転生したらミュージアムの下っ端だった件(完) 作:藍沢カナリヤ
ーーーーーーーー
『リバース』となった俺は雫ちゃんと向き合う。
いつか本人から聞いた話だが、『イービル』は相手への悪感情を攻撃力へと変換するという。だから、好いた人相手には力を出せず、十分に戦えないはず。けれど、
ーーバキッーー
『ぐっ!?』
振り抜いた右腕が俺のガードを突破してくる。ビリビリと防御した両腕が痺れるほどの衝撃。雫ちゃんの細腕では出せるはずのない攻撃だ。それを可能にしてるのは、偽親玉の『エラー』による洗脳。
『はぁっ! はぁぁっ!』
ーーバキッバキッーー
防戦一方なのは仕方ないだろ。『リバース』の能力は『反転』。強力なものである反面、制御が難しく、雫ちゃんの体を反転しかねない。下手に能力を使えないのだ。だから、俺が狙うは!
『反転しろぉぉ!』
攻撃を受けながらも、『エクスビッカー』に向け、手を伸ばす。けど、それを許してくれる訳もなく。
『させま、せんっ』
ーーバキッーー
『ッ』
ーーグニャリーー
蹴り上げられ、照準がぶれたせいで、『エクスビッカー』ではなく天井が反転、崩落してきた。それを避けるため、2人とも後退したことで距離が空く。
ーーグニャリーー
『な!? 床が!?』
今度は床に触れ、床を反転させ、それを途中で止めることで壁を作り出す。目眩ましで雫ちゃんの視界を塞ぎ、反応を遅らせろ!
『右? それとも左から……っ?』
警戒する雫ちゃん。残念だったな、どっちも外れだ!
ーーグニャリーー
『下からっ!?』
床を壁にした影響で、床に空いた穴から下の階へ。そして、『エクスビッカー』の直下を再び反転させたのだ。これで終わりだ。
『とったッ!!』
『そうはいかない』
ーーザクッーー
『が……っ』
瞬間、背中に強烈な痛みが走った。倒れ込んだ俺は、自分に起きていることを確認しようと、痛む体をどうにか捻る。貫きことしてはいないが、背中には巨大な剣が刺さっており、それを俺に突き刺したのはーー
『それを壊されたら困るんだよ』
『っ、てめぇはッ』
『NEVER』の現親玉・『エラー』がいた。雫ちゃんの方へ視線を向け、ひとつため息を吐く。
『彼の侵入をここまで許すとは……この娘も、園崎霧彦も大したことないな』
『てめぇっ、雫ちゃんたちを元に戻せ、ごらぁっ!』
『……元気だね』
ーーグッーー
ーーブシュッーー
『~~~~~~っ!?!?』
俺の背中に刺さっていた剣を引き抜く『エラー』。あまりの激痛に声にならない叫び声を上げてしまう。そんな俺に、
『秀平くんっ』
雫ちゃんが手を伸ばしてきた。さっきのことといい、自力で洗脳が、解き始めてるのか?
『『エラー』によって修正した感情が綻び始めている。これは予想外だ。彼女たちは『これ』の設置後に修正したから、ゾンビ集団よりも修正は強いはずなんだけれど』
『修正だぁ? 洗脳の間違いだろ、このボケが』
『……失礼な。これは修正だ』
ーーグリッーー
『がっ!?」
背中を踏みつけられ、意識が飛びかける。そのせいで、『リバース』が体外へ排出されてしまった。くそっ、やべぇ。もう一度変身しようと、メモリに手を伸ばすが、その手すらも奴に踏みつけられて。
『仕方がない。計画を早めよう』
俺を踏み越え、『エラー』は『エクスビッカー』へと近づいて、1本のメモリを取り出した。白色の『T2メモリ』。やっぱりそれがすべての鍵か!
『ゾーン マキシマムドライブ』
奴は起動したそのメモリを『エクスビッカー』へ装填する。その途端に、マキシマムが発動。俺の目の前の『リバース』も浮き上がってしまった。咄嗟に腕を伸ばし、どうにかそれを掴む。だが、既に他のメモリは『ゾーン』のマキシマムによって、『エクスビッカー』の周りへと集結してしまっていた。
「それで何を、するつもりだ……」
『『欠陥』である君に答える必要はない』
「今度は風都市民全員を『洗脳』でもするつもりかよ」
『…………』
挑発には乗ってくれねぇか。
奴の話しぶりから想像するに、『エラー』の洗脳能力は『エクスビッカー』で強化されているようだったし、俺のその推測も大きく外れてはいないのだろう。俺を……いや、『転生者』を『世界の欠陥』と称する奴のことだ。どうせ『転生者』が否定される世界を作ろうとかそんなんだろ。
「くだらねぇ」
『君のような『欠陥』には理解されなくても結構』
「ハッ、てめぇもその世界の『欠陥』とやらだろうがよ。原作知識で『NEVER』の親玉に成り替わって、俺TUEEEEしてる奴が偉そうに語るな」
『……価値観の相違だ。言葉を交わすのも無駄だよ。それにもう時間だ。見たまえ』
準備は整ったと言わんばかりに、会話を止めて、『エクスビッカー』を指差す『エラー』。見なくても分かる。『エクスビッカー』には『T2』が装填され、エネルギーが充填されていた。
『24本のメモリは既に装填された。あとはこの『エラー』と君の…………一体なんのつもりだ?』
『はっ……は……』
「雫、ちゃんっ」
俺の手中にある『リバース』を奪い取ろうと向かってくる奴と、倒れたままの俺の間に、『イービル』ーー雫ちゃんは立ち塞がった。なんのつもりと聞かれた彼女は首を横に振る。
『わかり、ませんっ』
『……そこを退け』
『わたしは、秀平くんを殺さなきゃ…………でも、殺したくない』
「雫ちゃん……」
弱々しい声で、雫ちゃんは呟く。殺したくないと。
『っ、『欠陥』であるその男を修正しろ。それが世界のためだっ』
『イヤ……イヤっ』
『黒井秀平を殺せ! 『仮面ライダーイービル』!!』
『イヤっ!! わたしは、秀平くんを殺さないっ、殺したくないっ!!』
今度は力強く、そう言い切った雫ちゃん。奴の言葉を拒絶するように、彼女は変身を解除した。『仮面ライダー』からいつもの可愛い雫ちゃんに戻って。
『分からないな……彼はこの世界にいるべき人間ではない。この世界にこの男の居場所などーー』
「わたしは秀平くんを愛してるッ!!」
「わたしが秀平くんの居場所なのっ!! あなたなんかが勝手に決めないでッ!」
「っ」
目尻に込み上げてきそうになるものをぐっとこらえる。救われた。今の一言のお陰で、そんな気がしたから。
『ッ、退け!!』
「きゃっ!?」
「雫ちゃんっ!」
クソ野郎は雫ちゃんを押し退けて、俺から『リバース』を奪い取った。この野郎!? 雫ちゃんのことを雑に扱いやがって!?
「大丈夫か、雫ちゃん」
「は、はい……でも、秀平くん、ごめんなさいっ! わたし……っ」
「いい。分かってたから」
「……っ、うんっ」
罪悪感でいっぱいになり、涙を流す彼女の頭をそっと撫でてやる。きっと俺の気持ちが伝わったんだろう。雫ちゃんは泣きながらも、笑った。その表情は本当に美しくて、かわいくて。
「守らなきゃな」
俺はよろよろと立ち上がる。
両腕も、背中も痛ぇ。普段だったら動けないと駄々をこね、雫ちゃんに甘えてることだろうよ。でも、今はーー
『無駄だ。既に『エクスビッカー』にエネルギーは溜まった。あとはこの『エラー』のマキシマムで……!!』
「くっ、止めろッ」
叫び駆けるももう遅い。言うが早いか、奴は『エラー』を『エクスビッカー』に装填し、中央の発射ボタンを押した。
「あ?」
だが、『エクスビッカー』は起動しない。
なんだ、故障か? いや、確かにマキシマムは発動していたし、メモリだって全部……あっ。
そこで俺は気づいた。今、『エクスビッカー』に装填されているメモリの数は『エラー』を含めて25本だ。つまり、1本足りない。AからZまでで空いているスロットは、真ん中のーー『M』の文字だった。
「まさか……!」
俺はただのモブキャラで、主人公では決してない。だから、こんな偶然は出来すぎているし、そもそも『あんなメモリ』が『T2』に選ばれている可能性は低い。だけど、これがもし『運命』だというのならば、きっとーー
「来い」
真似事だ。主人公のように振る舞うことで、もしこの状況をーー愛する人を守れるのならば、いくらでも主人公になってやるよ。
だから、答えろ。
俺のメモリ! 俺の『運命のガイアメモリ』!
『マスカレイド』
あぁ、『運命』は俺の手の中に。
「雫ちゃん、そいつを貸してくれないか?」
「! は、はい!」
俺は雫ちゃんから『ロストドライバー』を借りて、腰に装着した。そして、再び手の中にあるメモリを起動させる。
『マスカレイド』
「……変身」
『仮面ライダーマスカレイド』。
『仮面舞踏会』の記憶を纏った黒と銀のライダーがここに誕生した。
俺は狼狽する『エラー』へ告げる。これも主人公の真似事だ。でも、いいだろう? 今くらいは主人公にならせてくれよ。
「さぁ、お前の罪を数えろ!」
ーーーーーーーー
可能性の話ですが、見たい主人公は……。
-
黒井(暗い方)
-
霧彦
-
風華
-
モブ顔三人衆
-
白服