転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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15 別世界と理想郷

~~~~~~~~

 

 

『ビレッジ』の中心にある屋敷。そこにドクタープロスペクトはいた。扉を蹴破らん勢いで、部屋に入ってきた侵入者・大道克己へ告げる。

 

 

「今更何のつもりかな」

 

「お前を倒して、この悪趣味な箱庭を叩き潰す」

 

 

その宣言を受け、反応する者が1人。

 

 

「新技術の成功には箱庭が必要です」

 

 

白い服を身に纏った抑揚のない喋り方をする男・加頭順。おもむろに立ち上がった彼は歩みを進め、大道の前へ進み出た。

 

 

「お前が財団Xの……」

 

「新技術は全て私がテストする慣例でしてね。風都という箱庭でミュージアムが実験している『これ』もね」

 

 

そう言って、加頭は懐から『ユートピア』のメモリを取り出した。『エターナル』を入れたケースを棚に置き、大道を見据える。

 

 

「『エターナル』は不調だ。君は私の最強メモリで確実に始末しよう」

 

「…………」

 

 

ガイアドライバーを展開する加頭。そして、メモリを起動して手放した。本来ならば、そのメモリは自動的にドライバーに挿入される。『クオークス』の超能力をも手に入れた彼の力によって。だがーー

 

 

「おらぁぁ!!」

 

「な!?」

 

 

不意を突き、飛び出す。狙いどおりに、奴が手放した瞬間の『ユートピア』を奪うことに成功した。そのまま転がり、奴らと距離を取る。突然の出来事に、目薬おじさんは勿論、あの加頭も呆気にとられていたが、状況を飲み込んだようでドクタープロスペクトは、俺に向かって訊ねてきた。

 

 

「なんだ、お前はっ」

 

「あ? ただのモブキャラだよ」

 

 

 

『ユートピア』

 

 

 

メモリを起動し、首に突き刺す。肉体が変わっていく感覚。やがて、俺は『ユートピア』へと変貌を遂げた。

 

 

『おぉ! これが『ユートピア』ドーパント! 力が満ちてくるぅぅ!! ゴールドランクのメモリはやっぱちげぇなぁ!』

 

「!?」

 

 

呆然とする加頭。その隙を突いて、俺は棚に置かれたケースから『エターナル』とロストドライバーを大道に投げ渡した。

 

 

『行け! 大道克己! その目薬おじさんを倒せ!』

 

「俺に指図するな!」

 

 

捨て台詞を残し、彼は逃げ出したドクタープロスペクトを追っていった。屋敷内には、俺と加頭だけが残される。さて。

 

 

「君は一体……」

 

『あ? さっきも言っただろ、モブキャラだよ。んでもって、あんたをここで足止めするのが俺の役目だ』

 

「…………」

 

『上手くいけば、あんたを倒しちゃうけどなァァ』

 

 

無表情な加頭に少し苛立ちが見えた。原作で彼はこの場で大道克己ーー『仮面ライダーエターナル』に殺され、後に『NEVER』として蘇る。本編での加頭はその影響で無表情かつ無感情になっていた。裏を返せば、今の彼には感情がある。

モブキャラを自称する人間に止めるやら倒すやら宣言され、メモリも奪われるなんていう屈辱的な体験は、きっと加頭に怒りを覚えさせているはずだ。ならば!

 

 

ーーガシッーー

 

『いただくぜ、あんたの精神力!』

 

 

俺は速攻で奴の頭を掴む。『ユートピア』の能力によって、加頭の感情を、精神力を奪う。『クオークス』とはいえ生身の人間相手に、ドーパントである俺が力負けするわけがない。だから、吸う吸う吸う吸う。順調だ。このまま全部奪ってしまえば話は早い。

……けれど、分かってる。そうもいかないんだろう?

 

 

ーービギッーー

 

『っ、だよなっ……分かってるさ……っ』

 

 

『ユートピア』メモリが俺の中で疼く。拒絶反応というよりは、他のものに引っ張られているという方が感覚的に近い。

 

 

「……私に従え。『ユートピア』」

 

ーーググググッーー

『くそっ」

 

ーービュンッーー

 

 

適合率98%は伊達ではなく、遂には加頭のその一言で、俺の体からメモリが排出されてしまった。そして、『ユートピア』は奴の手の内へ。

奴の精神力は確かに吸った。けれど、形勢逆転だ。

 

 

「面倒なことをしてくれる……だが、終わりだ」

 

『ユートピア』

 

 

目の前で変貌を遂げた『ユートピア』。その姿を見る前に、俺は駆け出していた。前に? いいや、後ろにだ。こうなってしまえば、勝てるわけがない。

 

 

「バーカ!! 逃げるが勝ちなんだよ!!」

 

『……小賢しい……フッ』

ーーグンッーー

 

「っ!?」

 

 

逃げようと全力ダッシュする俺の体に、急激にかかる力。『ユートピア』へと引き寄せられる引力。

まぁ、そうだよな。『理想郷の杖』で引力・斥力は思いのままだろう。だが!

 

 

ーーガクンッーー

 

『くっ』

 

 

不意に『ユートピア』は膝を着いた。あぁ、それも狙い通りだよ、加頭順。俺は煽りに入る。

 

 

「どうした? エネルギー切れかぁぁ?」

 

『『ユートピア』は能力が強力な分、消耗が激しい……まさかそれを知っていて……』

 

「あぁ、ご名答だ。お前からエネルギーを奪っちまえば、『ユートピア』の能力を十全に使えない」

 

『っ、だが、それは精神力を再び奪い返せばいいだけのこと……っ』

 

 

今度は能力を使わずに、歩み迫る『ユートピア』。まぁ、そうなるよな。こっちは人間、向こうはドーパント。逃げられるはずもなく。

 

 

ーーガシッーー

 

『これで終わりだ』

 

ーーグッーー

 

 

奴に首を掴まれ、そこから伝わってくる不快感。これが精神力を、希望を吸われていく感覚か。あぁ……くそっ……。

 

 

「死にたい……もうイヤ……マジ病む」

 

『どういうことだ……!? 精神力が吸えない……?』

 

 

あぁ、鬱だ。ホントイヤ。マヂムリ。

……って、なるほどな。『ユートピア』ではこうなっちまう訳か。

 

 

「残念だったな。てめぇの目論見はおじゃんだぜ。俺にはそういうのが効かないんだよ……はぁぁ、死にたい」

 

『『ユートピア』が吸収するのは人間の生きる希望だ。それを吸えない人間などいるわけがない!』

 

 

あぁ、そりゃそうだ。だが、俺は生憎、普通じゃねぇんだよ。

 

 

「そういう『チート』らしいぜ? はぁ、リスカしよ……」

 

『ッ』

 

 

精神力を吸えないと判断した『ユートピア』は俺を放り投げる。

 

 

「けほっ……丁重に扱えよ。こっちはお前のせいで、気分が落ち込んでるんだ」

 

『……確かに君の体質は厄介だ。だが、能力を使わずとも、君を殺すことなど容易い。見たところ、そちらにはもう策はないのでしょう』

 

「……まぁな」

 

 

奴の言う通り、これ以上、奴と戦えるような策はない。『ユートピア』の強奪や能力を制限させる。その辺りが俺にできる精一杯の抵抗だ。

 

 

「フッ」

 

『何がおかしい』

 

「言ったはずだぜ? 俺はーー」

 

 

 

「足止め、だってな」

 

『エターナル マキシマムドライブ』

 

 

 

『な、にッ!?』

 

 

奴の背後、ドクタープロスペクトが逃げていった方向からその音は響いてきた。同時に『ユートピア』が動きを止める。

 

 

「終わりだぜ、加頭順」

 

『ぐっ』

 

 

身動きが取れない『ユートピア』の背後から、その『白い仮面ライダー』はゆっくりと近づいてきて。

 

 

『さぁ、地獄を楽しみな』

 

 

~~~~~~~~

 

 

「早く連れていけ」

 

 

戦闘が終わり、『クオークス』を無事解放した後、『NEVER』の面々を従えた大道克己は、俺にそう言った。

 

 

「……妙に、物分かりがいいな、おい」

 

 

それが不気味で、少し引き気味の俺。そんな俺に大道は不敵に笑って、言葉を続ける。

 

 

「お前の情報のお陰で、この悪趣味な箱庭を壊し、ミーナたちを救うことができた。だから、俺はお前を認めよう」

 

「~~っ」

 

 

ここにくるまでに、世界の『欠陥』なんて話をされて、親しい人達からも拒絶されていたからだろう。不意に何かが込み上げてくる。

くそ……あれだな。まだ精神力を吸われた副作用が続いてやがるみてぇだ。

 

 

「どうかしたか?」

 

「……っ、いや……なんでもねぇよ」

 

 

震えそうになる声をなんとか誤魔化して、俺は懐からメモリを取り出した。

 

 

『アナザー』

 

 

風華曰く、『アナザー』は使用者を別世界に飛ばすメモリだが、今は『ユートピア』で吸ったエネルギーが俺の中にある。だから、それを使ってーー

 

 

ーーズズズズズズッーー

 

 

おぉ、開いた! こいつが世界を繋げる扉か。

 

 

「これをくぐれば、未来に飛べる。帰りも同じ原理で戻ってこれるはずだから、安心してくれ」

 

「…………あぁ」

 

 

大道は『NEVER』の仲間たちに、少し出掛けてくると伝え、改めて俺に向き直った。

 

 

「未来では、あいつらが洗脳されてるんだったか」

 

「あぁ。こっち陣営は人手不足でな。死者の手も借りてぇ状況なんだ。『NEVER』を相手にするなら、あんたが適任だろ」

 

「……『エターナル』は壊れた。それでもいいなら力を貸してやろう」

 

「是非もねぇよ」

 

 

メモリの力を除いたとしても、大道克己という戦力は大きいはずだ。『NEVER』相手なら特に。それにーー

 

 

「たぶん大丈夫だ。策はある」

 

「ん?」

 

 

「きっと『エターナル』はあんたを選ぶからな」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「克、己……?」

 

「よぉ、レイカ。あいつらは…………なるほどな。で、あの悪趣味な金色の奴を倒せばいいって訳か?」

 

「……克己……っ、お願い……助けてっ」 

 

「ああ。そのために俺は地獄から帰ってきた」

 

 

流石は大道克己である。かっけぇわ……やっぱりこいつ、主人公の風格あるって……。

 

 

「おい!」

 

「っ、お、おう」

 

 

『アナザー』を使った反動か少し気持ち悪い。車酔いに近い感覚にうんざりしながらも、大道の呼びかけに応じる。策を教えろ。そう言う大道に、俺はただ一言伝えた。

呼べ、と。

それだけで理解したのだろう。彼は右手を空へかざし、呼んだ。

 

 

「来い」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

財団Xに入り込んだ『転生者』の1人・通称『白服』。

奴は大道克己に執着し、超えようとあるメモリを作り出した。さらに、26本のメモリを使って、彼を模倣しようとしていた。だが、俺が真の『マスカレイド』でそれらのメモリを逆に利用して、その野望を砕いたのだ。

 

ただ、俺が取り込んだメモリは24本だけ。

残りの2本のうち、1本は白服の手元へ向かった『イミテーション』。

 

では、あとの1本は一体なんだったのか。メモリを取り込んだ俺にはその正体が分かっている。俺の体内に入らず、どこかへ姿を消したメモリ。それはーー

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

『エターナル』

 

 

 

どこからか飛来したその白いガイアメモリは、大道の掌の中へ収まる。その様子は、まるで本来の持ち主の来訪を待っていたかのようで……。

 

 

「ハッ、やっぱり格が違うな、あの男は」

 

 

俺はその光景を確認して、背を向けた。

『仮面ライダーW』も『エターナル』もいる。だから、ここは大丈夫だ。だから、俺は俺にしかできないことをしにいこう。

 

 

「待っててくれ、2人とも」

 

 

ーーーーーーーー




次回、第二決戦。
この展開をやりたくて、本編最終決戦で『エターナル』を消息不明にしておいたのです。伏線回収だぁぁぁ!! やっとできた!
大道克己は本当にかっこいいので、主役を喰うんですわ。

可能性の話ですが、見たい主人公は……。

  • 黒井(暗い方)
  • 霧彦
  • 風華
  • モブ顔三人衆
  • 白服
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