転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

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003 aがもたらしたもの / 犯罪者になりたくないけれど

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「最初に言っておくが、『街』への道は既に閉じられている。『仮面ライダー』諸君との戦いの中でね」

 

 

私の隣を歩く万灯はそう告げた。さっきは私をパパのところに連れていってくれるって言っていたのに……。嘘をついたのかと訊ねると、彼は首を横に振る。

 

 

「手がかりはある」

 

「手がかり?」

 

「そう。かつて『街』への通行証として使用していた『ビゼル』が残っている場所を知っているんだ」

 

「……よく分かんないけど、それを取りに行くってこと?」

 

「その通り」

 

 

なるほど。『ビゼル』とやらが、その『街』への鍵みたいなものなのかと勝手に納得し、聞く。それはどこにあるのかと。その質問に、万灯は微笑み答えた。

 

 

「風都署さ」

 

「…………」

 

 

悪い予感がする。私のこういう予感は大体当たる。

でも、いやいや、そんなまさかね。

 

 

「なに? 協力者でもいて、借りようってわけ?」

 

「いいや、そうは言わない。奪うのさ、『ビゼル』を」

 

 

あぁ、本当に私の悪い予感は当たってしまうのだ。

 

 

ーーーー風都署前ーーーー

 

 

「す、すみませーん」

 

 

風都署にて、私は生活安全課の札が置かれた窓口にいた中年男性に声をかけた。彼は愛想よく視線を下げて、こちらへやってきて口を開く。

 

 

「おや、どうしたんだい、お嬢ちゃん。迷子かな?」

 

「チッ」

 

「ん?」

 

 

子供扱いにキレそうになるのをどうにか抑える。これもパパを見つけ出すためだ。屈辱を耐えろ、私。

 

 

「あ、いや……こんなものが落ちてたから届けに来たんだけど」

 

「! こ、これはっ!」

 

 

ポケットから『それ』を取り出すと、彼の顔色が変わった。

 

 

「ち、ちょっと待っていてね」

 

 

そう言うと、受付の親父はバタバタと慌てて走っていく。きっと超常犯罪捜査課に伝えるんだろう。既に退職しているから、おじいちゃんに会わないのは救いだ。ただし、春奈ちゃんの父親はいるはず。その人さえ躱せば、あとはどうにでも誤魔化せる。

そう思っていると、さっきの受付の人は1人の男性を連れてきた。40代くらいの角刈りの……って、あ!

 

 

「あれ? 刃野さんの孫じゃないか」

 

「げ、なまくら……」

 

「なまくらぁ?」

 

「あっ、やば……」

 

 

超常犯罪捜査課の真倉刑事。おじいちゃんの部下だった人だ。

って、しまった。この人は私の顔を知っていた。でも、ここまで来たんだ。今はこの作戦をやり切るしかない。

 

 

「こほんっ、ガイアメモリを発見したのは君だね」

 

「え、あぁ……まぁ」

 

「詳しいことを教えてもらえるかな」

 

「…………うん。あー、そういや今日、春奈のお父さんは?」

 

「出張中だ。明後日までな」

 

「ふーん、そっか」

 

 

なるほど、それはいい。それなら件の『ビゼル』とやらも手に入れやすいだろ。あの人、春奈の父親の癖にチョー怖いし。本人にはダダ甘みたいだけど。

ともかくこれでーー

 

 

ーーーー風吹町・ショッピングモールーーーー

 

 

「で、上手くいったわけ?」

 

 

風吹にあるショッピングモールで万灯と落ち合った。風都署からそこまで離れてないとはいえ、私に対応した警察官は絶賛勤務中だろつし、たぶん見つかる心配もない。私はフードコートの窓際の席に座り、不本意ながら万灯と向かい合い、話を進める。

 

 

「『ビゼル』……だっけ、ちゃんと手に入ったよね?」

 

「ここに」

 

 

私の発する圧も何のその、万灯は自分の上着の胸ポケットを指差した。無事『ビゼル』とやらを回収できたらしい。てか、警察で保管されている証拠品を偽物とすり替える手伝いをしたなど、犯罪スレスレのことをしたのだ。手に入れてもらわなくちゃ困る。

 

 

「だが、照井竜が戻るまでの期限は2日間。きっと彼ならばあの『ビゼル』が偽物だとすぐに気づくだろう。それまでに『街』に向かい、黒井秀平を探し出す。やることは山のようにある」

 

「だから、早速動くんでしょ。早く『街』ってのに連れてって」

 

「それは勿論だが……どうやら今、この街を離れるのはまずいようだ」

 

「は?」

 

 

勿体ぶる訳ではない、これを。

そう言って、万灯はスマホをこちらに手渡した。画面には動画配信のサイトが表示されている。

 

 

「……推しのライブ配信でも始まったとかだったら殺すけど」

 

「ライブ配信。それだけは合っているよ」

 

 

怪訝に思いながら、画面をよく見る。そこに写し出されていたのは、さっきまで私たちがいた風都署。そして、そこにはあの『マグマ』の『ドーパント』がいた。それだけならまだいい。問題なのは、

 

 

「なんで、瑠璃がいるのよっ!」

 

 

瑠璃が『マグマ』と対峙していたことだ。

 

 

「彼の目的は黒井秀平への復讐。自分の野望を砕いた彼に報いるためならば、狙いは君でも君の妹でもどちらでもいい、といったところかな」

 

「っ、ふざけんなっ」

 

 

そもそもあいつはなんなのよ!?

パパへの復讐? 野望を砕いた? 一体、なんの話してんのよっ!

そんな私の怒りを含んだ問いに、万灯は少し迷った様子を見せた後、口を開いた。

 

 

 

「……君の父親・黒井秀平は『ドーパント』だった」

 

「は?」

 

 

 

全く予想外の言葉に固まる。

 

 

「彼は昔、メモリを使い、あの男の野望を阻止したんだ。『仮面ライダー』ではなく、『ドーパント』としてね」

 

「な、なに、それ……」

 

「伝えようか迷ったけれど、君たちが『マグマ』に襲われたのもきっと必然だ。人とメモリは惹き合うもの。なら、伝えるべきなんだろう」

 

「ち、ちょっと待って。頭が追い付かない」

 

 

パパが『街』とやらにいることも、ガイアメモリのことだって、やっと飲み込んだところなのに、また新情報……うぅぅ、瑠璃と違って、私は頭よくないんだっての。

……って、そうだ! 今は混乱してる暇なんてない!

 

 

「瑠璃を助けなきゃ!」

 

「……そうだね、詳しいことはまた追々」

 

「うんっ」

 

 

幸い風都署からそこまで離れてない上に、『ドーパント』は万灯が倒せるはず。今はとにかく急いで瑠璃のとこへ行かなきゃ!

私は勢いよく席から立つと、近くにあるエスカレーターへ。非常事態だと心の中で言い訳をしながら駆け降りて、ショッピングモールを出た。

 

 

ーーーー万灯の独り言ーーーー

 

 

「この衝動的な言動……彼を思い出すね」

 

「彼の娘ならば、あるいは『ハイドープ』に…………いや、それはもういい。我々『裏の街』は既に負けたのだから」

 

「今は彼女を支えることだけを考えよう」

 

 

ーーーーーーーー




戦闘がなくてすまぬ。
やっぱり必ず一話に戦闘の入る仮面ライダーってすげぇや。
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