転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

94 / 122
新章『o』編開始です。


006 oの残光 / 邪悪の残り香

ーーーーside『R』ーーーー

 

 

おねえを連れ戻し、そして、パパとママの手がかりを探るため、わたしと霧彦さんは、早速風都署にやってきていた。出張から戻った照井警視正に会うためだったけど……。

 

 

「俺に質問をするな」

 

 

春奈ちゃんパパは酷く不機嫌だった。というより、キレてる。当然といえば当然。だって、

 

 

「それよりも春奈の件だ」

 

 

春奈ちゃんが危険な目に遭ったのは、既に彼の耳にも入っていた。霧彦さんの顔色が良くないのを見るに、たぶんこれは相当怒ってる。

 

 

「……そ、そのことは本当に申し訳ないと思っているよ」

 

「申し訳ないで済んだら警察はいらん。そして、俺がその警察だ」

 

「…………っ」

 

 

眼光の鋭さに思わず体が跳ねてしまう。春奈ちゃんからはいつもパパは優しいと聞いていたから、そのギャップがまた恐ろしさを加速させてる。

けれど、不意にその眼光を隠すように、彼は顔を伏せ、口を開く。

 

 

「っ、すまん。少し取り乱した」

 

 

少し……? や、冷静になってくれたならいいけど。

ともかく春奈ちゃんパパはひとつ咳払いをして、話を進めた。

 

 

「目撃情報を総合すると、『マグマ』を使った人物は15年前、黒井秀平によって撃破された元『財団X』の男だろう。本来、風都刑務所に収容されていたんだが……」

 

「脱獄した。そう翔太郎から聞いているよ」

 

「あぁ。だが、刑務所の警備レベルは、13年前の『NEVER』の事件を受けて格段に上がっている。少なくとも一個人が容易に脱獄できるはずがない。そして、極めつけはあの『マグマ』……あれは我々警察が『origin』のアジトから押収したものだった」

 

「内通者がいると?」

 

 

霧彦さんの質問に、春奈ちゃんパパは静かに頷いた。少なくとも脱獄を手引きし、メモリを提供した協力者はいるだろう、とも言う。今回の出張もそれを捜査していたみたい。その間に娘が巻き込まれたんだから、怒るほど心配にはなるか。

 

 

「左たちにも協力依頼は出してある。俺もこのまま捜査に戻るつもりだ」

 

「私にできることはあるかな?」

 

「今回の件は氷山の一角だろう。ガイアメモリ犯罪が再び増える可能性もある。須藤霧彦、お前には春奈の警護を頼みたい。それから彼女も」

 

 

そう言って、春奈ちゃんパパはこちらに視線を向けて。一応、わたしも狙われた身だし、配慮してもらえるのはありがたい。だけど、わたしはーー

 

 

 

「おねえを見つけ出して、連れ戻さなきゃ」

 

 

 

ただ守られるだけじゃダメ。

わたしはいつもおねえに守ってもらってきた。わたしよりずっと小さいその背中で。

だから、今度はわたしが守るんだ、おねえを!

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

しばらく春奈ちゃんパパと見つめ合う。見定められてると感じる。だから、目は反らさない。反らしちゃダメだ。

数十秒はそうしていた。やがて、春奈ちゃんパパはひとつため息を吐いて、霧彦さんに告げる。

 

 

「春奈の方はシュラウドに動いてもらう。場合によっては、ときめに世話を頼もう」

 

「……すまないね」

 

「いや、恐らく何を言っても、この娘は譲らないだろう」

 

 

そこまで言って、彼は小さく笑う。

 

 

「本当に、あの男にそっくりだな」

 

 

ーーーー霧彦宅・瑠璃の部屋ーーーー

 

 

「ふぅ」

 

 

わたし用にと霧彦さんが用意してくれた部屋。その中央を陣取るセミダブルのベッドに横になり、大きく息を吐く。

よし、どうにか許可はもらえた。

 

 

「……大丈夫」

 

 

1人呟く。『ドーパント』や『ガイアメモリ』なんていう想像を超えたものと関わって、おねえを取り戻す。そして、パパとママも見つける。正直、怖い。

だけど……うん、大丈夫。

こういう時には、いつもわたしを支えてくれるから。

 

 

「……ママの『お守り』」

 

 

バッグから取り出したのは『お守り』。かわいい桜柄の小さな巾着袋。

……忘れもしない。失踪する前日に、ママがわたしにくれたもの。

 

 

「っ」

 

 

ママの優しい笑顔を思い出して、つい泣きそうになる。

でも、我慢。大丈夫、大丈夫。

 

 

ーーピリッーー

 

「あっ!?」

 

 

ーーコツンッーー

 

「いたっ!?」

 

 

いつもよりずっと強く握ってしまったからだと思う。弱くなっていた巾着の縫い目が破けてしまって、『お守り』の中から何かが落ち、寝転んでいたわたしの額に直撃してしまった。

おでこをさすりながら、体を起こし、わたしのおでこに降ってきたものを握る。その瞬間、

 

 

ーービリッーー

 

 

まるで電気が走ったかのような衝撃。静電気かと思って、近くにあったペンで『それ』を手繰り寄せた。そこにあったのはーー

 

 

「っ、ガイア、メモリっ!?」

 

 

色こそ違うし、なぜか一部の外装が壊れていて、なんのメモリなのか分からないけど、『マグマ』と同じ代物だってことは分かる。反射的に飛び退いた。

なんでママの『お守り』から? そんな疑問は、それ以上の衝撃のせいで消し飛んでしまう。

 

 

『おい』

 

「っ、だ、だれっ!?」

 

 

どこからか声が聞こえてきたんだ。女の人の声。誰かがいるのかと、見渡しても誰もいない。気のせいかとも思ったけど、

 

 

『ここだ、ここ』

 

「…………え」

 

 

その声はどう考えても、そのガイアメモリから鳴ってるように聞こえる。

 

 

『はっ、なるほどな。雫にそっくりだ』

 

「っ」

 

 

ママの名前を出すその『メモリ』。頭の中に次々とハテナが浮かんでは消える。そうして、どうにか捻り出したのは、

 

 

「あなた、は……何者……?」

 

 

混乱したままのわたしに、その『メモリ』は名乗った。

 

 

 

『あたしは『イービル』』

 

『まぁ、なんだ……お前のもう1人の母親、みてぇなもんだ』

 

 

 

ーーーーーーーー

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。