公爵令嬢と聖女の王子争いを横目に見ていたクズ令嬢ですが、王子殿下がなぜか私を婚約者にご指名になりました。 〜実は殿下のことはあまり好きではないのです。一体どうしたらいいのでしょうか?〜   作:柴野いずみ

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――リーズロッタ公爵令嬢視点――


15:聖女、泣き縋る。

 これは一体どういうことですの?

 

 あの泥棒猫を懲らしめるべく、聖女の作戦に乗ってやりましたのに。

 わざわざスペンサー様を呼び出し、時間を作ろうと致しましたのに。

 

 スペンサー様ったら、あたくしの顔を見るなり激昂して、大急ぎでどこかへ走って行ってしまったのですわ。

 その時のあたくしの怒りと言ったらそれはそれはもう激しいものでしたの。

 

 ――どうしてあたくしを差し置いて、あんな女に!

 

 あたくしはスペンサー様のために今まで生きてきたんですのよ。

 勉強だって、何だって。いつもスペンサー様の喜ぶ顔が見たくて必死でした。

 

 なのに婚約破棄をされて。

 あたくしがどれほど傷ついたことか、スペンサー様はちっともわかっていらっしゃらない。

 あんなゴミクズにうつつを抜かして……許せませんわ!

 

 あたくしは急いでスペンサー様の後を追いましたの。

 幸い、足は速い方でしたから、スペンサー様を見失うことなくそこまで辿り着くことができましたわ。

 

「スペンサー様ぁ! あたくしをほったらかしにして遊び呆けるとは何事ですの!?」

 

 部屋――泥棒猫がいるという話だったその場所へ飛び込み、あたくしは叫びました。

 見渡すとそこにはダコタ、スペンサー様、それにゴミクズが集まっていて、今まさに修羅場を迎えようというところでしたわ。

 ならばあたくしも参戦いたします!

 

「リーズロッタ、執拗いぞ!」

 

 スペンサー様があたくしを振り返り激昂なさいました。

 ああ、なんて素敵な方なの。怒っていらっしゃる姿がとても凛々しいですわ。

 

「執拗いのはスペンサー様でしてよ! 例え国王陛下が認めようとも婚約破棄などあたくしが認めませんわ! スペンサー様はあたくしのものですもの、そんなゴミクズに渡してなるものですか!」

 

「ゴミクズ!? ダスティーのことを悪く言ったら許さないぞ!」

 

 だって、ゴミクズですもの。

 それから一悶着があり、色々と騒いでいると、また新しい乱入者が現れましたの。

 

 それがオネルドという平民。どうやらゴミクズ家の執事か何からしいですわ。

 スペンサー様よりずっと見目は劣っていますけれど、こいつならゴミクズにお似合いかも知れませんわね。ぜひ押しつけてやりましょう。

 

「あたくしにいい考えがありますわ。執事さん、そのゴミクズをお掃除しておいてくださいませんかしら? あたくし、その泥棒猫のせいで迷惑しておりましたの。持ち出してくださるなら大歓迎ですわ」

 

「もちろんそうしますが、ダスティー様をゴミクズだの何だのと侮辱するのは決して許しません。例えあなたが公爵令嬢だとしても」

 

 あたくしに口答えをするなんて……どれほど愚かな男なのでしょう。本当にゴミクズにピッタリなゴミクズ執事のようですわね。

 ゴミクズもまんざらではないようですわ。目をうるうるさせて、悲劇のヒロインムーブを始めやがりましたの。

 

 『私はあなたのことが好きです。でもこれは約束で、私は行けませんから』

 

 大体こんな感じですわね。

 そんなにこの男が好きなら、さっさと出てお行きなさい泥棒猫。スペンサー様のことはあたくしが一番わかっていますの。お前のようなゴミクズにも、ダコタのような平民上がりの躾のなっていない女にも、譲ってなんかやるものですか!

 

 スペンサー様はゴミクズへの狂愛を叫びましたけれど、ゴミクズにはそれが通じず。

 結局、婚約破棄されてしまいましたの。

 

 ああ、いい気味ですわ。

 最初からあたくしを選んでおけばこのような惨めなことにはならなかったのですわ、スペンサー様。

 でも大丈夫ですのよ。あたくしの元へ来れば、優しく慰めてあげますわ。

 

 けれども、そう簡単にはいかなかったんですの。

 項垂れるスペンサー様にダコタが擦り寄っていったのですわ。そして、

 

「王子様、クズ令嬢に婚約破棄されちゃって……可哀想。ねぇ、ダコタを選んで? ダコタ、ずっと王子様のことが好きだったんだ……」

 

 甘ったれた声でそんなことを言い出しやがりましたの。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「何を勝手なことを言っていますの! スペンサー様の婚約者はあたくしですわ!」

 

「え〜。でもリーズ様だって婚約破棄されてたじゃん。今はダコタとリーズ様は対等なんだよ? ねぇ王子様。もうあのクズ令嬢はダメでしょ? わかったでしょ? だからダコタと……」

 

 ピンクの瞳に涙をいっぱい溜め、上目遣いでスペンサー様に縋るダコタ。

 その動作はまるでプロの女優のようですわ。これはあたくし、負けていられませんわね。

 

「そうはさせませんわ! あたくしの愛がどれほど強く激しいものか、スペンサー様にならわかるでしょう!?」

 

 ダコタの奴、泥棒猫が去ったと思ったらすぐ……。

 あたくし、負けませんわよ。婚約破棄されたか何だか存じませんけれど、あたくしはずっと幼い頃からスペンサー様を支え続けて来ましたの。だからあたくしが妃となり、この先も愛で続けるべきなのですわ!

 

 しかし当のスペンサー様といえば、魂の抜け殻のようになってしまわれていらっしゃいます。

 そんなにあのゴミクズが良かったんですのね。腹が立ちますけれど、素直に負けを認めてやってもいいですわよ?

 けれども彼女が撤退した以上、スペンサー様には近づけさせません。あたくしは必ずスペンサー様を手にしてみせますわ。

 

 よーし、やりますわよ!

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