非日常怪異譚   作:おどおど

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第2話「探し物」

【月並中央高校 1-2教室】

 

 

 

『りせっち!スマホに着けてたキーホルダー無くなっちゃたの!お願い探して!』

 

 

 

「またぁ?先週、お気にのペン無くしたばっかじゃん。まぁいいや、そのキーホルダーの写真と名前あったら教えて。」

 

 

 

『ありがと!好き~!えっとね、これなんだけど~。名前が紅リボンキーホルダー!』

 

 

 

「おっけ。家にある水晶で占ってみるね。わかったら明日渡す。」

 

 

 

『かしこまり~。じゃ明日ね。』

 

 

 

お願いをしてきた女子生徒は足早に教室を出て行った。

 

頼まれた少女、花端莉世《はなばたりせ》の左手には探し物のキーホルダーを握りしめていた。

 

 

 

花端莉世は、紛失した物を付近に転移させる超能力を持っていた。

 

ただし紛失物の名前と特徴を知っとかなければならない。

 

知ったうえで目を瞑りその物を強くイメージすることで、彼女の周辺にその物が転移する。

 

 

 

彼女が試した限りでは、手に持てるものやリュックくらいの大きさは転移できた。

 

また、距離にも制約があるようで、彼女の周辺4kmが最大らしい。

 

以前、遠く離れた地方に住む彼女の祖父母のもとを訪れた際に忘れた香水を、彼女は自宅からイメージしたが転移しなかったらしい。

 

彼女は、その能力を水晶の力として友人に話していた。

 

 

 

 

____________________

 

 

「(大切な幼馴染が失踪した。数日前から彼女は学校に来なくなった。それ以来家にも学校にも姿を現さない。彼女のお母さん曰く、その日も欠伸をしながら眠そうに家を出たと、普段と変わらない娘だったそうだ。行方不明になった事実は親と私しか知らない。)」

 

 

 

彼女は机に肘をつき天井を眺める。

 

 

 

「(私はこの力を得てから気付いたことがある。なんとなくだけど、彼女も力を持ってて、巻き込まれたんだ。何かに。警察は信用できない。私が探すしかない。)」

 

 

 

彼女は決意した。教室で、脅威を知らず賑わう群衆の中、異質な力を身に纏い。

 

 

 

「(会いたいよ…ここちゃん。)」

 

 

 

「(私の力は、物しか探せない。私の大切な幼馴染のここちゃんを、強く、何度祈っても現れなかった。学校で、通学路で、家で、何度祈っても近くに現れなかった。

元気な声で私を読んで、太陽のような笑顔で悪戯してくる彼女は来なかった。逢いたい…逢いたいよ。)」

 

 

 

夕方、彼女は1人通学路を進む。

 

周囲の繁盛する店の音は、考え中の彼女の耳には届かない。

 

 

 

「(彼女はいつも眠そうだけど、時間管理は徹底してた。どうしたら長く寝れるかを研究して、乗るバスを同じにするって言ってた気がする。なら…そのバスでここちゃんを見た人がいるはず。明日は土曜。行ってみよう。何かわかるかも)」

 

 

 

 

【翌日 犬糸ここの自宅周辺】

 

 

 

花端は、犬糸がよく来るバス停のベンチにいた。

 

 

「(来てみたけど、彼女を見た人がこのバスに乗ってる可能性は低いか…。)」

 

周囲を見渡す。すると近くにレストランが見えた。そのレストランの入り口には監視カメラがある。

 

「(バス停の方を向いてる…。映ってるかも!)」

 

彼女は開店前のレストランの扉を叩く。

 

 

 

 

 

 

【レストランアキナ スタッフルーム】

 

 

 

店長は少女のお願いを快く引き受けてくれた。

 

花端は犬糸が行方不明になった日の朝の映像を見る。

 

映像には、バス停が写し出されていた。

 

老若男女が佇む中に犬糸ここはいた。欠伸をしている。

 

 

 

「(いた!やっぱりいつものバスに乗ったんだ。)」

 

 

 

花端は店長に何度もお辞儀をすると、レストランを後にした。証拠を発見し高揚する彼女は、ちょうど来たバスに駆け足で乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

【月並中央高校付近のバス停】

 

 

 

彼女は学校近くの個別塾から出てくる。個別塾の入り口の監視カメラの映像を見たようだ。

 

 

 

「(映像に写った、ここちゃんが乗ったバス。そこからここちゃんは降りて来なかった。つまり、途中で降りたんだ。学校に向かうはずなのに途中で降りる訳がない。ということは、バスで何かに巻き込まれたのかも。でも…。)」

 

 

 

彼女は犬糸の家の方角を向き、その方向に歩く。視界の先は住宅街が広がる。

 

休日だからか、人は1人もいない。

 

 

 

「(バスの乗降場所には、監視カメラがあったから良かったけど…バスが通るルートはほぼ住宅街。つまりカメラが無い。ここちゃんがどこで降りたかがわからない。)」

 

 

 

彼女は頭を抱えた。

 

 

 

「(行き詰まった。もう少しかもしれないのに。もう少しで、ここちゃんに逢えるかもしれないのに。どうしたらいいの。)」

 

 

 

花端は、歩道に膝をついた。涙が止まらずスカートは濡れていく。

 

 

 

「(ここちゃん…逢いたい…逢いたいよ。)」

 

 

 

ごとっ

 

花端の背後で何か大きな物体が置かれた音がした。彼女は咄嗟に涙をふき振り返る。

 

そこには、胴体が血で塗れ目を見開き人形のように動かない犬糸ここが倒れていた。

 

犬糸に近づく花端。犬糸の肌は冷たく、冷酷だった。

 

閑静な住宅街に、少女の悲鳴が響く。

 

 

 

 

【ニュース番組】

 

今朝、月並中央高校の近くの住宅街で、行方不明となっていた犬糸ここさんの遺体が発見されました。隣には錯乱していた女子生徒がおり、警察は何か事件に巻き込まれたと見て捜査しています。………速報が入りました。

 

その遺体発見現場から3km離れたアパートで異臭がするとして警察が異臭元の部屋に突入したところ、衰弱死した40代男性を発見しました。警察は…

 

 

 

End

 

 

 

 

 

 

 




■登場人物

◆花端莉世

月並中央高校に通う高校1年生。犬糸こことは小学校からの幼馴染で大切な親友。よく寝ている彼女の寝顔をこっそり撮るのが好き。



◇能力

特徴と名前を知っている物を、彼女付近に転移させる。基本手で持てる物なら何でも可能だが、強い思い入れがある物なら中型の大きさも可能。距離にも制約があり、彼女の周辺4kmが最大である。物を紛失した時には最適な能力である。
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