやら決着がつこうとしていた。というより、俺とともに2人を探しに来たマスターの声で戦闘を止めていたのである。
そのまま霧彦はその場を離れ、少し距離をとって近くの大木の陰からマスターと左翔太郎の会話を聞いていた。
「盗み聞きとは趣味が悪いな」
「……君か」
「楽しい話は聞けたかよ?」
「……あぁ、興味深い話がね」
そのやりとりとは裏腹に、霧彦の表情は晴れない。険しい顔で2人の会話を聞いていた。
……まぁ、当たり前か。今回の事件は彼曰く、ルール違反だそうだからな。
「子供にガイアメモリが出回っている可能性がある」
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結論から言うと、『バード』のメモリはバーバー風のマスターの娘が持っている。それは間違いない。俺はこの事件の真相と結末を既に知っているのだから。
だからこそ、もう一度言っておこう。
俺は能動的に原作に介入しない。
その結果として、命を落とす人間がいたとしても、だ。
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