自分の部屋とされる個室へと連れてこられた俺は、ベッドに腰をかけながら今の状況を整理することにした。
俺が最後に覚えているのはオタコンと共に公園で一休みしていたこと。
彼が買い足しに行った後急に眠くなって意識を手放し、気が付いたらこのエックスと呼ばれる若者・・・いや、ロボットの体と入れ替わっていた。ゼロと言う男の話によるとイレギュラーの身柄拘束の際に巻き添えを喰らいそうになった子供を庇って頭を撃たれたらしい。そして、治療を受けて目を覚ますと人格は俺に入れ替わっていた。
そこで二つの仮説を考えてみた。
一つ目は、『異世界転生』と言うものだ。少し前、オタコンが日本で流行っている『一般人が神様から特殊な力をもらって異世界で大活躍する作品』とか言って一時スライムが主人公のアニメを見ていた。サニーと一緒に興味津々で一緒に見ていたのは今でも思い出す。
だが、条件があるらしくその中で一番割合が多いのがトラックに跳ねられることか通り魔に刺されることらしい。残念ながら俺はトラックに跳ねられもしなければ通り魔に刺されてもいない。未練がないと言えばサニーが一人前になる歳まで生きられそうになかったことぐらいだろう。それにこの世界はアニメで観たファンタジー?な異世界とは程遠い。寧ろSFの世界観だ。
二つ目は、このエックスの体に俺の何らかのデータを用いたという説だ。
年表を確認してみたが現在は俺の生きていた時代から100年ぐらい時間が経過していたことが分かった。詳しくは解らないがこの『イレギュラーハンター』と呼ばれている治安維持組織は、人間がほどんどおらずロボットが構成員として働いている。恐らくグレイ・フォックス、雷電のような強化外骨格が社会的に問題視され、それに代わるものとして生み出されたのがこの時代では主流となったのだろう。尤もこの部屋に来る途中で見た連中には戦闘に特化したような外見の者はいなかったが。
「何を考えるにも情報が不足しているな・・・幸い病み上がりらしいからこの辺は少しずつ探っていくしかないか。」
そもそもデータを用いたからと言う理由で俺の人格が表に出たというのは不自然すぎる。かつてオセロットがリキッドの右腕を移植した際に人格が乗っ取られるという事態に遭遇したが後にナノマシンによるサイコセラピーで演じていただけと言うことが判明したため、俺もソリッド・スネークを演じているだけのエックスなのかもしれない。
とりあえず頭を切り替えて俺は、今後の事態に問題が起きないよう備えることにした。
体の方は、元々頭部にダメージを受けていただけだから問題なさそうだ。となれば次はできるだけ今までと違和感がないように演じなければならない。
少しずつではあるがエックスとしての記憶が徐々に頭の中に入り込んでくる。これによるとこの男は戦士としては、あまり向いていない性格だということが分かる。それに組織内でも一般兵のような扱いで物腰も低そうだ。
新兵と言えば『FOXHOUND』以来だな。同期もマスターもそこまで硬い物言いじゃなかったからそこまで気にしていなかったがしばらく気を使いそうだ。
まずはリハビリを兼ねて射撃訓練、その後はCQCの練習をして周りから違和感を持たれないようにしよう。
そう決めると俺は早速部屋を出て訓練室へと向かう。余程事件が多いのか、施設の中は人通りが少ない。誰にも悟られることなく訓練室へ入室することができた。
「確か腕が変形して銃に変化するんだったな。」
念じてみると右手が収納されて銃口が現れる。的が現れるとM9などのハンドガンと同じ要領で発砲する。若干ブレがあって微妙な感じこそはあるものの、2年間のブランクを考えれば上々だ。だが、自分の腕と一体化しているというのはやはり違和感が拭えない。それ以前に腕を変形させてしまうとCQCを行う際に支障をきたす。何かしらの理由を付けて銃を携帯することを視野に入れた方がいいかもしれない。
「次は体を動かすか・・・」
次は体を動かすためのシミュレーションルームへと足を運ぶ。部屋を見るとそこには先客が来ていた。スキンヘッドに緑のアーマーが特徴の男だ。
「あれが上官のシグマか。」
記憶が正しければ、エックスの所属する第17精鋭部隊の隊長であのケインとかいう老科学者の最高傑作らしい。体の動きにも無駄が少なく、優秀な兵士だと言うのは見てわかる。訓練を終えるとシグマは俺の存在に気づき、部屋に入ってくるように手招く。変に無視すると怪しまれるため、俺は素直に彼の元へと行く。
「エックス、もう動いて大丈夫なのか?Dr.ケインからはしばらく休むようにと聞いていたが。」
「あ、あぁ・・・・動く分には大丈夫です。ただ、頭部を損傷したこともあって少し記憶が曖昧になっていたもので。少し気を晴らそうと。」
「そうか。・・・・だが、エックス。イレギュラーハンターと言えど万が一の時に動くことができなければ、守るべきものを守ることができん。だから、休めるときには休むようにするのだぞ。」
「りょ、了解しました。」
「うん、それでいい。ん?ちょっと待て。」
通信を受けたのか彼は後ろを向いて通信を始める。どうやら、レプリロイドと言うものは体内ナノマシンのような手法で連絡をとるようだ。
「わかった。すぐにそちらに向かう。エックス、お前も訓練は程々にしておけ。私は現場に戻る。」
シグマは、俺に背を向けて去って行く。誰もいなくなったことを確認すると俺は、シミュレーションを開始して一時間ばかり訓練を行う。
やっぱり、ナイフとハンドガンは欲しい。
どこかで調達できればいいのだが。
『エックス』と言う第二の人生?を送ることになった俺に未来はあるのか?
MSX版難しい(;^ω^)