転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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準備はいいか?


13 その男は現れる

ーーーー風都タワー前広場ーーーー

 

 

ーーザンッーー

 

『ぐおっ!?』

 

 

僕らの振るったプリズムソードが『アイアン』ドーパントに入った。その隙を逃さず、僕達は追撃をかける。けれど、

 

 

『させるかッ』

ーーバチンッーー

 

『させないワヨっ!』

ーーびたーーんっ♡ーー

 

 

『アイアン』を庇うように、『オクトパス』と『サキュバス』が攻撃を仕掛けてくる。さらに、

 

 

『ふっ!』

 

ーーバァァンッーー

ーーバァァンッーー

 

 

畳み掛けるように『バレット』が弾丸を撃ち込んできた。ビッカーシールドで防ぐことはできるが……。

 

 

『流石に攻め切れないね』

 

『こっちが『エクストリーム』とはいえ4対1だ。無理もねぇさ。照井がいりゃあ話は別なんだがな』

 

『あぁ。そのためには『アイアン』を倒さなければならないが……』

 

『だーっ! どうすりゃいいんだ!!』

 

 

『エクストリーム』になっていることで、翔太郎の苛立ちが伝わってくる。洗脳されてしまったことを挽回しようとしているんだろう。その上、向こうは死者蘇生兵士で持久戦になればこちらが不利なのは明白だ。けれど、焦りは禁物だ。

 

 

『メモリ能力を解析しながら隙を突くしかない。とはいえ、このレベルの敵を4人同時に相手する経験は僕にはない。そこは翔太郎の戦闘センスを信じるよ』

 

『あぁ、任せろ。解析は頼んだぜ、相棒!』

 

『あぁ』

 

 

再び剣を向ける。地球に直接アクセスできる『エクストリーム』になったからこそ分かる。『アイアン』は防御力に特化したメモリだ。彼を倒すには、他の3人を相手にしつつ、高い防御力を突破しなくてはならない。現実的ではない。だから、まずは防御力の低い『サキュバス』を倒すべきだ!

 

 

『同感だ。あれは目の毒だぜ』

 

『ムッキーッッ!! 誰が目の毒よっ!!』

 

『本当になんなんだよ、このオネエは……』

 

『オネエ!? オネエじゃないワ! 立派なレディーよ! レ・ディ・ィィィ!!』

 

『だぁぁ!! うるせぇ!!』

 

 

ペースを乱されちゃいけないよ、翔太郎。ここはクールに、だ。分かってるさと返してくる翔太郎と共に、プリズムソードを彼らに向け、告げる。

 

 

『『さぁ、お前たちの罪を数えろ』』

 

 

『ふんっ、罪ね』

『いくわヨォォ!!』

 

 

声を上げながら、こちらへ迫る『オクトパス』と『サキュバス』。

 

 

『フィリップ!』

『あぁ!』

 

『プリズム マキシマムドライブ』

 

 

プリズムソードへ『プリズム』を装填、マキシマムを発動する。狙うは『サキュバス』だが、ギリギリまでそれを悟られないように、『オクトパス』に視線を送りーー今だ!

 

 

『『プリズムブレイク!!』』

 

 

身を翻し、すれ違いざまに一閃。完璧に入ったはずだった。

 

 

『……甘い』

ーーギィィィンッーー

 

『っ!?』

 

 

鳴り響いた金属音は弾丸によるもの。芦原賢ーー『バレット』の狙撃能力は相当に高いようで、プリズムソードの剣先に攻撃を当てて反らした。たった数センチのズレ。それでも戦闘経験を積んだ相手にはーー

 

 

『ハッ!』

 

ーーパシンッーー

ーービタッーー

 

 

『オクトパス』が触手を剣に吸い付かせ、そのまま僕らの手から払い落としてきた。

 

 

『くそっ、なんだこいつらの連携は!』

 

『こっちとら『NEVER』として戦ってきたんだ! お前らに負けるわけないだろッ!!』

 

『くっ……』

 

 

一体一体のメモリは既に解析済みで、弱点も分かっている。なのに、変身者自体の能力が高すぎることとそれぞれの弱点を補うように連携されることで、隙が完全に消えてしまっていた。

 

 

『強敵だ』

 

『あぁ、強え……けどな、負けるわけにはいかねぇんだ!!』

 

 

翔太郎の感情が僕にも伝わってくる。

そうだ。黒井秀平曰く、『NEVER』の目的は、この街の住人を彼らと同じ『死者』にすることだ。そんなことを許すわけにはいかない。

分かっているさ、翔太郎。その気持ちは僕も一緒だ。だから!

 

 

『行くぜ! フィリップ!』

『あぁ、翔太郎!』

 

『ハッ、やれるもんなら!』

『上等ッ』

『ビッンビンよっ! ビンッビンにキたキたキたキたぁぁぁ』

『ゲーム……リスタート』

 

 

 

 

「諸君、一度落ち着こうか」

 

 

 

『『!!』』

 

 

戦いに水を差すように、その男……いや、少年は現れた。

 

 

『お前はっ!?』

 

『! 彼が……『NEVER』のボス……!』

 

 

『エクストリーム』で共有しているから翔太郎の体験した映像が僕にも見えた。目の前の少年こそが、翔太郎たちを洗脳した相手だ。

 

 

『ちょっとぉぉ、今、イイトコロなのヨッ』

 

『そうだ! いくらあんたの言うこととはいえ、邪魔するんじゃねぇよ!』

 

「……京水。剛三。言うことを聞いてくれないか」

 

 

少年に詰め寄る『サキュバス』と『アイアン』。2人に対して、少年はさらに近づき、

 

 

『僕に従え』

 

 

『『ッ』』

 

『堂本!』

『オッサンっ!』

 

 

耳元で囁いた。同時に2人のドーパントの動きが止まり、膝をつく。

 

 

「すまない。こちらとしては、君たちには危害を加えるつもりはないんだ」

 

『っ、ふざけんな! 『NEVER』の目的は風都の人達を『ゾンビ兵士』に変えることだろうがっ!』

 

「…………それは『NEVER』の目的であって、僕の目的ではない」

 

『は?』

『……それはどういうことだい?』

 

 

少年の言葉に、僕は問い返す。黒井秀平が嘘をついていたということか? いや、彼に嘘をつくメリットがない。ならば……。

 

 

「僕の目的はあくまでも世界の『欠陥』の修正。つまり、黒井秀平を始めとした『転生者』の排除だ」

 

 

そのための力として『NEVER』を利用しているだけで、風都市民が『NEVER』になろうがなるまいがどうでもいい。少年はそう嘯いた。それはつまり、『NEVER』とこの少年は別の意図で動いている、ということ……いや、それ以上に気になるのはーー

 

 

『『転生者』……? それは一体……?』

 

「……少々喋りすぎたか。これ以上は君たちにも『欠陥』を生じさせてしまう」

 

 

話は終わりと言わんばかりに、少年は懐からメモリを取り出した。黄金のメモリ。

 

 

『エラー』

 

「変身」

 

 

僕たちの目の前に現れたのは黄金の戦士。

 

 

『改めて自己紹介といこうか。僕は『仮面ライダーエラー』』

 

 

『……『仮面ライダー』……?』

 

『ふざけんな! 街を陥れる奴が『仮面ライダー』を名乗っていい訳がねぇんだ!』

 

『その通りだ。彼の真意は分からないが、ここで必ず止める』

 

 

幸いなことに、『エラー』自身が『NEVER』を2人行動不能にした。『エラー』の能力は未知数ではあるが、これで3対1。さっきよりも数の有利はなくなったはず……だ。

 

 

『…………』

『…………』

 

『さぁ、行こうか。剛三、京水』

 

『なん、だと……』

 

 

膝をつき、フリーズしていた『アイアン』と『サキュバス』が動き出した。だが、その動きは意思のある者の動きとは到底思えない。そうか。人格を司る器官に『欠陥』を発生させ、意のままに操る。それが『エラー』の能力か。

 

 

ーーカチャッーー

 

『何をした』

 

 

突然、『バレット』が『エラー』に腕の武器を突き付ける。仲間の様子がおかしいことで、少年に疑念をもった彼が反旗を翻したんだ。

 

 

『……賢。僕は物騒なものが嫌いだと言っただろう。その腕の銃を下ろしてくれ』

 

『それは返答次第だ』

 

『そうか…………残念だ』

ーーバチッーー

 

『っ』

 

 

『バレット』がいとも容易く崩れ落ちる。先ほどの2人と同じだ。物言わぬ『エラー』の手足になってしまった。

 

 

「っ、なに……? なんで……! どういうことッ!」

 

 

羽原レイカが変身を解除し、『エラー』に詰め寄る。彼女は2人の変わりように動揺し、叫んでいて。そんな彼女に動じることなく、『エラー』はその掌を額にかざす。

 

 

『レイカ』

 

「何を……して……っ」

 

『安心してくれ。君の『欠陥』も修正しよう』

 

「何言ってるッ、あんた、この街の住人を『NEVER』に……この街を地獄に変えるって言ったじゃな……い……あ、あぁ……っ」

 

 

「あ"あ"あ"あ"あ"ぁぁッ!?!?」

 

 

そこで羽原レイカは頭を押さえ出す。強烈な痛みに苦しみ叫ぶ声。悲痛な声とは対照的に、彼女の表情はどこか靄が晴れたような、何かに得心のいった表情をしていて。

 

 

「違う、違うっ……あんたは、違うッ!! あんたはーー」

 

 

 

「克己じゃないっ!!」

 

 

 

『……残念だ、レイカ。その『欠陥』は致命的だ。修正も不可能とくればやむを得ない……消去するとしよう』

ーースッーー

 

『エラー マキシマムドライブ』

 

 

『エラー』メモリをマキシマムスロットへ入れ、マキシマムドライブを発動させる『エラー』。さっきの洗脳能力とは明らかに違う。彼女を完全に始末するつもりだ。

 

 

『おいっ! 止めろっ!! 仲間じゃねぇのかよっ!』

 

『っ、翔太郎! マキシマムだ!』

 

『あぁっ!!』

 

 

『エラー』を止めるためのマキシマム。だが、察してしまった。このタイミングでは間に合わない。羽原レイカは死ぬ。

 

 

『さようなら、レイカ』

 

『『っ、止めろぉぉぉぉ!!』』

 

 

腕を伸ばす。けれど、届かなーー

 

 

 

「何をしてる、そいつは俺のもの(仲間)だ」

 

 

 

マキシマムドライブを発動した『エラー』の腕を掴む男の姿がそこにはあった。『NEVER』の彼らと同じジャケットを羽織り、髪には青のメッシュが入っている。その風貌には覚えがある。黒井秀平から聞いていたからだ。そうか、彼が本当のーー

 

 

「克、己……?」

 

「よぉ、レイカ。あいつらは…………なるほどな。で、あの悪趣味な金色の奴を倒せばいいって訳か?」

 

「……克己……っ、お願い……助けてっ」

 

 

 

「ああ。そのために俺は地獄から帰ってきた」

 

 

 

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