転生したらミュージアムの下っ端だった件(完)   作:藍沢カナリヤ

99 / 122
011 yの邂逅 / 老人と海

ーーーー風見埠頭ーーーー

 

 

万灯に言われ、やってきたのは風都・風見埠頭。ここにあの『リアクター』のシスターを倒せる協力者がいると言われてやってきた。ちなみに、当の万灯は他にも用があると、私に任せていなくなった。

 

 

「……もう時間なんだけど」

 

 

埠頭では、おじいさんや若い女性、子供なんかも釣りをしている。約束の人物らしき人は見当たらない。

 

 

「本当に適当だ、あの野郎」

 

 

『マグマ』との戦闘といい、副作用の件といい、中途半端にしか事情を説明しない。その上、それを指摘すると「そうは言わない」と否定する。

 

 

「なんなんだ、あいつ」

 

 

ボソッと毒づきながら、埠頭の端っこに座り込む。

 

 

「何か悩み事ですか」

 

「ん?」

 

 

そんな私に話しかけてきた声。隣を見ると1人の子供がいた。さっき見た釣り人の中にいた子だ。年不相応な落ち着いた雰囲気の少年。さらに、釣りをするにはおおよそ合わない正装を着ていた。周りには親らしき人物はいないようだけど。

 

 

「…………まぁ、そんなとこ。最近、色んな事がそれはもう、めちゃくちゃでさぁ」

 

 

気づけば、私は色々と吐き出していた。勿論、詳細は語らずぼやかして話す。初対面の子供に何を話してるんだとは思うけど、不思議と話を受け止めてくれる感じがして。

 

 

「それは大変ですね」

 

「そ。行方不明だったパパに会えるかもしれないとか、パパを探しに変な『街』で化け物と戦う羽目になるとか」

 

「化け物、ですか」

 

「まぁ、信じてくれないだろうけどね」

 

「いいえ、信じますよ。風都には昔からその手の話は付き物でしたから」

 

 

少年は水面から目線を外さずに、私との会話を続ける。

 

 

「昔? 見てきたみたいに言うね」

 

「……そんな噂を聞いたことがあるだけですよ」

 

「ふーん」

 

 

高校生である私ですら聞いたことのない話だったのに、見た目小学生の少年はそう言う。このどこか大人びた雰囲気といい……。

 

 

「それで、ここには気分転換に?」

 

「あ、いや。パパを探す手伝いをしてくれる人と待ち合わせしてたんだけど……」

 

 

キョロキョロと辺りを再度見渡しても、それらしい人は誰もいない。本当に約束してあるんだろうな、と万灯への恨みが沸々と湧いてきた時だった。

 

 

「あなたは……父親を恨めしくは思わないんですか?」

 

 

少年がそんなことを訊ねてきた。

 

 

「あなたの父親は、あなたと妹さんを置いて出ていった。事件に巻き込まれたかもしれないとは言っていましたが、あくまで可能性の話。しかも、そのせいで『ドーパント』との戦いに巻き込まれてしまって……父親のせいであることは間違いないでしょう?」

 

「まぁ、そうだね」

 

「なら、わざわざあなたが危険を侵してまで、父親を探す必要はないと思いますが」

 

「…………」

 

 

パパのこと、ムカつかないと言ったら嘘になる。

私たちが小さかったとはいえ、なんの事情も話さず行方不明になって。その上、私の中に『イービル』メモリを埋め込んでったのもたぶんパパだろう。

そりゃ、むかつく。むかつくからこそーー

 

 

 

「パパに会いたいんだ」

 

「会って、一発ぶん殴らなきゃ気が済まない!」

 

 

 

話はその後で聞いてやる。私は『街』にいた2週間でそんな決意を決めていた。

 

 

「フフッ……」

 

 

私の言葉を聞いて、少年は笑った。何がおかしいのかと聞くと、笑いながら彼は立ち上がり、それに答える。

 

 

「あなたのように、割り切れたなら僕も少しは楽だったんでしょうね」

 

「??」

 

「いえ、こちらの話です。それより改めて自己紹介させてもらいましょう」

 

 

少年は私に向かい合い、名乗った。

 

 

「僕は千葉秀夫」

 

「万灯さんの協力者です」

 

 

ーーーー喫茶店ーーーー

 

 

「無事、秀夫くんと合流できたようだね」

 

「こんな子供が協力者なんて聞いてない! 本当に大丈夫なのっ!?」

 

 

少年・秀夫くんは隣で静かに珈琲を飲んでいる。まぁ、確かにこの落ち着き方からは大物感を感じるけどさ! それでも子供は子供だ。こんな子供を危険な目に遭わせるのは……。

 

 

「落ち着いてください、あかねさん。僕のような子供では頼りないでしょうが、『リアクター』についてよく知っているのは事実ですから」

 

「あぁ、彼は昔、『リアクター』の適任者の選定にも携わってくれていたから、その特性についてもよく知っている。彼以上の適任者はいないよ」

 

「昔……?」

 

「万灯さん」

 

「失礼。失言だった」

 

「?」

 

 

謎のやり取りを交わす2人。訝しげに思いながらも、とりあえず文句は飲み込むことにする。この子が戦う訳じゃないんだろうし、今は話を進めなきゃ。

 

 

「それで、どうやってあの『リアクター』とかいうシスターを倒すの?」

 

 

私の疑問にまず答えたのは、秀夫くん。

 

 

「『リアクター』は非常に扱いの難しいメモリです。特に、メモリ使用後に体内に残る超高熱の処理が問題で、体外へ熱を排出できなければ死に至ります。その点は?」

 

「恐らくクリアしているだろう。光くんと同じ、蒼い炎を纏っていた」

 

「となると厄介ですね。正面突破も絡め手も難しい。万灯さん、『ブラキオサウルス』はまだ残っていますか?」

 

「残念ながら」

 

「……そうですか」

 

 

ここまでの問答を受けて、秀夫くんは考え込んでしまった。時間にして2、3分ほど。やっぱり無理なのかと思ったその時、彼は再び口を開いた。

 

 

「高熱に耐性があったとしても、その逆はどうでしょうか」

 

「ど、どういうこと?」

 

 

彼の言っていることが分からず、問い返すと、秀夫くんはにこりと笑って解説してくれる。

曰く、メモリ特性は人それぞれで、『リアクター』の超高熱に適応できる人間は稀有だと言う。だからこそ、それ以外のメモリへの適正がない。特に、冷気に弱い可能性が高い。

それが秀夫くんの策であった。つまり、

 

 

「あいつを冷やせばいいってこと?」

 

「簡単に言えば、そうですね」

 

 

なるほど。

 

 

「冷気を操るメモリーー例えば『アイスエイジ』は存在しているが、それを使っただけで『リアクター』を突破できるとは思えないな」

 

「はい。だから、『リアクター』自身の熱を利用します」

 

「利用?」

 

「万灯さんなら聞いたことがあるでしょう」

 

 

万灯の言葉にひとつ頷いた彼は、言葉を続ける。

 

 

「あらゆる事象を反転させるメモリーー『リバース』」

 

「それで『リアクター』の超高熱を反転させます」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

『リバース』

 

『リアクター』を倒すためのメモリを手に入れるのが、私たちの当面の目標となった。

 

 

ーーーーーーーー




y編終了。
次回、新章。
そして、話が大きく展開し始めます。

参考までに教えてください。オリキャラは……。

  • 嫌いじゃないわ
  • 苦手
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。