転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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12 そうやって戦ってきたんだよ

ーーーー回想ーーーー

 

 

「秀平くん」

 

 

婚姻届を役所に出したその帰り道。俺の隣を歩く雫ちゃんに名前を呼ばれ、彼女の方に目を向ける。

 

 

「ん? どうした、雫ちゃん?」

 

「いえ、呼んでみただけです」

 

「ふふっ、そうか」

 

 

恋人だったときにも何度もしたやりとりだった。なんとなく幸福を感じる会話。

 

 

「秀平くん、秀平くん」

 

「なんだ?」

 

「わたし、黒井雫といいます」

 

「ああ、知ってるよ」

 

「えへへ」

 

 

少し恥ずかしそうに、でも、それ以上に嬉しそうな表情をする雫ちゃん。俺も嬉しさを感じながらも、同時に申し訳なさも感じてしまう。

 

 

「悪いな、雫ちゃん。結婚式、少し先になっちまって」

 

「いえ、ゆっくりでいいんです。2人で式の費用貯めていきましょう? すぐに式を挙げるよりも、最高の式にする方が大切ですから」

 

「……あぁ、そうだよな」

 

「それに……」

 

 

そう言って優しい眼差しで、彼女は自分の左の薬指に輝く指輪を見つめた。そして、ポツリと呟く。

 

 

「これを見る度に、秀平くんとの繋がってるって感じられますから」

 

 

決して安くはないが、飛び上がるほど高くもないどこにでもあるような結婚指輪だが、彼女はそれでもいいと言う。なにより俺の雫ちゃんへの想いがこもっていればそれで十分幸せだと。

 

 

「本当に、大切にしなきゃなんねぇな」

 

 

柄にもない真面目な決意は、雫ちゃんに聞かれてしまっていたようで。俺の隣を歩く最愛の人の顔にはほんのり朱が注していたのだった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「こいつは俺には必要ない」

 

 

風華から受け取った『ロストドライバー』を事務所のテーブルの上へ置いた。風華の言う『この世界から逃げる』ことを俺は拒絶した。

 

 

「なんでッ!? もうシューヘイくんにはこの世界に居場所なんてないんでしょ!」

 

「身寄りのなかった俺が仲間たちに拒絶されたら、まぁ、そうだわな。洗脳で言っていた言葉だとしても流石に堪えたぜ」

 

「……洗脳を解くなんてできるの? 『仮面ライダー』がいない今、『NEVER』のボスを倒すのなんてできないでしょ」

 

 

風華の言うことは尤もだ。フィリップも照井も戦えない。左翔太郎や霧彦、雫ちゃんも洗脳されちまって、向こう側だ。こっちの戦力は……。

 

 

「ゼロ。シューヘイくんが『仮面ライダー』にならない限りは。なったとしても勝ち目はないよ、数が違いすぎるし。だからーー」

 

「ーーそれでも俺にこいつは必要ない」

 

「もうっ、シューヘイくんの分からず屋ッ!」

 

 

ヒステリックに叫ぶ風華。あぁ、分からず屋で結構だ。もし俺がここで風華の言葉に頷いて、この世界から逃げちまったら、俺はあいつらを……雫ちゃんを裏切ったことになる。だって、そうだろ。

 

 

 

ーーギュッーー

 

「俺達は……繋がってるんだもんな」

 

 

 

左手の薬指を軽く握る。

大丈夫。分かってる。ちゃんと思い出したから。

 

 

「~~~~っ、そんなもの見せつけないでっ! シューヘイくんは私のなんだからッ」

 

「うるせぇなぁ、いい加減諦めろよ。お前、見た目だけはそれなりにいいんだからよ」

 

「え、今、かわいいって……♡」

 

「言ってねぇよ」

 

 

漫才をやってる場合じゃねぇと会話を打ち切った。すると、風華は再度ヒートアップする。

 

 

「じゃあ、どーするワケッ! このままみーんな『NEVER』化するのを待つのっ!?」

 

 

どーする、か。そうだな。俺には力がない。そんなのは分かり切ってる。けれど、左翔太郎、霧彦、雫ちゃんの洗脳を解いて、そして、『NEVER』とその親玉の『転生者』を倒さなきゃならねぇ。なら、俺にやれることはひとつだ。

 

 

 

「俺以外の力で『NEVER』に、この状況に対抗する。他力本願、上等だ」

 

 

 

ーーーー1時間前・風都署近辺ーーーー

 

 

「こいつはお前に託すぜ、フィリップ」

 

「『ロストドライバー』!? 一体、これをどこで……」

 

「なに、ストーカー女からのプレゼントだよ」

 

 

「…………君が何を知っているのかは分からない。だが、思っている以上に状況は最悪だ。照井竜の居場所は分かったが、敵の能力でかなり強固な壁の中に閉じ込められている。『ファング』でも破壊は厳しい。恐らく、その相手を倒さなければ解除はされないだろう」

 

「壁、ね……『NEVER』の堂本のメモリが『アイアン』だった。たぶんそいつの能力だろ」

 

「あぁ、僕はその『アイアン』ドーパントを撃破に回る。それに放っておけない相棒も助けなきゃいけない」

 

「あぁ、そうしてくれ」

 

 

「……君の友人である須藤霧彦と家族である黒井雫が洗脳を受けている。その上、君には戦う力がない」

 

「はっ、まったくもってその通りだ」

 

「……なら、君はどうするつもりだい?」

 

「何もしねぇ、と言いたいところだけどな……そういう訳にもいかねぇんだ。俺にもやるべきことがある」

 

 

ーーーー現在・風吹山/鳴海荘吉の別荘ーーーー

 

 

「さぁ、始めるぜ」

 

 

風華が見守る中、俺はそのメモリを掲げた。照井の伝言でG研から持ち出した『アナザー』。上手くいくかはどうかは賭け、なんなら部の悪い賭けだが、やるしかない。

 

 

「俺はそうやって戦ってきたんだよ」

 

 

ポツリと呟いた言葉は風華には届かない。その代わりに、改めて声をかける。

 

 

「おい、風華」

 

「なに?」

 

「このメモリが俺に合わなかったら、そんときはお前の案に乗ってやるよ。そのためにお前を連れてきた訳だしな」

 

「…………何するつもり、シューヘイくん」

 

「俺は今からーー」

 

 

 

「ーー並行世界から『助っ人』を呼んでくる」

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

『アナザー』

 

 

~~~~~~~~

 

 

「雫ちゃん……そんなのぉ……ダメだよぉ、雫ちゃぁぁぁんっ」

 

「はっ!」

 

 

急激に目が覚め、飛び起きた。何かいい夢を見ていた気がするが……いや、今それは置いておこう。ともかく辺りを見渡す。一目で分かる森林。山の中に俺はいた。雰囲気は合ってる。あとは『あれ』があれば!

『あるもの』を見つけるため、頭上に目をやると、そこには……。

 

 

「あった。……実物を見るとますます悪趣味な鉄の檻だぜ」

 

 

俺の視線の先には、巨大な機械の輪っかが宙に浮いていた。『電磁パルス』とか言ったか? ともかくあれがあるってことは、異世界転移は成功で間違いない。あとはこれでーー

 

 

「『あいつ』を味方にできれば!」

 

 

~~~~~~~~~




楽しくなって参りました。
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