転生したらミュージアムの下っ端だった件(完) 作:藍沢カナリヤ
001 aがもたらしたもの / 15年
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黒井秀平が『仮面ライダーW』の世界に転生してからというもの、『NEVER』大道克己に成り代わった男の言う通り、その後も『転生者』は現れ続けた。さらには、黒井が知り得ない原作後の物語『風都探偵』に登場する『裏の街』との戦いに身を投じてーー。
そして、彼の転生から15年。
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「嫌いッ!! 死ねッ!!」
そう言って、私は家を飛び出した。後ろから口煩い人の声が聞こえてくるけど無視無視。私ーー『黒井あかね』は財布を入れたバッグだけを持って、風都を走る。あてなんてある訳もない。けど、とにかくわからず屋のいる家にはいたくなかったんだ。
そうして走り続けた私が辿り着いたのはーー
「……風都タワー」
小学校の頃、生活科で街探検をした時に習ったこの街のシンボル。昔から家族でここに来ていたことを思い出して……。
「むかつく……っ! あーあーあーっ!!」
髪をわしゃわしゃして、もやもやを追い出す。この気持ちを晴らすには、高いところが一番! 私はバッグに入った財布を取り出して、小銭を漁る。
「よし!」
入場料を握りしめ、私は風都タワーに急いだ。
ーーーー風都タワーエントランスーーーー
「お嬢ちゃん、パパかママはいるかなぁ?」
開口一番、受付のお姉さんはそう言った。およそ高校1年生への態度じゃない。これは……。
「……いない。てか、私、高校生なんだけど」
「ふふふっ、背伸びをしたいお年頃なのかな? どう見ても小学生よ?」
「あ"あ"っ!?」
悔しいことに、そんな間違いは日常茶飯事で。今のむしゃくしゃした気持ちも相まって、地団駄を踏んだせいだろう。受付のお姉さんはさらにクスクスと笑う。
そんな私の背後に気配。この気配は!?
「……妹がすみません。お姉さん」
そう言って、遥か頭上からした声の主は、私の頭を押さえつけやがった。
何をしやがると毒づきながら、私は無理矢理頭を上げる。そこにいたのは、私を妹と呼ぶ『イケメン』様であった。
裕に170は超えていそうな高身長。眠たそうなくせに、ぱっちりとしてるのが分かる二重のたれ目。男にしては少し長めの艶やかな黒髪と前髪の一部だけに混じった銀髪。飾り気のない服装も、こいつの『イケメン』を引き立たせるだけで。事実、私の同級生や後輩にも、こいつに恋い焦がれる女子は多いのだ。
「あっ……お、お兄さんがいたのね……///」
「…………はい。大人1人子ども1人、お願いできますか?」
「えぇ、もちろんっ///」
「ありがとう、お姉さん」
「ううん、いいのよ♡」
受付のお姉さんに連絡先を聞かれている奴を置いて、私は風都タワーの展望台に続くエレベーターのある通路へと歩を進めた。そいつのお陰で中に入れたのは癪だが、まぁ今回ばかりは許してやろう。
「『おねえ』待ってよ」
エレベーターを待つ私に追いついた『彼女』は息を切らせながら、そう言った。
『おねえ』……私のことを姉と呼ぶこのイケメン、実は年下である。その上、弟ではなく妹なのだ。名前は黒井
「ついてくんな、瑠璃」
「却下」
瑠璃の顔を見ないまま、吐き捨てた。けれど、これで引き下がる妹ではないのは知っている。勝手にすればとため息を吐いて、私はエレベーターに乗り込んだ。もちろん、当然のように瑠璃は後をついてくる。
「…………」
「…………」
エレベーター内には2人だけ。沈黙を貫き、10数秒後には展望台に到着したことを知らせる音が鳴った。先に私が、その後に図体に似合わないちょこちょことした動きで、瑠璃が続く。そして、展望台備え付けのベンチに2人で座った。
休日ということもあり、人は多い。地元の人間も、観光で来ている人間もいろいろだ。
「……おねえ。今回はなんで家出したわけ?」
目の前の人たちをボーッと観察していると、ふいに瑠璃がそう聞いてきた。瑠璃が「今回の」と言うだけあり、私は何度か家出をしてる。瑠璃がついてきたのも、そんな私を心配してのことなんだろう。けど、余計なお世話だ。中学生に心配されるほど、私は落ちぶれちゃいねぇし。そんな思いで瑠璃から顔を背け、答えずにいると……。
「また反対されたの? 探偵になるの」
「っ」
図星だった。
てか、元々私は高校生になんてなる予定じゃなかった。『あの人』の元に弟子入りして、探偵になるのが私の夢だったのに……。でも、あの分からず屋のせいで!!
憤慨する私とは対照的に、瑠璃は冷静に言う。
「そうは言っても仕方ないんじゃない? おねえに危険な目に遭ってほしくないんだろうし」
「危険な目ぇ、仕事の8割が猫探しなのよ。そんな仕事、危険なわけないだろ!」
「……酷い言い様。じゃあ、なんで探偵になりたいのさ」
「それは……その……」
瑠璃の問いにごにょごにょと言葉を濁す。聞こえてはないだろうけど、それ以上は追求されないのは、なんとなくその理由を察しているからだろうけどさ。
「と・に・か・く! 私は帰るつもりない!」
「ふーん、そっか」
「…………」
「…………」
放っておけという雰囲気を醸し出してるはずなんだけど、瑠璃は隣に座ったまま動かない。15分くらいしても帰らない彼女を横目に見て、察する。こいつは動かないやつだ。はぁ、仕方がない。
「はぁぁ……分かった。もう少ししたら帰るから」
「ん」
私の言葉に満足したようで、瑠璃はおもむろに立ち上がり、観光客用に置かれてる望遠鏡を覗き込んでいた。
上機嫌に鼻唄も歌っていて、こういうところは年相応だななんて思ったり。
「おねえ!!」
少しして、瑠璃は声をあげた。何事かと訊ねると、
「家が燃えてるっ」
「……は?」
「家! わたしたちの家が!」
「っ、んなバカなっ!?」
瑠璃を押し退けて見た望遠鏡。それを通して見えたのは確かに、私たちの家、黒井家が燃えている様子だった。
「っ」
何が起こってるのは分からないけど、頭に浮かんだのは、さっきまで小言を言ってきたあの人のキザな笑顔で。
気づけば、私は駆け出していた。
ーーーー黒井家前ーーーー
私たちの家に着いて、まず目に入ったのはパトカーだった。消防車よりもパトカーの数が多かったのに気づいたのは騒動が収まってからで。今は目の前の燃えている自分の家、中にいるであろう人の安否が気になって、それどころじゃなかった。
「っ、どけっ! どけよっ!」
警察官を押し退けて、私は立入禁止の規制テープの内側へ。そこにいたのはーー
『なんですか、あなたは』
「え……」
『化物』。まるで『マグマ』そのものが肉体を持ったような、そんな姿の『化物』だった。
『まさか、あなた……黒井秀平の娘、ですか……』
「な、なんで、パパの名前…………?」
『マグマ』の『化物』からパパの名前が出たことに動揺する私。
『ああ、やはり! これはいいっ! 私の野望を砕いたあの男の娘が現れるとはっ! この娘を殺せば、私の気も少しは晴れるっ!』
「っ、来んな……っ」
後退り、よろけて尻もちをついてしまう。高笑いをしながら、寄ってくる化物。警察官が発砲してるみたいだけど、それを炎の壁で遮っているのを見て、改めて目の前にいるものが『化物』であることを実感し、また恐怖が込み上げてくる。思わず目を閉じる。
「おねえッ!!」
「っ、瑠璃!?」
そんな私と化物の間に入ってきたのは瑠璃。まるで私を庇うように、両手を広げている。
「バカっ! なにしてんだ!」
「……おねえに手を出すな」
こちらからは表情は見えない。けど、声は震えていて。
『また黒井秀平の子ども…………そうです! まずは1人をここで殺しましょう! そして、もう1人は黒井秀平の目の前で殺す。流石は私ですッ!』
「瑠璃っ、どけ! 逃げろッ」
「ヤダ」
私の言うことを聞かず、瑠璃は私の体を抱きしめた。その体はやっぱり震えている。
くそっ! なんなんだよっ!
咄嗟に私も瑠璃を庇うように、抱きしめる。『化物』の高笑いを聞きながら、私たちは目を閉じた。
『『マグマ』のメモリで焼き殺す? 品がないね』
いつまで待っても、私たちの身には何も起きない。恐る恐る目を開けると、そこにはもう一体の『化物』がいたんだ。
ヒラヒラと形の定まらない手足。後ろ姿は光を反射して……いや、その『化物』そのものが、まるで『オーロラ』のように輝いていた。
『……なんですか、あなたは。私の邪魔をする、と?』
『そうは言わない。彼女たちは恩人の大切な人だ。彼女たちを守るだけさ』
もう一体の『化物』はそう言うと、こちらを一瞥し、定まらない右腕を挙げた。その瞬間、光のカーテンが私たちを包んで。
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気づけば、私と瑠璃は抱き合ったまま、どこかに移動させられていた。そして、目の前にはさっきの『化物』。やがて、その『化物』の姿が変わる。人間へと。
「……あ、んたはっ、一体……っ」
どうにか絞り出した声に、その男は答えた。
「私は
「今は失踪している君たちの父親・黒井秀平に救われた者だよ」
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『風都探偵 ~15 years later~』編、開幕。