例えば、冨岡義勇が仕掛人だった際   作:聖獅

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すみません、本当は、~もしも冨岡義勇が~を書くつもりが、別の案の方に興が乗ってしまいまして、登場する義勇やその面々は原作とはかけ離れていますので、ご注意ください。

仕事や世事の出来事に注意を払っていると忙しくなり、最後まで書ききれたら良いなぁとは思っていますが・・・。



仕掛の三人

 

 晴らせぬ恨みを晴らし、許せぬ人でなしを消す、人呼んで仕掛人。

 但しこの職業、大正職業一覧には載っていない。

 

 

 蟲柱・胡蝶しのぶは、自室から外の月を眺めていた。

 鬼殺隊として多忙の身、鬼を倒す毒の研究、隊士達の傷の面倒、自分の屋敷・・・

蝶屋敷の主としてそこで働く子達への指示、そんな忙殺される合間に部屋での書類整理を一息ついて、姉が死んでからは決して見せない少し悲し気な表情でそれに見とれた。

 

 姉の遺志は鬼との融和、好きだと言ってくれた自分の笑顔

・・・姉の形見の羽織を握りしめ、そんな事が可能なのか?自分の内には鬼への憎しみしかない、それでも姉の為に融和しようとするも笑顔で語りかけるも何処か不協和音を起こす。

 それを炭次郎に見抜かれて、驚きつつも内心安堵する自分がいる。時折、昔の自分に戻って、素直になりたい、素直に怒り感情の制御もせずに自由奔放になりたい。

 そんな思いを掠めたが、苦笑し首を振った。

 仕事もひと段落し、外の空気に当たろうと部屋を出ると、

 

「むむ?」

 

 屋敷の壁を隔てて、外の路地を誰かが気配を殺して足早に歩く、その存在を察した。

 

 しのぶも静かに塀の上から顔を覗かせると、彼女と同役(同僚)の水柱・冨岡義勇が認められた。

 

「義勇さん・・・?一体こんな刻限に何をしているのでしょう?今日は非番のはずですし・・・まさか、吉原に?いえいえ、あの朴念仁さんに限ってそんな事・・・しかし冨岡さんだって一人の殿方です。妻帯持ちでもありませんし、誰かに咎められるなど・・・ふふふ、何を言っているのでしょう、私は?ええ、そうですよ、冨岡さんが何処に行こうと私には関係ありませんね、さぁさっさと寝るとしましょう」

 

 彼は、鬼殺隊の黒地の隊服の上に、全体が葡萄色の無地の羽織を着、黒の編み笠を被り、顔を隠しているようだ。

 刀は鬼殺隊で支給される日輪刀で、鍔は海鼠透かしとされる。

 この廃刀令が進む大正に何故、隠さず帯刀しているのか・・・?鬼殺の任務でも無いだろうに。

 

 その内、2里程離れた川沿いの土手を走る、ランプを灯した箱馬車が見掛られる。行者はこの夜更けに、盗賊や野犬が出ないか内心気が気でないが主の命令とあらば仕方がない。心細さを紛らわすために窓を開け、煙草を吸っている主に話しかける。

 

「旦那様、この辺出るそうですよ、余り遅い時間にご帰宅はしない方が・・・」

 

 声を掛けられた男は、面倒そうに受け応える。

 

「仙二、何が出る?賊の一人や二人、戦帰りの儂にはどうと言う事などない!このような刻限になったのもあの女が儂を離さずに、くくく」

 

 名前を呼ばれた仙二は、聞こえぬように舌打ちを鳴らした。虚言が多く、女の件も主がしつこくしただけだろうと、とはいえ心得ているので、仰る通りでと受け流し、本題へと移る。

 

「それもそうなんですがね、鬼が出るそうですよ」

 

「オニ?なんだそれは?」

 

「角とか生えた鬼の事で、うわっ、でかい石が・・・いえ、大丈夫です。ええ、私も噂で聞いた程度ですがね。夜にはなんでも人食い鬼が出るとか・・・」

 

「はっ!?馬鹿馬鹿しい。大方、熊と見間違いでもしたのだろう」

 

「まぁ、それはそれで恐ろしいですがね」

 

 そうこうしている内に、前方に明かりが認められ、次第にそれは一人の警官が、ランプを持って立ちはだかっているのが分かった。

 このような夜更けで、誰もいない寂しい一本道に珍しい。

 

「おお、おお、止まれ・・・。あれ、巡査殿ですか?どうしました、このような所で?」

 

 仙二が話しかけると、その警官はこの辺りは最近不審者が多い。その為こんな夜更けでも見回りし、相手の姓名を尋ねているという。

 そう言われ、自分も名乗り、馬車内の主にも促した。顔を出し名乗り上げると、その警官は驚き、役目とはいえと頭を下げて詫びる。

 

「うむ、一巡査よ。国家の為に粉骨砕身で働け、いやご苦労」

 

 走り出した馬車をその警官は鋭い眼光で見据え、帽子からはみ出た髪は宍色、右頬には刀か或は猛獣の爪でやられたかの大きな傷があり普通の人生を歩んできては居ないであろう風体をしている。

 その彼が、道そばの草原に向かって頷くと、一つの人影が飛び上がり、脱兎の如く道脇を走り抜けていった。

 

 

 先の馬車が暫く進むと今度は、道端に荷車と・・・横には足を摩っている年若い女性が屈んでいた。年の頃は20過ぎか、桃色の花柄の着物と、顔半分には狐面を付けている。

 

「・・・?今度は何だ?どうしたそんな所で?」

 

 仙二が女へ問いかけると、急いで家に帰ろうとして、足を躓き、歩けず難儀していたと言う。

 

「それは大変だな・・・どれ、俺が肩を貸してやろう。家は直ぐそこか?・・・ああ、旦那。大丈夫です。お待ちください」

 

 馬車の中の主が顔を出すと、仙二はランプで顔を照らしてみせた。女は恥ずかし気に面で顔を隠したが、その一瞬で相手の女に興味が沸き、頷てみせた。それを仙二は、やれやれまたかと内心呆れたが、逆らう訳にはもいかない。この女の居所を突き止め、あとで伝えなくてはならない。

 とはいえ、その女の着物から覗かせる素足には内心興奮し、自分も少し位おこぼれに預かれないか?という邪心も芽生えた。

 

「お嬢ちゃん、この辺りか家は・・・?でも、あんた中々のぺっぴんさんだな」

 

 彼は女を背負いながら内心、狐が化けてでたのか?何故こんな人気もない夜更けに?という疑問が無い訳でもないが、女の美貌によってその事は片隅に追いやられた。しばらく歩いていると、

 

「おじさん・・・もうこの辺で良いよ・・・」

 

「へ?なんでだ、家らしいものなんかどこにも・・・?」

 

 次の瞬間、女は三角締めの要領で仙二の首を絞め、気絶させて後に、一、二度蹴って草むらへと追いやった。

 

 馬車内の男は、まだ時間が然程も経っていないのに心細くなり、窓を開け、外の様子を窺った。そして、またこんな所に人の気配が近づいてくる。

 

「だ、誰だお前は・・・?」

 

 月の明かりの為に近場であれば顔も分かるが、相手の男は編み笠を被っているせいで顔ははっきりと分からない。

 

「仕掛人・・・冨岡義勇・・・」

 

「シカケニン・・・?賊の一種か?わ、わ、儂を陸軍大臣、鬼仏事夢介と知っての事か!」

 

「貴殿の虚偽により、その罪を擦り付けられ腹を切っていった者達、愚かな指令で多くの軍人や軍属で無い者も死んでいった、その残された多くの家族から頼まれた・・・」

 

 大臣は虚勢を張って一笑に付し、強請りたかりの類か、金が欲しければ素直に言えと、1円札を取り出し、地面に投げ捨てた。

 

 義勇はそれを一顧だにせず、

「貴殿も軍人の端くれなら、潔く腹を切られよ、介錯なら務めよう」

 

 言い終わるか否か、大臣は馬車内から懐の短銃を抜くとその同時に、義勇は抜刀し、数本の指を切断する。

 

「ぎゃあああああ!!!」

 

 短銃を持っていられなくなり、その場にのたうち回る。その騒動に驚いた馬が暴れて、手綱が緩み解け、そのまま走り去って行ってしまった。そして、義勇はその男を馬車から引きずり出して、地面に放り投げる。

 

「お・・・おのれ・・・貧乏人の分際で、大日本帝国の為に、身命を賭し、戦っているこの儂を無礼千万・・・絶対に許さんぞ・・・」

 

「御国の為?貴様のような愚かが、国の為に働くとは、聞いて呆れる」

 

 義勇は月に向けて振り上げた日輪刀、その刀身は青色ではなく、黒に近い藍色掛かったものだった。

それを振り下ろそうとする刹那、別の人影が間に入った。

 

 「止めてください、義勇さん!何をされようとしているのですか!」

 

 義勇は瞠目し、今の今まで、その相手の気配に気付かなかったのは、自身の一生の不覚と心底恥じた。

 

 「おお?おお!何処の者かは知らぬが、流石は大日本の婦女子よ、い、今まさに卑劣な反日のぎゃ、逆賊が此処におる、わ、儂の盾となり、時間を稼げ!」

 

 その婦女子は、胡蝶しのぶであり、気配を消してずっと義勇の後を尾けていた。彼が一体どうして、夜中に自身の屋敷を抜け出したのか、まさか人殺しの為に抜けだしたとは、とはいえ、幾らか彼女もこの男を守ろうとする気が失せた。

 義勇も苦虫をつぶし、どうするか決めかねていた所、大臣は落ちた短銃をもう片方の手でつかみなおし、胡蝶のこめかみへ押し当てる。

 

 「こ、この女を助けたくば、刀を捨てよ!さぁ捨てよ!」

 

 この男は胡蝶が賊である義勇と何かしらの繋がりがあると見て取り、自分を庇った胡蝶への恩を仇で返した。

 

 義勇は物ともせずに、胡蝶しのぶが普段目にする何を考えているか分からない顔のまま、刀を上段に被り向かっていく。人質など気にしていない感のある相手に大臣は気が動転し、心に隙が出来たと見たその瞬間、しのぶは腕からするりと抜け出し、銃を持つ腕を極めて地面へ投げ飛ばす。

 

「お・・・おのれ、娘、この儂へ・・・侮辱罪だ!後で後悔させてやる!」

 

「貴方程度に不覚を取るとは、私もうっかりです・・・」

 

「胡蝶・・・退けろ」

 

 義勇は、地面に這いつくばっている大臣の首を半分、一瞬のうちに切断した。男は義勇を睨め付けていたが、直ぐに血液は廻らなくなり、絶命した。それを認めると、懐紙で刀の血油を拭い去り、鞘へと納めた。

 

「・・・・・・、義勇さんこれは一体?どういうこ・・・ぐっ」

 

 胡蝶が疑問を投げかけている瞬間に義勇は鳩尾へ一撃をくらわし、怯んだ隙に片腕で彼女の首を絞め、気絶させて、縄で身動きが出来ないように縛り上げた。

 

 その場には、倒れたランプの灯りが少しずつ消えていき、後には暗闇と静寂だけが残った。

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